北方領土の神社

北方領土には、実に60以上の神社が確認されている。北方領土の神社は、寛政~文化年間にかけて、漁場を中心に創祀されたのがはじまりとされる。その後、多くの人々が渡島して開拓が進むにつれ、心のよりどころとして神社を創建し、大漁豊作や生活の平穏を祈った。祀られた祭神は金刀比羅大神を祀るものが多数をしめるものの、一様でなく、中には仏像をご神体として祀っていた神社も存在した (Ref.1)。
神社名は、鎮座地名を社名とする神社、祭神名を社名にする神社、地名と祭神名前を社名とした神社に大きく分類される。北方領土では、アイヌ語地名をカタカナ表記したものがみられるが、神社名にもカタカナ表記のものがいくつか存在する。例祭は6月~10月に行われ、祭典の費用等は寄付によるものが多かった(Ref.2)。
北方領土には神社のほか、20を超える仏教の寺院説教所があり、また色丹島にはハリストス正教会の教会も存在した(Ref.3)。

これら北方領土の神社について、元島民への聞き取り調査が行われた15社のうち、終戦後根室へ奉遷できたのは12社であったとされる。奉遷できたご神体のほとんどは、氏子がソ連兵の監視の隙をついて密かに社殿に入り持ち出されたものであった(Ref.4)。

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Ref.1:北方領土文化日露共同学術交流実行委員会編『北方領土の神社』札幌:北海道神社庁2005年, p.18
Ref.2:北方領土文化日露共同学術交流実行委員会編『北方領土の神社』札幌:北海道神社庁2005年, pp.29-30
Ref.3:北方領土文化日露共同学術交流実行委員会編『北方領土の神社』札幌:北海道神社庁2005年, pp.61-67
Ref.4:北方領土文化日露共同学術交流実行委員会編『北方領土の神社』札幌:北海道神社庁2005年, pp.153-159