戦前の調査(1939年:正木)


1939年5月から6月にかけて、農林省農事試験場の資源調査隊(小林純氏・高橋尚之氏、古賀商店の多田武一氏ほか14名)が尖閣諸島を含む南西諸島鉱物資源調査を行っている。この中で、尖閣諸島の調査に同行した正木任氏(石垣島測候所、生物学者)は、雑誌「採集と飼育」に、調査によって確認・採集した魚釣島、北小島、南小島、久場島の植物、鳥類、昆虫類、蝶類、貝類、蟹類などについて記載・報告している。
魚釣島で発見した、アツマイマイ、タダマイマイは新しく記録されたものだとしている。

北小島・南小島では、僅かに200m程度しか離れていないものの、北小島にはセグロアジサシが、南小島にはリウキウカツヲドリが大群をなしており、それを異様に感じるとしつつ、北小島のセグロアジサシの大群は、杖にて叩き落とせるほどで、3~4町歩くらいの平地には全部セグロアジサシが棲息しており、飛び上がるときに空を真黒く曇らせ、ステッキを一振りすると2~3羽は捕れたとその驚きを記している。また、魚釣島には野鼠が多いことは注意を要すると述べている。

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提供:沖縄テレビ放送株式会社(沖縄県公文書館へ寄託 撮影:小林純)
上:北小島と南小島の間に棲息する海鳥 中:おびただしい数の海鳥 下:雛の様子(北小島)
いずれも農林省資源調査団(1939年)による調査時に撮影されたもの

久場島では鰹鳥(カツオドリ)が多く、黒鯵刺(クロアジサシ)、水凪鳥(ミズナギドリ)がおり、新しく採集されたものとしてマサキベツカフマイマイを報告している。

大正島ではクロアジサシ、セグロアジサシ等が見られ、リウキウツバメ、イハツバメ、リウキウアカセウビン、ヨシゴイ等も棲んでいると報告している。また、潮の干満線の岩にはフジツボがたくさんついており、大きい岩の凹みの水たまりにニシキエビが群れをなして棲んでいるのが見えたと述べている。

なお、大正島の生物に関する報告は、この正木によるもののみが知られている。

正木氏は、同報告の最後で、魚釣島の原生林の保護、北小島のセグロアジサシの大群、久場島のカツオドリ、ミズナギドリ等の濫獲の取締り等は、緊急必要なことで、セグロアジサシの繁殖地として天然記念物の指定を行い、北小島の上陸禁止を求めている。


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Ref.1 :正木任「尖閣列島を探る」『採集と飼育』第3巻第4号(1941年)


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→ 農林省資源調査団・石垣島測候所による調査(1939年)