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【開催報告】国連気候変動枠組条約第50回補助機関会合(SB50)におけるサイドイベント開催について

2019.07.08
2019年6月17日~27日にドイツ・ボンにおいて、今年12月にチリで開催される国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)に向けた準備会合(第50回補助機関会合)が行われた。笹川平和財団海洋政策研究所は、この補助機関会合(SB50)の会期中の25日(火)に、公式サイドイベントとして「海洋と気候の連関に関するIPCC 1.5℃特別報告書の知見(Addressing the IPCC Findings Relevant to the Ocean and Climate Nexus)」をモルディブ政府やグローバルオーシャンフォーラムなどとともに開催した。100人を超える参加者が集まる中、政府、国際機関、NGO等から海洋に関わる専門家ら9人が登壇した。昨年10月に公表されたIPCC1.5℃特別報告書による海洋に関わる最新の科学的知見を共有するとともに、今年12月にチリ・サンティアゴにて開催されるCOP25が海洋COPとなることへの期待が高まる中、どのように海洋と気候変動の連関を国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の交渉プロセスの中に組み込んでいくのかなどさまざまな視点から情報が提供された。
満員となったサイドイベント会場(登壇者は海洋政策研究所の藤井麻衣研究員)写真

満員となったサイドイベント会場(登壇者は海洋政策研究所の藤井麻衣研究員)

モルディブ政府から、Mareer Husny氏が議長をつとめ、開会の挨拶を述べた。そして、グローバルオーシャンフォーラムからBiliana Cicin-Sain氏が登壇し、COP25に向けて海洋を新たな交渉議題に組み込むことを提案し、気候変動による海洋への影響に対してただちにアクションを起こしていくことを求めた。

続いて、Hans-Otto Pörtner IPCC第二作業部会共同議長からは昨年10月に公表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)1.5℃特別報告書の内容について紹介があり、改めて世界の平均気温の上昇を1.5℃以下に抑えることで、2.0℃の上昇に比べて顕著に影響が緩和できることが強調された。また、海洋に関連する話題として、サンゴ礁への悪影響も1.5℃上昇のシナリオでは抑えることが可能である一方、それでもなお高い確率で消滅の危機に瀕していることに言及した。

(左)Mareer Husny氏モルディブ環境省部長補佐、(中)Biliana Cicin-Sainグローバルオーシャンフォーラム会長、(右)Hans-Otto Pörtner IPCC第二作業部会共同議長写真

(左)Mareer Husny氏モルディブ環境省部長補佐、(中)Biliana Cicin-Sainグローバルオーシャンフォーラム会長、(右)Hans-Otto Pörtner IPCC第二作業部会共同議長

また、英国のプリマス海洋研究所からCarol Turley研究主幹が登壇し、今年9月にはIPCCより海洋と雪氷圏に関する特別報告書が公表される予定であり、1.5℃特別報告書では扱われることのなかった深海などの海洋生態系にも焦点があてられることなどを紹介した。また、ユネスコ政府間海洋学委員会(UNESCO-IOC)のKirsten Isensee氏は海洋科学をUNFCCCなどの国連システムの中での議論に組み込んでいくことの重要性を指摘するとともに、国際的な研究ネットワークの支援と途上国の能力開発促進を求めた。

海洋政策研究所からは藤井麻衣研究員が登壇し、ブルーカーボンを事例として最新の科学的知見に基づいた意思決定の促進に関する発表をおこなった。IPCC1.5℃特別報告書においても、ブルーカーボンの保全によって海面上昇等の自然災害の影響を緩和できるなどのコベネフィットについて言及されていることや、最新の研究では海藻なども含めた多様なブルーカーボンの吸収源としての可能性が示唆されていることなどについて紹介した。また、日本国内でも、国土交通省を中心にブルーカーボンの活用についての検討が始まっていることにも言及した。

(左)Carol Turleyプリマス海洋研究所主任研究員、(中)Kirsten Isensee プログラム・スペシャリスト、(右)藤井麻衣 笹川平和財団海洋政策研究所研究員写真

(左)Carol Turleyプリマス海洋研究所主任研究員、(中)Kirsten Isensee プログラム・スペシャリスト、(右)藤井麻衣 笹川平和財団海洋政策研究所研究員

続いて、在独インドネシア共和国大使館よりArif Havas Oegroseno大使が登壇し、海洋国家であるインドネシアとして海面上昇をはじめとする気候変動の海洋への影響についての強い懸念があることを示したほか、グリーンボンドの発行などの取り組みを紹介し、こうした積極的な行動を強化するためにも国際的なベストプラクティスの共有が重要であると強調した。 COP23で議長国を務めたフィージーのTaholo Kami オーシャン・パスウェイ特別代表は、今年12月にチリで開催されるCOP25が「海洋COP」となることへの期待を述べ、海洋のための作業計画など、UNFCCCプロセスの中で気候における海洋の役割を評価していくための具体的なアクションについて提案した。最後に、COP25で議長国を務めるチリ政府からRosana Garay Maldonado氏は、COP25に向けたチリ政府のビジョンとして、海洋を含めた優先テーマに対する高い野心と具体的な行動を求めると述べた。
(左)Arif Havas Oegroseno在独インドネシア共和国大使、(中)Taholo Kami オーシャン・パスウェイ特別代表、(右)Rosana Garay Maldonado チリ共和国外務省職員写真

(左)Arif Havas Oegroseno在独インドネシア共和国大使、(中)Taholo Kami オーシャン・パスウェイ特別代表、(右)Rosana Garay Maldonado チリ共和国外務省職員

満員となった会場からは、「海洋COP」への高い期待を感じることができた。昨年のIPCC1.5℃特別報告書および今年の海洋・雪氷圏特別報告書から得られる科学的知見を各締約国がしっかりと受け止め、UNFCCCをはじめとする国際的な枠組みの下で、気候変動による海洋への影響に対する野心的、具体的な行動が求められている。半年後に開催が迫るCOP25に向け、UNFCCCそしてCOP25議長国チリへの提言を含めた海洋コミュニティのアクションは今後も盛り上がりを見せるだろう。

 

*本サイドイベントにおける発表資料につきましては、こちらからアクセスすることができます。(英文)

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