「選択と集中」で課題に取り組む
  笹川平和財団5つの重点目標

  笹川平和財団名誉会長 笹川陽平

 笹川平和財団は2017年度より、5つの重点目標を定めています。その意義などについて、笹川陽平名誉会長に聞きました。

 ――国際社会は依然、さまざまな問題と課題に直面しています

 人間はいつの時代も変わりません。紛争と争いの歴史です。21世紀に入るとき、多くの有識者が「20世紀は戦争の世紀だった。21世紀は平和の世紀になる」と言いました。今はどうでしょうか。大規模な戦争はありませんが、地域紛争は無秩序・複雑化し、より困難な状況になっています。世界には課題が山積しています。そうした中で、どのように知恵を働かせ、事態の拡大と悪化を最小限に収めていくか、ということが重要なことです。

 ――笹川平和財団は1986年に創設されました。これまでの歩みを振り返り、財団の活動をどのように評価していますか

 当時は日本は、すべてを「政」と「官」が行い、「民」のレベルから挑戦する笹川平和財団のような組織はありませんでした。問題が複雑・多様化し、情報がこれだけ氾濫する時代には、政治と官僚だけでは問題を処理することができません。民の力というものが相対的に強まり、ある目的をもった民の集団というものが必要になってきたのです。そういう意味で、笹川平和財団が先駆的な役割を果たしてきたことは事実です。

聞き手: 特任調査役 青木伸行

聞き手: 特任調査役 青木伸行

 ――笹川平和財団は事業の重点目標として、「日米関係のさらなる強化」「アジアにおける日本のプレゼンス拡大」「イスラム諸国への理解と関係強化」「海洋ガバナンスの確立」「女性のエンパワーメント」という5つを掲げています

 重点目標では、日本の最大の同盟国である米国とのさらなる関係構築を一番目に挙げています。米国は政治、経済、安全保障の観点から最も重要です。しかし、日米両国民のお互いに対する理解や認識は、決して十分だとはいえません。民間交流のさらなる発展を促し、日米関係の緊密化を継続的に図っていかなければなりません。とくに安全保障分野では、民間ならではの立場から多角的な視点による取り組みを推進しています。
 アジアの人々の暮らしに目を転じますと、多くの国や地域が人口問題や環境問題など、さまざまな困難を抱えています。日本は「課題先進国」といわれますが、笹川平和財団は日本がもつ豊富な事例や独自の解決策を、アジア諸国と共有し、持続可能な発展に必要な施策を探っています。アジア諸国には、日本にリーダーシップをもっと取ってほしいという熱い思いがあります。リードする役割を日本は果たすことができ、笹川平和財団も存在感を示していかなければなりません。
 また、世界には数多くのイスラム国家があり、イスラム教徒の人口も増加しています。将来、宗教別人口でイスラム教徒が最大勢力になるという予測もあります。しかし、日本では、イスラム社会に住む人々に対する認識や理解は進んでいません。知らないということ自体が問題で、しっかり認識し理解しておく必要があります。
 女性のエンパワーメントですが、日本が国際社会でさらに力を発揮していくためには、政治や経済、教育、科学などあらゆる分野における女性の活躍が必要です。女性が社会で果たす役割に視点を据えて、とくにアジアの女性たちの社会生活を支援することで、さまざまな国際問題や課題に新たな答えを見出していきます。

 ――海洋ガバナンスも重要です

 海洋は太平洋や大西洋、インド洋などに区分されていますが、海はひとつなのです。地球の7割を海が占めており、宇宙飛行士から見た地球は、水の惑星で大変美しい。そこには国境線も見えませんし、人種の差別もなく、紛争も見えません。平和な惑星に見えるでしょう。それが本来の地球の姿なのですが、現実は、そこにはさまざまな争いが存在しており、海洋権益をめぐる争いもあります。
世界の海は、地球温暖化に伴う急激な変化や、経済活動の拡大による生態系への影響、国家間の管轄海域をめぐる対立など、海の劣化が、一刻の猶予もならない深刻な段階にきており、危機的な状況にあります。海洋が死滅すると人類が死滅するのです。
 私たちは500年、1000年後の地球を維持するために、海洋をどのように持続可能なものにするかという問題提起をし、同じ考えをもつ多くの世界の方々の賛同を得ています。いずれ国連でテーマにするつもりでいます。

 ――5つの重点目標を定めた理由を教えてください

 時代は専門化していっています。世界にはもっと多くの課題がありますが、笹川平和財団という組織が、世界のすべての課題に取り組むことは到底できることではありません。特徴をもった組織になるためには、「選択と集中」が大切です。問題を広く浅くではなく、狭く深く掘り下げなければいけない時代だと、私は思っています。それによって尊敬され、存在感がある笹川平和財団になるのではないでしょうか。

  ――笹川平和財団の今後の役割を、どう考えていますか

 政府だけでは情報が収集できず、人的ネットワークも構築できません。財団の役割は民間の立場から情報を収集し、研究し、政策を提言していくことにあります。しかし、それを法制化するところまでもっていかなければ、存在感がありません。従来の「Think Tank」ではなく、考え実行する「Think and Do Tank」でなければ駄目なのです。これからも未来志向で、存在感のある組織へと発展していきたいと思います。

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