1969・70・71年 尖閣諸島周辺海域での海底地質調査(総理府委託)

尖閣諸島周辺の海洋地質について、尖閣諸島周縁部、尖閣諸島北西から東部に渡る東シナ海大陸棚上で、日本政府総理府の委託により東海大学が3次(1969年~1971年)にわたり調査・報告を行った。調査は、東海大学海洋学部を主体とし、石油開発公団、琉球政府、琉球大学等が参加した調査団により行われ、一般海洋観測(気温・水温・塩分等)、海底地形調査、採泥およびサンプル分析による底質調査、地磁気観測、音波探査による海底下の地質構造調査および魚釣島・大正島等陸上の岩石採集を行った。(Ref.1~Ref.3)

調査は、海底資源調査の概査の位置づけで行われ、東シナ海大陸棚に広がり、石油埋蔵の可能性が期待されていた堆積盆の構造をより明確に把握することや(ECAFE, 1969年, No.17参照)、尖閣諸島から沖縄に至る地質構造の連続性の解明、それに伴う地史の解明に主眼が置かれた。(ECAFEの調査測線は100km間隔であった。本調査は15km~30kmの間隔で行われている)。(Ref.1~Ref.3)


海底地形の特長と底質との関係

調査海域は、アジア大陸に沿った大陸棚の外縁部に位置する。大陸棚は、全体的に水深100m~160mで、北部では水深100~120mの平坦面が広く発達している。大陸棚上には、比高10m以下の丘状の地形があり、細かな起伏が確認されている。久場島と大正島の間に海底谷が存在することや、大正島の東方にも海底谷があることなどを明らかにしている。(Ref.1・Ref.3)

大陸棚外縁は、北東部で水深160m前後、南西部で水深140mと浅く、これら南部の外縁部に位置する魚釣島・北小島・南小島の周囲には島棚地形があることが認められるが、久場島・大正島には認められない。大陸棚斜面は、水深200m前後の縁辺台地外縁から始まり、水深1,300m前後から始まる沖縄舟状海盆あるいは水深2,200m付近の深海平坦面に続く、斜面上には水深120m~150m、250m~270m、350m~380mに傾斜変換点が存在するとしている。(Ref.1)

調査海域付近は西側から東側へと傾斜しており、その中央部には大きな凹地形が認められる。第1次調査の70地点におよぶ採泥調査の結果を海底地形と対比してとらえれば、大まかに見れば、この凹地形にはgrey silt~silty sandが堆積しており、それを取り囲むようにして外縁部にはやや粒度の粗いgrey sand等が分布しているとしている。(Ref.1)

海底地形は非常に複雑であり、魚釣島周縁にも、その北方の大陸棚上でも、特殊な地点には基盤を構成する新第三紀層と思われる岩石が露出していることが判明している。(Ref.1)


地質構造

第1次調査の音波探査記録の解析から、調査海域の地質構造区分を示し、最も東側の大陸棚外縁部が、褶曲度が最も大きく、多数の小断層、火山岩と考えられる反射を伴う褶曲帯が確認されている。この褶曲帯に向かって、西から東に地層が薄くなっていく傾向が認められる為、相対的にはこの帯は堆積量が少なく隆起性の構造区であったと推定されている。この隆起帯に対応するように、西部にも褶曲度は小さいが、緩やかな褶曲帯Bがあり、同様に、ここも隆起の構造区に属すると考えられている。緩やかな褶曲帯Bと外縁部の褶曲帯の間には向斜状の沈降帯があり、沈降帯と外縁部の褶曲帯の間は緩やかな褶曲帯がある(緩やかな褶曲帯A)。これらの構造区は、大陸棚を画する水深200mの線の方向にほぼ平行に分布している。(Ref.1)

第2次調査の結果からは、大陸棚基底に広がる堆積岩は予想より厚く、その層厚は3,000m以上であると考えられる。ただし、これらの堆積岩や上記の火成岩については、地質年代を決定する直接的な資料はないものの、石垣島・大正島などの地表資料から、迸入時期がおそらく新第三紀に属するものが多いと思われるとしている。褶曲帯を伴う堆積盆地の形成時期についても、決定的な資料は得られていないが、魚釣島から採収した岩石の時代がおそらく新第三紀のものと考えられることと、底質調査の資料からも同様の推定が可能なことから、尖閣諸島海域に分布する堆積岩のかなりの部分は、台湾・日本における主要な産油層準である新第三紀に属していると考えることができそうだとしている。(Ref.2)

第3次調査では、音波探査記録の反射強度やその特徴を整理し、採泥したサンプルの分析(微化石分析等)や地磁気測定の結果も加味して地質構造を12のユニットに区分し、褶曲帯A、Bなどとの関係を整理している。この中では、琉球海盆北西部に適度の褶曲を伴う厚い堆積岩が分布し、将来は石油、天然ガス探鉱の対象となるであろうとし、また大陸棚部では第三紀層中に顕著な不整合面があり、石油等資源調査の観点からは、その面より下層を調査すべきであると述べている。(Ref.3)


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Ref.1 :東海大学『尖閣列島周辺海底地質調査報告書』(1969年)

Ref.2 :東海大学『尖閣列島周辺海底地質調査報告書』(1970年)

Ref.3 :東海大学『尖閣列島周辺海底地質調査報告書』(1971年)