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「北極海航路の持続的利用に向けた国際セミナー」開催報告 (2013年9月3日、6日)
当財団は1993年から99年までの間、ロシア、ノルウェーの研究機関と共同で「国際北極海航路開発計画」(INSROP: International Northern Sea Route Programme)を実施し、その結果、北極海航路の通年運航が技術的に可能であることを示しました。スエズ運河やマラッカ海峡を経由する南回り航路の約60%の行程で欧州とアジアを結ぶ北極海航路は、当時からすでに多くの注目を集めていました。しかし当時は北極海の氷がまだ厚く、1年のうち3ヶ月ほどしか航行できない状況において、商業航路としての実用化はまだ先の話であり、私どもは2050年頃の実現を見込んでいました。
ところがここ数年、北極海の氷は我々の予想を超える速さで減少しつつあり、昨年は341万km2と観測史上最小を記録しました。今年は昨年ほどではありませんが、それでも過去の平均に比べれば遙かに海氷面積は少ない状況にあります。これに伴って航路としての利用は現実的なものとなり、商船による航海は2010年にわずか4隻だったものが、2011年に34隻、2012年には46隻となり、そして今年は8月28日時点ですでに20隻が通行するなど、急速な増加を見せています。また昨年末には北極海を初めてLNG船が航行し、今年は北極海航路史上初めて、コンテナを積んだ貨物船がアジアから欧州に向けて航行するなど、船種も荷物の種類も多様化していく中で、いよいよ本格的な商業航路としての道筋が具体化してまいりました。
このように急速に商業航路としての実用化が進む北極海航路は、もはや利用の可能性を議論するだけの対象ではなく、物流のオプションの一つとして検討すべき時期に来ています。
当財団は9月3日(火)及び6日(金)、ボートレースの交付金による日本財団の助成のもと、北極海航路の商業利用に焦点を当てたセミナーを東京・札幌で開催し、ロシア、ノルウェー、米国など北極海沿岸国の専門家による最新情報の発表を行うとともに、今後の北極海航路の適正かつ持続的な利用に向けての議論を行いました。両会場とも定員を超える申し込みがあり、当日は発表者と参加者の間で活発な意見交換が行われました。
セミナーのプログラム及び配付資料につきましては、当財団のブログをご覧ください。
http://blog.canpan.info/oprf/archive/1317
※当財団では、ボートレースの交付金による日本財団の助成金を受けて「北極海航路の持続的な利用に向けた環境保全に関する調査研究事業」を実施しており、本セミナーはその事業の一環として開催したものです。