平成11年度船舶から発生するCO2の抑制に関する調査研究報告書平成12年3月財団法人シップ・アンド・オーシャン財団はじ め に本報告は、競艇公益資金による日本財団の平成11 年度補助事業として実施した「船舶から発生するCO2 の抑制に関する調査研究」の成果をとりまとめたものであります。1997 年12 月に開催されました地球温暖化防止京都会議(COP3)以降、気候変動枠組条約(UNFCCC; United Nation Framework Convention on Climate Change)の締結国会議において、外航船舶からのCO2 など地球温暖化ガスの排出量の実態把握とその対策が、国際海事機関(IMO)に求められております。これを受けて、IMOでは本年度より海洋環境保護委員会(MEPC)において本格的な地球温暖化ガスの調査検討を始めております。そこで、本事業ではこれらの動向を踏まえ、外航船舶の規模別、船種別のCO2発生量を調査するとともに、外航船舶単体における機関の熱効率や船体の推進効率の向上といったハード面と、外航海運の運航速度やウェザー・ルーティング(気象・海象に対応する最適航路の選定法)といったソフト面の両方から、将来的なCO2 削減対策を調査いたしました。この調査は、芝浦工業大学 平田 賢 教授を委員長とする「船舶から発生するCO2 の抑制に関する調査研究委員会」各委員の熱心なご審議とご指導、運輸省のご支援、並びに関係各位の多大なるご協力により実施されたものであり、ここに厚くお礼申し上げる次第であります。本報告書が広く皆様に活用され、地球温暖化物質排出量の削減に役立てていただき、地球環境保全に貢献できることを期待いたしております。平成12年3月財団法人 シップ・アンド・オーシャン財団会 長 今 市 憲 作船舶から発生するCO2 の抑制に関する調査研究委員会委 員 名 簿(順不同、敬称略)委員長 平田 賢 芝浦工業大学 システム工学部 機械制御システム学科 教授委 員 加藤 洋治 東洋大学 工学部 機械工学科 教授委 員 今津 隼馬 東京商船大学 情報システム設計工学講座 教授委 員 西川 栄一 神戸商船大学 商船学部 機関システム工学講座 教授委 員 佐倉 統 横浜国立大学 経営学部 人間行動科学研究室 助教授委 員 波江 貞弘 運輸省 船舶技術研究所 機関動力部 部長委 員 勝原 光治郎 運輸省 船舶技術研究所 システム技術部 システム解析研究室 室長委 員 岡 實 (財)日本海事協会 常務理事委 員 羽田 知所 (社)日本船主協会 新造船幹事会 幹事長(株)商船三井 技術部 技術部長オブザーバ越智 秀信 運輸省 運輸政策局 環境・海洋課 海洋室長〃 渡田 滋彦 運輸省 運輸政策局 環境・海洋課 海洋室 補佐官〃 麻岡 秀行 運輸省 運輸政策局 環境・海洋課 海洋室 専門官〃 門真 和人 運輸省 運輸政策局 環境・海洋課 海洋室 海洋第二係長〃 田淵 一浩 運輸省 海上技術安全局 舶用工業課 専門官〃 足利 雄一 運輸省 海上技術安全局 舶用工業課 計画係長〃 大嶋 孝友 運輸省 海上技術安全局 安全基準課 専門官〃 田中 誠 運輸省 海上交通局 外航課 第二国際係長〃 鈴木 敦士 運輸省 海上交通局 外航課 第二国際係関係者岸本 幸雄 日本エヌ・ユー・エス株式会社 環境事業統括本部 第二事業部環境リスク評価グループ リーダー〃 華山 伸一 同上 環境事業統括本部 第二事業部〃 山城 勇人 同上 環境事業統括本部 第二事業部事務局福井 義人 同上 業務部長〃 川井 啓裕 同上 海洋環境シンクタンク設置準備室 調査役〃 三木憲次郎 同上 業務部 調査課 課長〃 酒井 英次 同上 業務部 調査課 係員目次-1目 次1 調査の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11.1 調査の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11.2 調査の経過・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11.3 調査の内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21.3.1 船舶からのCO2 排出量に関する調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2(1) CO2 排出量算定方法についての調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2(2) アンケート調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2(3) 船種ごとおよび運航形態毎のCO2 排出量の算定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21.3.2 船舶単体の改善策に関する調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31.3.3 運航の改善策に関する調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31.3.4 対策の導入方法の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3(1) CO2 排出量低減オプションに関する検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3(2) CO2 排出量低減オプションの実施体制に関する検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31.4 調査結果の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41.4.1 船舶からのCO2 排出量に関する調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4(1) CO2 排出量算定方法についての調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4(2) アンケート調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4(3) 船種ごとおよび運航形態毎のCO2 排出量の算定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41.4.2 船舶単体の改善策に関する調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41.4.3 運航の改善策に関する調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51.4.4 対策の導入方法の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5(1) CO2 排出量低減オプションに関する検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5(2) CO2 排出量低減オプションの実施体制に関する検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5目次-22 調査の考え方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・63 調査の内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・73.1 船舶からのCO2 排出量に関する調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・73.1.1 CO2 排出量算定方法についての調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7(1) 燃料消費量などによるマクロなCO2 発生量・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7(2) CO2 排出量算定方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9(3) 船種船型ごとの運航量の推定方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・113.1.2 