尖閣諸島の地質


魚釣島・北小島・南小島の地質
魚釣島、北小島、南小島には、礫岩・砂岩を主とする堆積岩層が分布発達する。これは魚釣島層と命名され(松本・辻,1973)、3島の大部分を構成している。この他、迸入火成岩類、隆起サンゴ礁、崖錐堆積物、現世堆積物から構成される。それらの層序・年代・分布は下表・図のように報告されている。魚釣島層は、砂岩、含礫砂岩が中心で、礫岩がそれに次ぐ。一部には10数cmの炭層、稀にシルト層を挟んでいる。魚釣島で300m以上の層厚を有する。この層の地質年代は示準化石が未発見であり、年代の特定や対比は今後の課題とされているが、西表島および周辺に分布する八重山層群に類似していることから、中新世の可能性が強いと考えられている。(Ref.1)

また、日本政府沖縄開発庁は1979年5月から6月にかけて魚釣島西部、北東部、東部の3地点(いずれも海岸近くの平坦面)でボーリング調査を実施(深度は順に20.00m、18.38m、20.20m)し、岩相の分析や層厚分布、孔内水位の確認等を行い、地質調査結果との対比を行っている。また、サンプルの一軸圧縮試験も実施し、これらの結果から利用開発可能性の検討を行っている。(Ref.2)

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出典(上・中・下):沖縄開発庁『尖閣諸島調査報告書(学術調査編)』第4章(松本・林)(1980年)

久場島の地質
久場島は数個の噴火口をもった火山島であり、岩石は輝石安山岩、溶岩、火山弾、軽石、石灰岩等からなる。岩石の分布は上部から、軽石・火山弾、溶岩流、石灰岩(現世隆起サンゴ礁の一部分)、輝石安山岩と考えられている。溶岩流は主に約20mから40mの高度にかけて分布し、島の北部・西部に比較的よく分布している。島の南部で植物が繁茂している。隆起サンゴ礁の形成前後に火山活動があり、頂点の噴火口の直径は約30m、深さ20mである。山の中腹にある小さな噴火口は直径が約15m~20m、深さが10m位である。軽石と火山弾は噴火口周辺に見られる。島の生成時期については、斑状の石灰岩の存在、溶岩流の保存状態、火山地形の残存状態、貧弱な動物相、未成熟の植物相等の点から第四紀、一部はおそらく沖積世と考えられる。(Ref.3)

大正島の地質
島から採集した岩石からの推察では、安山岩、角礫凝灰岩、凝灰質砂岩からなると考えられ、地層は水平に近い状態で、現世隆起サンゴ礁が島の周囲によく発達しているようであるとの報告がある。(Ref.3)


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Ref.1 :沖縄開発庁『尖閣列島調査報告書(学術調査編)』第4章(松本・林)(1980年)

Ref.2 :沖縄開発庁『尖閣列島調査報告書(利用開発可能性調査編)』(1980年)

Ref.3 :野原朝秀「尖閣列島の地質(予報)」『琉球大学尖閣列島学術調査報告』(1971年)