Proposal / Research

提言・研究成果
研究論文

産業連関表を用いたMSYに基づく漁業政策の経済評価: 函館市におけるイカ関連産業の事例研究

2023.09.22
公益財団法人笹川平和財団(理事長 角南篤)の海洋政策研究所に所属する田中元研究員および東京大学大気海洋研究所の牧野光琢教授は、北海道函館市におけるスルメイカ漁業を対象として、MSYに基づく漁業政策がスルメイカ産業に与える地域経済波及効果を生態経済モデルにより評価し、MSYに基づく漁業が低漁獲量のリスクに対処するのに効果的であること、そして政策的実施について長い見通しが必要であることを示しました。

本研究の成果は、「Marine Policy」に9月22日付(日本時間)で掲載されました。
詳細は以下のリンクでご覧ください。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0308597X23003767

論文概要

本研究では、北海道函館市におけるスルメイカ漁業を対象として、MSYに基づく漁業政策がスルメイカ産業に与える地域経済波及効果を生態経済モデルにより評価した。その結果,函館市における10年間のMSYに基づくスルメイカ漁業の経済波及効果は,年4%の割引率による現在価値で,加入量が正常な場合は -0.85億円,加入量が少ない場合は0.61億円であった。資源管理をしない場合の漁獲金額に対する割合で見ると0.3%以下であり、MSYに基づく漁業の経済効果はそれほど大きくないことがわかる。さらに、MSYに基づく漁業政策の5年間の漁獲量の減少は非常に大きく、MSYに基づく漁業の現在価値の合計は、通常の漁獲量シナリオではマイナスとなる。このことは、MSYに基づく漁業が低漁獲量のリスクに対処するのに効果的であることを示唆しており、政策的実施について長い見通しが必要であることを示唆している。本研究はまた、資源評価の不確実性を減少させるために、イカ漁業管理に関する日本と中国のハイレベルな二国間対話を推奨する。

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