はじめに本報告書は、競艇交付金による日本財団の助成事業として、平成15年度に実施した「沿岸域管理モデルの構築」の成果をとりまとめたものです。ここ数年、わが国では公共事業のあり方を見直そうとする動きが顕著になってまいりました。その背景には財政支出の抑制という経済的理由もありますが、むしろその用途や利用価値、維持管理費、周辺地域への影響等をも総合的に評価判断する視点が求められてきていることに大きな要因があるように思われます。このような社会の価値観の変化は地域開発の意志決定のプロセスを、従来の行政主導型から地域住民を中心とした地元利害関係者の合意形成による地域主導型への脱却を求めつつあります。しかしながら戦後社会においてあまり例のない地域主導型の取り組みは、すでに確立している利権や社会構造などの関係から容易には進まないのが現状です。統合的沿岸域管理の取り組みの現場においても、地域主導やボトムアップという言葉はよく聞かれるものの、その具体的な事例はまだ実現しておりません。そこで本事業は、今後地域の持続的な開発の議論の際に必要なプロセスとなる地域主導の合意形成のあり方を、ケーススタディを通じて探ろうという新しい取り組みです。本事業にあたりましては、ご多忙のところ専門的見地から的確なアドバイスをいただきました東京大学大学院総合文化研究科助手の清野聡子氏、ならびに本事業に対するご理解と多大なご支援をいただきました日本財団にもこの場を借りて厚く御礼申し上げます。平成16年3月財団法人シップ・アンド・オーシャン財団会 長 秋 山 昌 廣<アドバイザー>清野聡子[東京大学大学院 総合文化研究科 広域システム科学科 助手寺島 紘士[SOF海洋政策研究所 所長]金 鍾悳[SOF海洋政策研究所 研究員]菅家 英朗[SOF海洋政策研究所 研究員]酒井 英次[SOF海洋政策研究所 研究員]実施体制「沿岸域管理モデルの構築」※敬称略、50音順平成15年度「沿岸域管理モデルの構築」報告書平成16年3月財団法人シップ・アンド・オーシャン財団海洋政策研究所目次1.研究の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12.検討対象地区の選定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22-1 検討対象地区の選定2-2 東京湾の概況2-3 木更津地区の概況3.先進事例の調査 -東アジア地域における統合沿岸域管理-・・・・ 183-1 PEMSEA の沿革および主要活動3-2 PEMSEA の対象海域3-3 PEMSEA の主要プログラムの内容3-4 PEMSEA の主な成果3-5 管理サイト3-6 PEMSEA 運営のICM デモンストレーションおよびICM パラレルサイトの概要3-7 パラレルサイト開発ガイドライン3-8 デモンストレーションサイト「アモイ」の概要3-9 PEMSEA サイトを有する自治体間の協力4.総合的沿岸域管理に向けた第 1 次検討・・・・・・・・・・・・・・ 314-1 総合的沿岸域管理の要件(地域主導型沿岸管理の要件整理)4-2 木更津地区の歴史的変遷4-3 ステークホルダーの意識5.まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45資料航空写真で見る木更津周辺の変遷(1955,1961,1966,1970,1973,1977,1981,1986,1995,2001)1.研究の目的1992 年のリオ・サミットで持続可能な開発原則と行動計画であるアジェンダ21 が採択され、その中で統合的沿岸域管理の重要性が取り上げられて行動計画が定められた。これに基づいて、各国、各地域では、種々の研究機関等も参加して統合的沿岸域管理のプログラムが実施されているが、残念ながら現時点ではわが国において統合的な沿岸域管理プログラムは行われていない。しかし国内の沿岸関係法制度の改正等により、沿岸域管理における利害関係者の議論の場に市民の積極的な参加を求める声が高まる中、地域の環境を開発から守ろうとする市民レベルの活動は着実に広がりつつある。事実、各地で展開されているNPOや市民団体、地域住民を中心にした取り組みの中には、公共事業による開発計画の見直しや凍結につながる成果を上げる事例も見られるようになってきた。このようにボトムアップで地域のあり方を議論する仕組みは着実に根付きつつあるが、現在、市民の活動が活発な地域に共通する点として、当該地域にすでに何らかの問題があり市民の地域に対する関心が高く、開発行為抑制に対する潜在的エネルギーを有している点が挙げられ、いわば問題解決型の市民活動と考えることができる。反面、特に開発計画に対する火種のない地域では、地元市民の環境保全に対する意識が低く、開発による環境影響の問題が表面化して初めて市民の関心が高まることとなり、結果、問題解決への糸口がより複雑になるという懸念がある。そこで本事業は、従来のような問題解決型ではなく、むしろ貴重な沿岸環境が残された海域をいかに維持するかという計画的・予防的な視点から、海域の持続的利用を地域主導で議論する地元に根付いた合意形成のあり方について研究を行い、統合的沿岸域管理モデルとして提案することを目的とする。なお今年度は2年計画の初年度として、次年度実施予定のケーススタディ実施に向けた基礎調査を中心に実施した。12.検討対象地区の選定2-1 検討対象地区の選定本研究は、沿岸域の自然環境の保全・利用状況等を検証しながらケーススタディの検討対象地区を選定し、当該地区における地域主導型の沿岸域管理モデル構築の要件を明らかにすることを目指している。具体的には、港湾利用、海上交通、漁業操業、プレジャーボートの利用といった海面利用の輻輳問題や富栄養化問題等が顕在化しやすい、大都市圏を抱える閉鎖性海域を対象とすることが想定される。わが国では、三大湾といわれる東京湾、伊勢湾、大阪湾が検討対象地区の候補になると考えられるが、特に、以下の理由により東京湾を検討対象とした。①観音崎と富津岬を結ぶ線以北の内湾で、湾面積の約6 割、海岸線の9 割以上を港湾区域が占めており1、港湾利用、海上交通、漁業操業、海洋レクリエーション等による海面利用の輻輳が顕著である。②都市再生本部の第三次都市再生プロジェクトで大都市圏の「海の再生」の対象として東京湾を選定、七都県市・関係省庁により構成される東京湾再生推進会議が「東京湾再生のための行動計画」を策定し、東京湾の再生を目指した「東京湾蘇生プロジェクト」が進行している。③富栄養化による慢性的な赤潮・青潮の発生により、湾内の生物・生態系に大きな影響を及ぼしている。さらに、地域主導型の沿岸域管理に関するケーススタディを実施するために、東京湾の中から海域利用や自然環境の状況、沿岸陸域での環境問題等を総合的に勘案し、以下に示す条件から「木更津地区」をケーススタディの検討対象地区とした。①内湾において、港湾区域が設定されていない自然海岸を有し、比較的良好な自然環境が保たれている。②①の海岸線・海域を挟むように千葉港と木更津港の港湾区域が設定されているほか、漁港区域(牛込、金田、小糸川、富津)、漁業区域(区画・共同漁業権)等が設定されており、多種多様な海面利用が共存している。