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【調査レポート】東シナ海での海難:パナマ籍タンカーSANCHIと香港籍ばら積み船CF CRYSTAL号の衝突海難の経過 ◆各国政府・国際機関からの公表内容◆

2018.02.01

海洋政策研究所

研究員 塩入

 201816日に中国上海の沖合160海里の東シナ海海上で発生した海難に関し、各国政府・国際機関が公表した内容をもとに整理し時系列に取りまとめたので、次のとおり報告します。

1.概要

 201816日(土)20:00(中国標準時:UTC+08:00)頃、パナマ船籍のタンカーSANCHI号が、中国上海の沖合160海里(約300km)の東シナ海の海上で、香港籍のばら積み船CF CRYSTAL号と衝突・炎上し、南東方向へ漂流し、日本の排他的経済水域、北緯2822分、東経12555分、水深115mの海底に沈没した。

 当時SANCHI号は、軽質油(コンデンセート)136,000トンを積載し、イランのAsaluyeh港から、韓国の大山(DAESAN)港へ向かっていた。またCF CRYSTAL号は、穀物64,000トンを積み、米国から中国広東に向かっていた。それぞれの船には、SANCHI号に32名(イラン人30名、バングラディシュ人2名)、CF CRYSTAL号に中国人21名が乗り組んでおり、衝突後、中国の国家海洋局および交通運輸部を中心に韓国の海洋警察庁海警船や日本の海上保安庁巡視船などが連携し、船舶・航空機を用いた救助・消火・油防除活動にあたったが、SANCHI号の乗組員32名が犠牲となった。

 沈没した海域は、日中漁業協定(1997年)の日中暫定措置水域に該当し、北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)が対象とする範囲外で、NOWPAPの対象範囲よりも南側に位置している。

2.事故発生後の各国政府等からの公表内容

事案

日付

中国政府からの公表内容

日本政府からの公表内容

その他(米・韓・イラン・IMO)からの公表内容

出典

01/07

・交通運輸部は、海巡01の他、救助船の東海救101117などを派遣し現地での指揮、捜索救助活動を開始。

・韓国海洋警察庁の航空機1機・海警船1隻が現場海域に到着したと報告。

・交通運輸部は、CF CRYSTAL号の乗組員21名が周辺漁船により無事救助、SANCHI号の32名が行方不明と公表。

・中国交通運輸部01/07

・米海軍第7艦隊は、航空機(P-8A)を衝突海域に派遣した。航空機は沖縄嘉手納基地に戻るまでの間に3,600平方マイルの国際捜索救助活動を行ったが乗組員は発見されなかったと報告した。

・U.S.7th Fleet Public Affairs 01/07

01/08

・中国政府は海難事故へ最大限対応していく必要性を認識しており、捜索救助に参加する国々へ感謝の意を表明。

・中国外交部定例記者会見01/08

01/09

・交通運輸部はSANCHI号の乗組員1名の遺体を収容した。また救助体制を拡大し、海巡01を中心とした13隻で900平方海里を捜索。波高3m、北西の風があり、有毒ガス対応のマスク、ガス検査器を装備した。

・海事局に事故調査チームを編成した。

・上海海上交通局は現場周辺10海里の航行を制限する警告を発令。また、CF CRYSTAL号は救助船東海救118の支援の下で舟山へ回航。

・中国交通運輸部01/09

01/10

・国家海洋局の海洋環境監視観測センターの専門家より、当面の間は中国沿岸海域の生態環境へは影響は及ばないとの見解を示す。

・中国国家海洋局01/10

・交通運輸部は、日本の海上保安庁巡視船「こしき(KOSHIKI)」が12時ごろに現場に到着したことを報告。

・中国交通運輸部01/11

10から11日は爆発が再開し救助船舶が近づけない状況となる。

・中国交通運輸部01/15

01/11

・海上保安庁は、「東シナ海、火災タンカー漂流」の情報を発信。

※情報は状況の経過とともにWEBから削除される。

・日本海上保安(NAVTEX航行警報)

01/12

・国家海洋局がHP上で日々の汚濁状況などの監視・観測情報の発信を開始。

※更新情報は、

中国国家海洋局「海洋要聞」の「国家海洋局积极开展东海海域油轮碰撞事故应对工作(二)」(01/13)以降を参照


・中国国家海洋局01/12

01/13

・中国の救助員が爆発の危険性があるSANCHI号に上がる。船内は有毒ガスと高温で捜索ができず、デッキで2名の遺体を発見し収容、またVDR(航海データ記録装置)を回収。

・中国交通運輸部01/15

01/14

12:30頃から再び爆発し、炎が船体のすべてに渡り、炎の高さは8001,000mに達し、船体が沈み始め16:45SANCHI号は沈没。場所は北緯2822分、東経12555分の海域。

