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一般事業 多元的価値観の共存に向けて~文明の諸問題に対する総合的理解の試み

2008年
事業

技術革新制度における大学の役割とインパクト

事業実施者 NUS Entrepreneurship Centre, National University of Singapore (シンガポール国立大学アンレプレナーシップセンター/シンガポール) 年数 2/2
形態 自主助成委託その他 事業費 6,752,025円
事業内容
国家技術革新制度(National Innovation System:NIS)における大学の役割については、先進国を中心に技術移転の成功例や米国のバイドール法(公的資金を得た大学の研究を特許化し民間企業が買い取ることを認めた制度)がもたらした影響などについて報告があります。しかし、工業化が進むアジア諸国における大学の貢献については十分に調査が行われておらず、NISのあり方の参考となる情報が乏しいのが現状です。本事業の目的は、アジア域内の事例を比較分析することにより、NISにおける大学の役割について提言することです。シンガポール国立大学アントレプレナーシップセンターが実施団体となり、東京大学、東北大学、九州大学、韓国高等科学技術院、清華大学、香港科技大学、インド工科大学(ボンベイ校・ムンバイ校)、マレーシア・マルチメディア大学、タイ・マヒドール大学、台湾大学の11校を対象に、各国・地域の研究者が参加する共同研究を実施しました。
事業初年度は、シンガポールとバンコクで調査研究の枠組みづくりと、進捗報告をするためのワークショップを開催し、2年目には、北京の清華大学で成果発表のワークショップを開催しました。事業参加者のほか、欧米の大学や政府の科学振興機関、民間企業からの参加を含め計40名が出席しました。その中には、関連テーマを扱うSPFの助成事業「先進4ヵ国の産学連携メカニズムに関する国際比較研究」を実施する英国産業高等教育評議会の研究者2名も含まれ、英国・日本・カナダ・米国の企業計93社に対する聞き取り調査に基づく産学連携の事例も紹介されました。本事業の調査では、大学発の特許出願状況等の定量調査に加えて、大学での技術移転室の設置状況や課題等の定性調査も実施されました。例えば、大企業が自ら研究開発できる日本や韓国などでは、大企業との共同研究を通じた産学連携が主流である一方、タイやマレーシアの大学では、特許出願ができる技術の蓄積はいまだ少なく、起業家育成に力を入れているといった特徴があります。また、中国では、制度的なバックアップが強く、大学が起業支援の中心として研究成果の商業化に強く関与する取り組みがなされていることが分かりました。全般的に、自国籍の大企業が少ないアジアでは、ベンチャーに期待が集まっていると言えます。しかし、米国のように大企業が研究開発のアウトソーシング先としてベンチャーを支える土壌がないため、中国のように国家の強い主導でベンチャーを推進するケースもあれば、日本のような共同研究が主流の産学連携もあります。いずれにせよ、本事業の実施を通じて、各国の状況に適した制度が求められていることが分かり、まずは多様な事例に関して情報を共有することが、よりよい選択肢を選ぶ結果につながることが確認されました。本事業の研究報告書は、英国の学術出版社エドワード・エルガーから商業出版されることになっており、科学技術政策にかかわる実務家や研究者、大学・産業界等に配布される予定です。

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