燃料消費率に関する調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22(1) タンカーにおける燃料消費量に関する調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22(2) コンテナ船の燃料消費量に関する調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27(3) 他の船種の燃料消費量に関する調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・283.1.3 船種ごとの燃料消費量に関する調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30(1) タンカーの燃料消費量・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30(2) コンテナ船の燃料消費量・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31(3) 他の船種の燃料消費量・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・313.2 船舶単体の改善策に関する調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・343.2.1 主機関熱効率の改善策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・343.2.2 船体側(船型および推進機)による改善策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・373.2.3 今後有効と考えられる燃料消費量削減技術・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・393.3 運航の改善策に関する調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・433.3.1 減速航行(SLOW STEAMING)に関する調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・433.3.2 ウェザールーティングに関する調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44(1) WRS の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44(2) WRS の利用状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45(3) WRS による航行日数の削減効果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45目次-3(4) 波浪予測の将来的な予報可能期間・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46(5) CO2 削減オプションとしてのWRS ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・483.4 対策の導入方法の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・493.4.1 CO2 排出量低減オプションに関する検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49(1) 運航量の将来予測・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49(2) 減速航行時の将来予測・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・533.4.2 CO2 排出量低減オプションの実施体制に関する検討・・・・・・・・・・・・・・・554 調査まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・574.1 調査結果の総括・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・574.1.1 燃料消費量の計算・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・574.1.2 船舶単体の改善策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・574.1.3 運航による改善策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・574.1.4 対策導入方法の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・584.1.5 CO2 排出量低減オプションの実施体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・594.2 問題点および今後の課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・59(1) 燃料消費量の計算・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・59(2) 船舶単体の改善策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・59(3) 運航による改善策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60(4) CO2 排出量低減オプションの実施体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60(5) 対策導入方法の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60(6) 他の温室効果ガス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・605 参考資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・615.1 船舶から発生する CO2 以外の温室効果ガスについて・・・・・・・・・・・・・・・・・615.2 日本国内における船舶CO2 発生量・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・62目次-45.3 WR が燃料消費量の削減に及ぼす効果について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・635.3.1 ウェザー・ルーティング・サービスの概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・63(1) ウェザー・ルーティング・サービスの変遷・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・63(2) ウェザー・ルーティング・サービスの実際・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・64(3) ウェザー・ルーティングに利用する資料について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・70(4) 推薦航路の選定とこれに関するコンピューター・プログラム・・・・・・・・・・・・・・・・・73(5) ウェザー・ルーティング・サービスの利用状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・815.3.2 波浪予報の現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・83(1) 波浪予測業務の変遷・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・83(2) データの収集・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・85(3) 