ジェンダー平等が進んだ企業は「ジェンダー配当」を享受できる、つまりジェンダー平等でない企業より高い利益率とより低いリスクを達成できるとされています。また、その結果、よりジェンダー平等な職場環境を実現できている国は、経済成長率を高めることができると言われています。
エクイリープは、投資家、企業、政府などに対する質の高いデータや知見の提供を通じ、職場におけるジェンダー平等を推進している世界的な団体です。独自の包括的な19項目よりなるジェンダー平等スコアカード(審査表)を用い、世界の3,000を超える企業のランキングを行っています。これらの審査項目には職員全体、シニアマネージャー、経営層、取締役会における男女比率、男女賃金格差、公正な採用と昇進制度、サプライチェーンにおける男女比や職場の安全といった項目が含まれます。
このスペシャルレポートは、日本、香港、シンガポールの企業のジェンダー平等の推進度の分析を初めて行ったという意味で画期的です。本報告書は日本、香港、シンガポールにおけるもっともジェンダー平等が進んだ100の上場企業のデータをスコア化し、グローバルのベンチマーク(世界で最もジェンダー平等が進んでいる200社をランキングした2018 Gender Equality Global Report and Rankingの平均)と対比しました。
報告書では、調査対象企業のジェンダー関連のデータ公開の遅れが明らかとなりました。男女別の賃金情報を公表しているのはランキング企業の10%のみに留まり、セクシャルハラスメントに関する企業ポリシーを有している企業は全体の16%に留まりました。
ランキングのトップ100社のうち、シンガポール企業が最も高い42%の平均スコアを獲得しました。続いて日本企業が35%、香港企業が29%のスコアとなりました。また、シニアマネジメント、経営層、取締役会それぞれ全ての階層において、男女従業員比率のバランスが取れている(男女比率が40%‐60%の間)企業は1社もありませんでした。その他、本報告書の主要な調査結果は以下の通りとなります。
主な調査結果
・本調査は、日本、香港、シンガポールにおける時価総額が20億ドルを上回る745の企業を調査対象とした。その結果、シンガポールからは調査対象の45企業のうち20企業、日本からは438企業のうち24企業、香港からは262企業のうち最も多い56企業がトップ100にランキング入りした。
・シンガポールの企業が最も高い42%の平均スコアを獲得したが、グローバルベンチマーク企業の平均である53%には届かなかった。また日本企業のスコア平均は35%、香港企業は29%と同様にグローバルベンチマークを下回った。
・ 調査企業の多くが職場全体における男女比率平等(男女比率が40%‐60%の間)を達成したが、シニアレベルの全ての階層(シニアマネージャー、経営層、取締役会)において男女比率平等を達成できたところは1社も無かった。
・シンガポールと香港は、シニアマネージャー層の女性比率がグローバルベンチマーク企業平均の31%を上回ったものの、日本は16.1%と下回った。シンガポール企業は経営層に占める女性比率が30.5%とグローバルベンチマークの25.6%を上回ったが、香港と日本はそれぞれ19.7%と7.8%と下回った。取締役会における女性比率は、3者ともグローバルベンチマークの34.2%を大きく下回った。
・男女の同一労働同一賃金においては、アジア企業のデータ公開の遅れが明らかとなった。男女別の賃金情報を公表しているのは全企業の10%のみに留まり、グローバルスタンダードの48%を大きく下回った。
・大部分の企業が、有給の育休日数を公表していない。また、シンガポール及び日本企業は両親其々に対し、国際労働機関(ILO)の定める有給の育休を与えることが求められているが、多くの香港企業はこの基準を満たしていなかった。また日本では有給休暇の日数は寛容であるが、男性従業員は休暇を十分に取得しておらず、ワークライフバランス面で社会構造的な問題を抱えていることが示された。
・セクシャル・ハラスメントに対しての企業ポリシーを有する企業は全体の16%のみに留まり、グローバルベンチマークの49%を大きく下回った。
・ジェンダー平等を意識したサプライヤー・ポリシーを有する企業は武田薬品工業(日本)およびレノボグループ(香港)の2社のみとなった。