海洋に関する情報発信

【Ocean Newsletter】最新号

第431号(2018.07.20 発行)

持続可能な漁業を目指して ─ グローバル・フィッシング・ウォッチの活動

[KEYWORDS]IUU漁業/漁業活動の可視化/グローバル・フィッシング・ウォッチ
グローバル・フィッシング・ウォッチ科学ライター◆Kimbra CUTLIP

グローバル・フィッシング・ウォッチ(GFW)は、洋上の漁業活動に透明性をもたらすことによって世界の海の持続可能性を前進させることをミッションとしている。
洋上の船舶が発する信号から漁船の位置や操業状況の特定を行い、GFWのウェブサイト上で公開している。
全世界の漁船団の動きを監視・可視化するこの仕組みをさらに強化することで、違法捕獲魚の市場での流通を防ぎ持続可能な漁業につなげる。

グローバル・フィッシング・ウォッチとは

世界の水産物貿易額は、天然・養殖資源合わせて年間ほぼ1,500億ドルだが、その内IUU(違法、無報告、無規制)漁業に由来する漁獲が100~235億ドルと推定される。この数年間に各国政府、漁業関連諸機関、環境保護団体などの取り組みによってIUU漁業の減少、海洋生態系の保全に成果がみられるが、残された課題はなお多い。規制の不徹底、科学的根拠のある管理戦略の不在、グローバル・ガバナンスの浸透の不徹底などがもたらす乱獲によって、世界全体で年間830億ドルの減獲と言われている。国連食糧農業機関(FAO)の報告では、同機関がモニターする水産資源の90%が満限利用あるいは過剰利用の状態にある。海洋で何が起こっているかを明るみに出さなければ、不法漁船団らによる「漁獲競争」はいつまでも続くことになる。
グローバル・フィッシング・ウォッチ(GFW: Global Fishing Watch、以下GFW)は2014年に、海洋保護団体オセアナ(Oceana)、衛星画像分析により監視活動を行う非営利団体スカイトゥルース(SkyTruth)とグーグル(Google)が共同で設立し、2017年に独立の非営利団体になった。洋上の漁業活動に透明性をもたらすことによって世界の海の持続可能性を前進させることをミッションとしている。
漁船が水平線のかなたで操業するとき、その挙動が人に気付かれることはほとんどない。インターネットにアクセスさえすればこれら漁船の行動を見ることができるようにしようというのがGFWの活動である。クラウド・コンピューティングと機械学習との組み合わせにより、洋上の船舶が発する信号から各漁船を特定し、その動きによって操業状況の特定を行う。こうして得たデータおよび漁獲行動の分析結果は、研究者、各国政府、NGOなどに提供し、さらにすべての漁船の位置および航行の軌跡を、GFWのウェブサイト上に公開するインタラクティブ方式の地図として表示している。

■グローバル・フィッシング・ウォッチ(GFW: Global Fishing Watch)
http://globalfishingwatch.org/
無償で使いやすい、インタラクティブなオンライン地図で世界の漁業活動を表示

高まる漁業活動の透明性

GFWは、全世界の漁船団の動きを監視・可視化する能力の大変革をめざしている。現在、われわれが提供するデータとその解析結果は、科学的研究やイノベーションの加速、実効性ある漁業政策の促進、市場におけるインセンティブと漁獲物のトレーサビリティの向上に利用されている。
GFWの取り組みが漁船の行動の透明性を求める機運を後押しし、情報公開に積極的になる国も出てきている。活動を開始した時点においては、船舶自動識別装置(AIS)が発する信号に頼るのみだったが、2017年6月にインドネシア政府が他国に先行して、自国の漁船監視システム(VMS)データをGFWによって公開することを表明、また10月にはペルーが同様の意思表示を行い、他の国々も透明性へ向けての果敢な動きに加わることに関心を示している。
各国政府が自国船舶のVMSデータを公開し、これに各種のレーダーデータおよび赤外線情報を重ね合わせることによって、自国および他国の漁船や船団の自国水域内における行動についてより多くを知ることとなる。さらにこれらの国々は情報公開を実践し、各国間に信頼と協力の関係を生み出している。また強力な監視体制を持たない国々にとっては、GFWによって、自国の排他的経済水域内で行われている漁業活動の詳細を多大な費用をかけることなく把握することができる。

