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一般事業 激変する社会と相互理解:行動的ネットワークの推進~研究活動の国際化

1996年
事業

21世紀に向けた公民教育:国際比較研究

事業実施者 ミネソタ大学(The University of Minnesota/米国) 年数 4/4
形態 自主助成委託その他 事業費 13,528,700円
事業内容
「教育は国家百年の計なり」と言われます。21世紀を目前にした今後25年間がどんな時代になり、それに対応する人材を育成するためにはどんな教育政策が必要とされるかは、現在多くの教育関係者が頭を悩ませている問題です。この問いに対して有用な示唆を与えてくれる国際共同研究事業が今回終了し、その成果が明らかになりました。過去4年間にわたって当財団が支援してきた「21世紀に向けた公民教育:国際比較研究」事業です。
この事業は、米国のミネソタ大学、タイのチュラロンコン大学、オランダのアムステルダム大学、および日本の広島大学を中心として、9ヵ国総勢26人の研究者が参加し、4年にわたって行われました。その主な内容は、今後25年間のグローバルトレンド、それに対応しうる人材の特質、そしてそれを養成するための教育政策、という3つのテーマに対して、民族学的デルフィー法という調査方法を使用して、各国の有識者間で意見の一致がみられるかどうかを調査しようとするものです。その結果、9ヵ国182人の有識者の間で、100近くの質問に対して43の項目でコンセンサスが得られました。これは、当初の予想をはるかに上回る比率でした。
特に興味深い調査結果をいくつかご紹介しましょう。まず、地球環境問題に対する認識の高さが浮き彫りになり、特に「企業は競争優位のために、環境に配慮した経営を行う必要がある」という項目で高いコンセンサスが得られました。これは、従来から言われている「企業は環境に考慮すべきである」といった規範的な認識ではなく、「環境に考慮しない企業は、市場経済の中で生き残れなくなる」ということです。環境問題に対する認識は、もはや新しい段階に入ったと解釈して良いでしょう。さらに、情報や知識といった分野で高いコンセンサスが得られたことも注目すべきでしょう。特に、情報技術がもたらす負の側面、たとえばプライバシーの問題や情報に対するアクセス能力の格差がもたらす不平等の増大などについて、有識者は共通して大きな懸念を抱いていることがわかりました。さらに有識者が、先進国と途上国との経済的格差など、あらゆる意味での格差に共通して大きな懸念を抱いていることも明らかになりました。
それではこのようなグローバルトレンドに対応するためには、どんな教育政策が必要とされるのでしょうか。これについては、批判的思考力を育成する教材の開発と、情報を批判的に評価する能力の育成、の2点で高いコンセンサスが得られました。
上記は、本研究から得られた成果のほんの一部です。本研究の成果は、すでに多くの国際学会で発表され大きな反響を呼び起こしています。当財団の助成はこれで完了しますが、助成先団体では、さらに調査結果をまとめた本の出版やザルツブルグ・セミナーでの発表などの普及活動、および地域をラテンアメリカやアフリカにまで拡張した研究活動の継続などが検討されています。SPFとしてもその展開をモニターしていきたいと考えています。

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