は じ め にグローバル化した現代においては、いかなる産業も激しい国際競争の中で活動を行っているところであるが、海運、造船、港湾、海洋開発等の海事産業についても、同様に激しい国際競争に晒されていることは言うまでもない。我が国は、平成19年に海洋基本法を制定し、新たな海洋立国の実現を目指すこととしているが、これを達成するためにも、海事産業の基盤はより強固なものとなることが求められる。激しい国際競争が繰り広げられている中、我が国海事産業の基盤を確たるものとするには、産業界のみでなく、学界や官界も含めた総体として、我が国の国際海事社会における基盤強化を図っていかなければならない。当財団では、平成19 年度及び20 年度に、世界における海事産業の変革ビジョンに関する調査研究事業を実施し、2050 年における世界の海上荷動き量等の試算を行うとともに、海事産業が今後どのような取り組みを行っていくべきかを検討し、平成21年度前半に、海事産業に向けた提言をとりまとめた。この提言は我が国の海事産業の今後の取り組みについて大まかな方向性を示したものであるが、国際競争力の強化の観点からは、アジア市場の取り込み、高度な技術力を活かした地球温暖化問題への対応、アジアにおけるマリタイムセンター化などの必要性を説いた。本調査研究では、我が国と世界の主要海事国の海事産業の力をデータに基づき客観的に評価することを試みた。さらに、同評価を踏まえて、激しい国際競争に晒されている我が国海事産業の基盤を強化するために必要となる取り組みについてとりまとめた。本調査研究の結果が、我が国の海事産業のより一層の発展に役立てば幸いである。最後に、調査研究委員会の委員長として熱心、かつ、適切なご指導を賜った大和裕幸東京大学大学院新領域創成科学研究科長をはじめとする委員各位及び関係者の皆様に深くお礼申し上げる。平成22年3月海 洋 政 策 研 究 財 団会 長 秋 山 昌 廣海事産業の国際競争力強化に関する調査研究委員会委員名簿(順不同、敬称略)委員長大和裕幸 東京大学大学院新領域創成科学研究科長委員太田和博 専修大学商学部教授工藤栄介 海洋政策研究財団特別顧問黒川久幸 東京海洋大学海洋工学部准教授篠原正人 東海大学海洋学部教授中部隆 造船経営有識者山本勝 海洋開発有識者関係者関根博 (株)日本海洋科学常務取締役青山憲之 (株)日本海洋科学コンサルタントグループ研究員栗原朝子 (株)日本海洋科学コンサルタントグループ事務局石原彰 海洋政策研究財団海技研究グループ長兼主任研究員三木憲次郎 海洋政策研究財団海技研究グループ長森勝美 海洋政策研究財団海技研究グループ長代理華山伸一 海洋政策研究財団海技研究グループ主任研究員目 次1.調査研究の目的······················································································· 12.調査研究の方法······················································································· 12.1 海事力に関する調査分析···································································· 12.1.1 調査分析の方法········································································· 12.1.2 調査分析の対象国······································································ 22.1.3 調査分析の分野········································································· 22.2 我が国の国際海事社会における基盤強化に向けた要検討事項に関する検討······························ 23.海事力に関する調査分析結果····································································· 33.1 海運······························································································· 33.2 造船······························································································· 43.3 港湾······························································································· 53.4 海洋開発························································································· 63.5 国際交渉························································································· 74.我が国の国際海事社会における基盤強化に向けた要検討事項··························· 84.1 我が国海事産業の発展のために必要な取り組み······································ 84.1.1 我が国海事産業の特徴································································ 84.1.1.1 海運産業············································································· 84.1.1.2 造船産業············································································· 84.1.1.3 港湾産業············································································· 84.1.1.4 海洋開発産業······································································· 84.1.2 我が国海事産業の基盤強化のための方向性····································· 84.1.2.1 海運産業············································································· 94.1.2.2 造船産業············································································· 94.1.2.3 港湾産業············································································· 94.1.2.4 海洋開発産業······································································· 104.1.3 行うべき取り組み······································································ 