インド太平洋地域では台湾周辺での中国の大規模軍事演習、北朝鮮による相次ぐミサイル発射、ミャンマーの国内紛争の継続等、安全保障環境が悪化しつつある。その主たる要因の一つである米中対立だけを見ても、依然、緊張緩和の見通しは立っておらず、地域の安全保障課題の影響は越境的な傾向を示している[1]。こうした情勢下、同地域に関心を有する諸外国は多国間安全保障協力に積極的姿勢を示している[2]。1990年代からASEAN地域フォーラム(ARF)、上海協力機構(SCO)などの地域機構の枠組みが登場し、その後は日米豪印4カ国(QUAD)、豪英米3カ国(AUKUS)といった「ミニラテラル」[3]も現れた。本論では、同地域で唯一の包摂的な枠組みとして信頼醸成(CBM)を用いた軍事的緊張緩和等を担うARFに注目してその現状を概観し、今後その発展と期待される役割を考察する。

ARFとは何か

 1994年7月に発足したARFは、政治・安全保障課題に関する対話と協力を通じて地域安全保障環境を向上させることを目的とする、インド太平洋地域で唯一の包摂的な多国間安全保障の枠組みである[4]。構成国は議長国を担うASEAN加盟国を始め、日本、米国、ロシア、中国、北朝鮮、EUなどを含めた27カ国・機構となっている。ARFの特徴と言える包摂性[5]はその加盟国数や目的に表れているが、これはARFが協調的安全保障[6]の概念に基づいているためである。つまり、ARFは非対立的構造を有し、主として非軍事的な手段により、信頼醸成措置などを通して、国家間紛争の予防や非伝統的安全保障の課題に対処することを旨としている[7]。こうした特徴もあり、ARFは他の排他的性質を持つ多国間安全保障枠組みと明確に区別することができる[8]。また、その特徴として度々言及されるのが、前述の目的を達成するための3段階のアプローチである。これは信頼醸成の促進、予防外交の進展、紛争へのアプローチの充実という段階を経て、漸進的な発展を図るというものである[9]。しかし、結論から言えば、ARFは依然として1段階目の信頼醸成の促進に留まっている[10]。

ARFの活動事例

 ARFでは主たる安全保障対話としてARF閣僚会合があり[11]、その他にも、5つの分野別会議間会合(ISM)、関連する別トラック会議であるARF専門家/賢人(EEP)会合、アジア太平洋安全保障協力会議(CSCAP)等を継続的に開催している[12]。また、これらの成果について、議長声明、年次安全保障概観等により内外への発信を図っている[13]。ARFはこれら活動を通じて、参加国・機構間の相互理解、信頼醸成を図っているのである[14]。加えて、特筆すべきは、ARFがASEANのイニシアティブによる枠組みだということである。これは所謂ASEANの中心性やARFの組織構造から説明できるが、その特徴として、議長国はASEAN加盟国の持ち回りであり、開催地は議長国となっている。また、その議決にコンセンサス方式(ASEAN Way)を採用している[15]。次項にてARF発展の阻害要因と今後の役割を検討するため、ここではARFの主たる機能の3点に注目する。

 1つ目は、地域におけるトラック1(政府間会合)の対話の場であるARF閣僚会合である。年に1度、地域の外相級の閣僚が一堂に会して安全保障課題について議論を行う、地域の安全保障にとって意義のある枠組みとなっている[16]。例年夏季に開催される同会合のアジェンダは先行して6月頃に開かれるARF高級事務レベル会合(ARF SOM)にて議論・整理されている。ここでARF閣僚会合にて直近で議論された内容を一部例示すると、昨年7月インドネシアで開催された第30回ARF閣僚会合等の場では、ロシアのウクライナ侵攻を巡って米ロで激論が交わされた他[17]、実務者協議の段階から日本の原発処理水放出をめぐって日中間で議論の応酬が生じている[18]。また、緊張の度合いを増す南シナ海問題も取り上げられた[19]。これらは地域の緊張緩和の見通しが立たない中、ARFが定期的に大国間の直接対話の場を提供していることを示している[20]。また、特筆すべき点として、国際社会で孤立している北朝鮮が参加する数少ない国際的枠組みという点もある[21]。

