岸田政権が年末に予定する国家安全保障戦略(NSS)の改定に伴い、関連政策に位置づけられる「開発協力大綱」も翌年(2023年度)に改定する方向で検討されている[1]。新型コロナウイルス感染症の発生やロシアによるウクライナ侵攻など世界規模での影響を及ぼす事態が発生していることに加え、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想を通じた日本外交の強化や経済安全保障も念頭に置く[2]。かねてより、日本は自らの外交力を高め自国経済を利する「ODAの戦略的活用」を積極的に展開してきた。今回問われるのは、それらを抜本的に強化するためのODA予算の増額と、援助の領域でも密接化しつつある軍事・安全保障との関係である。開発協力の関係者にとって前者は朗報であるが、後者については危惧する声も少なくない。
本稿では、日本のODA政策と安全保障の関係に焦点を当て、一部に危惧されているODAを用いた軍に対する協力について考察する。
安全保障分野における日本のODA政策
日本国憲法の定めるところにより、日本は対外政策において軍事力を用いて他国を威嚇し強制を強いる選択肢を持たない[3]。よって、政府開発援助(ODA)に代表される経済協力は、日本の政策手段のなかでもとりわけ重要な役割を担ってきた。日本は現在、一般会計歳出の約0.5%(令和4年度は5,105億円相当)を経済協力に充てている[4]。これは防衛費の1割程度(同5兆3,687億円)であり、拠出額としてはピーク時の半分程度に留まる。しかし、規模でいえば日本は未だ世界第4位の援助提供国(ドナー)であり、国際社会において相応の存在感と影響力を有している。
国際安全保障に直結する分野では、日本は紛争国・脆弱国での人道および平和構築支援を丹念に行ってきている[5]。「開発なくして平和はない」[6]という至言のとおり民生の安定と発展は平和の条件そのものであり、ODAを通じた相手国の経済発展・社会開発は当該国や周辺地域の安定にも作用する。イラクやアフガニスタンでの復興支援ではODAは自衛隊や他国軍の実施する作戦を民生側から補完する役割も担ってきた[7]。各国の司法、警察、国境警備隊、海上保安機関といった統治・治安機構の能力向上に向けた協力も継続的に実施してきており、近年では特に海洋安全保障への協力が重視されている[8]。
この流れを基本政策として位置づけたのが前述の、2013年(平成25年)末に策定されたNSSだ。NSSはODAなどの関連政策に対し「指針を与えるもの」とされ、日本の対外援助スキームの穴(後述)を埋めるべく、非軍事の考え方から従来は実施されてこなかったODAによる相手国軍に対する支援実施体制の整備が盛り込まれた[9]。これを受けて2015年(同27年)に策定された開発協力大綱では、「軍事的用途及び国際紛争助長への使用の回避」という従来の協力原則を維持しつつも、「民生目的、災害救助等非軍事目的の開発協力に相手国の軍又は軍籍を有する者が関係する場合には,その実質的意義に着目し,個別具体的に検討する」と適用要件を緩和した[10]。
実際、東日本大震災での自衛隊の出動に見られるように、大規模な自然災害に際しては、広域において自立的に輸送・通信・各種支援を展開することのできる軍の働きは不可欠だ[11]。社会インフラが脆弱な途上国ではなおさらである。民生分野においても、たとえば、人道支援物資の輸送、人権および国際人道法の理解促進、感染症予防・対策に関する知見共有などにおける相手国軍への協力は、日本の開発協力が準拠するOECD開発援助委員会(OECD-DAC)でも認められるケースに該当する[12]。開発協力大綱での記述は従来よりも踏み込んだものとなったが、適切な運用を伴う限りにおいては、国際合意の範疇において自国の政策の幅を広げる合理的なものであったと言えよう。
安全保障の比重が高まる開発協力大綱の改定
2022年4月26日、自民党の安全保障調査会は「新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言」を公表した[13]。報道では防衛関係費の増額要求や、いわゆる「敵基地攻撃能力」の付与が注目を集めたが、本稿で取り上げるODAの戦略的活用も含め、非軍事の領域においても日本の安全保障について多面的な検討がされている[14]。
ODAに関しては、「『自由で開かれたインド太平洋(FOIP)』の推進及び同盟国・同志国等との連携強化」の項において、地域の海洋安全保障や経済秩序の維持、連結性の発展に向けて、日本政府の有する対外政策手段を「有機的に連携」させ、「特にODAを大幅に拡充」して地域の安全保障に戦略的に用いるべきであると提言されている[15]。