104.1.3.1 「知識集約型ビジネスモデル」の展開····································· 104.1.3.2 アジアにおける連携の強化····················································· 104.2 我が国の国際海事社会における基盤強化のための取り組みの具体化に向けて·················· 114.2.1 関連情報·················································································· 114.2.1.1 日本における主な海事関係団体··············································· 114.2.1.2 日本における戦略会議の例····················································· 124.2.1.3 日本に所在する国際機関························································ 154.2.1.4 日本が関係する海事に関する国際連携の例······························· 164.2.2 具体化に向けた取り組み····························································· 174.2.2.1 「知識集約型ビジネスモデル促進メカニズム」の構築················ 174.2.2.2 「アジア連携メカニズム」の構築··········································· 18おわりに····································································································· 19附録1 海事力に関する調査分析結果附録2 関連情報(1) 日本の主な海事関係団体(2) 日本における戦略会議の例(3) 日本に所在する国際機関(4) 日本が関係する海事に関する国際連携の例(5) 欧州における研究開発1.調査研究の目的我が国海事産業は、これまで日本の経済発展を支えてきている重要な産業である。また、我が国海事産業自体も、日本経済の成長に支えられてその産業基盤を確立してきた。すなわち、我が国海運業は、日本経済が必要とする国際海上貿易の大部分を担うことで大きく発展してきたし、また、我が国造船業は、この我が国海運業を支えるべく良質な船舶の大量供給を行うことで大きく発展してきた。港湾関連産業の発展についても、日本経済が必要とする膨大な量の国際海上貿易の存在があったからこそである。しかしながら、昨今のグローバル化の進展、新興国の台頭等世界が大きく変化してきている状況を考えると、これまでの延長上では、我が国海事産業の維持・発展を確保することは困難になってきている。我が国海事産業は、日本市場への大きな依存から、世界市場へのより一層の進出が必要になってくるものと思われる。平成19年には海洋基本法が制定され、「新たな海洋立国を実現することが重要」と謳っており、この観点からも、我が国海事産業は健全な発展を遂げなければならず、世界の変化を踏まえた、今後の海事産業のあり方が検討されなければならない。また、世界的にも群を抜く規模及び質で海事産業が発展を遂げてきた結果、現在、我が国には膨大な量の海事に関する知識、経験等の蓄積がある。これを維持し、次世代に引き継いでいくことも、我が国海事関係者の重要な使命である。以上の状況を踏まえ、本調査研究では、我が国海事産業がより発展していくためには何を行うべきかについて大まかな方向性を整理することを目的とした。2.調査研究の方法当財団内に、「海事産業の国際競争力強化に関する調査研究委員会」(委員長:大和裕幸東京大学大学院新領域創成科学研究科長)を設置し、以下の検討を行った。2.1 海事力に関する調査分析日本と世界の主要海事国の海事産業の力(「海事力」)をデータに基づき評価し、我が国海事産業の「強み」と「弱み」を分析した。調査分析の手法は以下のとおり。2.1.1 調査分析の方法既存の各種統計資料等からデータを抽出し、多岐にわたる視点から定量的に分析した。また、定量的な分析がなじまない事項については、事例研究的に分析を行った。- 1 -2.1.2 調査分析の対象国日本、アジア(中国、韓国、シンガポール)、ヨーロッパ(イギリス、ノルウェー、ドイツ、デンマーク)の8 ヶ国。なお、調査の項目によっては、必要に応じ、他の国を調査対象国に加えた。2.1.3 調査分析の分野海運(外航海運)、造船(含む舶用工業)、港湾、海洋開発の4分野及び共通関連項目。2.2 我が国の国際海事社会における基盤強化に向けた要検討事項に関する検討上記の「海事力に関する調査分析」の結果を踏まえ、「我が国海事社会の特徴」を捉えた上で、「我が国海事産業の基盤強化のための方向性」を設定し、その方向性をとっていくために必要なことを「行うべき取り組み」としてまとめた。また、この「行うべき取り組み」の具体化の例を、最後に掲載した。- 2 -3.海事力に関する調査分析結果3.1 海運図1 には、海運に係る調査結果を示す。ここでは、各調査項目が最大であった国の値を100 とし、その他の国ついてはそれに対する割合を示した。付加価値及びオペレータ数から見てとれるように、海運業の規模は日本が圧倒的に大きい。日本海運は伝統的に国内マーケットに依存してきたものの、今後も国内経済の緩やかな成長と日本企業の海外における製造拠点の増加に伴う3 国間輸送の増加を背景に、海運業における日本の規模は今後も維持、または増大傾向にあるものと思料される。一方で、船籍に示される税制や適用ルール等及び船員ソースといった海運業のインフラについては、現状での早急な改善は不可能な状況にあり、海外調達にて対応している。海運業は労働集約型業種(邦船社1 社の船員数は2 万人を超える)でありながら、他の国内業種と比しても、唯一その労働力を国外マーケットに求めることが可能という特殊な事情にある。これにより、産業インフラの脆弱性が希薄化されている。また、船籍(それに関わる要員を含む)についてもそれを国外に求めることができるという、特殊な形態である。これは、国内のマーケットに一定規模支えられているというメリットがある一方で、その業務は常にグローバルなマーケットにある中で、コスト競争力が大きな評価基準とされる。この場合、長期経済活動の中では、コスト依存による業務の継続は常に不安定な要素となり得る。020406080100JPNCHNKORSINUKGERNORDEN船籍オペレータ船員付加価値※各項目の最大を100とし、それに対する割合を表示図1 海運の競争力に係る対象項目間比較- 3 -3.2 造船図2 には、造船に係る調査結果を示す。ここでは、各調査項目が最大であった国の値を100 とし、その他の国ついてはそれに対する割合を示した。現状、世界商船隊の造船実績では、我が国が圧倒的な地位を占めており、造船・舶用機器に関する特許出願数や国際論文数等についても世界的水準にある。一方で、近年は韓国及び中国が造船業へ積極的に参画してきたことにより、我が国の建造量は2007 年頃から両国の後塵を拝している。これは、建造量という点で、従来の造船業の宿命とも言える労働集約型ビジネスモデルについていけなくなったことに起因する。特に、本邦では少子化や職業選択の多様性等から労働人口の減少が急速に進んだことにより、建造コストに大きく関係する労働コストが競争力を失った。また、ディーゼル機関については、世界の80%をMan B&W(デンマーク)が占めていることが示すように、我が国の造船所は船舶の心臓部を外国ライセンスに依存している。