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一般事業 多元的価値観の共存に向けて~文明の諸問題に対する総合的理解の試み

2006年
事業

知的財産権のインパクトに関する評価と国際比較分析

事業実施者 American Association for the Advancement of Science (AAAS)(米国科学振興協会/米国) 年数 3/3
形態 自主助成委託その他 事業費 13,484,988円
事業内容
知的財産、なかでも特許は、技術革新を促進し公益に寄与するという理由で、独占的所有権の付与が正当化されています。一方で、その所有権を第三者が利用する際に生じるライセンス交渉や使用料負担などの負の側面も指摘され、公益への寄与という本来の目的を阻害するという懸念の声も聞かれます。しかし、知的財産を活用する際に発生する課題や影響に関する客観的なデータがないため、政策議論が十分に深まらないのが現状です。本事業では、知的財産が科学研究に与える影響について比較分析を行うことを目的に日本、米国、英国、ドイツで知的財産の利用や創出にかかわる科学者・研究者らを対象に、各国6,000~8,000人を無作為抽出して国別アンケート調査を行いました(回答者数:日本1,267人、米国2,157人、英国804人、ドイツ967人、計5,195人)。
最終年度である本年度は、報告書作成と調査結果の報告が行われました。各国の調査報告から、科学研究に利用される知的財産であるリサーチツール特許が広く活用されている状況が確認されました。米国では、第三者が保有する特許の取得の際のライセンス交渉の複雑さが最大の課題としてあげられました。近年進展が顕著な生命科学分野では、特許による知的財産保護が多いことも確認されました。一方日本では、特許取得に際して使用料の高額さが最も多くあげられました。また、英国では公的機関資金に基づくデータの利用に制約が多いことが示されたほか、知的財産保護の方法としては特許による割合がドイツに比べて高いこともわかりました。そのほか、研究成果の共有化を意図したオープンアクセス雑誌について、米国では参考媒体として活用する割合が増加傾向にあることもわかりました。
調査結果の周知のため、2007年1月16日にワシントンDCの米国科学振興協会(AAAS)本部で国際会議を開催し、調査結果「米国科学界における知的財産の影響」を報告しました。また、07年3月19日には東京でシンポジウムを開催し、産業界、学界、公的機関などから約40人の参加を得て、近藤正幸横浜国立大学教授の基調講演「研究使用の特許の影響」に続き、「4力国調査の概要」「米英独での調査結果」「日本の調査結果と米国との比較」が報告され、参加者の間で活発な議論が行われました。本調査成果は『サイエンス』誌でも報じられる予定で、国内外で議論が活発に行われることが期待されます。

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