米国の同盟国が、「武力攻撃を受けた際に米国は支援してくれるのだろうか?」と問うのは日常の光景である。文字どおり、日々問い続けているといってよい。これは、同盟における「見捨てられ」の懸念に起因する。

 同盟に関しては、「見捨てられ」とともに、「巻き込まれ」の懸念が存在する。後者は、同盟国の戦いに関与せざるをえなくなるリスクのことだ。同盟は、助け合うものであり、「助ける国」と「助けてもらう国」は原理的には固定されない。文字通りの相互防衛である。実際、NATOで集団防衛を規定する北大西洋条約第5条が発動された唯一の事例は、2001年9月11日の米国に対する連続テロを受けた対米支援だった。長らく考えられてきた米国による欧州支援ではなかった。とはいえ、欧州のNATO加盟国や日本は、武力攻撃を受けた際の米国の支援を期待して米国と同盟を組むのである。

 そうである以上、米国が支援してくれるかは、同盟国にとっては常に中心的な課題になる。しかし、これを問い続けるだけでは意味がないのではないか。いくら問うても、実は答えがないからである。米国の選択は決まっていないのである。本稿ではこの点、そしてそれが同盟国に何を意味するのかを考えていきたい。結論を一部先取りすれば、米国が支援してくれるか否かは、米国次第であると同時に、同盟国次第であり、米国の選択に同盟国は影響をおよぼせるということでもある。

米国が支援するか否かは決まっていない

 武力攻撃を受けた同盟国を支援するために、米国がともに戦うか否かは決まっていない。日米安全保障条約だろうと北大西洋条約であろうと同じである。いずれの条約でも、攻撃を受けた国などを米国が「自動で」支援する規定にはなっていない。慎重に、そして当然のことながら、意図的に自動性が回避されているのである。

 例えば北大西洋条約第5条は、「欧州または北アメリカにおける1または2以上の締約国に対する武力攻撃を、全締約国に対する攻撃とみなす」としたうえで、「兵力の使用を含む必要と認める行動」を「直ちにとることにより、その攻撃を受けた締約国を援助することに同意する」と規定している。強いコミットメントだといわれるが、攻撃を受けた国への支援自体には同意しつつ、その内容については、「必要と認める措置」と規定しているのみである。つまり、兵力の使用の有無を含め、支援の中身は米国(およびそ他の加盟国)が独自に決めることになる[1]。

 日米安全保障条約第5条は、「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する」と規定する。「共通の危険に対処」という箇所が肝要であり、これは、「両国が共同して日本防衛に当たる」ことだと解されている[2]。

 米国としても、自国軍の犠牲が考えられる作戦を、自動的に実施するわけにはいかない。これが、条約の限界である。条文の文言のみで軍事作戦の実施を縛ることはできず、最後は政治判断になり、それはさまざまな条件に影響される。さらにいえば、そうした歯止めがあったために、北大西洋条約も日米安保条約も上院で批准することが可能だったのである。

 したがって、有事の際に米国がどう動くかは、法的にも政治の実態としても、「決まっていない」ということにならざるをえない。そのため、それを問い続けても答えは出てこない。どこかに隠れている真実をみつけ出すという話ではない。

 なお、支援の自動性が回避されていると同時に、「同盟国の代わりに米国が戦う」ことになっていないことにも注意が必要である。最前線で対処するのは、いずれにしても、攻撃を受けた国自身であり、他国はそれを支援するのである。国際法における集団的自衛権も、攻撃を受けた国への支援と理解される。攻撃された国が戦わないときに、他国が勝手に戦い続けるわけにはいかない。

鍵としての「自助」

 そのうえで、米国が同盟国あるいは深い関係にあるパートナーを支援するか否かに関しては、ある明確な方針が浮かび上がる。それは、格言としてよくいわれる「(神は)自ら助くる者を助く」という原則だ。同盟も同じなのである。

 これはトランプ(Donald Trump)政権のみの話ではない。平時の恒久的な同盟には加わらないという建国以来の方針を覆し、第2次世界大戦後の米国が1949年4月に北大西洋条約を締結したときの論理でもあった。その道を開いたのは、1948年6月のいわゆるヴァンデンバーグ決議だった。同決議は、「自助」を前提として、同盟を結成することを容認したのである[3]。自助を重視する考え方は、その後のNATOにも引き継がれ、米国が欧州に対してバードンシェアリング(負担分担)を求める根拠になった。しかし、それが貫徹されたとはいい難く、欧州の対米依存が定着したのは周知のとおりである。日米同盟に関しても同じことがいえる。