さらには、高付加価値(高船価)と言われる海洋開発関連の船舶・構造物では、韓国・中国・シンガポールといったアジア諸国に、またそれに係る機器の研究開発ではイギリス・ドイツ・ノルウェーといったヨーロッパ諸国に後れをとっている。020406080100JPNCHNKORSINUKGERNORDEN新造(2000~2009) 造船特許舶用機器特許人材付加価値論文※各項目の最大を100とし、それに対する割合を表示図2 造船の競争力に係る対象項目間比較(2000~2009年)- 4 -3.3 港湾図3 には、港湾に係る調査結果を示す。ここでは、各調査項目が最大であった国の値を100 とし、その他の国ついてはそれに対する割合を示した。我が国の整備された港湾の数とその延長については、過去に神戸等の主要港湾が世界の海上物流で高い地位を占めていた頃の名残であり、現在ではそれらが生かされているとは言い難い。これは2008 年現在、国内最多のコンテナ貨物取扱港である東京が、世界では24 位に甘んじていることからも明白である。現状では、1 バースあたりのコンテナ取扱個数ではシンガポールが、国際論文数の点ではイギリスが高い地位を占めるものの、総合的には中国の存在が圧倒的に大きい。これは、世界の生産工場として、アジアの中でも中国が突出していることに起因する。なお、港湾の利便性に関して、我が国の場合、荷役作業の24時間化が一部の港湾に留まっていること、ゲート通過時間帯が限定されていることなど、シンガポール港との相違に留意する必要がある。020406080100JPNCHNKORSINUKGERNORDENバース数バース長取扱個数バース辺り取扱個数論文※各項目の最大を100とし、それに対する割合を表示図3 港湾の競争力に係る対象項目間比較- 5 -3.4 海洋開発図4 には、海洋開発に係る調査結果を示した。ここでは、各調査項目が最大であった国の値を100とし、その他の国ついてはそれに対する割合を示した。ドリルシップを含む海洋・海上構造物といった高付加価の製品について、特にFSO/FPSOの建造については、我が国は多くの実績を有している。しかし、これらの大半は20年以上前に建造されたものがほとんどであり、近年は中国・韓国・シンガポールといったアジア諸国にその生産拠点が移行している。この点については、造船と同様に労働コストに係る問題の存在が考えられる。一方で海洋開発に係る国際論文数では非常に実績が高く、研究は盛んであることが伺える。これはJAMSTEC の大きな予算と多くの研究者によっても示されており、国家としての積極的な取り組みの表れであると言える。しかし、深海掘削船「ちきゅう」のデータが示すとおり、世界トップレベルの掘削に係る技術及び機器については、その大半をアメリカとノルウェーに頼っているのが現状である。両国はこれまでに培った海底油田開発でのノウハウを製品にまで昇華させることにより、業界でも大きなシェアを占めている。020406080100JPNCHNKORSINUKGERNORDENRig Buld. FSO/FPSO Buld. Drill Buld. 論文Rig Ope. FSO/FPSO Ope. Dril Ope.※各項目の最大を100とし、それに対する割合を表示図4 リグ・FPSO・ドリルシップの建造及びオペレータ国(論文以外は2000~2009年のデータ)- 6 -3.5 国際交渉図5 には、国際交渉に関し、国際海事機関(IMO)での議案提案数の分析に係る調査結果を示す。ここでは、各調査項目が最大であった国の値を100 とし、その他の国ついてはそれに対する割合を示した。IMO における議案の提案数は、日本とヨーロッパ諸国の割合が高く、本邦からも多くの議題が提案されている。特に我が国からの提案については、MSC 及びMEPC の両委員会並びにFP、DE 等の小委員会への技術的な事項については活躍が目立つが、他の分野に関しては提案数が比較的少ない。さらにMSC 及びMEPC の両委員会における作業計画の提案については、我が国を含むアジア諸国に比べ、ヨーロッパ諸国の提案が圧倒的に多い。さらに、IMO 関連のNGO 団体の所在地については、イギリスを中心としたヨーロッパ諸国に置くところが圧倒的に多い。これらは、世界の海事社会の政策・情報の発信地が、未だ伝統的な海運国を要するヨーロッパを中心として形成されていることを示すものである。020406080100JPNCHNKORSINUKGERNORDENIMO総会IMO委員会IMO WP IMO小委員会※各項目の最大を100とし、それに対する割合を表示※WPとは「作業計画」を示す。図5 国際交渉(IMOでの議案提案数)の競争力に係る対象項目間比較- 7 -4.我が国の国際海事社会における基盤強化に向けた要検討事項4.1 我が国海事産業の発展のために必要な取り組み4.1.1 我が国海事産業の特徴上記3.の「海事力に関する調査分析結果」でも示したとおり、我が国海事産業の特徴は以下のとおりといえる。4.1.1.1 海運産業世界的にも高水準の付加価値率を有しているが、国際海上輸送に関する日本経済の大規模な需要が存在していること、付加価値には人件費が含まれていることに留意する必要がある。また、労働力である船員については、海外の労働市場マーケットに大きく依存している。4.1.1.2 造船産業世界的な水準の船舶建造能力及び付加価値率を有しているが、日本の海運産業による新造船需要が世界的に見て高水準で存在していること、付加価値には人件費が含まれていることに留意する必要がある。しかしながら、かつてLNG船の建造についてみられたような、世界のマーケットを席捲する高付加価値商品は現在見られない。4.1.1.3 港湾産業経済大国である日本市場が有する大規模な海上貿易需要を背景に港湾の規模が拡大してきた。しかしながら、港湾設備は全国に分散しており、特にコンテナ取扱量については、中国、シンガポール等の世界的に高水準のコンテナ取扱量を有するものとの差は極めて著しい。。4.1.1.4 海洋開発産業海洋観測や調査に関して世界的に高い水準を有する。一方、海洋資源開発については、我が国周辺海域で海底油田等の開発案件があまりなかったことから、具体的な取り組み事例に乏しく、これに関する技術開発もあまり旺盛ではない。4.1.2 我が国海事産業の基盤強化のための方向性我が国は、海洋基本法において「新たな海洋立国を実現することが重要」と謳っているが、我が国海洋産業の中核である海事産業が社会的にも経済的にも重要な産業であることが、「新たな海洋立国を実現」のため必要不可欠であると考える。このため、我が国海事産- 8 -業の産業基盤をより強固なものとすることが求められるが、上記4.1.1 に掲げた我が国海事産業の特徴を踏まえると、分野ごとに、以下の方向性の取り組みが必要であろうと考えられる。なお、世界経済のグローバル化に伴い、海事産業の事業活動についてより一層の国際化(マーケット、活動拠点等の国際化)が必要になってくると考えられる。4.1.2.1 海運産業現在の事業展開を維持していくため、船員の安定的な確保及び質の向上が必要であり、現在我が国商船隊に乗船している船員の主たる供給国であるアジア諸国等との関係を良好に保つとともに、これら諸国における質の高い船員の育成に関する貢献を行っていくべきである。また、従来からの「海上運送業」であるビジネスモデルに加え、海洋開発等新たな知見及び技術が必要であり、かつ、国内の海事クラスターあるいは先端技術クラスターの協力が得られ、さらに、他の諸国が容易に参入できない分野への展開、すなわち、知識集約型ビジネスモデルの展開を図るべきである。4.1.2.2 造船産業従来からの高効率生産システムを開発しながらの貨物船建造に加え、海洋開発等新たな知見及び技術が必要であり、かつ、国内の海事クラスターあるいは先端技術クラスターの協力が得られ、さらに、他の諸国が容易に参入できない分野への展開、すなわち、知識集約型ビジネスモデルの展開を図るべきである。