③東京湾アクアラインの開通以降、同地区の経済状況はストロー効果により停滞・下降傾向にあり、今後沿岸域も含めた大規模な再開発が行われる可能性がある。なお、本ケーススタディにおける検討範囲については、今後の検討の中で関係者の議論により詳細な範囲を設定することとし、本年度は暫定的に以下の範囲を検討対象として設定する。○海岸線:市原氏と袖ヶ浦市の境界線から、富津岬突端までの範囲○海 域:千葉港袖ヶ浦地区および木更津港の港湾区域を含む地先海域○陸 域:小櫃川・小糸川流域を含む内陸部22-2 東京湾の概況(1)海域利用一般的に、洲崎と剣崎を結ぶ線以北を「東京湾」と呼び、特に富津岬と観音崎を結ぶ線以北の水域を「内湾」と呼ぶ。東京湾には、千葉港、東京港、川崎港、横浜港の4つの特定重要港湾と、木更津港、横須賀港の2つの重要港湾が存在し、さらに、中ノ瀬航路、浦賀水道航路の開発保全航路が設定されている。図 2-1 東京湾の港湾区域および開発保全航路出典:東京湾環境データブック、国土交通省関東地方整備局、平成15 年3 月3(2)海岸線の状況内湾部の海岸線は、江戸川と荒川の間と、木更津市と袖ヶ浦市の境界線から小櫃川の間、木更津漁港から富津岬までの間以外は、すべて港湾区域に指定されている。特に、木更津市と袖ヶ浦市の境界線から小櫃川の間には、盤洲と呼ばれる東京湾最大の自然干潟が広がっている。図 2-2 東京湾の海岸線出典:同前4(3)流入河川東京湾に流入する主な河川は、江戸川、荒川、隅田川、中川、多摩川、小櫃川などがあり、これら河川の流域面積(水質汚濁防止法による総量規制指定地域)は約7,549km2 におよぶ。図 2-3 東京湾に流入する河川の流域出典:同前5(4)漁業権他方、古くから漁業が営まれてきた東京湾には、図2-3 に示すような漁業権が設定されている。特に、船橋・市川沖に広がる自然干潟である三番瀬と小櫃川河口以南には、港湾区域と一部重なるように区画漁業権と共同漁業権が設定されている。図 2-4 東京湾の漁業権設定状況出典:同前6(5)東京湾環境計画平成 13 年12 月に都市再生プロジェクトの「海の再生」として決定された決定された国土交通省の重点施策である「東京湾蘇生プロジェクト」、平成14 年3 月に関東地方整備局および都県政令市等によりとりまとめられた「関東地方長期ビジョン」、首都圏港湾連携推進協議会の議論を経て策定された「首都圏港湾の基本構想」など、国と自治体が連携して東京湾の再生に取り組む体制が整備された。このような動きを背景として、関東地方整備局では首都圏港湾連携推進協議会での議論を踏まえて、平成14 年12 月に「東京湾環境計画」をとりまとめて公表した。この計画は、長期的な目標年次を2020 年と設定し、「かつての東京湾のように、生き物が豊かで、人々が身近にふれあえる海を、将来世代にわたって創出する」ことを基本理念として、東京湾の環境のあるべき姿を「多様な生き物を育む東京湾」「身近で安全で快適な東京湾」「開発や利用等による環境負荷の少ない東京湾」と定めている。また、それを実現する環境保全・創造のための施策として以下の5 つの方針を示している。①自然海岸・浅海域の保全と生き物のすみやすい場の創造②水・底質環境の改善③海やみなとを眺め、憩える快適な親水空間の保全と創造④循環型社会形成への支援⑤海域や港湾及び周辺環境への負荷の軽減参考として、同計画で示されている主要な施策の配置図を図 2-5~2-7 に示す。これらの施策対象をみると、①の対象として小櫃川河口干潟、③の対象として木更津港内港、④および⑤の対象として木更津地区沿岸部を含む内湾の沿岸部が指定されており、沿岸環境の保全・利用の両面で木更津地区がその対象となっていることがわかる。7図2-5 東京湾環境計画における主要施策の配置(1)出典:東京湾環境計画、関東地方整備局港湾空港部、平成14 年12 月8図2-6 東京湾環境計画における主要施策の配置(2)出典:同前9図2-7 東京湾環境計画における主要施策の配置(3)出典:同前102-3 木更津地区の概況(1)自然環境1)小櫃川河口干潟(盤洲)一般には盤洲、あるいは盤洲干潟として知られている東京湾に現存する最大の干潟であり、河口湿地、前浜干潟、浅瀬から構成される。小櫃川河口に存在する河口湿地は、面積約30 ヘクタールの三角州からなっている。湿地全体の3 分の2 が潮間帯であり、ヨシ・アイアシ群落が優占し、汽水性と内湾海洋性両方の底生動物が生息する。前浜干潟は最大干潮時で沖合約1.2km まで露出する。図 2-8 小櫃川河口干潟の概要出典:沼田眞, 風呂田利夫、東京湾の生物誌、築地書館2)富津岬・富津干潟富津岬は、東京湾の内湾と浦賀水道を区分する砂嘴であり、南房総国定公園に指定されている。富津岬の北部には面積約200 ヘクタールの富津干潟が広がっており、その沖には東京湾ではほとんど見られなくなった大規模なコアマモ群落が存在する。小糸川に通じる水路と富津漁港への航路で東と西に分断されているが、航路の東西で生物相大きな差はない。23)小櫃川房総丘陵を源流として君津市、木更津市、袖ヶ浦市を流れる小櫃川は、流域面積273.2km2、流路延長約88km の2級河川で、千葉県内では利根川に次ぐ流路延長を誇る。流域は多雨地帯に属しており、ほぼ中間地域での年間平均雨量は、約1,880mm となっている。311図2-9 富津干潟の概要出典:「調べます!日本全国の干潟:富津干潟」を一部加工同河川の水は、河口から約10km 付近で取水され、市原市、袖ヶ浦市、木更津市、君津市、富津市に住む約30 万人の飲料水になるほか、流域2,800ha の水田や近郊野菜の農業用水として利用されている。4)小糸川主として君津市内を流下する小糸川は、流域面積142km2、流路延長約280km の 2 級河川である。河口部は、木更津港君津地区の新日本製鐵専用岸壁と小糸川漁港となっているが、土砂の堆積が多いため新日本製鐵により定期的に航路浚渫が行われている。4(2)社会環境1)概況本研究で検討対象とする盤洲干潟を中心とする木更津地区は、千葉県の君津支庁管区であり、袖ヶ浦市、木更津市、君津市、富津市の4市から構成される。4市の人口推移を図2-10 に示す。これをみると、首都圏から最も離れた富津市は、1975 以降すでに人口は漸減傾向にあるが、その他の3市は1990 年までは増加傾向が見られる。1990 年代に入ると人口の伸び率は低下し、木更津市は漸減傾向に、君津市も1995年以降は漸減傾向にある。4市の中では唯一袖ヶ浦市が2000 年以降も微増ながら増加傾向にある。12020,00040,0001965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2003袖ケ浦市 木更津市 君津市 富津市 年図2-10 4市の人口推移資料:平成14 年千葉県統計年鑑千葉県毎月常住人口調査月報(2003 年4 月版)60,00080,000100,000120,000140,000(人)同地区では、平成14 年の各市議会の定例会において、4市の合併に関する法定合併協議会の設置が審議されたが、袖ヶ浦市議会において否決されたため、4市合併については白紙状態となっている。