島登の硫黄鉱床

羅臼(らうす)火山の北方中腹(標高350m)にあった硫気孔(りゅうきこう)付近には、未開発の硫黄鉱床があった。この鉱床は島登硫黄山(しまのぼりいおうざん)として、主に三井物産会社が明治12~21年まで小規模の採掘を試したが、明治22年には原鉱が尽きて休止した。直径1mほどの大きな噴気孔が2つあり、水蒸気および亜硫酸ガスを噴出しており、孔口の周囲には昇華硫黄が堆積していた。一部では溶融硫黄もみられ、激しい活動であったことがわかる(Ref.1)。

国後島では、島登の硫黄鉱床のほかに下表の鉱床が有望視され、調査と開発に強い期待がもたれていた (Ref.2)。

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左上 精錬所(鉱石からとった金属を精錬すること)
右上 選別所(とり分けること)倉庫
(泊村秩苅別(ちぶかりべつ)二木城地区島登)
写真提供:千島歯舞諸島居住者連盟

国後島の鉱山と鉱種(Ref.2)
鋼種 地名
金、銀 留夜別村精進川(千寿鉱山)
同村レバウス地方(見初鉱山)
同村シャシコツ、ノッカップ間海岸
同村ルルヰ岬東南方ローソク岩付近チップトマリ、ソコベツ間
泊村秩苅別信州沢およびターロベツ川付近
鉛、亜鉛 留夜別村ローソク岩付近(鳳凰鉱山)
泊村古丹消
硫化鉄 同村瀬石鉱山付近
硫黄 同村瀬石、羅臼山北方中腹(旧島登山)
留夜別村ルルヰ岳中腹
砂鉄 泊村ムニヨラシベツ

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Ref.1:北海道千島調査所編『千島調査書』領土復帰北方漁業対策本部, 1956年(昭和14-16年の調査)p.95
Ref.2:北海道総務部領土復帰北方漁業対策本部『戦前における歯舞・色丹・国後・択捉諸島の概況』(1958年)p.40