また、貨物船の建造においても、企画、設計等は我が国において実施し、生産活動の一部はアジア等の海外において実施するなど、知識集約型の生産体制の構築を目指すべきである。さらに、船舶の安全・環境規則に関する国際交渉においては、アジアの造船国と立場を同じくすることも多い。このため、アジア諸国との連携の構築を目指すべきである。4.1.2.3 港湾産業より一層のコスト競争力の強化、利便性の向上を図っていくべきである。コンテナ取り扱いについては特にアジア諸港でターミナルの巨大化が進んでいる。それはアジア諸国の経済発展が本来の機動力を取り戻したからに他ならない。それをわが国の海上荷動きの相対的シェア低下と捉えるか、それともアジアを中心とした物流について新たな好機の到来と捉えるか、港湾関係者の創意工夫によるところが大である。また、港湾のオペレーションについては、国内港湾を中心にした実績により、相当のノウハウが蓄積されていると考えられるところ、この港湾オペレーションのノウハウを活用しての海外進出も視野に入れた知識集約型ビジネスモデルの展開を図るべきである。- 9 -4.1.2.4 海洋開発産業海洋観測や調査に関しては世界最高水準を維持するためより一層の充実を図るべきである。一方、海洋エネルギー・資源開発に関しては、我が国排他的経済水域内の海洋エネルギーや海洋資源の開発について、商業プロジェクトにつながる具体的なテーマを設定し、海運産業及び造船産業を含めた海事クラスター及び先端技術クラスターが結集して、国民的合意のもと、官民共同のプロジェクトを推進すべきである(海洋開発への取り組みは、海運産業及び造船産業にとって、「知識集約型ビジネスモデル」の展開を図る格好のテーマであるといえる。)。4.1.3 行うべき取り組み上記4.1.2の「我が国海事産業の基盤強化のための方向性」を具体化するため、以下の取り組みが必要であると考えられる。また、海事産業の事業活動のより一層の国際化についても、各事業者において指向されるべきと考えられる。4.1.3.1 「知識集約型ビジネスモデル」の展開我が国海事産業は、従来からの事業に加え、「知識集約型ビジネスモデル」の展開に積極的に取り組むべきであり、この取り組みを促進するためのメカニズム(「知識集約型ビジネスモデル促進メカニズム」)を構築すべきである。「知識集約型ビジネスモデル促進メカニズム」の構築にあたっては、海事関係者による合意形成はもちろんのこと、日本経済への海事産業の貢献等我が国における海事産業の重要性に関する国民的合意形成を図りつつ、情報収集、テーマ(海洋開発等)選定、技術開発への取り組み方策、資金・人材の調達等に係る枠組み等の戦略を策定すべきである。特に人材に関しては、海事産業に関する知識・経験を有する人材の育成、単一の分野のみでなくシステム構築やプロジェクト企画・実施等の必要となる複合的な視点を有する人材の育成、他分野における優秀な人材の活用等を適切に行っていくことが重要である。4.1.3.2 アジアにおける連携の強化海運、造船とも今後のビジネス展開はアジアとの連携がより重要であり、また、船舶の安全・環境規則に関する国際交渉においては、アジアの造船国と立場を同じくすることも多く、このため、アジア諸国との連携の強化が重要である。また、「知識集約型ビジネスモデル」の展開を図るに際しても、アジアの情報、人材等の有効活用を視野に入れるべきである。このため、アジアとの連携を強化するためのメカニズム(「アジア連携メカニズム」)を構築すべきである。この「アジア連携メカニズム」の構築にあたっては、「我が国な- 10 -らではの国際貢献を発揮」することが重要であるが、我が国は、アジアで海事に関する最も豊富な経験を有する国として、これまで蓄積してきたノウハウを基にした、調査、研究、国際交渉、人材育成等の国際貢献を行うことが望ましいと考えられる。4.2 我が国の国際海事社会における基盤強化に向けた取り組みの具体化に向けて4.2.1 関連情報「知識集約型ビジネスモデル促進メカニズム」及び「アジア連携メカニズム」の構築の具体化を考えるにあたり、産業の戦略検討に関連する情報として、「日本における主な海事関係団体」及び「日本における戦略会議の例」、また、国際連携の観点から、「我が国に所在する国際機関」及び「我が国が関係している海事に関する国際連携の例」についてまとめた。4.2.1.1 日本における主な海事関係団体(附録2関連情報(1)参照)我が国には、極めて多数の海事関係団体が存在するが、主なものについて、業種別及び形態別で分類すると以下のとおりである。後述する戦略会議を常設で設置しているのは、これらのうち、(財)日本海事センター及び(財)日本船舶技術研究協会であり、いずれも財団法人である。① 業種別 海運(財)日本海事センター(社)日本船主協会(社)日本旅客船協会(社)日本外航客船協会日本内航海運組合総連合会 造船(財)シップ・アンド・オーシャン財団(海洋政策研究財団)(財)日本船舶技術研究協会(社)日本造船工業会(社)日本中小型造船工業会(社)日本舶用工業会 港湾(社)日本港湾協会(社)日本港運協会 海洋開発(社)海洋産業研究会- 11 -② 形態別 財団法人(財)日本海事センター(財)シップ・アンド・オーシャン財団(海洋政策研究財団)(財)日本船舶技術研究協会 社団法人(社)日本船主協会(社)日本旅客船協会(社)日本外航客船協会(社)日本造船工業会(社)日本中小型造船工業会(社)日本舶用工業会(社)日本港湾協会(社)日本港運協会(社)海洋産業研究会 その他日本内航海運組合総連合会4.2.1.2 日本における戦略会議の例(附録2関連情報(2)参照)日本における戦略会議の例をいくつか挙げたが、これらのうち常設のものは、海運問題研究会、船舶技術戦略委員会及び海洋技術フォーラムである。海運問題研究会及び船舶技術戦略委員会は、それぞれ、(財)日本海事センター及び(財)日本船舶技術研究協会の事業の指針を検討する場である。また、これらの戦略会議のメンバーは、いずれも海事関係者で構成されている。- 12 -表1 日本における戦略会議の例名称 目的 メンバー構成 常設orアドホック海運問題研究会(㈶日本海事センター)日本海事センターの調査研究及び政策提言等の事業を適切、且つ効果的に実施するための意見調整の場とし、事業の基本方針、総合戦略について審議するこことを目的とする。委員長(成蹊大学)委員10名海運業界:3名学会・大学:6名国土交通省:1名常設(年1回開催)船舶技術戦略委員会(㈶日本船舶技術研究協会)船舶技術及び船舶に関する基準・標準規格に関する試験研究及び調査と、その結果の普及を総合的・戦略的に実施するにあたり、海事分野における研究開発、国際基準、企画等に関する内外の技術及び政策動向を把握し、有識者からなる委員会を設け、これら事業の指針となる事項の審議を行う。委員長(海上技術安全研究所)委員12名海運業界:3名造船業界:4名舶用工業界:1名学会・大学:2名船級・協会:1名国土交通省:1名常設(第1 回委員会(2005年8月2日)後の開催は未定)海洋技術フォーラム産学官、省庁横断的な取り組みの下、我が国の海洋活動の強化を図る。代表(東京大学)世話人20名造船業界:1名学会・大学:9名研究所:5名船級・協会:5名常設(最近は2009年12月2日にシンポジウムを開催)国土交通省成長戦略会議人口が減少に転じ、急速に少子高齢化が進展する我が国において、将来に亘って持続可能な国づくりを進めるため、自国の人材・技術力・観光資源等の優れたリソースを有効に活用し、国際競争力を向上させるための成長戦略を確立する。座長(武田薬品工業㈱)委員12名学会・大学:3名その他:9名アドホック(2009年10月から2010 年6 月2010年2月現在計8回の会議を開催)- 13 -産業構造の将来像~新しい時代を「つくる」戦略~(㈳日本経済団体連合会)将来不安の払拭、閉塞感の打破、雇用・生活水準に直結する国際競争強化に向け、5~10 年後の産業の将来像を考察し、中長期的に産業競争力を強化することにより、雇用・生活を維持していく施策を提言。