News
【開催報告】国連気候変動枠組条約第50回補助機関会合(SB50)におけるサイドイベント開催について

満員となったサイドイベント会場(登壇者は海洋政策研究所の藤井麻衣研究員)
モルディブ政府から、Mareer Husny氏が議長をつとめ、開会の挨拶を述べた。そして、グローバルオーシャンフォーラムからBiliana Cicin-Sain氏が登壇し、COP25に向けて海洋を新たな交渉議題に組み込むことを提案し、気候変動による海洋への影響に対してただちにアクションを起こしていくことを求めた。
続いて、Hans-Otto Pörtner IPCC第二作業部会共同議長からは昨年10月に公表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)1.5℃特別報告書の内容について紹介があり、改めて世界の平均気温の上昇を1.5℃以下に抑えることで、2.0℃の上昇に比べて顕著に影響が緩和できることが強調された。また、海洋に関連する話題として、サンゴ礁への悪影響も1.5℃上昇のシナリオでは抑えることが可能である一方、それでもなお高い確率で消滅の危機に瀕していることに言及した。

(左)Mareer Husny氏モルディブ環境省部長補佐、(中)Biliana Cicin-Sainグローバルオーシャンフォーラム会長、(右)Hans-Otto Pörtner IPCC第二作業部会共同議長
また、英国のプリマス海洋研究所からCarol Turley研究主幹が登壇し、今年9月にはIPCCより海洋と雪氷圏に関する特別報告書が公表される予定であり、1.5℃特別報告書では扱われることのなかった深海などの海洋生態系にも焦点があてられることなどを紹介した。また、ユネスコ政府間海洋学委員会(UNESCO-IOC)のKirsten Isensee氏は海洋科学をUNFCCCなどの国連システムの中での議論に組み込んでいくことの重要性を指摘するとともに、国際的な研究ネットワークの支援と途上国の能力開発促進を求めた。
海洋政策研究所からは藤井麻衣研究員が登壇し、ブルーカーボンを事例として最新の科学的知見に基づいた意思決定の促進に関する発表をおこなった。IPCC1.5℃特別報告書においても、ブルーカーボンの保全によって海面上昇等の自然災害の影響を緩和できるなどのコベネフィットについて言及されていることや、最新の研究では海藻なども含めた多様なブルーカーボンの吸収源としての可能性が示唆されていることなどについて紹介した。また、日本国内でも、国土交通省を中心にブルーカーボンの活用についての検討が始まっていることにも言及した。

(左)Carol Turleyプリマス海洋研究所主任研究員、(中)Kirsten Isensee プログラム・スペシャリスト、(右)藤井麻衣 笹川平和財団海洋政策研究所研究員

(左)Arif Havas Oegroseno在独インドネシア共和国大使、(中)Taholo Kami オーシャン・パスウェイ特別代表、(右)Rosana Garay Maldonado チリ共和国外務省職員
満員となった会場からは、「海洋COP」への高い期待を感じることができた。昨年のIPCC1.5℃特別報告書および今年の海洋・雪氷圏特別報告書から得られる科学的知見を各締約国がしっかりと受け止め、UNFCCCをはじめとする国際的な枠組みの下で、気候変動による海洋への影響に対する野心的、具体的な行動が求められている。半年後に開催が迫るCOP25に向け、UNFCCCそしてCOP25議長国チリへの提言を含めた海洋コミュニティのアクションは今後も盛り上がりを見せるだろう。
*本サイドイベントにおける発表資料につきましては、こちらからアクセスすることができます。(英文)