現在の波浪解析・予想システムの概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・86(4) 数値波浪モデルの精度の推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・90(5) 数値波浪モデルの改良と次世代モデルの開発・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・925.3.3 ウェザー・ルーティングの効果の推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・94(1) ウェザー・ルーティングの結果の評価手法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・94(2) ウェザー・ルーティング・サービスの効果の推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9411 調査の概要1.1 調査の目的IMO(国際海事機関)は、地球環境問題に関心を持ち続けており、大気汚染物質についてもNOx、SOx、フロン・ハロンなどについて、MARPOL 73/78の新附属書の作成により迅速な対応を取ってきたことは記憶に新しいところである。同時に、同附属書の中でもCO2などの地球温暖化ガスの増加を極力招かないように留意するなど、地球環境に対する配慮を強めている。一方、京都で開催されたCOP3以降、気候変動枠組条約(UNFCCC; United NationFramework Convention on Climate Change)の締結国会議席上においては、外航船からのCO2排出量の実態把握とその対策がIMOに求められている。同枠組み条約内では、外航船からのCO2排出量は、各締結国および非締結国の国別排出量にカウントされていない。そのため、バンカーオイル使用分に関する排出削減量の割り当てはもちろん、現状把握も充分に行われていない状況にある。このため、UNFCCCはIMOに対し、世界レベルでの外航運航に起因する地球温暖化ガス排出量の把握および対策を行うように求めている。これを受けて、本年度よりMEPCにおいても本格的な地球温暖化ガスの調査検討が始まったところである。これらの動向に対応するためには、機関単体の熱効率の上昇や推進効率の向上といったハード面でのこれまで以上の改善はもちろんのこと、運航形態や平均積み荷率の上昇など、ソフト面も含めてのCO2削減対策に繋がる中長期的な技術開発を行う必要がある。本事業では、船舶の規模別、船種別のCO2発生量を把握するとともに、その削減策についてリストアップを行い、将来的な削減可能量を算定するものである。1.2 調査の経過本年度事業の経過は以下の通りである。平成 11 年8月 2 日第一回委員会開催9月 7 日海事産業研究所へ船舶明細書について聞き取り10 月26 日三菱重工神戸造船所高石氏へ聞き取り調査11 月22 日舶用工業会、日本造船工業会へ聞き取り調査11 月24 日日本造船技術センターへ聞き取り調査12 月13 日第二回委員会平成 12 年 2月29 日第三回委員会-1-21.3 調査の内容本調査では外航船からのCO2発生量を取り扱い、内航船舶、港湾内の荷役用船舶、漁船、港湾荷役機械からの発生量は取り扱わないものとした。これらの排出量については、UNFCCCを批准している日本国政府としての削減目標があり、目標に対しての削減策についても総合的に検討されているためである。なお、COP3においては、地球温暖化物質としてCO2に、CH4、N2O、HFC、PFC、SF6の5物質を加えた合計6物質についての削減目標を設定している。このうち、外航船舶の運航に起因する要素として、CH4については、低負荷時における機関からの排出および原油タンカーからの蒸散量が、HFCについては冷蔵コンテナの冷媒として用いられる代替フロンのリーク分が、相当量あることが予想される。しかし、本調査ではCO2排出量およびその削減対策を主として取り扱うものとした。1.3.1 船舶からのCO2 排出量に関する調査(1) CO2 排出量算定方法についての調査世界全体からの CO2 排出量は、バンカーオイルの積み出し量より機械的に計算されるが、積み出し地と実際に消費される航路が必ずしも一致しないため、地域毎の排出量あるいは船種ごとの消費割合は、把握できない。地域毎・船種毎の燃料消費量の算定方法について検討を行い、荷動き量から推定する方法を中心に必要なパラメータおよび文献値などについて整理を行い、これらの算出方法の精度について検討を行った。(2) アンケート調査(1)で考えられるように、地域毎あるいは船種ごとのCO2 発生量を算定するためには、運航量当たりの燃料消費量を正確に推定することが、数値の精度を高めることになる。本年度は、日本船舶明細書に記載の燃料消費量を網羅的に調査し、燃料消費量のカタログ値が過去10 年間に推移したか、船種、船型ごとに整理した。また、日本船主協会などにオペレーションのモデル化などについて聞き取り調査を行い、世界で一律の運航モデルの構築を行った。(3) 船種ごとおよび運航形態毎のCO2 排出量の算定(1)の算定方法に基づき、(2)のアンケート結果や統計資料を用いることで、船種および運航形態毎のCO2 排出量について試算を行う。試算においては、日本支配下船隊の船舶名称などから、船型、機関の型式、年式、船齢、などによるクラスごとに、船舶明細書に記載の燃料消費量、積載重量などから算出されるカタログ上の燃料消費量より算出される仮想的-2-3な燃料消費量を設定した。1.3.2 船舶単体の改善策に関する調査船舶のハード面での効率化について、船型の改善、機関効率の改善、燃料転換などの技術について、既存文献、日本造船工業会・学識経験者への聞き取り、などよりリストアップを行い、その低減効果について、検討を行った。リストアップにおいては、船型の改善など技術的には短期的に実施が可能なアイテムと、A 重油やLNG などへの燃料転換など技術的にも長期的なアイテムに大別した。短期的なものについては、削減効果のおおよその定量化とコストの問題などについて検討を行い、長期的なアイテムについては、CO2 削減可能量など技術的な限界を中心に整理を行った。1.3.3 運航の改善策に関する調査船舶の運航面での効率化について既存文献などよりリストアップを行い、その低減効果について検討を行った。最も有効でコストエフェクティブと考えられる減速運転については、顧客のスピードについてのニーズについて、荷種別の傾向を把握する。また、ウェザールーティングの一層の徹底や改良の余地などについて、聞き取りにより情報を収集した。長期的な対策として、航空機貨物の海運へのモーダルシフトなどもあげられるが、本年度は扱わなかった。1.3.4 対策の導入方法の検討(1) CO2 排出量低減オプションに関する検討1.3.1 で計算されたCO2 排出量および1.3.2、1.3.3 により抽出されたCO2低減対策オプションを組み合わせ、低減効果についておおよその定量化を行った。(2) CO2 排出量低減オプションの実施体制に関する検討陸上での運輸部門における CO2 税導入など政策的なインセンテイブに関しての情報および、AIJ (共同実施活動Activities Implemented Jointly)およびCDM (Clean Development Mechanism)を、便宜船籍国などと実施する可能性などについても、COP4、COP5 の動向を把握することで、整理した。-3-41.4 調査結果の概要1.4.1 船舶からのCO2 排出量に関する調査(1) CO2 排出量算定方法についての調査統計値よりバンカーオイルの年間消費量を131.8×106t/y(CO2 発生量に換算すると、3.95×108t/y)と推定された。また、世界のトンマイル輸送実績を、船型船齢ごとの運航速度を設定することで、カテゴリーごとに割り振った。(2) アンケート調査船舶明細書に記載された燃料消費量に、実航行速度、荷物積載率および機関単体の経年劣化を見込んだモデルを聞き取り調査などにより作成し、両者の組み合わせから船種船型船齢ごとにトンマイル輸送量あたりの燃料消費量を算定した。1970 年代に製造された船舶と1990 年代の同船型の船舶をトンマイイル当たりの燃料消費量で比較すると、後者が70~80%程度低燃費であると評価された。(3) 船種ごとおよび運航形態毎のCO2 排出量の算定年間の燃料消費量に各船種が占める割合は、タンカーで31%、バルカーで29%、コンテナで33%と推測された。