また、同地区の沿岸部には千葉港と木更津港の港湾区域が設定されているほか、表2-1に示す海岸保全区域や漁港区域(牛込、金田、小糸川、富津)が設定されている。表 2-1 木更津地区の海岸保全区域海岸名 地区海岸名 延長(m)高須 400高須1号 1,957高須2号1,268木更津畔戸 4,450富津 青堀 2,500北富津 700合計 11,275出典:千葉県君津土木事務所ホームページ以下に、各市の概況を記す。13図2-11 木更津地区の概要①袖ヶ浦市袖ケ浦市は首都圏から50km 圏内に位置し、人口約59,000 人、面積約95km2 である。臨海部は、かつて浅草ノリの養殖やあさりの産地として、夏には海水浴場として賑わった袖ケ浦海岸が広がっていたが、昭和40 年代の埋立事業により自然海岸は姿を消し、現在同市の沿岸部は、すべて千葉港の港湾区域(北袖ヶ浦地区と南袖ヶ浦地区)となっている。造成地には、東京電力の袖ヶ浦火力発電所のほか、石油ガスコンビナート、化学工場等が立地しており、LNG(液化天然ガス)年間受入量は世界一といわれている。なお、南袖ヶ浦地区の突端に袖ケ浦海浜公園が整備され、市民の貴重な憩いの場となっている。②木更津市木更津市は古くから海上および陸上交通の要衝として栄えた人口約123,000 人、面積140km2 の都市である。袖ヶ浦市との境界線から小櫃川河口部分までは「1)自然環境」で触れた盤洲が広がっており、その海岸線には、牛込漁港、金田漁港(中島地区・瓜倉地区)の漁港区域が設定されている。また、東京湾の対岸に位置する川崎市川崎区浮島から同市中島を結ぶ東京湾アクアライン(全長15.1km)が平成9 年12 月に開通した。14小櫃川河口以南の沿岸部は、木更津港の港湾区域に指定されているが、小櫃川河口と木更津内港の間には陸上自衛隊の木更津駐屯地が存在する。小櫃川河口の北側には、1960年代に建設された工業用水の新日本製鐵が小櫃川の河川水による鉄の冷却試験のために建設した浸透実験池があり、さらにその北側には、2000 年7 月にオープンした「スパ三日月龍宮城」と2002 年7 月にオープンした「スパホテル三日月」が立地している。③君津市君津市は4 市の中で東京湾と接する海岸線の延長がもっとも短いが、面積は約320km2、と4 市中最も広大な面積を誇っている。また、同市には小櫃川・小糸川が流れており、それぞれの上流には亀山ダムと片倉ダム、三島ダムと豊英ダムが存在している。かつては約4km の自然海岸を有していたが、1960 年代に埋め立てられて木更津港の君津地区となり、現在は新日本製鐵が立地している。小糸川河口から富津市との境界線の間には小糸川漁港があり、同港の漁港区域が設定されている。④富津市富津市は東京湾内湾の湾口付近に位置する、人口約52,000 人、面積約205km2 の都市である。君津市との境界線から木更津港の港湾区域の南端までは富津地区と呼ばれ、その埋立地の一部には東京電力の富津火力発電所が立地している。また、この地区はリサイクルポートの指定を受け、現在関連企業の誘致が進められている。木更津港富津地区の南側には富津漁港(富津地区)の漁港区域が設定されている。さらにその南側は、南房総国定公園に指定されている富津岬となっている。なお、富津漁港付近には若干の放置艇、不法係留等が見られるほか、富津岬周辺海域では近年水上バイクの利用者が目立つようになっている。2)木更津港木更津港は千葉県が管理する重要港湾であり、古くから物資の集散港として栄えてきた。現在、木更津南部地区と君津地区には、新日本製鐵およびその関連会社、また、県内木材業者による木材団地が集積し、富津地区には東京電力富津火力発電所および流通加工型工業が立地している。公共ふ頭としては、木更津南部地区において木更津ふ頭が、背後地区で産出する山砂の積出に利用されているほか、外貿機能の強化として-12m岸壁240mを平成8 年に使用開始した。木更津地区は、東京湾アクアラインの開通、かずさアカデミアパークの整備など、県南部地域の地域開発拠点としての重要性が増していることから、同港においても外貿機能の拡充や港湾再開発を目的として平成10 年7 月に港湾計画が改訂された。また、平成15 年4月には、総合静脈物流拠点港(リサイクルポート)の指定を受けた。その背景には、平成11 年1月に当時の通商産業省と環境庁の承認を受けた「千葉県西・15中央地域におけるエコタウンプラン」の存在がある。同プランは、千葉県の西・中央地域をエコタウンエリアと位置づけ、地域特性を生かしたリサイクル施設の整備によりゼロ・エミッションを目指すものである。木更津港(富津地区)はこのエコタウンエリアに含まれており、自動車リサイクル事業・貝殻リサイクル事業等、地域特性を生かしたリサイクル産業の集積・育成を図り、地域の発展・活性化を推進すること目指している。図 2-7 に木更津港の輸移出入別の海上出入貨物量の推移を示す。これをみると、特に移出量が平成10 年度以降大幅に減少しており、木更津港における取扱貨物に占めるシェアが大きく低下している。5010,00020,00030,00040,00050,00060,00070,00080,00090,000100,0005 6 7 8 9 10 11 12 13 14千年トン輸出輸入移出移入図 2-12 木更津港の海上出入貨物量の推移資料:千葉県ホームページ掲載データより作成(3)自然環境・社会環境の整理木更津地区は、東京湾中央部に位置し、海域としては内湾であるが黒潮の流入など外洋の影響も受けることもあるエリアである。背後の房総の山地から流入する小櫃川が形成した河口域の円盤状の地形の盤洲干潟があり、北部の君津、南部の富津にかけて干潟が広がっている。堆積層の間の地下水の利用も、自噴の井戸として知られており、流域の地下水もふくめた保全の意識が歴史的にも醸成されている。流域の水環境保全の施策に評価できる。また、歴史的に理科教育が盛んで多くの教師やナチュラリスト、郷土史家に恵まれてきたと考えられる。国内有数の環境教育プログラムをもつ学校もある。京葉工業地帯の埋立計画では、昭和30 年代にはほぼ確実に盤洲干潟周辺は埋立られる可能性が高かったが、現在まだ自然の干潟が残っている。これは、埋立による土地造成と16その利用の限界が社会経済的にも見えてきた結果でもあるが、地域の漁業や自然保護関係の反対意見もあり、また、沿岸域利用として海域として残したほうが産業的メリットもあるとの判断もあったと思われる。木更津地区は、海を介せば首都に近く、地形的にも東京湾の海峡横断道路の場所として各種計画で候補地に挙がってきたことから、東京湾横断道路アクアラインの建設地となった。湾岸の交通ネットワークとして、沿岸の後背地全体の交通網の問題としても、交通問題は重要である。これらの条件は、木更津が沿岸域利用の意思決定過程の研究でも重要なフィールドであることを示している。特に、埋立が進んだ東京湾では、自然の沿岸が残存している貴重な海域としての位置づけに着目したい。1 東京湾再生のための行動計画、東京湾再生推進会議2 調べます!日本全国の干潟(自然環境保全基礎調査浅海域生態系調査)http://www.higata-r.jp/3 千葉県亀山・片倉ダム管理事務所ホームページhttp://www.pref.chiba.jp/doboku/34kameyama/jimusho1.html4 千葉県土木部港湾整備課ヒアリング結果5 千葉県ホームページ http://www.pref.chiba.jp/index.html173.