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第3回「日本北極海会議」(国際シンポジウム「北極海における資源開発」及び専門家会合)(2010年12月14-15日)開催報告

2010.04.13
はじめに
海洋政策研究財団は、1993年から1999年にかけて日本財団の支援の下で「国際北極海航路開発計画」(INSROP/JANSROP)を実施し、2002年から2006年にかけて「北極海航路の利用促進と寒冷海域安全運航体制に関する調査研究」(JANSROP Ⅱ)を実施するなど、北極海航路の問題に取り組んでまいりました。今年度からは、気候変動により夏の海氷が激減している北極海において船舶航行や海底資源開発に関する動きが活発化している状況に鑑み、「北極海域情報に関する調査研究」事業を実施し、北極海問題をより多元的かつ総合的に把握し、国益と世界益に照らした我が国がとるべき政策ないし戦略、とりわけ非沿岸国である日本がどのような形で北極海のガヴァナンスに関与すべきであるかについての政策提言を行うことを目的として、本年7月に「日本北極海会議」を立ち上げました。この日本北極海会議は、笹川陽平日本財団会長を特別顧問として招き、各界の北極海に関する12名の有識者から構成しています。7月8日に開催した第1回会議では、「国際法秩序、ガヴァナンス」をメインテーマとし、10月14日に開催した第2回会議では、「航路、造船」をメインテーマとして議論を行いました。
今般開催した国際シンポジウムでは、「北極海における資源開発」をメインテーマとしてロシアよりRRC Kurchatov Institute, Institute of Innovative EnergyのFirst Deputy DirectorであるKuznetsov氏、ノルウェーよりTschudi Shipping Company ASのChairman of BoardであるTschudi氏及びAkvaplan-nivaのManaging DirectorであるDahle氏及び独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構主席研究員の本村氏にご講演いただき、北極海における資源開発における各国のアプローチについて様々な側面から議論を行いました。さらに、国際シンポジウムに引き続き専門家会合を開催し、シンポジウムで議論された点について、講演者と日本北極海会議の委員の方々の間で活発な議論が行われました。
この日本北極海会議では、今後、科学や調査の問題、そして、安全保障問題などをメインテーマとして取り上げていく予定です。
講演概要
初めに、1883年創業のTschudi社の4代目の社長であるTschudi氏は、北極圏における資源開発・輸送において、気候変動、技術開発の恩恵及び価格上昇といった要素を受け、NSRが非常に興味深い新たな航路であることを海運会社の立場から講演されました。また、ノルウェーが、北極圏を石油及び金属資源が眠っている非常に重要な地域と捉えていることを様々なデータを用いて説明されました。

次に、本村氏から、ロシアの天然資源、特に天然ガスの埋蔵量及び開発状況について、様々なデータを使って講演が行われました。ロシアは、北極海最大の大陸棚を有し、天然ガス開発のポテンシャルがたいへん高く、輸送距離が短い等、日本にとって有益な点が多く、ロシアからの輸入は今後さらに増加していくであろうことが説明されました。

さらに、Kuznetsov氏から、北極海での原子力の利用について講演が行われました。北極海の海底資源開発の鍵は、海氷下での生産・輸送を可能にする革新技術であるとして、原子力船の開発について具体的な説明が行われました。

最後に、Dahle氏から、北極圏における気候変動、その生態系への影響及び人的インパクトの3点から北極圏の海洋生物多様性への影響及び環境保全の必要性ついて講演が行われました。今年、ノルウェーはロシアとの間で約40年間係争中であった海域画定問題が解決したことで、環境面における協力が増大していく見通しが説明されました。

パネルディスカッションでは、最初に、今後10年間に、北極海における天然資源のさらなる開発及び生産については、アジア市場や企業活動の活発化に伴い、その規模が拡大していくことが明らかであること、北極海における航海は徐々に増えてきており、ロシアが持つ新たなNSRのルールが北極海における航海の鍵となることが確認されました。一方で、インフラの整備や維持は依然として不透明なままであることが指摘されました。また、CO2等の排出制限は、北極海航路の利用及び原子力船の開発を促進すると見込まれることが確認されました。さらに、北極評議会(Arctic Council)は、北極海のガヴァナンスにおいてよく機能しているが、北極非沿岸国は地球規模の問題については対等に発言できるものであること、更なる国際協力は、今後数十年間における北極海のエコシステムの変化を予知していくために重要であることが確認されました。
開催概要
3.1 シンポジウム
日時: 平成22年12月14日(火)
講演及びパネルディスカッション 13:30~17:30
レセプション 17:45~19:00
場所:
 
日本財団ビル2階会議室 東京都港区赤坂1-2-2
メインテーマ「資源開発等」Development of Natural Resources in the Arctic
講演1:
 
「北極圏における資源開発・輸送に関するノルウェーの考え」
"Norway's View on Development of Natural Resources in Arctic Reality and perspective of the Arctic Shipping"
Mr. Felix Tschudi    Chairman of the Board    Tschudi Shipping Company AS
講演2: 「北極圏資源開発における日本のアプローチ」
"Japan's Approach to the Oil and Gas Development of the Arctic Region"
本村真澄 主席研究員 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構
講演3: 「ロシアの北極圏大陸棚における石油・ガス生産/輸送のための原子力の将来」
"Nuclear Energy Prospects for Submarine/Sub-Ice Oil & Gas Production on the Russian Arctic Shelf"
Dr. Viacheslav Kuznetsov
First Deputy Director    Institute of Innovative Energy, RRC Kurchatov Institute
 
講演4: 北極の環境変化と北極圏の生物資源を含む海洋生物多様性
"Changes in the Arctic Environment and Arctic Marine Biodiversities including Arctic Living Resources"
Mr. Salve Dahle    Managing Director    Akvaplan-niva
3.2 専門家会議
日時: 平成22年12月15日(水) 10:30~12:30
場所: 東京都港区虎ノ門1-15-16 海洋政策研究財団 10階会議室
主催: 海洋政策研究財団
プログラム
10:30
 
開会
シンポジウムで取り上げられた問題についての追加協議
(1)Dumaで検討された新たなNSRルール
(2)北極海問題における非沿岸国の役割:観測、衛星での観測、インフラへの支援等
海洋政策研究財団へのロシア及びノルウェーからのコメント
(1)海洋観測砕氷船の設計及び建造についての海洋政策研究財団の計画
(2)特に北極海に関連する科学及び技術についての2カ国及び多数国間の協力の可能性
12:30 閉会
お問い合わせ先
海洋政策研究財団 海技グループ長 池田陽彦
政策研究グループ研究員 小牧加奈絵
〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-15-16 海洋船舶ビル
TEL:03 (3502) 1949 池田 03 (3502) 1853 小牧
FAX:03 (3502) 2033

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