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「日本北極海会議」報告書および政策提言の公表について
海洋政策研究財団は、1993 年から1999 年にかけて日本財団の支援の下で「国際北極海航路開発計画」(INSROP/JANSROP)を実施し、2002 年から2006 年にかけては「北極海航路の利用促進と寒冷海域安全運航体制に関する調査研究」(JANSROPⅡ)を実施するなど、長年にわたり北極海航路の課題に取り組んできました。
地球温暖化現象は、地球上の至る所で様々な形で影響を及ぼしつつあり、特に北極海は、気温の上昇に敏感で、まさに気候変動のインディケーターといわれています。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4 次報告によると、「北極圏」における気温上昇は、地球規模平均より遙かに大きいことが90%以上の確度で確実であると報告されています。そして、近年の海氷面積は、前世紀後半の平均値(約700 万km2)から大きく減少しています。この減少幅は年-年変動によるものとするには過大であり、近年の北極海の海氷面積に明らかな減少傾向を見ることができます。
さらに北極海に関しては、このような地球温暖化による自然環境・生態系の変化や埋蔵する資源開発への期待などから、人々の関心が強くなってきています。我が国は北極海の沿岸国ではないものの、北極海の気象変化が我が国を含む地球全体の気象現象に大きな影響を与えること、北極圏の資源開発に我が国もすでに関わっていること、あるいは今後大いに関わるべきであること、北極海航路による欧州との航路短縮により様々な影響を受ける可能性が高いこと、安全保障やガバナンスに課題があることなどの多くの理由により、北極海の問題と密接な関わりを有しています。
一方で、従来我が国においては、北極圏及び同海域の重要性に対する認識が低く、そのため国レベルでの調査研究活動はほとんど実施されず、北極海や周辺各国の動向や情報等が不足している状況にありました。
そこで、平成22 年度に国際法、安全保障、科学調査、造船、海運、気象観測など各分野の有識者からなる「日本北極海会議」を発足させ、本年度までの約2 年間で北極海問題を多元的かつ統合的に把握し、我が国が取るべき政策や戦略に関して国益と世界益を図ることを目的として検討をしてきました。このたび、「日本北極海会議」は、北極海の科学調査、資源、航路、安全保障や管理体制の分野について、それぞれの現状と相互関係、将来動向、問題点について分析、整理を行い報告書及び政策提言を取りまとめて記者発表を行いました。本報告書及び政策提言は、我が国の北極海の資源開発や航路啓開、北極海の環境保全や的確なガバナンスを推進するにあたり、行政府等に配慮いただきたい事項を整理したものです。本報告書及び政策提言が、我が国の各種施策の実施に当たり活用されることを願っております。
「日本北極海会議」報告書について(PDFダウンロード)
政策提言について(北極海の持続可能な利用に向け日本がただちに行うべき施策)(附録:報告書の概要)(PDFダウンロード)
海洋政策研究財団 海技研究グループ
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