先進事例の調査 -東アジア地域における統合沿岸域管理-3-1 PEMSEA の沿革および主要活動東アジア海域環境管理パートナーシップ(PEMSEA: Regional Program on BuildingPartnerships in Environmental Management for the Seas of East Asia)は、地球環境ファシリティ(GEF: Global Environmental Facility)、国連開発計画(UNDP: United Nations DevelopmentProgram)、国際海事機関(IMO: International Maritime Organization)の支援をうけながら、東アジアの海洋環境管理協力の構築を行う地域プログラムである。1994 年から活動を続けているPEMSEA の主な活動内容は以下のとおりである。①第 1 期(1994‐1998)1993. 11 中国アモイ、東アジア海域での海洋汚染防止および管理のための地域プログラム(Regional Programme for the Prevention and Management of Marine Pollutionin the East Asian Seas)実施の発足会議、参加国11 カ国(Brunei, Cambodia, 中国,北朝鮮, 韓国, Indonesia, Malaysia, Philippines, Singapore, Thailand, Vietnam)1994.1~ GEF 資金支援、UNDP 事業実施、IMO プログラム組織管理の形で実行、1998. 12 IMO が Philippineのマニラでプログラム管理事務所設置1994. 6 マニラで第 1 回プログラム調整委員会(Programme Steering Committee,PSC)が10 カ国の参加で開催1994 デモンストレーションサイトとしてPhilippines のBatangas、中国のアモイ、マラッカ海峡を指定運営1995 日本がオブサーバとして参加②第 2 期(1999.10.1~)1999.10 東 ア ジ ア 海域での環境管理パートナーシップ(Regional Programme forPartnerships in Environmental Management for the Seas of East Asia, PEMSEA)にプログラム名を変わって推進2000. 7 中国ボハイ海環境管理事業発足2001. 5 韓 国 ソ ウ ルで自治体地域内ネットワーク(Regional Network of LocalGovernments, RNLG) 結成および第1 回会議開催2001. 7 第 1 回地域専門家対話会議開催2002. 1 日本正式参加(参加国12 カ国に増加)2002. 3 韓国プサンで第8 回PSC 開催2002. 9 中国アモイで第2 回RNLG 会議開催2003.12 マレーシアのプトラジャヤで、東アジア海洋会議、海洋持続可能な開発に関する閣僚級会合、第3 回RNLG 会議開催183-2 PEMSEA の対象海域PEMSEA の対象海域は、2003 年現在、以下のとおりである。表3-1 PEMSEA の対象海域流域情報海 域面積(千 km2) 人口(百万人)ボハイ海(Bohai Sea) 1,400 445黄海(Yellow Sea) 502 230東シナ海 1,820 510南シナ海および周辺海2,525 268計 6,247 1,4533-3 PEMSEA の主要プログラムの内容PEMSEA の主要プログラムは以下のとおりである。① ICM デモンストレーションサイトおよびパラレルサイト管理( National ICMDemonstration/Parallel site)②域内小海域および汚染地区環境管理(Sub-regional Seas/Pollution Hotspots EnvironmentManagement)③管理能力開発のための教育・訓練実施(Capacity Building)④地域ネットワークおよび域内協力体の運営(Regional Network and Task Force)⑤環境部門投資の奨励活動(Environmental Investment)⑥科学研究遂行(Scientific Research)⑦統合情報管理システム開発(Integrated Information Management System, IIMS)⑧市民社会の参加支援(Civil Society Participation)⑨国家沿岸政策の策定支援(National Coastal Policy)⑩地域共同管理システム結成(Regional Mechanism)3-4 PEMSEA の主な成果①6 箇所のICM デモンストレーションサイト、2 箇所のパラレルサイトが実行中。第1 期のBatangas、アモイで成功裏に運営達成②ホットスポット管理区域としてボハイ海、マニラ湾、タイ湾、マラッカ海峡管理③地域訓練、サイト訓練、見学会などを通じて地域の管理能力開発推進④自治体地域内ネットワーク構成および実行(2001~2002 年の2 回にわたってフォーラムを開催、県レベル11、市レベル36、区レベル21 の計68 の自治体が参加)19⑤域内協力の一環として地域非常設支援チーム(Regional Task Force)の運営⑥民間-政府協力を土台にした域内環境投資の促進⑦海洋沿岸政策に対する専門家対話システム(Senior Experts Dialogue)の構築⑧域内情報統合管理のためIIMS(統合情報管理システム)の開発・運営⑨サイト管理への市民団体の積極的な参加実施⑩東アジア海域のための持続可能な開発戦略策定および国家計画ガイドラインの提示3-5 管理サイト統合沿岸域管理と海洋政策策定のため、デモンストレーションサイトとパラレルサイトが運営されている。デモンストレーションサイトは、PEMSEA の資金、技術や人的支援を受けて現地事務所が設置され運営されるサイトである。一方、パラレルサイトは、資金や人的支援は行わず、自国の管理体制を維持しながら、運営面でPEMSEA からの協力を得て運営する方式である。表3-2 PEMSEA 管理サイトサイト種類サイト名第 1 期パイロット段階(1994~1998)のデモンストレーションサイト・フィリピン Batangas 湾・中国 アモイ(廈門)・マラッカ海峡ICM デモンストレーションサイト・カンボジア Sihanoukville 市・北朝鮮 南浦市・インドネシア Bali・マレーシア Klang・タイ Chonburi・ベトナムDanang域内小海域および汚染地区デモンストレーションサイト・中国 ボハイ海・フィリピン マニラ湾ICM パラレルサイト・フィリピン Bataan・韓国 Shihwa 湖・インドネシア Sukabumi3-6 PEMSEA 運営のICM デモンストレーションおよびICM パラレルサイトの概要2003 年現在、運営されているサイトの概要は以下のとおりである。