ただし、コンテナに関しては運航実態に不明の点が多く、他の船種に比べて誤差が大きいものと考えられた。全船舶を積上げた上記の燃料消費量計算結果は、前述の年間燃料消費量統計値と概ね等しいものであった。1.4.2 船舶単体の改善策に関する調査機関単体の熱効率は1990 年代までに20%程度向上したが、ここ数年は横ばいであった。今後、燃料噴射の電子化などにより2 サイクルで4~6%、4サイクルで4~8%向上する可能性があるが、熱効率の向上とNOx の排出量はトレードオフの関係にあることに留意する必要があるものと考えられた。一方、船型の改良により、過去20 年程度の間にエネルギー消費原単位は15%程度向上した。今後も船型の改良で最大5%程度向上する可能性がある。技術的に将来有効と考えられるものには、PBCF、二重反転プロペラ、船底塗料(ただし有機スズ系を除く)など、既に一部実用化されているものもあるが、広範な普及にはコスト面での問題が残されている。-4-51.4.3 運航の改善策に関する調査運航面における改善策として、減速航行とウェザー・ルーティング・サービス(WRS)に着目した。運航速度を 10%下げた場合、同じ距離を輸送した場合の運航時間の増加を差し引いても燃料消費量は10~20%削減されることが期待される。ただし、減速航行には高速化を望む現在の社会ニーズには必ずしもそぐわないという面がある。WRS による航行時間の短縮効果は、例えば北太平洋航路(速い船で横断に10 日を要する)において1 航海当り5~10%と推測された。今後、利用可能な観測データの量・質の向上が見込まれており、これに伴う予報可能期間の延長によりWRS の効果の向上と普及が期待できる。1.4.4 対策の導入方法の検討(1) CO2 排出量低減オプションに関する検討各船種について運航量の経時的変化から、運航量の将来予測を行い、それに基づく年間の総燃料消費量を推定した。運航量の増加を考慮しない場合、高船齢船の更新により年間燃料消費量は微減と推定された。運航量の増加を見込んだ場合には、高船齢船の更新の効果があったとしても年間燃料消費量は横ばいもしくは微増傾向になると予測された。高船齢船の更新と同時に10~20%の減速航行を想定した場合には、年間燃料消費量は導入直後に著しく低下し、以後微減と推定された。(2) CO2 排出量低減オプションの実施体制に関する検討陸上排出源についてはCOP において、炭素税、排出権売買等の政策的オプションについて検討が進んでおり、シカゴやロンドン市場においては自主的にCO2 排出取引制度を創設する動きがある。国際海上交通についても同様の枠組みを適用することが理論上は可能であり、陸上排出源の取り扱いに関する今後の国際機関の動向について十分注意を払っておく必要がある。-5-62 調査の考え方調査の考え方について、以下のフロー図に示した。船舶単体でのCO2低減対策のリストアップ(推進抵抗の軽減、機関の更新など)アンケート表の作成既存資料アンケート調査船種、船型、積み荷率、航行距離、主機の型式、年式で整理された燃料消費量既存資料アンケート表の検討(事前にオペレータへ予備の聞き取りなどを行い、質問項目などを修正)運航形態でのCO2低減対策のリストアップ(減速航行、ウェザールーティングなど)陸上輸送機関における低減事例有効と考えられるCO2低減対策アンケート項目や対象船舶の選定造船メーカーなどへの聞き取り調査低減対策ごとのおおよその削減効果と複合効果低減効果の定量性に必要な運航パラメータ技術の方向性と将来性理想的な燃料消費量と実運航の比較CO2低減オプションとその定量化(船種、航路、船型、などにより整理する)バンカーオイルの消費量など既存資料燃料消費量からのCO2発生量CO2低減に関する提言対策の導入方法に関する検討(陸上の制度の事例研究)短期的な対策長期的な対策運航量からの算出方法の検討と必要なパラメータの整理地域的および船種ごとの内訳は不明である船種毎のCO2排出量の算定船舶明細書などカタログスペックによる燃料消費量Fig.A 平成11 年度船舶から発生する CO2 の抑制に関する調査研究実施フロー図-6-3 調査の内容3.1 船舶からのCO2 排出量に関する調査3.1.1 CO2 排出量算定方法についての調査(1) 燃料消費量などによるマクロなCO2 発生量table 1に平成10 年度SO 財団調査による船舶からのCO2 発生量を示した。統計資料など燃料消費量が把握できるものと、運航実績などから推定したものが含まれる。例えば、世界の内貿はOECD の燃料払い出し量を世界に外挿して計算している。また、漁業、レジャーによる消費量は、使用実態から推定した日本国内における燃料消費量を、使用隻数などを用いて世界における消費量として外挿したものである。表中には全ての船舶関連の CO2 発生量が示されているが、UNFCCC 締結国においては、表中内貿、漁業、レジャーのカテゴリーで示される排出量は、各政府のCO2 削減対象となっており、本調査において対象とするものではない。table 1 1995 年の船舶からのCO2 発生量(103t-CO2)Gas/DieseloilHeavy FuelOilMotorGasoline排出量合計排出量割合内貿 48,136 25,791 17,199 91,127 16%漁業 34,952 300 4,459 39,711 7%レジャー - - 28,665 28,665 5%マリンバンカー 88,230 271,673 - 359,904 69%計 171,318 297,764 50,323 519,407 100%SO財団1998年調査よりマリンバンカーの値をOECD+非OECD諸国の合計値に修正して作成。table 2に統計資料によるバンカー払い出し量の違いについて示した。表に示すように統計資料により2 割近くの差異を生じているが、燃料消費量として100×106t 前半の数値が、世界のバンカー消費量と考えて良いと思われた。本報告書においては、安全側(排出量の多い側)にたち131.8×106t-Fuel(360×106t-CO2)を世界のバンカー消費量として考えることとした。table 2 統計資料によるバンカー燃料消費量の違い(1995 年)単位 ; 106tGas/DieselOilHeavyFuel OilMotorGasoline計マリンバンカーOECD+非OECD諸国の合計値30.0 101.8 - 131.8参考値;UN資料*におけるバンカー量(Bunkers)28.8 90.6 - 119.4Energy Statistics of OECD Countries 1994-1995 (OECD/IEA,1997) および Energy Statistics andBalances of Non-OECD Countries 1994-1995(OECD/IEA,1997)より作成。1996 Energy Statistics Yearbook(UN, 1998)より引用。 Heavy Fuel Oil のバンカー量については UN資料中の Residual Fuel Oil として区分されているバンカー量を示した。Gas/Diesel Oil は MDO、Heavy Fuel Oil は MFO に相当する。-7-table 2に示した船舶からの排出量と陸上からの排出量の比較をtable 3に示した。全世界の発生量は、オークリッジ研究所の検討値であり、バンカーオイル消費に伴うCO2 排出量を含む値である。表に示すとおり船舶由来の発生量は2.2%、うちバンカーオイルは1.5%程度であり、後者はフランス一国から排出されるCO2 発生量にほぼ相当すると推定された。table 3 世界におけるCO2 発生量の比較CO2 発生量(103 t)全世界に占める割合全世界 23,503,000船舶由来の排出量(漁業、レジャー、内航海運を含む)519,407 2.2%上記のうちバンカー359,904 1.5%米国5,214,000 22.2%日本1,218,000 5.2%スウェーデン585,000 2.5%英国581,000 2.5%カナダ499,700 2.1%主な主要国のCO2 発生量フランス 385,000 1.6%SO 財団平成11 年調査による、数値は1995 年のもの、各国の数値はIPCC 提出のもの。全地球の排出量は米国オークリッジ研究所二酸化炭素情報解析センターのもの。近年のバンカー払い出し量の推移についてFig. 1、Fig. 2、Fig. 3に示した。OECD 諸国からの払い出し量は全体量として微増傾向にあり、同時に日本国からの払い出し量も増加傾向にある。