もとより、政策関係者の間では「ODAの戦略的活用」はかねてより唱えられてきた。開発援助は途上国の社会経済発展を後押しし、気候変動や感染症対策など地球規模課題の解決にも欠かせない。しかし援助を提供する側(国)にとっては、ODAは対外政策目標の達成手段でもある。筆者が委員を務める外務省の開発協力適正会議においても、新規案件の検討においては外交的な意義や輸出入における便益など国益との関係が意識されている[16]。近年は特に、日本の相対的な国力の低下とそれに対する危機感を背景に、ODAという限られた政策資源の有効活用において国益の側面が重視される傾向にある。
そのわかりやすい例が「質の高いインフラ投資」だ。2000年代以降、多くの国が中所得国層に移行して途上国経済に莫大なインフラ整備の需要が生まれ、ODAには民間企業による投資やインフラ受注を促進する触媒的な役割がより強く求められるようになった。2013年には、拡大するインフラ需要を「取り込む」ことを念頭に首相官邸に内閣官房長官を議長とする「経協インフラ戦略会議」が設置された。今では「質の高いインフラ投資」はFOIP構想の柱のひとつとして、経済面からインド太平洋地域の平和と安定を支える屋台骨となっている。地域主体による発展を支え相手国・地域の財政および政治的な自律性を高める日本のアプローチは、中国が「一帯一路」構想に基づき推進する独自の経済協力の対極の価値を提示しており、望ましい安全保障環境の整備という点において重要な役割を担っている[17]。
今年5月に東京で開催された日米豪印(クワッド)首脳会合の共同声明では、今後5年間においてインフラ分野で500億ドル以上の拠出を行う方針が示された。また、「インド太平洋地域における日米豪印HADR(人道支援・災害救援)パートナーシップ」の立上げ、感染症対策・宇宙・サイバー・気候変動・海洋状況把握など、インド太平洋地域において重要性を増す非伝統的安全保障の分野あるいは軍民デュアルユース技術の領域において域内国への支援を強化する旨が示されている[18]。さらに、先日シンガポールで行われたアジア安全保障会議(シャングリラ会合)では岸田文雄首相が「平和のための岸田ビジョン」を表明し、その第1の柱においてODAの拡充を通じたFOIPの強化が強調された[19]。国家安全保障戦略の改定において、インド太平洋地域でODAを戦略的に活用するという自民党の提言はこの流れを後押しする。
開発協力大綱の改定においては、従来の脆弱国支援に加えて、台湾有事も念頭に、ウクライナのように軍事侵攻された国・地域やその周辺国に対する支援の在り方も検討される可能性がある。また、米国および価値観を共有するパートナー国との連携や、安全保障上重視される地域や分野の絞り込み、ODA卒業国への協力スキームなども検討されることになるだろう。それらはインド太平洋地域をはじめとした国際秩序の維持に不可欠であり、資源確保やサプライチェーンの強靭性を高めるといった経済安全保障の側面においても重要になる。具体的な支援策においては、次節で検討するような相手国軍に対するODAによる直接的な支援も含まれるかもしれない。
軍事・安全保障との切り分けがより難しくなる
日本は、2021年に陸上自衛隊が使用する人命救助機材セットをフィリピン軍に対してODAによって供与した。これは2015年に日本とフィリピンが締結した「防災機材ノン・プロジェクト無償資金協力」(供与額:5億円)を根拠とするもので、11月には供与された機材を用いて陸上自衛隊がフィリピン軍に対して運用訓練を提供している[20]。フィリピンとの関係強化に向けて「ハードとソフト両面で相乗効果(吉田圭秀陸上幕僚長)」を出すことを狙うとされる[21]。実際、この案件は日本がODAを活用して自衛隊が使用する装備を他国の国防当局に供与する初の事例となり、安全保障協力に関心を有する研究者らの間では俄かに話題となった[22]。
ではなぜ、自衛隊の運用する人命救助システムをODAでフィリピンに供与することが注目されるのか。その理由は3つある。第1は、前述の吉田陸幕長の発言にあるように、ODAによるハード(器材)の提供、自衛隊によるソフト(運用に資する能力構築支援)の提供という相互補完の関係が成立するからである。実は、防衛省・自衛隊には他国との安全保障協力における新規装備品の供与枠組みが存在しない[23]。これが日本の対外援助スキームの穴であり、たとえフィリピン軍から人命救助の能力構築支援の要請があったとしても、防衛省から同システムを供与することはできないのである。しかし、今回の案件を機に、民生に資する支援としてODAによる自衛隊装備の供与が可能となれば、ハードとソフトを組み合わせた支援案件の検討の幅は広がり、今後の展開につながる。