20表3-3 デモンストレーションサイト(1)サイト名 管理政府 サイトの概要Sihanoukville,カンボジアSihanoukville市・陸域面積:142 km2・海域面積:3,209 km2・海岸線:74 km・2000.5 現地管理所設立(第2 副市長が所長就任)・2000.11 発足ワークショップ開催・2001.7‐9 地域専門家による調査活動実施・環境プロファイル、海洋戦略、市民啓発・広告会、情報管理教育、事例調査および実行計画策定中・サイト概要:Sihanoukville には国の唯一の国際海港が位置しており、その開発が進んでいる。また、伝統的な観光や漁業の重要な産業として盛んでいる。しかし、近年の開発による流域環境悪化、水産資源の激減、生活下水および工業廃水などで沿岸環境が脅かされている。このような問題を踏まえ、持続的な開発を実現するため統合管理を試みている。・事業担当者:Mr. Prak Sihara、第2 副市長 SihanoukVille南浦、北朝鮮国際機構協力局・陸域面積:869 km2・海域面積:92 km2・海岸線:20 km・2001.1 発足ワークショップ開催・環境プロファイル、市民啓発・広告会、IIMS 教育完了・サイト概要:南浦は、大同江の河口に位置する北朝鮮第2 の都市であり最大の港である。この地域は1986 年防潮提が設置され川の塩害を防ぐと同時に、接岸機能を果たしている。この付近は古くから造船や工業が盛んで来た。しかし、防潮提の設置によって水と土地の確保は果たされたが、航海の問題や水質の悪化など様々な問題が登場し、統合的な取り組みの必要性が表れている。・事業担当者:Mr. Kim JaeWon、国際機構協力局副局長21表3-3 デモンストレーションサイト(2)サイト名 管理政府 サイトの概要Bali,インドネシアBali 州・陸域面積:2,065 km2・海域面積:3,350 km2・海岸線:219 km・行政空域:1 市、4 摂政区・2001.1 PMO 設立(PMO 所長はBali 洲環境影響管理庁長)・環境プロファイル、海洋戦略、市民啓発・広告会、IIMS 教育完了・サイト概要:Bali 島は世界的な観光地であり、特有な文化や自然環境を持つ重要な場所でもある。観光産業は地域のGDP の31%を占め、大きな役割を果たしている。しかし、観光開発に伴って発生している諸問題、すなわち珊瑚礁・マングローブ森・ウミガメ生息地の破壊、海水面上昇、油類による河川汚染、海砂の採取、船舶による汚染脅威などの問題に対応するため統合沿岸域管理を導入している。行政機関だけではなく、観光業者、施設所有者、NGO、その他利害関係者の参加を基に実施している。・事業担当者:Ir. Ni Wayan SudjiKlang,マレーシアSelangor 州・陸域面積:1,480 km2・海域面積:612 km2・海岸線:102 km・範囲:2 区、3 海里海域・ 2001.10. 中央調整委員会( National CoordinatingCommittee)設置・Selangor 水資源管理庁に現地事務所設置・市民啓発・広告会、IIMS 教育、初期危険評価実施完了・サイト概要:Klang 港はマレーシア最大の港であり、国内の海運貿易の37%を占めている。しかし、大規模な港湾開発と工業団地の開発によりマングローブをはじめとした生態系や地域漁業への悪影響が深刻になったため統合管理に乗り出した経緯がある。管理の目的としては、環境問題に対応する仕組みの確立、沿岸開発事業へ有効な利害関係者の参加、各種海洋開発の統合計画策定、埋立対策、廃水処理の改善、侵食・堆積対策などが設定された。・事業担当者:Haji Rahmat Mohd. Sharif22表3-3 デモンストレーションサイト(3)サイト名 管理政府 サイトの概要Chonburi,タイChonburi 州・陸域面積:129 km2・海域面積:205 km2・海岸線:28 km・4 つの市区域・2000.5 発足ワークショップ開催・2000.12 現地事務所設置・市民啓発・広告会、IIMS 教育完了、環境プロファイル、海洋戦略・サイト概要:Chonburi 地域は、大きく漁村地域、輸出産業団地と国際港湾区域に分けて開発が進んでいる。近年抱えている問題として、海洋生態系の生息地破壊、漁業資源の乱獲、赤潮、海水の無計画な利用、海水汚染などがあげられる。・事業担当者:Ms. Apiradee SujaraeDanang,ベトナムDanang 市人民政府・陸域面積:206 km2・海域面積:169 km2・海岸線:92 km・2000.6 現地事務所設置・環境プロファイル、海洋戦略、市民啓発・広告会、IIMS 教育完了、初期危険評価・サイト概要:Danang は、ベトナム第3 の港が存在しており、漁業、観光が主な産業として盛んである。特に観光は、全国観光収入の15%を占めるほど重要な役割を果たしている。しかし、沖合で行われている油積み換えによる危険性、船舶からの油投棄、浚渫物の海洋投棄、固形廃棄物問題などで、市は2000 年から統合管理に取り組んでいる。・事業担当者:Dr. Nong Thi Ngoc Minh23表3-4 パラレルサイト(1)サイト名 管理政府 サイトの概要Bataan,フィリピンBataan 州・陸域面積:1,373 km2・海域面積:2,340 km2・海岸線:177 km・サイト概要:Bataan 州は、マニラ湾の入口に位置しており、特別経済輸出地区が設けられ石油化学、繊維、電子産業などが行われている。また、養殖業や観光、国立公園などの保護区が存在して多様な利害関係が構築されている。しかし、経済的な変化とともに沿岸域の環境は様々な問題と遭遇している。例えば、侵食や堆積問題、生態系毀損、破壊的な漁業手法、陸又は海起因汚染物質の流入などが挙げられる。このような問題に対応するため、民間企業と市民団体が協力し設けたBataan Coastal Care Foundation の基金で統合管理に乗り出している。この地域はPEMSEA の最初のパラレルサイトである。・事業担当者:Mr. William AzucenaShihwa 湖、韓国海洋水産部、京幾道、安山・始興・華城市・陸域面積:964 km2・海域面積:57 km2・海岸線:253 km・1 道、3 市を包含・定期 STAKEHOLDER フォーラム開催・サイト概要:Shihwa 湖は1994 年防潮提の建設によって作られた人工湖である。建設の目的は付近の工業団地と農業地域への用水供給であったが、堤防建設以後急激な水質悪化によって深刻な環境問題が起きた。この現状を踏まえて海洋水産部はShihwa 湖を特別管理海域として指定し、地域住民、自治体とともにパートナーシップを結び、実行計画の策定に臨んでいる。2001年に、海洋水産部、PEMSEA、自治体間で覚書を取り交わし、PEMSEA のパラレルサイトとして指定された。同時に、持続的な沿岸域利用と環境保護のためのShihwa 宣言を採択し管理に取り組んでいる。