 2つ目は、上記のトラック1を支える、トラック1.5(官民会合)およびトラック2(非政府間会合)の対話の場がある。その内訳は安全保障の課題別の会期間会合(ISM: Inter-Sessional Meeting)、アジア太平洋安全保障協力会議(CSCAP: Council for Security Cooperation in the Asia Pacific)[22]からなり、組織的・恒常的なトラックの場として、政府関係者、学者、その他民間人らが参加している。ISMは一般的にトラック1に区分されるが、その参加者の構成が官民に渡る場合もあり、この点からトラック1.5とみなすことができる。ここでは、災害救援、テロ対策と越境犯罪、海上安全保障、不拡散と軍縮、サイバーセキュリティまで多様なセクションを設けている他、前述の3段階アプローチの進展の方法やARFが掲げる多様な安全保障課題に関する協力を扱っている。かたやCSCAPでは、アドホックなテーマに関する会議を扱っている他、成果の一部を安全保障概観等にまとめ、情報発信も図っている[23]。このようにARFのISM、CSCAPは加盟国各国の官民から多様な安全保障上の関心・意見を吸い上げている機能に加え、加盟国間の安全保障観や関連認識の共有を促すことで、トラック1の公式協議を支えている。

 3つめは、多国間災害救援実働演習(ARF DiREx)と言う、人道支援・災害救援(HA/DR)に特化した訓練がある。同訓練は第1回の2009年以来、隔年で2015年まで計4回実施されており、ASEANを始め、米国、中国、韓国、EUなど加盟国の多数の官民が人員・機材を伴って参加しており、日本からも民間看護師や自衛隊等が参加している[24]。他地域に比べ、インド太平洋地域は自然災害が多いという地域特性を踏まえた同訓練は、参加国の軍民の能力構築を通じたレジリエンス向上、同訓練を通じた参加国間の信頼醸成等を目的としていた[25]。その後、後続する訓練は実施されていないが、ARFの包摂的な特性を活かした取り組みと言える[26]。

 以上、3点を取り上げ、ARFの主たる活動を概観したが、その他にもARFが主催、あるいは関係するアドホックな会合、セミナー、ワークショップや机上演習(TTX)等、多種多様な取り組みがある[27]。こうした諸活動は対話や交流を通じて透明性の向上、ネットワークの構築等を図り、地域の信頼醸成に資するARFの包摂性という特徴を活かした貴重な取り組みと言える。他方で、ARFの多国間安全保障の内容を概観すると、依然としてその活動の中心は対話となっており、3段階アプローチの2段階である予防外交の進展は未だに不十分と言える。

ARF発展の阻害要因

 その理由は既に先行研究でも様々な視点から分析されている[28]。その中でも主たるものにASEANの内政不干渉原則[29]があり、ARFでも同原則は堅持されている[30]。ここでは、紙幅の都合から、CBMが内政干渉と切り離せない関係にあること、域内の安全保障環境の変化の2点に焦点を当てる。

 1つ目はCBMが各国の主権に干渉する性質を持つために、内政不干渉原則を堅持するASEANでは容易に進展し得ないという制約だ。例えば、CBMの制度化が進んでいるOSCEのケースでは、CBMは交流、検証、規制という3段階で進展してきた。しかし、その進展が規制の段階となると軍の行動は本来、国家の専管事項であるにも関わらず、大規模軍事演習の事前通告の制度など、それを制約していくという性質を持つことになる[31]。言い換えれば、OSCE型のCBMは交流や透明性の向上を要求するあまり、内政不干渉原則が尊重する国家安全保障といった国家の主権領域に侵入しようとするため、CBMと主権には緊張関係が存在するのである。ARFではHA/DRなどの一部領域では、特定コンテクストに基づくCBM発展など、内政不干渉原則に抵触しない形での発展を模索してきた。他方、ミャンマーの国内紛争を巡っては、2021年4月に「5つのコンセンサス」[32]に合意し、暴力の即時停止を求めたが、依然として具体的取り組みに至っていない[33]。つまり、OSCEのようなCBM発展にはこれまでASEANが保持してきた基本原則がハードルとなっているのである。