第2の理由は、この案件が防衛省によるODA供与という可能性を切り拓くかもしれないからである。前述のとおり、OECD-DACは相手国に対する軍へのODA供与について限定的に認めている。今回の案件はフィリピン政府との既存の合意に基づいて外務省によるODA供与がなされているが、OECD-DACの規定では実施主体が政府機関であること以外は問われていない。海外ではODAの実施主体が防衛当局の場合もある[24]。仮に防衛省が物品供与をすることができるようになるのであれば、能力構築支援との組合せ以外にも、災害救援活動や民生分野におけるセミナーでの備品提供など幅広い協力も可能となる。ただし、防衛省による物資協力をODAの枠組みで行うことが適当であるかどうかについては、非軍事を掲げる日本の開発協力における適正性の観点から議論の余地があるだろう。ODA案件としての適正性を確保するための事務確認作業が煩雑になること、ODA案件とならない軍事分野での物品供与ができないこと、そして次に指摘するように安全保障と開発の関係が混然としてしまうことへの懸念があるからである。
ODAによる軍に対する物品供与が注目される第3の理由は、開発協力の政治化(politicization)あるいは安全保障化(securitization)に対する懸念である。これは特に、開発協力にかかわってきた援助関係者が従来から気にかけてきたことだ。また、公金の使い方として国益を意識することを是としたとしても、安全保障のためのODAが主流化することには違和感を覚える国民も少なからずいるだろう。台湾の南に位置するフィリピンは、日本にとっては南シナ海における船舶通行の安全や対中戦略において重要な国である。今回の案件は、日本と同様に台風や火山など自然災害の影響を受けやすい同国における災害対応能力の強化だけでなく、フィリピン軍の運用能力向上や自衛隊との関係強化にも作用する(むしろ後者が主であるという見方もあるだろう)。民生目的の名目ではあるが戦略的な意図を兼ね備えた案件であるといえよう。そのような協力形態が一般化するようであれば、日本が実施するODAとしての適正性が問われる恐れがある。それだけではなく、今後見込まれる日本の防衛予算増額に対する批判とあわせて「日本の軍事拡張にODAが用いられている」といった形で、日本に対する信頼性を損なわせようという害意を持った主体による情報操作(ディスインフォメーション)の対象となるリスクもあるだろう[25]。
おわりに~「非ODAの経済協力」の仕組みが必要
従来のODA大綱から12年ぶりに改定された現行の開発協力大綱では「国益の確保に貢献」という文言も盛り込まれている。国益の追求において、ODAは使い勝手が良い財布のように思われがちである。しかし、人材育成やインフラ整備がそうであるように、開発協力を通じた国益の獲得は時間軸が長く迂遠であることが多い。安全保障に関連する分野であれば、人道支援・平和構築に加えて、海洋安全保障などにおける統治・治安機構の能力向上や地域秩序の安定に向けた協力、法の支配の普及や定着、民主主義的な価値観の共有、さらにはより強靭なサプライチェーンの構築など、「望ましい安全保障環境の創出」に向けた重点的な協力を、価値観を共有する国と連携しつつ継続的に続けていくことが肝要だ。また、空港滑走路の整備など、日本が開発協力の対象外としている軍民両用(デュアルユース)のインフラ支援については行えるようにすべきだろう。
他方、より軍事に即した安全保障協力(防衛外交)は、相手国の国防当局との関係構築や地域でのプレゼンス確保など自国の思い描く目標に対して、短い時間軸で直接的に作用することが求められる[26]。そのためには、軍に対する支援を含めODAでは対象外となる領域においても支援ができるよう、「非ODAの経済協力の仕組み」についても検討されるべきであろう[27]。なお今年(2022年)は、2012年に開始された防衛省・自衛隊による能力構築支援が10周年を迎える年である。中身も充実してきた能力構築支援(技術協力)を支える贈与ベースの物資協力のスキーム(およびその適正性を確保する仕組み)も新たに構想されるべき時期ではないだろうか。
NSSの改定においては、これらを踏まえた対外援助の在り方が検討されることが望まれる。ODAというツールに性質の異なる役割を担わせるよりも、適切な支援ツールを整備し、それらを戦略的に組み合わせて日本の国益を達成するという発想が必要である。
(2022/6/27)
*この論考は英語でもお読みいただけます。
Revising the Development Cooperation Charter:Issues in Linking ODA and Security
脚注
- 1 「<独自>開発協力大綱改定へ 国際秩序激変、対外支援戦略見直し」『産経新聞』2022年5月16日。
「ODA増額へ大綱改定検討 政府、国際情勢の変化反映」『日本経済新聞』2022年5月16日。 - 2 5月17日の記者会見で林外務大臣は、改定が決定されたものではないとしつつも、検討するにあたっては、感染症対策や気候変動などグローバル課題、ウクライナ危機などの世界的な人道危機、そして日本の国益に直結する経済安全保障などへの対応を考慮する必要がある考えを示している。
