戦前の北方領土の気候

西側はオホーツク海に、東側は太平洋に面しており、黒潮(暖流)と親潮(寒流)の影響をうけた気候で、比較的寒暖差が緩慢である。冬季の平均気温は、マイナス4~マイナス5℃と釧路地方に比べて温暖で、北海道南部に類似する。一方、夏季には濃霧が発生するため日照時間が少なくなり、さらに海からの冷たい風が流入することによって気温は低くなる(Ref.1)。択捉島では5月~9月にかけて濃霧が30回以上発生するといわれている(Ref.2)。
秋~冬季にかけて、オホーツク海側では大陸からの強い季節風の影響によって降水量が増し、冬季は連日のように降雪がある(Ref.1)。
年間を通して風が吹き、特に冬季は雪を交えた猛烈な偏西風が吹くことがある(Ref.1)。
1月~3月頃には、オホーツク海側を中心に流氷が接岸し、海岸は結氷する。太平洋側にもまれに漂着することがあるが、海岸が結氷することはほとんどない(Ref.3)。太平洋側に位置する国後島の古釜布港や択捉島の年萌港は、冬でも凍らない不凍港であっため北海道本島との連絡港として有望な港とされた(Ref.4)。

tit
Ref.1:北海道『戦前における歯舞・色丹・国後・択捉諸島の概況』(1958年)pp.3-8
Ref.2山田順太郎「択捉島ノ濃霧二就テ」『気象集誌』第1輯23巻(1904年)pp.5-11
Ref.3岩波常景「千島列島沿岸ノ流氷」『気象集誌』第1輯23巻(1904年)pp. 93-102
Ref.4:北海道千島調査所編『千島調査書』領土復帰北方漁業対策本部, 1956年(昭和14-16年の調査)p17