 2つ目は大国間競争の激化でASEANが中立的スタンスをとっているための安全保障環境の変化による制約である。ARF成立後、DiRExなどに見られる機能的発展は2010年代半ばがピークであったが[34]、これはかつて地域秩序において米国が優位にあり、大国間関係が比較的安定していたことが大きな背景にある[35]。その後、そうした状況は長くは続かず、中国の経済成長と共に、東シナ海での防空識別圏設定(ADIZ)、南シナ海での軍事化等を進め、地域での影響力を拡大させてきた。また、ロシアも以前から関係の深い中国、北朝鮮等を介して地域にアプローチしており、ウクライナ戦争はこの傾向をより強化した[36]。米国はこうした中ロの動きに警戒し、中国に対する関税強化、航行の自由作戦の増加等、政治的・軍事的な対抗姿勢を示してきた。そうした結果、大国間競争は激化している[37]。そして、ASEANは米中いずれにも与しないという対応策をとってきたが[38]、その中立的スタンスにより、米中ロも参加するARFでは、南シナ海、人権、台湾といった肝心な問題に真正面から関与できず、地域の緊張緩和への期待に答えられないのである。

今後のARFに求められる役割と機能とは

 ARFによる多国間安全保障の取り組みは未だに有効な紛争予防機能を備えるに至っておらず、他にも多くの課題を抱えている。しかし、ARFはインド太平洋地域における信頼醸成を促す、対話の場としての重要な役割を担い続けてきており、これまで地域の紛争予防に外交手段を介した課題の平和的解決の促進等の一定の貢献をしてきたことも事実である。また、他に代替する機関や制度が不在な点からも、その役割への期待は継続するはずだ。

ただし、主要国の政治動向、国際情勢の急速な変化を受け、各種多国間安全保障の枠組みは今後より一層その存在意義を問われることになる。ARFも例外ではなく、その包摂性等の特殊性を活かし、加盟国の個別利益を超えた地域共通の利益について、より踏み込んだアジェンダ設定、取り組みを行う必要があるはずだ[39]。

 一方で、本稿で論じたARFの制約要因を考慮すれば、そのCBM機能を発展させるには、国家間のトラック1協議よりも、非政府主体によるトラック2を主体とした機能発展の道筋が現実的だろう[40]。OSCEのような国家主導の制度化によるCBMの進展は、現在のARFには取れる選択ではないため、例えば、トラック1.5あるいは2に新たなISM等の機能的なプラットフォームを設けることで、地域の緊張緩和への対応、民主主義に係る取り組み等のアジェンダを検討してARFの機能を発展させる道筋をとれるのではないか。その際、多国間安全保障で先行する欧州の取り組みも参考にできるし、協力も得やすいだろう。

 筆者は、2023年12月に、ドイツのシンクタンクGIGA(German Institute for Global and Area Studies)が主催する信頼醸成に係る国際会議に参加したが、欧州の有識者は台湾有事の可能性を含めたインド太平洋地域の昨今の動向を注視しており、欧州によるインド太平洋地域の安全保障の取り組みへの支援に強い関心を有していた[41]。今年も7月にビエンチャンにて第31回ARF閣僚会合が開かれたが、他のミニラテラルやアドホックな枠組みと併せ、今後もその価値は有用であり、日本としてもその動向に注目していくべきである。

(2024/08/09)

*この論考は英語でもお読みいただけます。
The Foundation for Confidence-Building in the Indo-Pacific Region ― Can the ARF Ease Tensions in the Region?