外務省「林外務大臣会見記録」、2022年5月17日。 - 3 日本国憲法第9条第1項は、国際紛争を解決する手段としての「武力による威嚇」を禁じている。ここでの威嚇とは、「自国の要求を受け入れなければ武力を行使するという態度を示すことによって相手国を威嚇し、強要すること」とされ、「国際紛争の平和的解決の主義に反することはもとより、『武力の行使』又は『戦争』につながる性質を有する」ため禁止されるものと解釈されている。
衆議院「『憲法第 9 条(戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認)について~自衛隊の海外派遣をめぐる憲法的諸問題』に関する基礎的資料」(衆憲資第33号)、衆議院憲法調査会事務局。2003年6月。 - 4 財務省「令和4年度一般会計歳出・歳入の構成」
- 5 国際協力機構(JICA)「平和構築」
- 6 原文は”there is no peace without development, there is no development without peace, there is no peace and development without human rights”(開発なくして平和はなく、平和なくして開発はない、人権なくして平和と開発はない)。コフィ・アナン第7代国連事務総長がよく口にした言葉として知られている。開発と安全保障の文脈で語られることが多いが、三番目の人権のくだりが含まれない場合もある。
“Secretary-General's remarks at United Nations Private Sector Forum [as delivered]”, United Nations, 24 September 2018. - 7 自衛隊が海賊対処行動のための拠点を置くジブチでもODAは相手国政府との関係を良好に保つ手段として重視されている。
- 8 古谷健太郎「中国の海上秩序への挑戦がもたらした海上保安庁のキャパビル(能力構築支援)の新たな役割」『国際情報ネットワーク分析 IINA』笹川平和財団、2021年7月1日。
- 9 「ODAや能力構築支援の更なる戦略的活用やNGOとの連携を含め、安全保障関連分野でのシームレスな支援を実施するため、これまでのスキームでは十分対応できない機関への支援も実施できる体制を整備する。」
内閣官房「国家安全保障戦略について」平成25年12月17日。 - 10 外務省「開発協力大綱について」平成27年2月10日。
- 11 自衛隊の国内災害派遣は「緊急性、非代替性、公共性」を要件とし、「やむを得ない事態と認める場合に」行われるものとされる。令和3年版防衛白書によると、災害派遣件数は全体的に増加傾向にあり、2016年から2020年にかけては毎年440件から500件近くの災害派遣が行われている。他方、災害派遣の頻度が高くなることは自衛隊の運用や練度維持にも影響する。このため、国は安易な災害派遣要請は謹んで欲しいとの立場を示している。
「家畜処分、自衛隊に頼りすぎ? 感染対策、農水省に勧告『人員確保を』」『朝日新聞(夕刊)』2022年5月10日。 - 12 OECD-DACでは、ODAの主たる目的は「開発途上国の経済開発や福祉の向上に寄与すること」と定義される。基本的には軍に対する支援は含めないが、人道・民生分野における拠出については限定的に認められる場合がある。OECD-DACでは、その幾つかのケースを例示しており、たとえば、ケース2(人道支援物資の輸送)、ケース10(武力紛争法についての教育訓練)、ケース15(熱帯病分野における知見共有)が挙げられる。
“ODA eligibility database,” OECD. - 13 自由民主党「新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言 ~より深刻化する国際情勢下におけるわが国及び国際社会の平和と安全を確保するための防衛力の抜本的強化の実現に向けて~」2022年4月26日。
- 14 同提言では、「敵基地攻撃能力」については最終的に「反撃能力」と表記されるようになった。また、非軍事の領域においては、ODAのほかにも、情報戦における政府と地方自治体・民間との連携強化、海上自衛隊と海上保安庁の連携強化、米海軍・米沿岸警備隊との連携強化、民生宇宙開発における安全保障の重要性喚起、防衛省・自衛隊と宇宙航空研究開発機構(JAXA)との連携強化、防衛技術開発における民生先端技術の取込みや産官学連携の強化、地域社会との連携強化、有事における自衛隊の行動に対する各省庁所管規制の緩和および民間施設などの活用、国民保護のための地方自治体との連携強化、在外邦人保護体制の強化、気候変動への対応などが挙げられている。