また、Fig. 3の非OECD 諸国の払い出し量で見ると、シンガポール、UAE など、主要な払い出し国(=UNFCCC 非締結国)で、OECD 諸国全体の伸びを上回る伸びを示していることがわかる。010,00020,00030,00040,00050,00060,00070,0001986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995年燃料消費量 (×10 3 t)マリンバンカー(Gas/Diesel)マリンバンカー(HeavyFuel Oil)内貿(Moter Gasoline)内貿(Gas/Diesel)内貿(Heavy Fuel Oil)Energy Statistics of OECD Countries(OECD/IEA)より作成Fig. 1 OECD 諸国における船舶による燃料消費量の年変化-8-ベルギー02461986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995年バンカー払出量(106t)日本024681986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995年バンカー払出量(106t)アメリカ合衆国0102030401986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995年バンカー払出量(106t)オランダ0510151986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995年バンカー払出量(106t)Energy Statistics of OECD Countries(OECD/IEA, 1997)を基に、1987-1995 年の払出平均量上位4 カ国について作成Fig. 2 OECD 主要各国におけるマリンバンカー払出量の経年変化シンガポール0510151986198719881989199019911992199319941995年バンカー払出量(106t)アラブ首長国連邦0510151986198719881989199019911992199319941995年バンカー払出量(106t)サウジアラビア024681986198719881989199019911992199319941995年バンカー払出量(106t)韓国02461986198719881989199019911992199319941995年バンカー払出量(106t)Energy Statistics and Balances of Non-OECD Countries1994-1995(OECD/IEA,1997)を基に、1987-1995 年の払出平均量上位4 カ国について作成Fig. 3 非OECD 主要各国におけるマリンバンカー払出量の経年変化(2) CO2 排出量算定方法燃料消費量から算定される CO2 排出量は、各国からのバンカー払い出し量から計算される。しかし、バンカー払い出し量は、その積み出し地と実際に消費される航路が必ずしも一致しない。そのため、払い出し量より算定されるCO2排出量も、地域毎の排出量と必ずしも一致しない。将来において、CO2 排出量の評価や管理を行うためには、海域(=航路)別の排出量および船種別の排出割合を、把握する必要がある。現在、貨物の輸出入量は統計値として各国において集計がされており、正確に把握しやすい統計量であることから、地域毎・船種毎の燃料消費量の算定方法についてはFig. 4に示すように実際の運航に基づくトンマイルベースの排出量が有効であると考えた。-9-造船工業界への聞き取り等1970年代1980年代1990年代建造年代 (j) →原油タンカーLNGタンカープロダクトタンカー(LPG,白油,黒油など)鉄鉱石運搬船石炭運搬船PCCその他バラ積みコンテナVLCCクラスオーバーパナマックス級パナマックス級ミニサイズ↑船型 (i)↓船舶明細書の整理その他既往知見の整理(世界の船種別船腹量等)機関出力比時間10050カテゴリー×××(日本発着)船舶運航モデルの作成(航行速度、荷役時間など)(船主協会に依頼??)その他既往知見の整理・世界での輸送量、・バンカー消費量統計値等バンカー消費量計算値と統計値の比較Iteration!チューニング "X"OK!CO2換算船舶カテゴリー別CO2排出量推定値↑船種 (k)↓往 路復 路ただし、Ptotal:バンカー消費量計算値,C:燃費(t/day) K:平均的な原油運航可能量(ton/隻) S:隻数,X:年間航海日数 α:航海日数に占める積荷航海の割合(約0.5) v:積荷航海時の平均運航速度(mile/day) k,i,j,は船舶のカテゴリーCijkKijkSijkXijkvijkTrijk αijk積荷率Fig. 4 外航船舶からの二酸化炭素排出量の推定に関する基本的な考え方P C Tr Tt C K S X v total ijk ijki j kijk ijk ijkkijk ijk ijk ijki j=ΣΣΣ × =ΣΣΣ × × × α ×-10-(3) 船種船型ごとの運航量の推定方法table 4に世界の運航量を、荷種毎に輸送トンおよび輸送トンマイルで比較したものを示した。同時にコンテナについても輸送TEU を示した。1TEU を23トンと仮定(平成10 年における横浜港の実入りコンテナ平均値)すれば、輸送トン数は772×106 トンと計算され、全バルク合計の3 割程度の輸送重量トンと推定される。また、バルクの中では、原油がトンベースとトンマイルベースのいずれにおいても過半数を占めており、燃料消費量としても大きな割合を占める可能性が考えられた。原油輸送における地域間輸送の内訳を見ると、日本着の荷動きが世界全体の20%弱を占めており、日本向けの荷動きによる排出割合も相応のものがあると推定されることから、原油タンカーについて詳細な検討を行うこととした。table 4 世界の運航量(TR)の把握(1997 年)輸送トン(106 トン)輸送トンマイル(109 トンマイル)平均輸送距離(103 マイル)Crude Oil 1,534 7,677 5.00Other Oil Products 410 2,050 5.00Iron ore 430 2,444 5.68Coal 460 2,332 5.07Grain 203 1,169 5.76Bauxite and Alumina 54 206 3.81Phosphate 32 133 4.16dry Bulk 計1,179 6,284 5.33バルク合計2,713 13,961 5.15コンテナ(原単位はTEU)33,550× 103(1TEU=23t として772)Fearnleys;世界バルク貨物輸送1998、運輸省日本海運の現況(平成11 年版)より(ア) 原油タンカー運航量および平均運航日数の推定全世界における総運航量の大きい原油タンカーについて、そのトンマイルベースの運航量を、船型船齢ごとに割り振る方法について考える。原油タンカーは、往航は原油が満載状態で運航を行い、復航は積み荷がないバラスト状態で運航を行うことが一般であり、積み荷率や運航速度などの運航形態が比較的単純なことから、モデル化が容易であると考えられた。原油タンカーによる地域ごとの年間の輸送総量 TR(ton-mile/year)については、table 4に示すようにFearnley’s 海運研究所がまとめた資料がある。しかし、船型クラス毎の内訳や実運航時間については同資料から把握できない。ここでは、以下に示す式により、全てのタンカーがある運航速度下において平均的に運航に従事しているモデルを考えた。-11-原油タンカーの船型区分をi、建造年代をj とすると、原油タンカーによる年間原油輸送総量TR(ton-mile/year)は次の式で表現できる。運送総量TR triji j=ΣΣ ここで tr K S X v ij ij ij ij ij ij = × × α ×ただし、 trij:カテゴリーi,jの原油輸送量(ton-mile/year)Kij:カテゴリーi,jの平均的な原油運航可能量(ton/隻)Sij: 同 隻数Xij: 同 年間航海日数(280 day/year)α ij: 同 航海日数に占める積荷航海の割合(約0.5)vij: 同 積荷航海時の平均運航速度(mile/day)TR、K、Sは前出統計により既知であるが、Xとv には各カテゴリー毎の平均的な運航実態の把握が必要である。これらは運航パターンや稼働率に関わるパラメータであり、本来は各船型あるいは船齢ごとに詳細なデータが得られることが望ましい。