脚注

  1. 1 米中対立のみを取り上げても、その影響は両国に留まらない。事実、中国の行動活発化は域内の複数国に影響を及ぼしている。米国の全米アジア研究所(NBR)の関連レポートでは、中国人民解放軍の近代化と行動活発化が域内国との間に緊張を生んでいるとし、日本を始め、オーストラリア、インド、フィリピン、台湾、ベトナムのケーススタディを通じて、特定事件が大規模紛争につながり得るリスクを論じている。NBR, “Encounters and escalation in the indo-pacific Perspectives on China’s Military and Implications for Regional Security,” NBR Special Report #108, May 2024.
  2. 2 地域と言う言葉は本来、多様な定義を有するが、本論ではインド太平洋と定義する。地域の定義に関する議論は、以下を参照されたい。大庭三枝『重層的地域としてのアジア』有斐閣、2014年。
  3. 3 従来、地域の安全保障枠組みは二国間(バイラテラル)や多国間(マルチラテラル)が主であったが、近年は「三カ国以上の比較的小規模な数の国家からなる安全保障枠組」が登場してきた。これはしばしば「ミニラテラル」と称される。佐竹知彦「2022 年我が国安全保障の視座 ④インド太平洋におけるミニラテラリズムの台頭」『NIDSコメンタリー』第225号、2022年5月31日。
  4. 4 インド太平洋地域において類似する対話の場としてはアジア安全保障会議(通称シャングリラダイアローグ)があるが、同会議は実施主体が国家ではなく民間シンクタンクである点でARFと異なる。ARFはその実施主体がASEAN議長国であり、各国の外務・防衛当局トップが参加する政府間会合の枠組みである。一方、アジア安全保障会議は英国戦略研究所(IISS)が主催しており、2002年より年1回の頻度でグローバルな安全保障課題を議論することを目標としている。各国からは国防、安全保障を担当する閣僚、現役軍人、民間の専門家が参加する他、各国代表間での二国間対話を行うことが通例となっている。IISS, “The IISS Shangri-La Dialogue,” 2024年8月8日アクセス。
  5. 5 ARFの包摂性は、その目的における、「アジア太平洋地域諸国が共通の関心と関心のある政治的および安全保障問題についての建設的な対話と協議を促進する」や「アジア太平洋地域における信頼醸成と予防外交に向けた取り組みに大きく貢献する」という文言に見て取れる。ARF,“ASEAN Regional Forum,” 2024年8月8日アクセス。
  6. 6 同じ安全保障概念を採る地域機構に欧州安全保障協力機構(OSCE)がある。拙稿「OSCEはウクライナ戦争を終わらせることができるか――多国間安全保障の課題」、国際情報ネットワーク分析 IINA。2022年11月18日。
  7. 7 山本による多国間安全保障の類型では、各種枠組みは、脅威の性格(明確/不明確)、脅威の所在(外/内)により分類でき、それぞれが異なる友敵関係の構造(対立的/非対立的)、性質(排他的/包摂的)を持つとした。ARFは協調的安全保障に含まれ、不明確な脅威を内に置いて、これに対処する非対立的構造かつ包摂的な枠組みと整理した。山本吉宣「第3章 新興国の台頭と安全保障ガバナンス」『新興国の台頭とグローバル・ガバナンスの将来』、日本国際問題研究所、2012年5月12日、58頁。
  8. 8 例えば、同じく信頼醸成を行う地域機構にSCOがあるが、これは1996年4月の上海ファイブ(中国、ロシア、カザフスタン、タジキスタン、キルギス)サミットが2001年6月に機構化したものである。当初は国境管理を主目的としていたが、その後は経済・軍事分野の連携を推進している。また、テロ対策を謳う軍事演習を定期的に実施しており、2000年代後半からは中ロを中心に米国への対抗姿勢を明確化しつつある等、軍事的な側面が強い。こうした内容からARFとは全く異なる枠組みと言える。飯田将史「進展する中国とロシアの軍事協力——共同軍事演習の多様化と高度化」『NIDSコメンタリー』第271号、2023年8月29日。
  9. 9 ARF, “The Second ASEAN Regional Forum,” August 1, 1995, p. 8.
  10. 10 ARFの予防外交の進展については2001年にその概念と原則が示された後、2011年に「予防外交ワークプラン」(ARF Work Plan on Preventive Diplomacy)が採択され、その具体案が示されているが、その進展は不十分である。ARF SOM, “Asean regional forum preventive diplomacy work plan,” June 10, 2011.