- 15 「地域の海洋安全保障、自由で公正な経済秩序、連結性を発展させるため、外交・防衛・法執行・経済等のあらゆるリソースを有機的に連携させる形で活用し、対象国への戦略的な支援を強化していく。特にODAを大幅に拡充し、インド太平洋地域における安全保障分野において戦略的に活用していく」
- 16 外務省「開発協力適正会議」
- 17 他方、被援助国や日本の援助コミュニティにおいては、国益志向が強くなる近年の日本の援助政策の在り方に疑念を抱く関係者もいる。また、日本の優れた技術を移転し顔の見える援助を促進するとした本邦技術の活用条件は、新たな「紐付き援助」(tied aid)の問題として認識されている。2020年に公表されたOECD-DACの加盟国間相互審査(ピアレビュー)では、紐付き化傾向にある日本の援助が対象地域および被援助国における民間事業者育成への努力を阻害しかねないと指摘し、改善するよう勧告している。
[勧告2] Japan should continue to completely untie its aid covered by the DAC recommendation, while monitoring the impact of its declining share of untied aid overall and working to reverse it.
“OECD Development Co-operation Peer Reviews: Japan 2020”. OECD. - 18 外務省「日米豪印首脳会合共同声明」2022年5月24日。
- 19 首相官邸「シャングリラ・ダイアローグ(アジア安全保障会議)における岸田総理基調講演」2022年6月10日。
- 20 ノンプロジェクト型とは、特定の事業案件に基づくものではなく、資金供与を先に行い先方政府の意向を踏まえて調達する機材選定を行う方式。
外務省「フィリピンに対する円借款及び無償資金協力に関する書簡の交換」平成27年3月26日。
在フィリピン日本国大使館「防衛省・陸上自衛隊による比陸軍に対する人道支援・災害救援能力構築支援」2021年11月19日。 - 21 「吉田陸幕長、フィリピン陸軍司令官と会談 米比共同訓練に水機団派遣検討」『朝雲新聞』2021年6月10日。
- 22 過去には、2018年のパプアニューギニアでのAPEC開催に際して、現地の軍楽隊に対してODAを通じて楽器等を供与し、自衛隊が演奏等の訓練(能力構築支援)を実施したことがある。また、2022年には、ジブチ軍に対して災害復旧作業などに用いる油圧ショベル等の機材と自衛隊による能力構築支援を提供することが検討されている。
- 23 より具体的には、次の財政法9条の1に定められる法的措置が認められていない。
「国の財産は、法律に基く場合を除く外、これを交換しその他支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し若しくは貸し付けてはならない。」
なお、中古(不要となった自衛隊装備品)については2017年の自衛隊法改正(自衛隊法116の3)により途上国政府に無償譲渡できるようになっている。 - 24 例えば、イギリス国防省は2018年中に500万ポンド(約7億7千万円)をODAとして支出している。これらはODAのガイドラインに沿った相手国の社会発展に資するものであるとされ、より「効率的で(国民に対する)説明責任を全うでき包括的な」国防組織の構築に向けた教育訓練、海図作成への支援、アフガニスタンで雇用していた現地職員の再就職に向けた教育支援が主たる活動として例示されている。
“Annual Reports and Accounts 2018-19” Ministry of Defence. 22 July 2019. p54. - 25 ディスインフォメーションは「社会、公益への攻撃を目的とした害意のある情報で、情報自体が偽であるだけでなく、情報自体は真であるが誤った文脈や操作された内容で拡散されるものなど、真偽どちらもありうる」と定義される。詳しくは、次を参照。
「我が国のサイバー安全保障の確保」事業 政策提言「外国からのディスインフォメーションに備えを!~サイバー空間の情報操作の脅威~」笹川平和財団、2022年2月。 - 26 防衛外交の概要については、次を参照。
西田一平太・渡部恒雄「防衛外交とは何か―平時における軍事力の役割」笹川平和財団、2021年3月。 - 27 福島安紀子・西田一平太「ODA大綱改定への安全保障の視座からの提言~『積極的平和主義』実現に向けた包括的な平和構築指針が必要だ」東京財団、2014年10月。提言6。