・事業担当者:Mr. Park, Kwang Youl、海洋水産部24表3-4 パラレルサイト(2)サイト名 管理政府 サイトの概要Sukabumi,インドネシアSukabumi 区・海域面積:749 km2・海岸線:117 km・サイト概要:Sukabumi 区は西ジャバ州のインド洋に面した宗教地区である。本地区では、まだ深刻な環境問題は起きていないが、観光などの空間利用計画が策定されておらず、無計画な開発のおそれがある。また、生活下水と固形廃棄物の拡散、漁港での環境悪化、破壊的な漁業手法などで対策が求められている。そのため、2003 年2 月PEMSEA との覚書によって3 番目のパラレルサイトとして指定された。・事業担当者:Mr. Ichwanudin3-7 パラレルサイト開発ガイドライン以下に、PEMSEA で規定されているパラレルサイトの開発ガイドラインを示す。(1)パラレルサイト開発の手順①ICM 実施のための自治体の主体的な取り組みの確保②適切な財源措置③国土交通省を通してPEMSEA へ公式要請提出④PEMSEA によるサイト候補地の評価‐自治体および利害関係者の意志確認‐導入する適切な管理方法と対応すべき問題・課題抽出⑤PEMSEA の承認を経て、合意書、作業計画、予算の策定⑥合意書署名と実施プログラム開始(2)パラレルサイト選定におけるPEMSEA の要請①サイト評価のため最低2 箇所の候補地指名②サイトプロファイルの作成と提出(別表の様式)③2003 年1 月31 日までに公式要請提出(3)パラレルサイトプログラム実施における自治体の役割と責任‐事業管理事務所(PMO)と事業調整委員会(PCC)の設置‐利害関係者との協議および市民に対する啓発・広報‐作業計画策定および予算の確保25‐ICM プログラム開発・実施のための必要な資源の提供‐多様な財源の整備‐作業計画の調整‐PEMSEA の自治体地域ネットワーク(RNLG)のメンバーとしての参加‐得られた経験・教訓の文書化および普及(4)パラレルサイトプログラム実施におけるPEMSEA の役割と責任‐ICM プログラムの開発・実施・継続に関して自治体に技術的・管理運営的な面の助言または支援(実費ベース)‐自治体の ICM プログラムに関する作業計画および予算策定の支援‐自治体への人材育成機会の提供(実費ベース)‐自治体に ICM 関連PEMSEA の刊行物および技術報告書の提供‐PEMSEA の自治体地域ネットワーク(RNLG)および統合情報管理システム(IIMS)、危険性評価のような他の地域ネットワークへの参加機会提供‐E メール、HP、事例研究などによって自治体の経験・教訓の普及努力を支援3-8 デモンストレーションサイト「アモイ」の概要PEMSEA の第1 期(1994-1999)のデモンストレーションサイトであった中国のアモイ市は、PEMSEA の統合管理プログラムの導入と自治体の積極的な取り組みによって短期間に環境を回復させ、社会・経済的な大きな成果をあげたと国際的に知られている。本事業の目的は、海洋汚染への効果的な予防・調節・修復のための統合沿岸管理の適用を試すことであった。(1)地域概要本サイトの陸地面積は1,516 km2、海域面積は334 km2、海岸線延長は185km である。地域の人口はおよそ130 万人、2000 年のGDP 成長率は15.2%であった。地域の主な産業としては、軽・重工業、水産業、塩田、農業、観光、貿易および港湾産業があげられる。本地域では1980 年代以前にも大規模な埋立が行われ、地形など物理的な変化は見られたが、工業化が遅れて農業や漁業が中心産業であったため、陸からの汚染物質の流入が少なく、湾の水質には大きな問題がなかった。しかし、1980 年代に入って、国務院はアモイを特別経済区に指定し、現代都市・国際都市・海洋都市・景観都市としての発展を目標とする政策の展開によって社会経済的な成長をとげた。このような政策は、アモイでの新たな資源利用と管理を求め、特に沿岸域資源への圧力が非常に高くなった。工業化・都市化は、人口の増加、海洋および沿岸資源に対する競合、汚染などの問題を引き起こした。また、無計画的な開発と人口の急増によって生態系破壊や生物資源の減少、海岸侵食による海岸線の後退、航路の阻害などの様々な問題が沿岸域26で起きることになった。そこで、当サイトでは、こうした急激な経済開発に伴う多面利用による競合や汚染の脅威を克服するためには、今までの伝統的な沿岸管理システムでは対応できないことを認識し、革新的で総合的な管理の取り組みを行うこととなった。(2)環境問題1980 年代当時、アモイが抱えていた環境問題は以下のように報告されている。○海洋汚染の予防と修復に対する体制の脆弱性○統合計画の欠如、無調整・無規制の海洋資源開発○単一分野指向の政策決定システムと非効率的な調整システム○多面的な資源利用による競合を調整する制度的な基盤の欠如○法執行能力の脆弱性○統合環境管理のための資金不足○政策決定権者の海洋環境に関する意識不足と一般市民の関心不足○管理に必要な科学的基盤の不足○データの総合管理体制の欠如と分野間の交流不足○越境問題(3)事業の概要本事業は 1994 年、アモイ市政府が主管理機関、海洋管理課が執行機関となり開始された。また、事業管理のため、実行委員会が設置されてアモイ副市長が議長を担うことになった。この実行委員会は、計画、財政、海事、土地利用、環境、水産、港湾、観光などを網羅した20 以上の政府機関が参加し、主な沿岸開発事業に関する分野間の協議、調整、検討を行う体制が構築され、以下の活動を含む23 件の付属事業が実施された。○環境調査○環境管理戦略計画の策定○行政体制改善および強化○経済開発の生態的、社会経済的な影響調査○沿岸養殖による汚染管理○海洋投棄をはじめとした固形・危害廃棄物管理の評価○Yuan Dang ラグーンの評価○計画および管理のためのGIS 開発○管理地図の作成○環境基金と財団の設立○海洋環境問題の広告○沿岸管理に必要な規制の強化27○水質基準の設定およびモニタリングの実施○Xinlin 湾の統合廃棄物処理実施計画の策定○統合的な法律執行(4)事業実施の成果本事業による成果として法制度面での改善が行われた。1994~1998 年の間にPEMSEAとの協力により実現した主な成果は以下のとおりである。○環境保護に関する規則(1994)○土地管理規則の策定(同上)○都市計画規則の策定(1995)○砂、土壌および岩の管理に関する規則(同上)○運河交通管理に関する規則(同上)○新停泊地からの養殖世帯撤去に関する公告(同上)○Dayu 島の白鳥のための自然保護区の管理対策(同上)○アモイ付近でのアナゴ漁業の管理規制に関する公告(同上)○浅海における養殖管理に関する規則(1996)○沿岸環境プロファイル(同上)○アモイ海洋汚染予防および管理のための戦略管理計画、市政府採択(同上)○部署間海洋管理および調整委員会、市条例を基に設置(同上)○海洋管理および調整委員会事務所、市の企画室の傘下に常時組織として設置(同上)○統合法律執行団の運営(同上)○市政府による海洋機能区域体系の認可および実施(同上)○第 3 海洋研究所の指導下に統合海洋汚染モニタリングプログラム運用(同上)○Jimei 大学にGIS 設備設置(同上)○海域利用負担金管理対策(1997)○市人民大会での海洋管理法規承認(同上)○アモイ市政府による海域利用ゾーニングの採択(同上)○多分野海洋環境モニタリングプログラム設置(同上)○中国白イルカのための自然保護区管理の関する規則(同上)○中国海洋開発白書にアモイ事業の掲載(1998)○環境保護財団の設立(同上)○研究調整体系の構築(同上)○海岸線計画および管理に関する規則(同上)○その他、技術分野での多数の報告書作成28(5)アモイにおける海域利用ゾーニング計画1997 年、アモイ市政府は、沿岸域の陸域と海域において生態系への配慮と社会経済機能とを統合するための機能的なゾーニング計画を採択した。