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【開催報告】2019年第2回東アジア気候変動適応と災害管理法・政策に関するフォーラム

2019.10.31
【写真1】六カ国からの発表者

【写真1】六カ国からの発表者

気候変動による極端な気象現象は、世界中で多くの災害をもたらしています。東アジアは、豪雨、強烈な台風、洪水などの自然災害が頻発し、地球温暖化の影響に対して地球上で最も脆弱な地域の一つとされています。東アジアにおける大規模災害への対策などを含む現行の気候変動対策戦略を比較検討し、レジリエントな都市と将来の気候変動の悪影響を軽減するための法整備を行うために適切な政策や法律を起草することが重要です。

このような問題意識の下、笹川平和財団海洋政策研究所(OPRI-SPF)は台湾・国立高雄大学において2019年10月17日から18日に、国立高雄大学法学院、国立高雄大学国際関係研究センター(NUK-IRRC)、台湾海洋委員会(OAC)らと「2019年第2回東アジア気候変動適応と災害管理法・政策フォーラム」を共催しました。日本からはOPRI-SPFの研究員3名を含む6名の専門家が参加し、研究成果を発表しました。

まず、莊慶達海洋副大臣が開会挨拶を行い、新設されたOACは、プラスチックやその他の汚染物などの包括的な海洋問題に取り組むことを目指しており、そのためには国際的な協働が必要であることを指摘しました。医師であり台湾立法院のUNSDGs推進委員会の委員長でもある林靜儀国会議員は、持続可能な開発目標(SDGs)を含む多様な開発目標を達成するために、学際的な課題について世界中の省庁や国々の間での対話の重要性を強調しました。

基調講演では、内政大臣、教育大臣を歴任した国立台湾大学の葉俊榮講座教授が「国連気候行動サミット」で怒りをあらわにしたグレタ・トゥンベリ氏を例に挙げながら、「気候変動ガバナンスと民主政治の挑戦」をテーマに、「短期的な民主政治では長期的な気候変動問題を解決することは困難であるため、このような問題が効果的に内部化され、コミュニティ、学校、個人など幅広い利害関係者が関わる多層的な統治が促進されるべきである」と述べました。

【写真2】基調講演を行ってる葉俊榮講座教授

【写真2】基調講演を行ってる葉俊榮講座教授

セッション議長を務めたマレーシア・ケバンサーン大学法学部副学部長ラシカ・ハリッド教授は「気候変動適応と緩和のための効果的な水ガバナンス」について発表しました。日本風力発電協会 國次純氏は日本の浮体式洋上風車について発表し、日本財団 塩入同氏は、循環経済に向けたプラスチック廃棄物管理について説明し、将来的な分野横断的な協力の実例として紹介しました。政策研究大学院大学博士号候補者のジェイ・トリスタン・タリエラ氏からは、海上保安外交の多機能性と可能性について発表がありました。
【写真3】マレーシア・ケバンサーン大学法学部副学部長ラシカ・ハリッド教授

【写真3】マレーシア・ケバンサーン大学法学部副学部長ラシカ・ハリッド教授

ブルーファイナンス研究において重要なテーマの一つである災害リスクの減少について、OPRI-SPFの田中元研究員と黄俊揚研究員は「海洋リスクに対するブルーファイナンスの機会:北海道南部の事例」と題して、北海道の函館市をケーススタディーとして、GISを使用し津波ハザードマップ内の産業ユニットの位置を特定し、その結果を動的な一般均衡モデル分析に適用してシミュレーションを行い、政策提言を示しました。続いて吉岡渚研究員は「アジア太平洋地域における気候変動適応のための資金調達」について発表し、アジア太平洋地域の気候変動に対する適応資金の流れについて説明しました。これらの発表に対して多くの提案が寄せられました。
【写真4】知見を発表、積極的に意見交換を行った若手研究者

【写真4】知見を発表、積極的に意見交換を行った若手研究者 (上段左から: 台湾行政院顧問 陳治維氏、政策研究大学院大学ジェイ・トリスタン・タリエラ氏、下段左から: OPRI-SPF吉岡渚研究員、OPRI-SPF黄俊揚研究員)

閉会セッションでは、台湾行政院顧問・英国王立地理学会フェローの陳治維氏が、台湾のSDGsに関する現状を報告しました。最後に高雄大学王学亮学長・特別教授が、SDGsのパートナーとしての大学の社会的責任について言及し、これらのテーマが依然として世界の舞台で重要な役割を果たすことを示し、会議を締めくくりました。最後にOPRI-SPFを代表して黄研究員は、フォーラムを主催するパートナーの一員として謝意を示し、グローバルな対話や実証に基づいた研究と交流を促進するプラットフォームを引き続き支援していくことを表明しました。
(海洋政策研究部研究員 黄俊揚・田中元)

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