2010年
事業
災害応急マニュアル作成支援
事業実施者 | 笹川平和財団 日本中国アジア経済戦略フォーラム(日本) 中国人民大学公共管理学院(中国) |
年数 | 2/2 |
形態 | 自主助成委託その他 | 事業費 | 9,401,189円 |
- 防災専門家の訪日、講師派遣及び情報発信(日本中国アジア経済戦略フォーラムに助成):
中国人民大学公共管理学院が、国内研修の準備のために四川省の防災分野の専門家グループを日本に派遣する。専門家たちは兵庫県を中心に、日本側専門家と共同で中国国内研修用のカリキュラムを作成する。専門家グループの訪日の受入は、日本中国アジア経済戦略フォーラムが行う。また、同フォーラムは中国国内研究に日本側専門家を講師として派遣するとともに、研修を通じて蓄積された素材を活用し、Web site「日中防災・減災ネットワーク」を立ち上げ、事業成果の発信を試みる。 - 中国国内研修(中国人民大学公共管理学院に委託):
秋に中国人民大学公共管理学院が日本側パートナーの協力を得て、中国各地の地方政府における防災担当責任者200名を募集し、災害応急マニュアルの作成と活用を目的とした研修を行う。なお、講師は日本中国アジア経済戦略フォーラムより派遣された日本人専門家が務める。また、研修の成果を活用し、災害応急のためのモデルマニュアルを作成し、全国の関係部署に配布する。 - 関連団体との連絡調整:
笹川日中友好基金は各関連団体間の連絡と調整を担当し、事業の円滑な展開を図る。
2009年度には、2008年5月の四川大地震の被災地の防災担者たち20名を日本に招へいし、兵庫県や神戸市を中心に、災害応急マニュアルの作成と活用をテーマに研修を実施しました。
そして研修参加者たちは帰国後、総括会議を開き、日本で習得したことを地方の防災行政の関係者に周知させるべく、報告会、講習会などの形で成果を活用する努力をしています。たとえば、メンバーの一人、中国人民大学の王宏偉教授が作成した研修報告書は、論文として中国民政部の減災専門誌に発表されました。
2009年度の報告書(日本語、中国語)、それに王宏偉氏の論文(中国語)は以下をクリックしてPDFでご覧いただけます。
2010年の活動計画
2010年度の活動の中心は、8月中国人民大学で行われる全国の防災行政関係者200名を対象とした国内研修です。現在は研修に向けて、次のような準備を進めています。1.四川省の防災専門家の日本招へい
四川省の防災関係者と中国人民大学の専門家一行7名が6月20日から、日本中国アジア経済戦略フォーラムの受入で、6泊7日の日程で来日します。目的は、兵庫県や神戸市を中心に、防災行政の現場を視察し、日本側の防災専門家との交流を通じて、日本の応急管理のシステムの詳細について理解を深めるためです。帰国後、防災現場担当者の視角から訪日の成果を中国人民大学の専門家たちにフィードバックし、国内研修のプログラムの作成の参考にします。日本滞在期間中、一行は下記の日程案に基づいて日本側関係者と交流する予定です。
一日目:兵庫県防災局と交流、兵庫県防災センター視察、神戸市危機管理室訪問、専門家による講義
二日目:総合避難場訪問、市民団体と交流、神戸大学都市安全研究センターの専門家による講義
三日目:淡路島野島記念館見学、長田災害後復旧の見学
四日目:京都大学防災研究所訪問、災害情報の発表と共有に関する講義、京都の史跡視察
五日目:内閣府防災担当者と交流、東京消防庁訪問・交流
六日目:東京警視庁訪問・交流、総括会議、都内視察
七日目:帰国
2. 研修用教材の作成
中国人民大学公共管理学院にある公共政策と公共安全研究所の王宏偉教授が中心になって、国内研修用の教材の編集作業を進めています。同教授は、中国における災害応急分野の専門家の一人で、前年度四川大地震の被災地を対象とした事前調査でもリーダーシップを発揮し、7月の事前準備のための訪日視察および11月の訪日研修にも参加しました。日本を含め、欧米各国の防災行政について造詣深い方です。王教授たちのグループは、現場の防災関係者たちの意見を聴取した上で、日本との一連の交流を通じて蓄積した素材に欧米諸国の経験を加え、夏の国内研修者用の教材の作成に当たっています。6月上旬に出版原稿を完成し、8月の国内研修の会場で、応急マニュアルのパイロット版を配布すべく、その準備も進めています。作成された教材は、中国人民大学での国内研修で活用されるのみならず、汎用性の高い資料として中国の防災関係者たちに広くいきわたり、中国の防災行政全般のレベルアップに貢献することが期待されます。3.中国人民大学での国内研修の準備
