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【開催結果】国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(UNFCCC-COP25)における「オーシャンズ・アクション・デー (Oceans Action Day)」について
2019年12月2日 (月) から15日 (日) (13日から会期を2日間延長) にかけて、スペイン・マドリードにおいて国連気候変動枠組条約 (UNFCCC) 第25回締約国会議 (COP25) (於:IFEMA (マドリード見本市会場) ) が開催された。議長国であるチリ政府がCOP25を海洋・雪氷圏により着目する「ブルーCOP」と位置付けたことなどから、今回のCOPでは海洋をテーマとするイベントが多数開催され (100件超) 、政府間交渉においても「海洋と気候変動」問題にスポットライトが当たった。その結果、COP25最大の成果であるCOP決定 (Decision 1/CP.25, PDFドキュメントはこちら) において、地球の気候システムの一部としての海洋の重要性にCOP決定として初めて言及するとともに、来年6月のSBSTA42において、海洋と気候変動に関する対話の場を設けることが決まった。
2019年12月6日 (金) ・7日 (土) の2日間にわたり、笹川平和財団海洋政策研究所は、COP会場において「オーシャンズ・アクション・デー (Oceans Action Day) 」を開催した。ブルーCOPにおいて数多く開催されている海洋関連イベントの中で、オーシャンズ・アクション・デーは最も大規模なイベントとして注目を浴びた。
COP25(通称ブルーCOP)会場
Oceans Action Dayの案内
当イベントは、海洋と気候変動に関する諸課題について集中的に議論する場として、米国のグローバル・オーシャン・フォーラム (GOF) 、ポルトガルのオセアノ・アズール財団、ユネスコ政府間海洋学委員会 (UNESCO-IOC) 等とともに2015年より毎年開催している。今回のOceans Action Dayでは、6日午後のマラケシュパートナーシップの海洋・沿岸域イベントと、7日午後の5つのイベント (①海洋と気候の連関、②自国が決定する貢献(NDCs)への海洋関連オプションの組み込み、③適応・移転、④海洋・気候行動への支援活性化、及び⑤レセプション) に分けて開催された。このうち、①及び③のイベントを中心に当研究所が主導した。2日間のイベントで気候変動と海洋に関わる国際機関、政府、研究者、NGOなどからのべ約80名が登壇、約400名が参加し、海洋の観点から気候変動に関する緩和策および適応策、科学的知見、資金、移転・移住の課題などについて有意義な議論が展開された。
当研究所が主催・協力したイベントは以下の通り (時系列) 。
12月6日10:00-11:30 サイドイベント「気候変動と海洋―宇宙技術の貢献―」
12月6日15:00-18:00「グローバルな気候行動に関するマラケシュパートナーシップ (MPGCA) 」の海洋沿岸域イベント「1.5℃経路に向けた海洋・沿岸域の気候行動」 (※Oceans Action Dayの一部)
12月6日15:00-16:30 UNFCCC公式サイドイベント「海洋、科学、社会とUNFCCCのつながり―気候変動緩和と適応の野心向上のために」
12月7日13:00-14:30 Oceans Action Dayセッション①「UNFCCC内外における海洋と気候の連関」
12月7日14:45-15:45 同上セッション②「「NDCsへの海洋関連オプションの組み込み」
12月7日15:00-16:30 同上セッション③「適応・移転の解決策に関する海洋の科学と行動」
12月7日17:00-18:30 同上セッション④「海洋・気候行動への支援活性化」
12月7日19:00-20:30 同上レセプション
まず、Oceans Action Dayの最初のイベントとして、6日 (金) 15時から18時にかけて、「グローバルな気候行動に関するマラケシュパートナーシップ (MPGCA) 」の海洋沿岸域イベント「1.5℃経路に向けた海洋・沿岸域の気候行動」 (於:Hall4 Side Event Room6) が開催された。同イベントでは、複数のセグメントにわかれて海洋・気候問題のキーパーソンによる意見表明が行われ、「海洋・沿岸域の緩和策」をテーマとするセグメントにおいて、角南篤・海洋政策研究所所長がモデレータを務めた。登壇者からは、海洋が直面する温暖化や酸性化、貧酸素化等に関する科学的な理解の深化と必要な保全措置を早急に推し進め、ブルーカーボン等の海洋を活用した緩和策を推進し、2020年の一連の海洋関係の国際会議を通じてこれらの取組を一層促推するべきであるとの指摘がなされた。
マラケシュパートナーシップ海洋・沿岸域イベントの様子
角南篤 海洋政策研究所所長
Tiago Pitta e Cunha オセアノ・アズール財団CEO
「海洋と気候の連関」セッション 登壇者 (Photo by IISD/ENB | Diego Noguera)
(左) 共同議長を務める前川主任研究員, (右) イベント会場の様子 (Photo by IISD/ENB | Diego Noguera)
「適応と移転」セッション 登壇者
その他のセッションにおいても、様々な分野の専門家から意見表明された。日本パビリオンで開催されたOceans Action Dayセッション②「NDCsへの海洋関連オプションの組み込み」(於:日本パビリオン)(7日14:45-15:45)では、UNFCCC締約国が提出したNDCs(INDCs)を見ると、海洋に関連する言及がない国が多く、次回のNDCs提出では多くの国が海洋・沿岸生態系を活用した緩和策等をNDCsに組み込むべきなどと議論された。Oceans Action Dayの各イベントに共通して、今こそ具体的行動を起こす時であり、科学に基づいて海洋を活用/考慮した解決策 (Solutions) を立案・実施すべきであるとのメッセージが繰り返し示された。
なお、6日15時~16時30分には、Oceans Action Dayの一部として、公式サイドイベント「海洋、科学、社会とUNFCCCのつながり―気候変動緩和と適応の野心向上のために」 (於:Hall4, Side Event Room4) を英・プリマス研究所等とともに共催し、藤井麻衣研究員が登壇して、日本のブルーカーボンに関する動向について紹介した。
発表する藤井研究員
公式サイドイベント「海洋、科学、社会とUNFCCCのつながり」の様子
発表する吉岡研究員
サイドイベント登壇者
会場内展示の様子
参考ウェブサイト http://enb.iisd.org/climate/cop25/oceans-action-day/
(藤井麻衣 OPRI研究員)