しかしながら、現状ではこれらに関する世界的なデータが得られていないことから、Xとα は船型や船齢によらず一定とし、v については新造時の設計運航速度にシーマージンや経年劣化等を勘案した上で平均的な運航モデルを構築の上仮定した。table 5に世界に現存するタンカーの船齢・船型分布を示した。320×103DWT 以上のタンカー(≒16 万総トン数以上のULCC)は、1985 年以降建造されていない。一方で、一回り小型の30 万重量トン以下のVLCC タンカーが多く建造されている。なお、Jacobs & Patners 刊行のWorld oil TankerTrends によれば、1998 年末における10,000 重量トン以上の商用タンカー(プロダクト、ガスタンカーも含む)隻数は3,367 隻となっており、世界で稼動中の石油タンカーは3,000 隻弱と考えられる。各タンカーが輸送可能な原油量はtable 6に示すように推定した。ここでは、各カテゴリーにおける平均DWT より、バラスト水、輸送のための燃料の割合など荷物以外の積載量や荷役のために必要な日数などを考慮し、10 万DWT 以上の大型タンカーでは9 割、それ以下の中小型タンカーでは8 割を油槽の大きさ(輸送可能量)と仮定した。-12-table 5 TANKER SIZE AND AGE DISTRIBUTION.(世界に現存するタンカーの船型・船齢構成)DWT(103ton) ~1978 1979~83 1984~88 1989~3 1994~98 TOTAL10 -25 185 82 48 21 34 37125 -50 303 146 145 127 157 87850 -80 61 120 58 40 10 28980 -100 104 89 65 99 53 410100 -120 13 8 17 26 50 114120 -200 117 17 14 83 58 289200 -320 132 9 28 113 91 373320 + 43 9 - - - 52TOTAL 960 479 375 509 453 2,776DWT 毎の存在隻数は、 Fearnley’s World Bulk Fleet January 1999 による備蓄用タンカー隻数(21 隻)はあらかじめ除外した。「-」はその船型のタンカーが存在しないことを示す。table 6 タンカーの平均的な輸送可能量(t-crude oil/隻)DWT(103ton) ~1978 1979~83 1984~88 1989~3 1994~9810 -25 14,545 14,337 14,167 12,143 12,50025 -50 27,778 30,068 31,655 32,795 34,65050 -80 53,468 51,557 54,224 57,375 59,50080 -100 75,192 73,539 74,538 79,848 80,189100 -120 97,143 95,625 90,000 88,269 90,100120 -200 118,292 127,500 115,357 121,867 123,103200 -320 229,375 226,667 209,464 232,434 247,527320 + 334,457 340,000 - - -10万DWT以上の大型タンカーではDWTの9割、小型タンカーではDWTの8割が油槽の大きさと仮定し、各カテゴリーの平均DWTよりタンカーの平均的な輸送可能量として設定した。「-」はその船型のタンカーが存在しないことを示す。タンカー全体での理論上の輸送可能重量トン(油槽の合計トン)は、約269×106 トンであり、輸送距離を無視すればtable 4に示した原油輸送総量1,534×106 トンを、各タンカーが平均5.7 航海/年で運んでいることになる。輸送距離についても考慮し、各カテゴリーの運航速度をtable 7と仮定し、全てのタンカーが一律に原油輸送に携わった場合の輸送トンマイルの内訳は、table 8に示すとおりである。トンマイルベースの輸送量で見た場合、船齢別には1978 年までに建造された旧型タンカーが、船型別には、20 万~32 万DWTのVLCC タンカーが輸送量のうち大きな割合を占めていることがわかる。往航、復航を合計した年間の航海日数は205 日と推定されているが、次節で述べるように、特に小型タンカーについては、内航や重油など他の石油製品輸送に従事している可能性がある。-13-table 7 タンカーの平均的な航行速度(knt)DWT(103ton) ~1978 1979~83 1984~88 1989~93 1994~9810 -25 11.0 11.0 12.0 13.0 14.025 -50 11.0 11.0 12.0 13.0 14.050 -80 11.0 11.0 12.0 13.0 14.080 -100 13.5 13.5 14.0 15.0 16.0100 -120 13.5 13.5 14.0 15.0 16.0120 -200 13.5 13.5 14.0 15.0 16.0200 -320 13.5 13.5 14.0 15.0 16.0320 + 13.5 13.5 - - -船舶明細書における平均的な巡航速度などから、新造時の航行速度をまず設定した。次に経年変化として、一定の負荷で航行した場合の速度低下をおよそ5 %/10年として設定を行った。「-」はその船型のタンカーが存在しないことを示す。table 8 原油タンカーの船型・船齢別運航量の推定値109 Tonmile /yearDWT(103ton) ~1978 1979~83 1984~88 1989~93 1994~98 TOTAL10 -25 70 31 20 8 15 14425 -50 219 115 133 132 188 78750 -80 85 163 91 73 21 43280 -100 250 211 164 289 168 1,081100 -120 41 24 52 84 178 378120 -200 440 72 55 370 281 1,218200 -320 968 64 198 961 888 3,079320 + 464 93 0 0 0 558TOTAL 2,538 773 712 1,917 1,737 7,677運航量総量はFearnleys World Bulk Fleet January 1999による。平均航行日数は、205日。「-」はその船型のタンカーが存在しないことを示す。(イ) 他の石油製品の運航量および平均運航日数の推定table 8に示した運送実績(TR)には、原油以外の石油製品輸送量および原油の内航輸送量がカウントされていない。実際には、table 9 で示すように、他の石油製品の輸送実績および、原油の国内輸送に従事した航海も存在すると考えられる。今回の試算では、小型タンカーと大型タンカー間、あるいは旧型タンカーと新型タンカーの稼働率あるいは、長距離輸送と短距離輸送への従事割合などについては情報が少なく、VLCC も含めた大型タンカーが他の石油製品の運送に従事したとして参考値として計算を行うと平均71 日の年間運航日数が推定される。仮に前節で述べた原油タンカーの平均運航日数 205 日に、他の石油製品および表に示す国内輸送を輸送実績に含め、同時に油撤兼用船やLPG、LNG 大型タンカーを、石油タンカーに含めた場合、平均運航日数は280-14-日程度と計算され、ほぼ妥当な値であると考えられた。table 9 Fearnleys 社の統計対象外の石油製品の運送実績運送実績トンマイルベーストンベース109トンマイル 106トン原油 北海周辺 82 103原油 日本国内 28 26原油 米国内 78 65原油 その他 337 96内航原油移動の小計 525 290他の石油製品の輸送量約2,050 410タンカー輸送量 2,575 700地域ごとの原油運送量は輸出入量および地域間移動量と平均運航距離から計算、他の石油製品はFearleys社Bulk Fleet1999よりtable 10 油タンカーによる石油製品の運航量の推定値(他の石油製品および原油の内航移動による)109 Tonmile /yearDWT(103ton) ~1978 1979~83 1984~88 1989~93 1994~98 TOTAL10 -25 24 10 7 3 5 4825 -50 73 39 45 45 63 26450 -80 29 55 30 24 7 14580 -100 84 71 55 97 56 362100 -120 14 8 18 28 60 127120 -200 148 24 19 124 94 409200 -320 325 22 66 322 298 1,033320 + 156 31 - - - 187TOTAL 851 259 239 643 583 2,575table 9の輸送量を全て液体タンカーで均一に運搬したと仮定した。