  11. 11 ARF閣僚会合の準備のため、例年6~7月頃にARF高級実務者会合(Senior Officials’ Meeting:SOM)も開かれている。ASEAN, “ASEAN Regional Forum Senior Officials’ Meeting (ARF SOM) convenes in Vientiane,” June 8, 2024.
  12. 12 ARFの各種会合の日程はARFウェブサイト上から確認できる。ARF, “Schedule of ARF Meetings and Activities August 2023–August 2024,” 2024年8月8日アクセス。
  13. 13 ARFの年次安全保障概観(Annual Security Outlook: ASO)は、各国が寄稿した安全保障認識等を取りまとめた文書であり、2000年より出版されている。各国が自国と地域各国に向けて自国の安全保障認識、戦略的概観や意図を説明し、それらを明確化することで加盟国間での相互理解を得ることを意図している。ARF, “Asean regional forum annual security outlook 2023,” 2023.
  14. 14 これら会議におけるアジェンダは国際情勢に応じて変化しているが、ARFでは非伝統的・伝統的安全保障の多様な課題を取り扱っている。一例として昨年2023年のARF閣僚会合では、新型コロナウイルス感染症パンデミックを背景とするテロ、暴力的過激主義、越境的犯罪、違法薬物、サイバーセキュリティ、海賊行為、海洋汚染などに加え、南シナ海情勢、南シナ海の航行及び上空の飛行の自由、ミャンマーの国内紛争、北朝鮮の弾道ミサイル発射、ウクライナ情勢、中東情勢等が議論されている。ARF, “Chairman’s statement of the 30th asean regional forum,” July 14, 2023.
  15. 15 ARFのコンセンサス方式は多様な利害関心を有し、内政干渉に敏感なARF加盟国が議決を得るための実利的な手段である一方、加盟国の人権侵害と言った諸問題について、判断停止に陥り、実効性のある取り組みができないことが指摘されている。黒柳米司「東アジア共同体とASEAN 3つの役割」『国際問題』No. 551、2006年5月、15-25頁。
  16. 16 外務省「ASEAN地域フォーラム(ARF)」2024年年7月27日。
  17. 17 Kate Lamb and Stanley Widianto,“ No sign of Russian intent to change tack on Ukraine war, Blinken says,” July 15, 2023.
  18. 18 China urges ASEAN regional forum to oppose Fukushima water release,” Kyodo News, July 10, 2023.
  19. 19 注14を参照のこと。
  20. 20 地域の緊張緩和につながる取り組みとして、例えば、2024年には5月27日の第9回日中韓サミット、5月31日~6月2日のシャングリラダイアローグが開かれているが、前者は経済協力の推進を旨としており、後者は米中国防トップの対談にて、南シナ海や台湾を巡る主張が平行線をたどるに留まっている。外務省「第9回日中韓サミット」2024年5月27日。
  21. 21 Shreyas Reddy, “North Korean envoy faces criticism of latest ICBM launch at ASEAN forum, NK News, July 17, 2023.
  22. 22 CSCAPはThe Council for Security Cooperation in the Asia Pacificの略称である。 CSCAP.
  23. 23 例えば、CSCAPは独自の安全保障概観を取りまとめて発行しており、地域の多様な安全保障課題に関するテーマを取り上げている。CSCAP, “CSCAP's Regional Security Outlook 2024”, December 18, 2023.
  24. 24 日本の自衛隊にとっては、国内の災害派遣や国際緊急援助活動で培った災害救援の技術を地域各国に伝えることに加え、地域に対する日本のプレゼンスを示す場ともなっていた。第4回目となる2015年は防衛省・自衛隊から約10名が参加している。防衛省『平成28年度版防衛白書』、2016年8月26日、317頁。
  25. 25 また、同演習の実施当時は、HA/DR分野を介した、ASEAN関連の他制度(ASEAN災害担当大臣会合(AMMDM)、ASEAN国防大臣会合(ADMM)、拡大ASEAN国防大臣会合(ADMMプラス)、東アジア首脳会議(EAS)等の各種枠組み間のシナジー効果なども期待されていた。石原雄介「多国間安全保障アーキテクチャにおける「シナジー」概念―――ASEANを中心としたHADR協力を手掛かりに」『NIDSコメンタリー』第47号、2015年6月24日。