違法捕獲魚の市場での流通を防止

2016年6月5日、各港における規制を強化・調和し、違法漁業による魚類の国際市場での流通防止をめざす違法漁業防止寄港国措置協定が発効した。批准国は50カ国を超え、その数はさらに増えると予想されている。寄港国における規制強化により、違法業者にとってはその販路が狭まることとなり、世界の海域から違法操業が大きく減少するであろう。ただし、その実現のためには、漁業が行われる海の透明性も一層高まる必要がある。
現在、漁獲報告は自己申告制で、書式も海域や魚種・漁法によってさまざまである。電子的に追跡するシステムがあれば、各漁船がいつ、どこで漁獲を行ったかが検証可能となり、標準化されたデータに世界のどこからでもアクセス可能となる。さらに、法令違反操業者が明確になるため、入港時に厳格な検査の可能性が高まれば、自らの行動を自己規制することが期待できる。一方、規則を遵守する業者は入港、水産市場へのアクセスが円滑に進むという利益が得られることになる。
消費者が自分の食べるものの来歴情報をより求める中で、漁業活動に関する透明性が高まれば、消費者は水産品の出所を知って安心できる。水産会社の中には、GFWを利用して、漁獲船の追跡情報を買い手に提供するところもでてきている。われわれは、やがて消費者が水産品の包装のバーコードから、正確にどの船がどこで操業したかを知る日が来るであろうと予想している。
2014年6月、多数の男性があたかも動物のように売買され、タイ沖の漁船上に拘束されているのが発見された。事件は水産業界を震撼させ、大手水産食品企業らは違法漁業、虐待的労働慣行、人身売買などによって得られた水産物を自社のサプライチェーンから排除することを言明するに至った。また、違法行為を排除するひとつの方法は、「転載」と呼ばれる行為に注目することである。転載は漁獲した魚を別の船へ積み替えることを言い、これが違法行為に伴うものであることが多い。GFWでは、漁船の行動に関するデータベースに機械学習アルゴリズムを適用することによって、転載しているとみられる船舶の動きを明示するグローバルフットプリントを開発した。これによって特定の漁船が特定の海域で転載を行う際の行動様式も明らかにした。

持続可能な漁業のために

科学的根拠に基づく海洋管理を質の高いものにするには、どれだけの規模で漁業が行われているのか、いつ、どこで行われているのか、いかなる漁獲技術が用いられているのかについて正確な情報が不可欠で、透明性が確保されなければならない。GFWは、公開のプラットフォームとして、必要な基本データを提供し、どのようなデータが足りないのかを明らかにするものである。また、資源の採取が行われている場所を分かりやすく示し、根拠ある情報に基づいて持続可能な漁業を促進する政策のための情報源とすることができる。
GFWの機能の拡大を進めるにつれて、一層多数かつ多様なデータを取り込むことが可能となっていくであろう。また、AIS搭載の義務がより小型の漁船にまで拡大され、さらに、すべての漁業国のVMSデータがわれわれのデータベースの中に包含されていくことが期待される。今後数年の内に、世界の漁獲量の90%の捕獲に従事する船舶の活動をつまびらかにすることが、われわれのビジョンとするところである。(了)

  1. 違法漁業防止寄港国措置協定 外務省HP http://www.mofa.go.jp/mofaj/ila/st/page23_001946.html
  2. 本稿は英語でご寄稿いただいた原文を事務局が翻訳まとめたものです。原文は本財団HP(https://www.spf.org/opri/projects/information/newsletter/backnumber/2018/431_1.html)でご覧いただけます。
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