原油タンカーの航行日数の上乗せは、71日。-15-(ウ) コンテナ船運航量および平均運航日数の推定世界におけるコンテナの輸送実績を、table 11に示した。Containerisation International Year Book に記載されている年間の取扱TEU量には、内航のコンテナ輸送個数および陸上での輸送個数も含まれている。同資料はコンテナヤードを通過したコンテナ個数を、経路の如何に関わらず2 倍して統計値としているためである。内航コンテナであっても、国際定期航路により運搬されることがオペレーションとして一般であるため、内航コンテナについては外航コンテナ船がバンカーオイルを消費して運搬しているものと仮定して、大きな誤差がないと考えた。一方、同様の理由により、消費地や生産地など陸地からの運送には、船舶が用いられていない可能性が大きい。また、近年はシンガポールなど、ハブ港においてコンテナの積み替えも増えていることから、本計算ではFig. 5に示すように統計値に0.3 を乗じて今後の計算を行った(163,744×103TEU ×0.3=49,123×103TEU)。この仮定を基に、1997 年の船舶による地域間輸送実績を、TEU ベースについてはtable 12にTEU マイルベースについてはtable 14に示した(地域間ごとの係数は0.3 で一定とし、地域間の平均マイル数を乗じたもの)。いずれも、アジア発着の荷動きおよびアジア域内での荷動きが大きな割合を占めており、シンガポール、香港、高雄などアジア内のハブ港を中心とした動きが多いことがわかる。A港 B港トレーラトレーラケース1:寄港地が2個所の場合統計上カウント:4実際の航行 :1 0.25A港B港トレーラトレーラケース2:寄港地が3個所の場合統計上カウント:6実際の航行 :2 0.333....C港(ハブ港)A港B港トレーラトレーラケース3:寄港地が4個所の場合統計上カウント:6実際の航行 :3 0.375C港D港(ハブ港) (ハブ港)各ケースの割合は不明 → 平均的な統計値×0.3=航行回数Fig. 5コンテナ船舶の航行回数の考え方-16-table 11 コンテナ船とコンテナ輸送実績の年代別推移隻数 総コンテナ積載数平均コンテナ積載数コンテナ取り扱い実績年(千TEU) TEU/隻103teu1988 2008 1881 937 73,8101989 2082 1997 959 79,8161990 2172 2132 982 85,5971991 2271 2296 1,011 93,6461992 2382 2500 1,050 102,9061993 2461 2624 1,066 113,2121994 2703 2940 1,088 128,3201995 2738 3160 1,154 137,2391996 2965 3584 1,209 150,7531997 3189 3972 1,246 163,744Containerisation International YearBook,1999 より作成table 12 コンテナの地域間TEU 輸送実績(1997 年)単位;1000 TEU輸出元合計受入先 北米 欧州 南米 アジア北米 0 2,606 1,757 7,321 11,684欧州2,196 0 0 4,613 6,809南米1,714 0 0 0 1,714アジア5,081 3,602 0 0 8,683小計8,990 6,209 1,757 11,933 28,889地域不特定分アジア域内 8,917その他11,318総計49,123日本海運の現況 平成11 年版およびContainerisation International YearBook より作成。Table 13 コンテナの地域間TEU マイルベースの輸送実績(1997 年)単位106 TEU Mile受入先 輸出元 合計北米 欧州 南米 アジア北米 0 11,816 10,466 45,202 67,484欧州9,957 0 0 75,798 85,756南米10,204 0 0 0 10,204アジア31,370 59,195 0 0 90,565合計51,532 71,011 10,466 121,000 254,009地域不特定分アジア域内 42,333その他の域内55,586総計351,927日本海運の現況 平成11 年版およびContainerisation International YearBook より作成。-17-table 14に示すように、コンテナ船の船齢・船型別の存在隻数を見ると、タンカーとは異なり、1990 年以降も船舶の建造が活発に行われており、かつ大型コンテナの建造も続いていることがわかる。各年代毎の隻数のばらつきも少ない。Fig. 6にコンテナの建造隻数と建造されたコンテナ船の可能搭載TEU の合計を示す。近年のコンテナ輸送のニーズに伴い、1990 年から建造隻数が大幅に増加していることがわかる。table 14 1998 年11 月現在世界に現存するフルコンテナ船の船型・船齢構成可能搭載量(TEU/隻)~1978 1979~83 1984~88 1989~3 1994~98 TOTAL1000 未満584 352 266 261 251 1,7141000 以上~1999 未満197 153 122 115 202 7902000 以上~2999 未満29 56 57 53 171 3663000 以上~3999 未満5 29 29 37 78 1774000 以上~4499 未満- - 15 30 41 864500 以上- - 11 32 13 56TOTAL 815 590 500 528 756 3,189Containerisation International YearBook,1999 より作成0501001502002503001986 年1987 年1988 年1989 年1990 年1991 年1992 年1993 年1994 年1995 年1996 年1997 年0100,000200,000300,000400,000500,000600,000隻数コンテナ総積載数(TEU)竣工された隻数コンテナ輸送総量TEUFig. 6 コンテナ船の建造隻数と総積載コンテナ数の年代別推移(左軸が竣工された隻数を示し、右軸がコンテナ輸送総量TEU を示す)-18-タンカーで作成したモデルと同様に、コンテナ船の船型区分をi、建造年代をj とすると、コンテナ船による年間輸送総量TR(TEU-mile/year)は次の式で表現できる。タンカーと異なる点は、バラスト状態での航行を0 としている点である。運送総量TR triji j=ΣΣ ここで tr K S X v ij ij ij ij ij ij = × × α ×ただし、 trij:カテゴリーi,jのコンテナ輸送量(TEU-mile/year)Kij:カテゴリーi,jの平均的なTEU積載能量(TEU/隻)Sij: 同 隻数Xij: 同 年間航海日数(day/year)α ij: 同 航海日数に占める積荷航海の割合(1)vij: 同 積荷航海時の平均運航速度(mile/day)平均的な消席率を、アジア-北米-欧州間の3 大航路において80%、他の短期航路のもので60%と仮定し、他の船舶と同様に平均的な年間航海日数を算出した。平均航行日数は、約251 日/年/隻と推定される。地域ごとに見ると、大阪商船三井の資料によれば極東-北米航路に就航する定期コンテナ船の隻数および最大積載TEU は、それぞれ349 隻、1,075 千TEUと集計されている。一方、table.13 に示されたTEU-mile を運搬するために必要なコンテナ船は、それぞれ743 隻、865 千TEU と推計されており、推定はほぼ妥当であると考えられた。table 15 1 隻あたりの最大輸送可能量(TEU/隻)可能搭載量(TEU/隻) ~1978 1979~83 1984~88 1989~3 1994~981000 未満432 445 401 414 4021000 以上~1999 未満1,276 1,273 1,376 1,443 1,5852000 以上~2999 未満2,046 2,022 2,286 2,535 2,5033000 以上~3999 未満3,373 3,307 3,253 3,383 3,4364000 以上~4499 未満- - 4,128 4,204 4,2294500 以上- - 5,694 5,693 5,881日本船舶明細書より求めた平均のDWTより各カテゴリーごとの最大搭載TEUを推定した。