不明 アドホック(2010 年1月※約20 年ぶりの提言)<本会議>座長(一橋大学)委員10名海運業界:1名造船業界:3名舶用工業界:1名学会・大学:3名研究所:1名その他:1名造船産業競争戦略会議(国土交通省海事局)日本の造船産業(造船業及び舶用工業)が将来も世界の造船・海運の中心に位置するための戦略を策定する。<舶用工業分科会>座長(東京大学)委員7名造船業界:1名舶用工業界:3名学会・大学:2名研究所:1名アドホック(2002 年6 月~2003 年6 月(本会議7回、舶用工業分科会5 回))「我が国造船・舶用工業の今後の方針」について-21世紀における新たなるチャレンジ-(国土交通省海事局)造船業・舶用工業を取り巻く環境変化を踏まえ、世界をリードする海事・環境技術の創出と、将来にわたり我が国造船業・舶用工業が存立し得る産業基盤の整備を戦略的に推進する。不明 アドホック(2009年5 月27 日にプレス発表)- 14 -4.2.1.3 日本に所在する国際機関(附録2関連情報(3)参照)外務省の公開情報では、日本にはおよそ40 の国際機関が所在する。このうち33 が国連関係機関であり、8が非国連関係機関である。これらの国際機関を分野別に見ると下表のとおりである。開発、金融、環境、防災、エネルギー等が日本ならではの国際機関の立地であると考えられる。また、外務省の情報には含まれていないが、日本には以下の海事関係国際機関がある。① 東京MOU事務局(Tokyo MOU Secretariat) アジア太平洋地域におけるPSC に関する国際協力の推進 1994 年3 月設立 28 の国、機関等がメンバー 港区新橋(4名)② 国際港湾協会(IAPH: International Association of Ports and Harbors) 世界の港湾の発展と港湾関係者の交流 1955 年設立 およそ350の港湾管理者、政府、公共団体、協会、企業、大学等が会員 港区海岸(8名)③ 国際海事大学連合事務局(IAMU: International Association of MaritimeUniversities) 世界の海事大学のネットワーク構築及び人材育成 1999 年4 月設立 50 の海事教育機関及び特別会員(日本財団) 港区虎ノ門(3名)表2 日本に所在する国際機関(外務省データをもとに作成)分野 国連 非国連 合計 分野 国連 非国連 合計開発 5 2 7 統計 1 0 1金融 4 3 7 司法 1 0 1人道 3 1 4 人口 1 0 1総合 1 2 3 都市計画 1 0 1農業 3 0 3 人材育成 1 0 1環境 2 0 2 ボランティア 1 0 1防災 2 0 2 観光 1 0 1大学 2 0 2 保健 1 0 1エネルギー 1 0 1 知財 1 0 1労働 1 0 1 合計 33 8 41- 15 -4.2.1.4 日本が関係する海事に関する国際連携の例(附録2関連情報(4)参照)海運業界、造船業界、船員育成及び海事行政のそれぞれについて、アジアを舞台とした国際連携の枠組が確立しているか、あるいは確立に向けた取り組みが行われている。これらのいずれについても、我が国がイニシアティブをとっている。表3 日本が関係する海事に関する国際連携の例名称 目的 メンバー構成 開催・立案の頻度AsianShipowners'Forum (ASF)(アジア地域の海運)アジア地域における船主間の相互信頼を一層密化させ、アジア海運の共存共栄を図る。アジア船主協会とFASA(アジア船主協会:インド、オーストラリア、韓国、台湾、中国、日本、香港)(FASA:インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ミャンマー)事務局はシンガポールに所在(現事務局長は日本人)少なくとも年1回(最近は2009年9 月にSNEC 委員会が開催)AsianShipbuildingExper's Forum(ASEF)(アジア地域の造船)国際規則の強化に対応するため、アジア地域の造船業界が船舶に係る国際規則や基準の動向を早い段階で察知し、意見交換を通じて共通の理解を得るとともに、そこで交わされた意見や対応策を国際的に発信し、造船産業全体の発展に繋げる。日本造船工業会(SAJ)、韓国造船工業会(KOSHIPA)、中国船舶工業行業会(CANSI)が主催㈶日本船舶技術研究協会(JSTRA)が事務局少なくとも年1回(最近は2009年12 月にCANSIとCSNAME(中国造船工程学会)が主催し、SAJとKOSHIPA がサポート、JSTRA が事務局)- 16 -アジア海事フォーラム(アジア地域の海事当局)アジア地域のIMO 理事国の海事政策実務担当者による意見交換。アジア地域のIMO 理事国(インド、インドネシア、韓国、シンガポール、タイ、中国、日本、バングラデシュ、フィリピン、マレーシア)年1回(2010 年が初回)アジア海事センター構想(アジア地域の船員養成)日本商船隊に乗り込む船員に対し、彼らの資質向上に向けた教育訓練を施すことにより、日本商船隊の安定輸送体制の確立に向け、官労使で取り組むことを目指す。全日本海員組合と中国、フィリピン、ベトナム各国の組合(ASEAN 諸国の充実に向け、更なる連携を推進中)継続的に推進4.2.2 具体化に向けた取り組み「『知識集約型ビジネスモデル促進メカニズム』の構築」及び「『アジア連携メカニズム』の構築」の具体化にあたっては、4.2.1 で示した関連情報を踏まえ、既存の枠組みとの重複を避けつつ、効果的かつ効率的な手段をとることが必要であるが、いくつかのイメージを以下に例として挙げる。4.2.2.1 「知識集約型ビジネスモデル促進メカニズム」の構築① 「日本海事戦略会議」(仮称)の設置海事関係者及び荷主を含む産業界からの参加のもと、海事に関する政策動向等を踏まえ、海事産業が取り組むべき方策について検討する「日本海事戦略会議」(仮称)を設置する。同会議における検討事項に、「知識集約型ビジネスモデル促進メカニズム」の構築に関する戦略策定を含むこととし、この戦略策定にあたっては、以下の事項が検討されるべきと考える。 知識集約型に必要な情報収集のあり方 海事クラスター及び先端技術クラスター等が共同して取り組むべき知識集約型ビジネスモデルのテーマ(海洋開発等)の例示と選定方法 「知識集約型ビジネスモデル」の展開に必要な海事産業の技術開発への取り組み方策 「知識集約型ビジネスモデル」の展開に必要な資金・人材の調達等に係る枠組み(附録2 関連情報(5)欧州における研究開発参照)- 17 -② 日本の海事産業を考えるフォーラムの開催我が国における海事産業の意義及び方向性について、広く国民的合意を形成するため、多数の国民参加によるフォーラムを開催する。4.2.2.2 「アジア連携メカニズム」の構築① 「国際海事センター」(仮称)の設置「我が国ならではの国際貢献を発揮する場」として新たな国際組織を構築することが考えられる。この新たな国際組織の機能としては以下のものが考えられる。 政策提言の策定・ルール策定等に関する国際海事社会への提言なお、提言につながる研究テーマ例は次のものが考えられる。 海事制度の枠組み(旗国主義問題等) 海事条約の確実な履行促進 国際航路の通航問題(北極海航路等) 海運と地球温暖化 海事に関するCSR クォリティシッピング 海事に関する技術開発 船員不足対応、等 海事情報の集積・情報の収集、分析、発信・アジアを中心とした情報ネットワーク 人的交流の促進・人材育成・国際会議、イベント開催② 既存の海事関係団体等のネットワーク化我が国には、海事関係団体が多数存在することから、新たな組織を設置するのでなく、既存の組織を効果的にネットワーク化することにより、「アジア連携メカニズム」を構築することも可能と考えられる。- 18 -お わ り に我が国の海事力について、データに基づき客観的に国際的な比較分析を行うという試みは、他にあまり例がないと思われる。