尖閣諸島に生息するアホウドリ


尖閣諸島は歴史的にアホウドリ、クロアシアホウドリ、セグロアジサシ、カツオドリといった海鳥の繁殖地である。(Ref.1)

日本の特別天然記念物であるアホウドリは、150年ほど前までは北西太平洋の島々に広く分布し、少なくとも数十万羽いたと考えられているが、19世紀後半から20世紀前半にかけて羽毛採取のため乱獲され(Ref.2)、絶滅寸前の約45羽まで減少したと考えられている 。(Ref.3)

現在、アホウドリの繁殖地は、世界でもたった2箇所、伊豆諸島鳥島と、尖閣諸島(北小島、南小島)が数えられるのみである。(但し、2011、2012年には太平洋ミッドウェー環礁において1組の繁殖が確認されている 。) (Ref.4)

尖閣諸島のアホウドリは、1891年以降羽毛採取のために乱獲され、1963年には琉球文化財保護委員会の委嘱により高良鉄夫氏(琉球大学教授)が調査団を組織して調査を実施したが、アホウドリ発見の報告はなかった(Ref.5)。

しかし1971年の琉球大学調査団によって71年ぶりに再発見された(池原・下謝名の報告) 。(Ref.6)

日本では特別天然記念物や「種の保存法」の対象種に指定されている 。(Ref.7)

伊豆諸島の鳥島では、長谷川博(東邦大学教授)、山階鳥類研究所を始めとする研究者たちの長年の保護活動により、2012年には推定個体数が3,000羽を超えるまでに回復したが(Ref.8) 、2011年に発表された研究論文によると、この世界に2つしかない繁殖群である尖閣諸島と伊豆諸島の鳥島のアホウドリは、集団遺伝学的に異なった系統の群であり、別個の種である可能性が高いとの遺伝子解析結果が発表されている。また、これにより、早急に尖閣諸島アホウドリ繁殖群の現状調査と保護への取組が急務であるとしている。(Ref.9)


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Ref.1 : 尖閣諸島文献資料編纂会「尖閣諸島海域の漁業に関する調査報告-沖縄県における戦前~日本復帰(1972年)の動き-」『尖閣研究』(2009年)

Ref.2 :山科鳥類研究所「アホウドリ復活への展望」『山科鳥類研究所ホームページ』(2011年)

Ref.3 : 黒尾・米川・齊藤・松葉・長谷川「アホウドリの集団遺伝学-共同研究の発表-」『アホウドリ復活の軌跡』東邦大学バーチャルラボラトリ(2002年)

Ref.4 :長谷川「ミッドウェー環礁から、アホウドリのひなが今年も巣立つ」『アホウドリ復活の軌跡』東邦大学バーチャルラボラトリ(2012年7月6日)

Ref.5 :高良鉄夫「尖閣のアホウドリを探る」『季刊「南と北」』第26号 南方同胞援護会(1964年3月)
(尖閣諸島文献資料編纂会『尖閣研究高良学術調査団資料集(上)』(2007年)161-169ページに収録)

Ref.6 :池原貞雄・下謝名松栄「尖閣列島の陸生動物」『尖閣列島学術調査報告』琉球大学(1971年)p.85

Ref.7 :長谷川博『アホウドリ復活への軌跡』東邦大学バーチャルラボラトリ

Ref.8 :長谷川『第108回鳥島オキノタユウ調査報告』東邦大学バーチャルラボラトリ(2012年6月4日)

Ref.9 :Eda, M., Koike, H., Kuro-o, M., Mihara, S., Hasegawa, H., & Higuchi, H. 「Inferring the ancient population structure of the vulnerable albatross Phoebastria albatrus, combining ancient DNA, stable isotope, and morphometric analyses of archaeological samples.」『Conservation Genetics』13(2012年)pp.143-151