「-」はその船型のコンテナが存在しないことを示す。-19-table 16 コンテナ船の平均的な航行速度(knt)可能搭載量(TEU/隻) ~1978 1979~83 1984~88 1989~3 1994~981000 未満21 21 21 21 211000 以上~1999 未満21 21 21 21 212000 以上~2999 未満21 21 21 21 213000 以上~3999 未満21 21 21 21 214000 以上~4499 未満- - 21 21 214500 以上- - 21 21 21「-」はその船型のコンテナが存在しないことを示す。船舶明細書に記載の満載時航行速度などより設定。table 17 コンテナ船の船型・船齢別運航量の推定値109 TEUmile /year可能搭載量(TEU/隻) ~1978 1979~83 1984~88 1989~3 1994~98 TOTAL1000 未満22,347 13,873 9,468 9,563 8,933 64,1841000 以上~1999 未満22,284 17,267 14,920 14,769 28,398 97,6382000 以上~2999 未満5,259 10,038 11,474 11,889 38,031 76,6923000 以上~3999 未満1,495 8,502 8,217 11,079 23,616 52,9094000 以上~4499 未満- - 5,482 11,007 15,545 32,0344500 以上- - 5,566 16,262 6,641 28,470TOTAL 51,385 49,679 55,129 74,570 121,164 351,927「-」はその船型のコンテナが存在しないことを示す。平均航行日数は251日。(エ) バラ積み船運航量および平均運航日数の推定タンカーやコンテナ船と同様に、鉄鉱石運搬船および石炭運搬船の船型・船齢別の運航量を推定結果をtable 18およびtable 19に示した。鉄鉱石専用船および石炭専用船の正確な隻数および両者の輸送に従事する一般ドライ貨物船の隻数が把握できない。このため、両船種が日本船舶明細書の全ドライバルク貨物船に占める隻数比が世界においても一定であり、平均航行日数は、両者とも220 日であると仮定した。また、他の荷種については、上記2 種の隻数を除いた全ての船舶で平均的に運航するものとした。運航速度については、船舶明細書ではタンカーほど明確な傾向が見られないことから、コンテナ船と同様に、15knt で一定であると仮定した。-20-table 18 鉄鉱石運搬船の船型・船齢別運航量の推定値109 Tonmile /yearDWT(103ton) ~1978 1979~83 1984~88 1989~93 1994~98 TOTAL10 -25 88 61 51 45 66 31125 -50 413 284 243 214 309 1,46450 -80 111 77 65 58 83 39280 -100 3 2 2 2 2 12100 -120 10 16 30 32 41 3120 -200 74 50 44 39 56 262200 -300 10 13 12 16 10 26300 以上- - - - - 0TOTAL 690 474 407 357 517 2,444「-」はその船型の船舶が存在しないことを示す。平均航行日数;220 日。table 19 石炭運搬船の船型・船齢別運航量の推定値109 Tonmile /yearDWT(103ton) ~1978 1979~83 1984~88 1989~93 1994~98 TOTAL10 -25 84 58 49 43 63 29725 -50 394 271 232 204 295 1,39750 -80 106 73 62 55 79 37480 -100 3 2 2 2 2 11100 -120 1 1 0 0 1 3120 -200 71 48 42 37 53 250200 -300 - - - - - 0300 以上- - - - - 0TOTAL 658 452 388 341 493 2,332「-」はその船型の船舶が存在しないことを示す。平均航行日数;220 日table 20 鉄鉱石、石炭以外のドライバルクの船型・船齢別運航量の推定値109 Tonmile /yearDWT(103ton) ~1978 1979~83 1984~88 1989~93 1994~98 TOTAL10 -25 52 37 31 26 42 19325 -50 256 177 151 130 193 90350 -80 68 47 42 37 52 24080 -100 0 0 1 2 2 5100 -120 0 0 0 0 0 0120 -200 47 31 26 26 37 162200 -300 - - - - - 0300 以上- - - - - 0TOTAL 428 292 250 219 318 1,508「-」はその船型の船舶が存在しないことを示す。平均航行日数;165 日-21-3.1.2 燃料消費率に関する調査前節で分解した各カテゴリー(ij)毎に、日当たりの燃料消費率Cij を推定できれば、平均航行日数と乗じて合計することで、総燃料消費量が算出される。ある速度設定下における各カテゴリーごとの燃料消費量は、平均積み荷率、シーマージンおよび船体および機関の経年劣化などの影響を受けることが予想される。当初計画では船舶の実燃料消費量については、アンケート調査により実態を把握することを予定していたが、諸般の事情により大規模なアンケート実施は困難であることが判明した。そこで、船舶明細書に記載の試験航海時の燃料消費量を用いることでまず概算を行い、精度について問題が生じた場合に今後追加調査をおこなうこととした。(1) タンカーにおける燃料消費量に関する調査船舶明細書に燃料消費量の記載のあるタンカーの数をtable 21に示した。table 21 燃料消費量を算定したサンプル数DWT(103ton) ~1978 1979~83 1984~88 1989~93 1994~98 TOTAL1 0 -25 6 4 0 0 0 102 5 -50 14 8 4 1 1 285 0 -80 14 26 3 2 1 4680 -100 18 24 2 2 1 47100 -120 4 8 0 0 1 13120 -200 22 3 0 0 0 25200 -320 14 1 17 14 0 46320 + - - - - - -TOTAL 92 74 26 19 4 215「-」はその船型のタンカーが存在しないことを示す。また、船舶明細書に記載の燃料消費量の信頼性を検証するために、理論上の燃料消費量とカタログスペックの燃料消費量との比較を行った。船舶明細書に記載された個々のタンカーについて、アドミラルティ係数(Cadm)、排水容積( ∇ )、船の長さ(L)、フルード数(Fn)よりεH およびεを算定した。ε H = 36.7304 × (L / ∇1 3 ) × Fn2 × Cadm−1Cadm = Δ2/3 ×V 3 / DHPε = H × SFC ×ε 0 HH0: 燃料発熱量(kcal/kg-Fuel)SFC : 主機燃費(kg-Fuel/PSh)-22-ε H : 有効抗揚比SFC については、SR 研究資料により回帰式を作成(1970 年から1985 年まで150g/PSh から120g/PSh に減少、それ以降は120g/PSH で一定)と仮定した。荷物輸送に消費されるエネルギー総量(kcal) =ε *有効な仕事量(ton*km)満載航海速力時の仕事量を(トンキロ)をかけることで、一日あたりのエネルギー消費量を算出し、船舶明細書の燃料消費量と比較した。算出結果をFig. 7に示す。理論上の燃料消費量と、船舶明細書における燃料消費量は、傾き、相関係数ともに良好な直線関係を示しており、船舶明細書の燃料消費量を用いることは、その時代の船型ごとの代表性を有すると考えてよいと考えられた。y = 0.9081x + 6.9961R2 = 0.88110501001502002503000 100 200 300明細書に記載された燃料消費量(t/day)理論上の燃料消費量(t/day) n=146Fig. 7 原油タンカーにおける理論上の燃費と船舶明細書の燃費の比較船舶明細書の燃料消費量を、各建造年代で整理平均しプロットした結果をFig. 8に示した。明細書に記載の燃料消費量は、新造時(試験航海時)の最大航海速度時のものであり