このゾーニングの主目的は、アモイの海域の複合利用による競合を減少させ、当該沿岸域における社会的純益を最大限にし、生物多様性を守り、そして長期的な持続的成長を確かなものとすることにある。海域は、主要利用分野やそれと両立可能な分野、制限される活動分野を考慮に入れて、利用区分ごとに仕分けされている。アモイの海域ゾーニングは、主に「船舶航行/港湾ゾーン」「観光ゾーン」「養殖ゾーン」「沿岸産業ゾーン」「海洋工学ゾーン」「鉱業ゾーン」「自然保護ゾーン」「特別機能ゾーン」「環境修復ゾーン」に分類された。図3-1 アモイ市のゾーニング計画3-9 PEMSEA サイトを有する自治体間の協力2001 年5 月、韓国ソウルでは、PEMSEA サイトを有する自治体間の協力体として自治体地域内ネットワーク(Regional Network of Local Governments, RNLG)が結成され、第1回会議が開催された。本協力体は、自治体および地域社会の管理能力強化、国際スタンダードによる実施促進、自治体同士の協力および情報・経験の共有、環境投資の機会およびドナーとの協力促進を目的としている。第2 回は2002 年9 月の中国・アモイ、第3 回は2003 年12 月にマレーシア・プトラジャヤで開催された。また、第4 回は2004 年にインドネシア・バリで開催される予定である。29PEMSEA のサイトがある自治体は、カンボジアのSihanoukville、中国のアモイ、北朝鮮の南浦、インドネシアのBali、マレーシアのKlang、タイのChonburi、ベトナムのDanang、フィリピンのBatangas とBataan、韓国の安山・始興・華城であるが、全体としては、県レベル11、市レベル36、区レベル21 の計68 の自治体が参加している。PEMSEA 加入国12 カ国のうち、日本、ブルネイ、シンガポールの 3 カ国にはサイトが存在せず、したがってRNLG には参加していない。また、中国のアモイ、フィリピンのBatangas は第1 期のサイトであるが、RNLG の活動にも参加している。304.総合的沿岸域管理に向けた第1 次検討4-1 総合的沿岸域管理の要件(地域主導型沿岸管理の要件整理)総合的沿岸域管理の必要性がいわれるが、日本の沿岸域管理の現場の現状と課題の抽出のための詳細な事例研究が必要である。日本では沿岸域では、セクターを越えた管理者間や利害関係者の統合的な協議会が実質上存在しないことから、管理者や利用者のセクター内での調整をはかったうえで、ほかの調整すべき相手との協議する方法がとられてきた。自治体や国の連絡協議会などがあっても、報告と情報交換が主な内容で、利害や意見の調整は行政内では行われることがあっても公開性は低かった。そのため、社会問題化していなかったり、逆に大きな紛糾事項になった案件については、セクター外との調整を図らないほうが組織としてはまとまりやすいという特徴があった。セクショナリズム化は、組織の本性ともいえるもので、なんらかの社会的仕組みがない限りは、実質的な統合的管理や計画作成は困難と考えられる。そこで、ボトムアップともいうべき“地域主導型”の沿岸域管理がありえるかとの作業仮説をもとに検討を進める。統合的沿岸域管理では、広域的、分野横断的、が前提であるが、主体が不明確になりやすい。一方、地域主導では、それぞれが個別的な利害を主張するばかりで、その大きな調整が困難であるとも考えられる。統合的沿岸域管理の要件の描出のために、事例研究を通じて、地域と湾岸自治体、国の関係性、地域の海域の保全や利用と広域的自然システムとの関係を要点とする。4-2 木更津地区の歴史的変遷(1)沿岸域管理の視点からの要点『木更津市史』をもとに郷土史を俯瞰する。下記年表中の*に沿岸域管理の視点からの要点を挙げる。表3-1 「木更津市史」にみる沿岸域管理の歴史元号 西暦 地 域 内 の 出 来 事君津郡市、市原市各地の凝灰岩の中から鮫の歯、鯨の化石が発見された。*房総半島は地質学的に詳細な研究がなされ、第三紀、第四紀の海面変動と生態系が明らかになった。前100000市内中尾、君津市秋元、富津市湊等から、ナウンマン地質時代象、鯨の化石が発見されている。*海生生物の化石が多く産出される。31永井作貝塚(市内永井作)前2000 葭ヶ作貝塚(市内大久保)縄文時代祇園貝塚(市内祇園)*貝塚位置と産出標本から「縄文海進」の海岸線変動が解明された。菅生遺跡(市内菅生)(昭和12 年6 月発見)弥生時代*縄文時代以降、現在までこの地域には人が継続的に居住している。120 日本武尊が木更津にきたとの伝説(日本書記)*日本の古い文献に記載された沿岸地域として歴史的に重要。135 馬来田国造(望陀地方)、須恵国造(周准地方)が置かれた。*関東地方の要所としての位置づけ。祇園大塚山古墳清見台古墳群*古墳の建設は、統治者の居住の証拠。天平宝字3 759 「万葉集」に上総国馬来田の防人の歌二首がのっている。・このころ、横穴古墳が作られる。(中尾・太田・大久保等)古墳 時 代*防人が滞在する要所。承和 10 843 上総・下総・安房等に大飢饉があった。(6 月)*気候や生態系に恵まれた房総にも飢饉が発生。異常気象。嘉祥 元 848 上総国で開拓に従事していた蝦夷反乱を起こす。(2 月)*京都の統治者と蝦夷の接点としての関東。現在も夷隅などの地名として残る。承平 5 935 平将門、常陸・下総で乱を起こす。(5月)940 将門敗走し下総猿島で殺され、興世王は上総で殺さる。*京都の統治者と関東の新興勢力の戦い。後の関東の勃興への布石。1156 保元の乱に上総地方の武士団は平広常に従い、源義朝方に属して戦った。*千葉の勢力と源氏との関係性。東京湾岸の権力構造。永暦 元 1160 小櫃川氾濫し、曽根、釈蔵寺の本尊仏堂漂流す。*氾濫の記録。治承 4 1180 安房を発した源頼朝勢が、木更津地方の海陸を通って平安 時 代千葉、市川方面に向かった。32文治天正51811891590頼朝、上総・下総・安房の地頭に荒地を開墾させる。*鎌倉時代には、東京湾の金沢は鎌倉幕府の港として繁栄。中島郷の農民、塩千俵を里見家に納貢した。*塩作りの記録。干潟を塩田に活用。天正 20 1592 請西村で検地が行われた。(鈴木家の検地帳による。)島田で検地が行われた。*氾濫原の農地としての記載、情報の整備。海岸部の湿地は検地の対象外。慶長 6 1601 房総に大地震があり、翌日津波に襲われ死者多数。*地震、津波の被災の記録。室町時代・江戸初期は木更津地方は徳川氏の直轄であった。*政治の要所としての位置づけ。慶長 19 1614 木更津の水夫24 名、大坂の役に従軍し功をたてる。