とはいえ、我が国の海事力をつまびらかにするのは容易ではなく、使用したデータの種類、分析内容について、多くのご批判があろうと思われる。限られた資源及び時間の中で行った今回の比較分析でも、我が国海事産業の強みや弱みが多々浮き彫りになった。海運、造船は、世界的に見ても極めて高い水準の産業力を有している。海洋観測・調査についても然りである。港湾についても、国全体としては相当程度の港湾設備投資が行われてきている。一方、自国船員の割合、造船の付加価値の傾向、海洋資源開発への参画の状況等に関する他国との比較から、グローバルな労働力調達の安定化等のための国際連携の重要性とともに、より付加価値の高い事業への取り組みの必要性が浮かび上がってきた。このため、本調査研究では、我が国海事産業の基盤強化のためには、「『知識集約型ビジネスモデル』の展開を促進するためのメカニズムの構築」及び「アジアとの連携を強化するためのメカニズムの構築」が必要ではないかとの問題提起を行った。これをどのように具体化するかについては、本文中にいくつかの例を挙げているものの、さらなる検討が必要である。本調査研究の結果が将来の我が国海事産業のより一層の発展に少しでも役立つことを願う次第である。- 19 -附録1海事力に関する調査分析結果目 次1.海運················································································································ 11.1 海運の国際競争力······················································································· 11.1.1 船籍·································································································· 21.1.2 オペレータ所在地················································································ 31.1.3 船員数······························································································· 41.1.4 海運に係る付加価値············································································· 52.造船················································································································ 72.1 造船の国際競争力······················································································· 72.1.1 建造実績···························································································· 72.1.2 造船関連特許······················································································ 92.1.3 舶用機器関連特許················································································ 112.1.4 ディーゼル主機関(2-Stroke) ······························································ 132.1.5 タービン主機関··················································································· 132.1.6 国際論文誌への掲載論文数···································································· 142.1.7 造船・修繕に関わる人材······································································· 152.1.8 造船・修繕に係る付加価値···································································· 162.1.9 造船・修繕に係る研究開発投資······························································ 172.2 世界の現状································································································ 182.2.1 客船の建造実績··················································································· 183.港湾················································································································ 193.1 港湾の国際競争力······················································································· 193.1.1 コンテナバースの仕様·········································································· 193.1.2 国際論文誌への掲載論文数···································································· 203.2 世界の現状································································································ 213.2.1 主要コンテナ港湾················································································ 213.2.1 主要コンテナオペレーター···································································· 213.3 海外の事例································································································ 223.3.1 シンガポール港の現状·········································································· 223.3.2 港湾の利便性······················································································ 243.3.3 ITを活用したサービス········································································· 253.3.4 教育·································································································· 263.3.5 その他······························································································· 274.