  26. 26 後続する訓練が実施されなくなった背景には、優先順位の変化、ASEAN内でHA/DR関連の常設部門の設置、個別の能力構築支援の発展等が考えられる。例えば、自衛隊は2024年3月にフィリピンに対し、HA/DR分野の能力構築支援を行っている。防衛省・自衛隊「令和5年度 フィリピン共和国(人道支援・災害救援)」2023年3月。
  27. 27 例えば、ARFが主催する会合に国防大学校長等会議(HDUCIM)がある。同会議は、ARF加盟国の国防大学校長やEU、その他の国際機関が参加し、意見交換を通じた機関間の関係の構築や国防教育、研究機関の役割の向上を目的としている。ARF, “25th Asean regional forum heads of defence universities/colleges/institutions meeting [hducim],” August 1-3, 2023.
  28. 28 例えば、古賀はASEANにおける、冷戦後のアジア型信頼醸成とASEANの制度構築の2軸による制度構築がその発展を妨げているとする。古賀慶「ASEANアーキテクチャにおける『信頼醸成」」『国際安全保障』第50巻第3号、2022年12月、14-32頁。
  29. 29 Sanae Suzuki, “Why is ASEAN not intrusive? Non-interference meets statestrength,” Journal of contemporary east asia studies 2019, Vol. 8, No. 2, pp.157–176.
  30. 30 ASEANの内政不干渉という原則はARFでも堅持されている。例えば、コンセプトペーパー内では加盟国への「東南アジア友好協力条約(TAC)」参加が奨励されている。ARF,“The ASEAN Regional Forum : A Concept Paper,” September 1, 2020, pp. 2-3.
  31. 31 OSCEでは軍事セミナーから、演習の視察、大規模軍事演習の事前通告など、加盟国に対し、その軍事行動に制限を課す形で制度化が進んだ。佐渡紀子「OSCEにおける信頼安全醸成措置 : メカニズムの発展と評価」『国際公共政策研究』第 2巻第1号、1998年、219-236頁。
  32. 32 庄司智孝「ASEANの地域秩序と米中対立 揺らぐ包括性と中心性」『防衛学研究』第68号、2023年3月。
  33. 33 ASEAN外相会議 ミャンマー情勢 戦闘停止への具体策打ち出せず」NHK、2024年7月28日。
  34. 34 EAF, “ASEAN stress-tested by big power rivalry,” The East Asia Forum, October 5, 2020.
  35. 35 加えて、中国が2000年代初頭に地域で興隆した中国脅威論の牽制、米国の地域介入の牽制といった目的でARFにも協力的であったという側面もある。飯田将史「中国の東南アジアに対する安保協力―ARFへの対応を中心に―」『防衛研究所紀要』 第6巻第1号、2003年9月、95-107頁。
  36. 36 Derek Grossman, “Russia Is a Strategic Spoiler in the Indo-Pacific,” July 12, 2024.
  37. 37 南シナ海を巡る係争関係は以下のサイトが参考となる。Council on Foreign Relations, “1895 – 2024 China’s Maritime Disputes,” accessed August 8, 2024.
  38. 38 庄司智孝「ASEANの地域秩序と米中対立 揺らぐ包括性と中心性」『防衛学研究』第68号、2023年3月。
  39. 39 ARFによる地域秩序への貢献を考慮するにあたり、他の多国間安全保障枠組みとの調整・協力を行うことも一案である。古賀慶「国際・地域秩序の構築におけるASEANの重要性」地経学ブリーフィング、2023年6月。
  40. 40 勝間田はトラック2活用の利点について、協調的安全保障のアジェンダを促し、政府高官に有用な対話・協議チャンネルを提供できるといった点を指摘している。Hiro Katsumata, ASEAN’s Cooperative Security Enterprise: Norms and Interests in the ASEAN Regional Forum, Palgrave Macmillan, January 20, 2010, pp.171-173.
  41. 41 GIGA, “Geopolitics, Militarisation and Risk - A New Case for Confidence Building Measures in the Indo-Pacific,” November 27-28, 2023.