・水夫たちの功により木更津船の特権を与えられ、江戸・木更津間の海運がさかんとなった。*海運、関連産業の発達。宝暦 3 1753 諏訪幸右衛門、水越籐左衛門、富津市千種新田の開墾を完成。*海岸背後地の農地利用の進展。寛政 元 1979 旧中郷地区灌漑用の水車が作られた。請西藩主林忠英、藩地を貝渕に定めた。(12 月)*背後地の利水システムの発達。文化 3 1806 葛飾北斎、長須賀に滞在、日枝神社絵馬を描く。*文化人の滞在。文政 4 1821 近江屋甚兵衛、海苔養殖に成功*沿岸生態系の利用や、海面・海底管理の必要性の発生。天保 13 1842 今治藩に上総海岸を警固させる。弘化 4 1847 会津、忍両藩に安房上総の沿岸防備を命ずる。*統治防護上の必要性の発生。安政 元 1854 木更津亭柳勢、江戸で木更津甚句を唄い始める。*木更津の知名度の向上。慶応 4 1868 請西藩幕軍につき、内湾を経て箱根に向かう。撤兵隊、義軍と称し五井・姉崎方面で交戦。江戸 時 代佐倉藩兵木更津を砲撃。*沿岸統治の軍事上必要性の向上。33明治 4 1871 安房、上総両国をあわせて木更津県が置かれ、県庁舎は桜井藩主邸に置かれた。(11 月13 日)6 1873 木更津・印旛両県を合併し千葉県となる。(6 月15 日)木更津新聞発行*内房の政治・文化の中心地としての木更津。12 1879 このころ人力車出現、また木更津丸・君津丸が東京間に就航。*湾岸の陸上交通の発達。明治 13 1880 泉水宗助海苔養殖を始める。*沿岸海域・海底面の産業利用の本格化。25 1892 東京・木更津間に定期航路が開かれた。*航路の整備。東京湾の汽船網への進展。35 1902 畔戸、瓜倉、中島、木更津、桜井、小浜に漁業組合認可畑沢漁業組合認可411908*漁業の組織化。木更津に初めて電話開通*通信網の整備。44 1911 台風高潮にともない、県下に被害多し。明治 時 代*海岸災害の発生。大正 元 1912 木更津線(現内房線)木更津駅まで開通木更津・久留里間に軽便鉄道開通*陸上交通の発達。5 1916 清川村に普通水利組合創立*流域の水利用の組織化。6 1917 小櫃川、河川法を準用する河川に認定さる。(1 月19 日)*河川法の制定に連動して、河川管理の適用。大暴風雨にともない大津波来襲、町の西半部被害甚大*海岸災害の発生7 1918 中郷村で「郷土誌」を作成、児童の教材とした。*地域の歴史の作成。学校制度での郷土教育。10 1921 君津郡水産会認可(9 月24 日)*漁業の組織化。11 1922 「文集きさらつ」発刊、野口雨情、作品の選者としてしばしば来津*内房の文化の中心地。12 1923 関東大震災が起こり、本地方も被害甚大(9 月1 日)大正 時 代*地震被害の発生。34131924童話「証城寺の狸ばやし」ができた。*日本の児童文化史に登場。震災により用水車壊滅のため用水は発動機ポンプとなる。小櫃川農業水利改良事業の事務所を定める。*流域管理の近代化。14 1925 木更津築港期成会組織成る。*地域での港湾整備への組織的運動。昭和 3 1928 昭和丸、幸福丸が木更津・横浜間を定期に運航開始*海上交通網の整備。東京湾岸での優位的な都市としての位置づけ。7 1931 木更津港築港起工式*港湾整備の進展。干潟の改変の進行。8 1933 木更津水道株式会社設立、起工は翌昭和9 年*水道網の整備。井戸の衰退へ。9 1934 木更津海軍航空隊飛行場起工式*海岸背後地の農地以外の大規模開発。空路の要所に。木更津・横須賀間に定期航路開通*海上交通網の整備。東京湾の重要な港としての位置づけ。11 1936 木更津海軍航空隊開隊木更津・東京間定期航路開通木更津港築港竣工13 1938 天皇、木更津海軍航空隊に行幸*東京湾の交通の要所としての発展。台風により矢那川氾濫、旧南町、新田の一部床上浸水被害大昭和161941*流域の洪水被害。高柳に第二海軍航空厰が設置された。*東京湾の交通の要所としての発展。20 1945 市内に米空軍の来襲数度におよび人畜に被害あり。連合軍木更津基地に進駐(9 月2 日)*海・空の要所として戦災と進駐を受ける。23 1948 初めて港祭を行なう。*港湾都市としての意識の発達。29 1954 ヒトデの大群本市の海面に発生し貝類に被害多し。(2 月)昭和 時 代*沿岸生態系の変化。3533 1958 桜井漁港整備事業完成(3 月)金田漁港港内しゅんせつ事業完成(12 月)*漁港の整備。干潟の改変の進行。40 1965 木更津・川崎間、木更津・横浜間にカーフェリー就航*陸上交通と海上交通のリンク。貝渕、桜井海面埋立事業約13 万坪開始(7 月)*大規模埋立の開始。北片町の徳川家より下賜された獅子頭、重田信太郎家蔵の木更津船之由緒書、市の指定文化財となる。(9 月13 日)*海洋文化史上の重要性。木更津港重要港湾の指定を受ける。(4 月)*港湾都市としての重要度の向上。施設整備の投資対象として格上げ。43 1968 千葉・木更津間に電車開通(7 月15 日)*陸上交通網のレベルアップ。45 1970 稀有の豪雨、市内各地に被害多し。(6 月30 日)*洪水被害。河川改修の急進展へ。昭和時代資料:木更津市史より作成36(2)空中写真でみる木更津の流域・沿岸の変遷と着目点戦後の空中写真の判読により、年代別に流域・沿岸の開発と着目点を述べる。1)1955 年写真 4-1 1955 年の木更津地区(国土地理院データを加工)① 背後地の湿地の農地整備・区画整理氾濫原から干潟へと連続するエリアは、一般に、淡水性から塩性の湿地となっている。これらの湿地は、沿岸の漁村や農村にとっては、葦採集地、貝類漁場などの共有地、入会地であった。また、湿地の背後は、従来の土地利用では海岸砂州や河川沿いの自然堤防を利用して農地が開拓されてきた。これでは農地の区画が不定形で、規模も不ぞろいである。そのため、農業の機械化や利水の効率化には農地整備が実際された。農地の規格化や干田化の進行は、後に、宅地や工業用地への転用が容易になるきっかけとなった。農地整備や区画整理によって、沿岸部の湿地のコモンズとしての位置づけが失われ、個人へ所有権が移行していった。② 河道の変遷と集落形成氾濫原や河口域では河道形状の変遷は、人間の集落や田畑の形成から判読可能である。氾濫原では、出水時に蛇行などの河道形状や流路が変わる。河口域では、土砂堆積状況や河床材料の分布、河川水量、によって、網状水路が発達し、島状の砂州が発達する。蛇行部の内岸側は出水時に土砂堆積が進み微高地になるが、このエリアでは、蛇行部の変化に伴い、三日月状の集落形成が判読される。洪水時には、自然堤防上の微高地は数メートルの比高であっても、低地の田畑に較べて被害リスクが少ない。微高地に農家が建ち、その周辺が田畑になっている。③ 干潟の海苔養殖施設盤洲干潟は、文字通り円盤状の地形を持っており、円弧状の海岸がある。海苔養37殖施設は、海岸を取り巻くように、また、沖に面して平行の列をなして設置されている。木更津は、江戸時代から海苔養殖が試みられ、明治時代以降の本格化し、現在でも東京湾の主要な海苔生産地となっている。これは、河口干潟の地形特性を活かした沿岸の生物産業といえる。④ 干潟面の掘削による港湾開発従来、港湾建設