海洋開発·········································································································· 284.1 海洋開発の国際競争力················································································· 284.1.1 洋上リグ···························································································· 284.1.2 FSO/FPSO························································································· 294.1.3 ドリルシップ······················································································ 314.1.4 国際論文誌への掲載論文数···································································· 334.2 世界の現状································································································ 344.2.1 世界の海洋調査船················································································ 344.2.2 日本の調査船······················································································ 374.3 海外の事例································································································ 394.3.1 予算·································································································· 394.3.2 職員数······························································································· 405.共通関連項目···································································································· 425.1 船級の認証先····························································································· 425.2 P&I保険組合の加入先················································································· 435.3 IMO議案提案数························································································· 445.3.1 総会(Assembly)··············································································· 445.3.2 委員会(Committee)·········································································· 445.3.3 Work Programme················································································ 465.3.4 小委員会(Sub-Committee) ································································ 475.4 IMO理事国······························································································· 505.5 IMO関連NGOの本部所在地········································································ 516.調査結果のまとめ······························································································ 526.1 調査結果概要····························································································· 526.2 海運········································································································· 546.3 造船········································································································· 566.4 港湾········································································································· 596.5 海洋開発··································································································· 626.6 共通関連項目····························································································· 667.海事力に関する調査分析のバックデータ································································ 687.1 海運········································································································· 687.1.1 海運の国際競争力················································································ 687.2 造船········································································································· 717.2.1 造船の国際競争力················································································ 717.2.2 世界の現状························································································· 767.3 港湾········································································································· 777.3.1 港湾の国際競争力················································································ 777.3.2 世界の現状························································································· 787.4 海洋開発··································································································· 797.4.1 海洋開発の国際競争力·········································································· 797.4.2 世界の現状························································································· 827.4.3 海外の事例························································································· 837.5 共通関連項目····························································································· 847.5.1 IMO議案提案数·················································································· 847.6 参考資料(LRFの船種分類) ······································································· 877.6.1 LRFの船種分類·················································································· 877.6.2 IPCの分類························································································· 881 海運1.1 海運の国際競争力2009年11月現在、Lloyd’s Register - Fairplay(以下、LRFという)には2,000GT以上の船舶が34,906 隻(1950年以前に完工した32隻及び竣工時期が不明な1隻を除く)が登録されている。世界商船隊のGT階級別割合を図 1.1.1に、船種別割合を図 1.1.2にそれぞれ示す。なお、本調査においては、LRFに登録されたデータから参考資料に示す「Tanker」、「BulkCarrier」及び「Dry Cargo/Passenger」の3カテゴリーを対象とした25.3%16.8%44.0%10.9%1.4% 1.6%0.0%2,000~5,0005,001~10,00010,001~50,00050,001~100,000100,001~150,000150,001~200,000200,001~(World Shipping Encychlopedia, Lloyd’s Register - Fairplay, Nov. 2009)図 1.1.1 世界商船隊のGT階級別割合20.7%0.5%1.8%6.2%15.6%1.1% 3.4%14.4%2.5%22.6%6.2%4.9%BulkOreBulk (others)Crude Oil TankerChemical /Product TankerLPG/LNG TankerTanker (others)ContainerPCCGC(World Shipping Encychlopedia, Lloyd’s Register - Fairplay, Nov. 2009)図 1.1.2 世界商船隊の船種別割合- 1 -1.1.1 船籍調査対象国に籍を置く船舶隻数を図 1.1.3に示す。また、参考として、FOC国(32ヶ国)に籍を置く船舶隻数を表 1.1.1に、本調査対象国の主要第2船籍国に籍を置く船舶隻数を表1.1.2に示す。対象8ヶ国のみを船籍国とする船舶は、合計5,440隻あった。これに第2船籍国を含めると、合計9,526隻となる。ここで各国の第2船籍国は以下の国とした。 イギリス:Antigua & Barbuda, Isle of Man, Malta, Cayman Islands, Gibraltar ドイツ:German International Ship Register (GIS) ノルウェー:Norwegian International Register デンマーク:Danish International Register調査対象国のみでは中国が1,725隻と最多であるのに対して、第2船籍を含む全体ではイギリスが3,876隻と最多になる。地域別では、アジア4ヶ国が4,317隻であり、ヨーロッパ4ヶ国は調査対象国のみで1,123隻、第2船籍国を含むと5,209隻となる。また、10,000GT 以上の船舶に限定した場合、対象国を船籍国とする船舶は3,051 隻である。そのうち、近年、税制優遇処置により登録隻数を増やしているシンガポールが950 隻と最多になった。198869271950367 36128 73718564004021799970 121,5233582101,8071246405001,0001,5002,0002,5003,0003,5004,000JPN CHN KOR SIN UK GER NOR DEN(隻)10,000GT以上10,000GT未満10,000GT以上(第2船籍) 10,000GT未満(第2船籍)(World Shipping Encychlopedia, Lloyd’s Register – Fairplay, Nov. 2009)図 1.1.3 商船

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