北方領土

島嶼研究ジャーナル
第14巻2号

第14巻2号の論説では、緊張を高める世界情勢のなか、日本の島嶼領土である尖閣・竹島の現在においての問題を提言し、解決を論じる2本を掲載した。 『緊急提言:いま実行すべき日本の尖閣諸島防衛策』では、尖閣諸島の主権に対し執拗かつ周到な現状変更を企て続ける中国に対し、守勢のみの日本政府に即時行動を促し、可能かつ有効な手段を論じる 『韓国の「国史」教育の変遷と独島/竹島』では、韓国が、小学校から高等学校に至るまでのすべての教科書に、竹島主権についての韓国側の主張のみをあたかも真実であるかのように掲載し国民に偏向教育を続けている事実を提示し、この歴史教科書問題には日本側の積極的な対処が必要不可避であると論じている。 インサイトは3本を掲載。『琉球大航海の尖閣航路-西表島から飛鳥時代に遡る』では、尖閣諸島の近代以前の歴史について、かつて八重山諸島に在った貿易航路「尖閣航路」から、首里(琉球王国)とは異なる八重山の貿易勢力の存在を提起し、従来の中国史観のみでは論じられない歴史の可能性を示唆している。 『多元的脆弱性指標とその政策的意味合い 小島嶼開発途上国における対応力強化と持続可能な開発に向けて 』では、小島嶼開発途上国の社会的脆弱性に対策するため、2024年に国連総会で採択された「多元性脆弱性指標(MVI)」について、評価指標である、環境(気候変動)、社会経済、国際制度的枠組みについて、パラオ、モルジブ、バハマ等を取り上げて具体例を考察している。 『フィリピンの海洋安全保障の概念』では、フィリピン大学法学部教授である著者が、フィリピンにおいて「海洋安全保障」という用語についての認識について、「国家安全保障・行動アジェンダ」「国家安全保障」「フィリピン沿岸警備隊法」「国家警察海洋グループ」などに触れて解説している。 コラムでは『対日平和条約第2条が世界に及ぼした影響』を掲載した。日本が直面している「尖閣・竹島・北方領土」の島嶼領土問題は、ほぼすべて第2次世界大戦の講和条約である「対日平和条約第2条」に起因している。この条項はこうした重大な島嶼領土問題のほかにも、日本の国連加盟、自衛隊の法的地位、南極における活動、南シナ海の島嶼領有権問題なども発生させている。

島嶼研究ジャーナル
第11巻1号

今号の論説では、米国の研究者の視点から、尖閣諸島の主権問題を論じた『尖閣諸島に及ぶ日本の主権に関する米国の認識』、また、南シナ海をめぐるフィリピンと中国の紛争に関して、国連海洋法条約に基づいて設立された仲裁廷が2016年に下した判断とその後について論じた『中国による南シナ海での違法な人工島建設の法的結果』を掲載した。 インサイトには、若手研究者による『気候変動が島嶼等に与える影響 ―国際法からのアプローチを中心に―』。『島をめぐる係争水域の共同開発に関する一考察』『2020年から2021 年にかけて登場した韓国の竹島海上警備策の特徴』『インド洋島嶼国セーシェル共和国とモーリシャス共和国の領土問題とブルー・エコノミーの役割』の4本を掲載している。 コラムでは、『島嶼領土に対する日本政府の基本的認識』として、北方領土、竹島、尖閣諸島に関わる日本政府の認識を紹介し、日本は領有主張の根拠を国際法に置いていることを解説している。

島嶼研究ジャーナル
第10巻1号

創刊以来10年、今年度は第10巻を刊行の運びとなりました。これまで10年間のご支援に深く感謝申し上げます。10周年を機に表紙デザインを一新いたしました。新たな表紙にてまたどうぞよろしくお願いいたします。  今号の論説では、海洋法の第一人者であり国連法務局海洋問題・海洋法部長を務めた林司宣早稲田大学名誉教授のご逝去を悼み、2007年に海洋政策研究財団『沖ノ鳥島の維持再生に関する調査研究平成18年度報告書』に掲載された論説「島・岩についての国際法制度」 を再録。島田征夫早稲田大学名誉教授には、林先生の業績をメインにして追悼文を御寄せいただいた。  さらに、太平洋島嶼国の土地に関する憲法と領土主権についての論説、また、サンフランシスコ平和条約(1951)作成過程から連合国の竹島への認識と方針についての論説を掲載。  インサイトでは、2020年1月に虎ノ門に拡張移転した「領土・主権展示館」の前担当者が同館の理念と目的について著述した「新領土・主権展示館メイキング」を掲載。さらに2018年に福島で開催された「第8回太平洋・島サミット」首脳宣言に盛り込まれた、太平洋島嶼国の実施する海洋管理の新たな概念「zone based management」についての論述、そして連載中であるクラスカ米海軍大学校教授による論説「領海内の潜水艦による諜報」第3回の掲載である。コラムでは、尖閣諸島と北方領土に仕掛けられている「興論戦・心理戦・法律戦」の3つの戦争について著述している。

島嶼研究ジャーナル
第9巻2号

今号の論説は、中谷和弘東大教授によるアラブ首長国連邦(UAE) とイランとの領土紛争について考察した『アブムーサ島に関するイラン・シャルジャ間の了解覚書についての国際法上の考察』、下山憲二海上保安大学校准教授による遠隔地の帰属に関する先占基準の適用と沈黙が黙認となるのかを論じた『遠隔地に対する実効支配と関係国による沈黙の効果―尖閣諸島を題材として―』そして、第7巻2号から4回に渡って連載してきた、北方領土の法的諸権利を論じる『北方領土問題の歴史と諸権利(4)』が完結した。 インサイトでは、篠﨑正郎航空自衛隊幹部学校教官による英国の島嶼領土であるフォークランドの防衛についての考察『イギリスの防衛政策にとってのフォークランド紛争―本土防衛と島嶼防衛の均衡―』、第9巻1号から3 回に渡って連載予定のクラスカ米海軍大学教授による『虎の口に頭を突っ込む―領海内の潜水艦による諜報―(2)』では平時における潜水艦の諜報活動と海洋法について豊富な例を挙げて検討・分析を行っている。 コラムでは、2020年3月、虎ノ門に新設された内閣官房の発信事業「領土・主権展示館」について紹介する。

島嶼研究ジャーナル
第9巻1号

今号の論説は、一般社団法人太平洋協会理事長である小林泉大阪学院大学教授による、日本の約30年間にわたる南洋群島委任統治について論じた「南洋群島と日本による委任統治」、および8巻1号に引き続き掲載する「北方領土問題の歴史と諸権利(3)」である。インサイトでは、竹島領有権紛争に利用される小笠原諸島の帰属と地図をめぐる話が全くの架空であると証明する「小笠原諸島のいわゆる林子平恩人説と竹島」、最近の中国原子力潜水艦の領海侵入について法的問題点を挙げた「潜水艦の領海における潜水航行-中国の原子力潜水艦事件-」、平時における潜水艦の諜報活動と海洋法について豊富な例を挙げて検討・分析を行う「虎の口に頭を突っ込む(1)-領海内の潜水艦による諜報-」の3本。コラムでは、内閣官房の「領土・主権をめぐる内外発信に関する有識者懇談会提言」(2019年7月)「内外環境の変化を踏まえた発信強化の実践のために」を掲載した。また、国際事例として、インド洋に浮かぶモーリシャス共和国とチャゴス諸島の分離(1965年)について紹介する。