・中国交通運輸部01/15

・イラン大統領はタンカー乗組員の家族らに哀悼の意を表明。

・イラン・イスラム共和国 01/14

01/15

・中国は、事故発生後からこれまでの間に、海巡01の指揮の下、10隻余の救助船を組み合わせ、SANCHI号を中心に1,000平方海里余りの水域において捜索活動を展開したと報告。

・中国交通運輸部01/15

・海上保安庁は、「奄美大島西、漂流火災タンカー沈没」の情報を発信。

※情報は状況の経過とともにWEBから削除される。

・日本海上保安庁(NAV

TEX航行警報)

・国際海事機関(IMO)はSANCHI号の沈没に関して哀悼の意と、国際捜索救助活動に携わる人たちへの敬意を表し、今後の汚染を抑えるための技術的支援の用意があると表明。

IMO事務局長Kitack Lim01/15

01/19

SANCHI号の事故の経過および、中国政府、党、指導者が行ってきた遭難捜索救助に係る一連の調整や指示命令を振りかえった。困難な状況の中で国際条約に従い、人命最優先に活動してきたこと、空と海からの8,800平方kmに及ぶ捜査救助活動、イラン・バングラディシュやIMOなどへの状況通報や、北西太平洋行動計画の下で、日本・韓国・ロシアへ活動状況を報告。また、国際法・国際条約に基づく沈没船の引上げや油濁対応など、事故処理の今後について表明がなされた。

・中国交通運輸部01/19

・韓国はSANCHI号が積荷の軽質油153,200キロリットルの他に、バンカーC重油1,800トン、ディーゼル油100トン、潤滑油20トンなど約1,900トンの油を搭載していると推定していることに言及。また、現場の海難対応は、中国が主管となって進められていること、その上で韓国は、海洋警察庁の警備艇を派遣し、捜索救助・油除去作業にあたらせ、そこから現場の状況報告を受けてきたという説明がなされた。そして今後、油濁は韓国沿岸・済州島沿岸に到達する可能性は低いと考えているが、船舶・航空機による観測や韓国航空宇宙研究院・海洋科学技術院による観測・予測を継続していくとの見解が示された。また、海洋環境管理公団など国内の油濁防除の協力体制の確立、水産物の安全確保のための安全検査体制に万全を期していくとの考えが示された。

・韓国海洋水産部プレスリリース01/19

01/20

・水中ROVを用いて海底に沈むSANCHI号の船体とハッチなどの損傷状況を確認。

・中国交通運輸部01/23

01/22

・国家海洋局は、これまでの海域浄化や環境モニタリングの成果を小括した。また英国ロンドンで22日に開催されたIMOの第5回船舶設計-建造小委員会(SDC5)では、今回の海難事故について各国が言及し、追悼の意を表すとともに、救助者の勇気を賞賛した。

・中国国家海洋局01/23

・中国交通運輸部01/24

01/26

・中国、イラン、パナマ、香港特別行政区は01/25に合同事故調査のための協定に合意したことを公表し、IMOなどの関連規則に従い今後の合同調査を進めていくことへの言及がなされた。

・中国交通運輸部01/26

3.海難関係船舶の諸元

SANCHI(サンチ)

船籍:パナマ

全長:274.177

総トン数:85,462トン

竣工:2008

IMO No9356608

船級協会:DNV GL

船主:Bright Shipping Ltd

運航:National Iranian Tanker Company

http://vesselregister.dnvgl.com/VesselRegister/vesseldetails.html?vesselid=27100

CF CRYSTAL

船籍:香港

全長:217m

総トン数:41,073トン

竣工:2011

IMO No9497050

船級協会:AMERICAN BUREAU OF SHIPPING

船主:CP INTERNATIONAL SHIPMANAGEMENT

運航:CP INTERNATIONAL SHIPMANAGEMENT

https://www.eagle.org/safenet/record/record_vesseldetailsprinparticular?ImoNum=9497050

(了)

*主要な修正の履歴

0202_14:30 船名のスペル誤記を修正。「CF CRISTAL」 → 「CF CRYSTAL」

0202_15:50 「2.」の表中の01/22の記述「国家海洋局と海上捜索救助センターは、これまでの海域浄化や環境モニタリングの成果を小括した。」のうち、「と海上捜索救助センター」の部分を削除した。

パナマ籍タンカーSANCHI(サンチ)と香港籍ばら積み船CF CRYSTAL号の衝突海難の経過 ◆各国政府・国際機関からの公表内容◆(東シナ海・海難・事故)

【調査レポート】PDF版(0.39Mb)


      お問い合わせ先

公益財団法人笹川平和財団 海洋政策研究所

電話:03-5157-5210 Email: oceanpolicy@spf.or.jp

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