8月8日から14日にかけて、中国の地方政府の防災担当者200名を対象に、防災マニュアルの整備と活用を中心内容とした研修を中国で実施します。研修の実施者は、中国の党・政府幹部を育成する大学として名高い中国人民大学の公共管理学院です。同学院が中国各地方政府の協力を得て、四川省はじめ、各地の防災担当部署から研修参加者を募集します。また、2010年4月青海省玉樹チベット自治区で発生した大地震でも、災害応急マニュアルの整備と活用上の問題があきらかとなりました。そこで今回の国内研修では、青海省被災地の防災関係者のための優先枠を決め、その災害応急面の緊急課題にも対応する予定です。
なお、この研修は、日中双方の緊密な連携によって実施されます。2009年の訪日研修を実施した日本中国アジア経済戦略フォーラムが防災分野の日本人専門家を派遣し、中国側専門家と共同チームを組んで、研修者の指導に当たります。
一方、中国人民大学公共管理学院では、現在研修参加者の募集と、研修プログラムの作成など準備を進めています。
6月20日から26日まで、四川省の防災関係者と中国人民大学の専門家一行7名が6泊7日の日程で来日しました。日本側の受け入れは、日本中国アジア経済戦略フォーラムが担当しました。来日の目的は日本の応急管理のシステムの詳細について理解を深めるためで、具体的には兵庫県や神戸市を中心に防災行政の現場を視察し、専門家との交流を図りました。
日本滞在中のスケジュール
日付 | 訪問先など |
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2010年6月20日(日) | CA関西空港着、午後:オリエンテーション |
2010年6月21日(月) | 午前:兵庫県防災企画局訪問、兵庫県災害対策センター視察、午後:神戸市危機管理室で講習会 |
2010年6月22日(火) | 午前:人と防災未来センター訪問、意見交換会、午後:兵庫県広域防災センター 訪問、終了後淡路島野島断層視察、夜:フォーラム主催夕食会 |
2010年6月23日(水) | 京都大学防災研究所訪問、京都市内見学、終了後新幹線で東京へ移動 |
2010年6月24日(木) | 午前:東京都庁訪問、東京都庁総合防災部「行政の危機管理体制」に関するレクチャー、都内の人口集積地区(市街地)の考察、東京大学生産技術研究所会議室(意見交換)、日本の防災体制,防災課題,新たなトピック東京大学工学部危機管理講座、防災研究者・財団関係者と夕食会 |
2010年6月25日(金) | 午前:墨田区防災まちづくり見学視察、午後:東京消防庁本所防災館:市民に対する防災教育、のち帰国準備 |
2010年6月26日(土) | CA422 成田空港発で帰国 |
2010年8月9日から13日まで、北京の中国人民大学で「全国応急管理幹部高級研修」が行なわれました。これは、日中の防災専門家が中国各地域の防災担当者に講義するための研修です。
この研修には、大地震に見舞われた四川省、青海省だけでなく、中国全土から防災担当者など約200人が集結しました。講師は、中国行政学副会長で国務院の応急管理専門家である高小平氏や、中国人民大学副教授王宏偉氏らが担当。日本からも関西大学教授河田惠昭氏、前兵庫県副知事・元兵庫県防災監の齊藤富雄氏、総務省消防庁国民保護・防災部参事官の深澤良信氏が講師として参加しました。
2009年は中国人民大学公共管理学院と四川省政府の協力を得て、四川大地震被災地の応急弁公室の防災担当責任者で構成される研修団を招へしました。研修参加者たちは、兵庫県、新潟県、東京都などにおいて、中央や地方政府、民間団体、大学研究機関、企業や学校などを訪問し、現場視察、講習会、意見交換会などの形で、防災応急マニュアルの作成と活用を主な内容とする研修を行いました。
2010年は、中国での防災・減災の研究と行政官のトレーニングの最先端を担う中国人民大学公共管理学院と連携し、地方政府の防災政策、防災マニュアルの整備と活用、地域防災と災害復興について、中国の各省と自治区の応急弁公室の防災担当者200名を対象に、一週間の研修を実施しました。日中双方の専門家が協力して研修プログラムを作成し、両国の防災分野の著名な専門家が共同で研修指導に当たりました。また、日本の防災減災の経験を汲み入れたモデル災害応急マニュアルが中国人専門家の手によって開発され、国内研修の教材として活用されたほか、全国の地方政府の関係部署にも広く配布されました。研修の成果は、中国の地方行政の緊急課題にである災害応急マニュアルの整備に対する実際的効果が期待されます。
そして、一連の活動を通じて蓄積された素材を活用し、日中防災減災Web siteを立ち上げられました。このWeb siteを活用し、四川省の中学校を対象に、日本の防災減災の経験を伝えるためのE-learningのテストも実施され、防災教育が社会各層への普及を促進する効果が期待されています。