 「自ら助くる者を助く」の観点では、近年、興味深い事例が相次いでいる。まずはアフガニスタンである。2021年8月、米欧諸国はアフガニスタンから撤退した。首都カブールが陥落し、タリバン政権が復活したからである。2001年の9.11テロ事件後に米国を中心とする諸国は、当時のタリバン政権を打倒し、新政権(アフガニスタン・イスラム共和国)を樹立し支援を続けてきた。しかし、当のアフガニスタン政府は、ほとんど戦うことなく、文字どおり霧散してしまった。

 当時のバイデン(Joseph Biden)米大統領は、「アフガン軍が自らのために戦わない戦争を、米兵が戦ったり犠牲になったりすることは、できないしすべきでもない[4]」と述べた。「バイデン・ドクトリン」とでも呼べるような重要な主張だ。自ら戦わない国の代わりに米国が戦うことはないというのである。当時のアフガニスタンは、国軍の装備や訓練から経済支援まで、米国丸抱えの国家だった。それでも見捨てざるをえなかった。

 ウクライナはこの正反対の事例である。2022年2月にロシアが全面侵攻したとき、米国を含むNATO諸国は、ウクライナが長くは耐えられないと判断していた。しかしウクライナは、ロシアに抵抗する意思と能力を示した。その結果、米欧諸国のウクライナ支援はより真剣なものになった。ウクライナはNATO加盟国でなかったにもかかわらずである。米欧がウクライナをどこまで支援するかは、当初は決まっていなかった。ウクライナが、米欧の支援を引き寄せることに成功したのである[5]。米国にとっても、ここまで関与することになったのは「想定外」だったといえる。

 もう一つの好例はイスラエルである。イスラエルは、米国との間に正式な安全保障条約こそないものの、米国の特別な同盟国だといえる。そのイスラエルは、2025年6月にイランの核開発施設への攻撃に踏み切るが、その際、自らができることはすべて実施したうえで、地下施設の破壊に効果を発揮するバンカー・バスター(地中貫通爆弾)を唯一保有している米国に参加を求めたのである。いわば外堀を埋めて、米国を巻き込んだのである[6]。

 2026年2月末からの大規模なイラン攻撃(イラン戦争)に関しても、開始にあたってはイスラエルが主導権をとったといわれる。詳細については今後のさらなる検証を待つ必要があるものの、自ら行動する意思と能力を示すことで、イスラエルが米国の決定を強く促した事実を否定することは難しい[7]。

「米国次第」と同時に「同盟国次第」

 このように、自ら戦わなかったアフガニスタンからは米国が撤退し、自ら戦う意思と能力を示したウクライナとイスラエルは米国の支援を引き寄せることに成功した。ここから導き出される教訓は明らかだろう。さらに、同盟国の側に自ら戦う意思と能力があれば、米国が支援する場合のコストも低く抑えられ、それが米国にとっての同盟国支援のハードルを引き下げるという側面もある。

 最後に、有事の際に米国が支援するか否かが決まっていないことは、同盟国にとって決して悪いニュースではない。米国のコミットメントは自動的であるべきだという立場からは、「だから信頼できない」という結論になるかもしれない。NATOであればバルト諸国、日米同盟であれば尖閣諸島などが攻撃されても米国が動かないかもしれないとしたら、欧州や日本にとっては重大な問題である。

 それでも、米国の選択が決まっていないとすれば、それは同時に、同盟国やパートナーが米国の意思決定に影響をおよぼす可能性があることをも意味する。米国を「動かす」ということだ。有事の際の米国による支援が実現するか否かは、「米国次第」であると同時に「同盟国次第」なのである。

(2026/04/27)

脚注

  1. 1 たとえば、鶴岡路人『模索するNATO――米欧同盟の実像』(千倉書房、2024年)、序章、第2、3章を参照。
  2. 2 外務省「日米安全保障条約(主要規定の解説)」(最終アクセス、2026年4月2日)。
  3. 3 全文は、たとえば下記に掲載。“U.S. Senate Resolution 239: U.S. Senate Resolution 239 (The Vandenberg Resolution),” June 11, 1948.
  4. 4 White House, “Remarks by President Biden on Afghanistan,” August 16, 2021.
  5. 5 この経緯については、鶴岡路人『欧州戦争としてのウクライナ侵攻』(新潮選書、2023年)、第2章で詳しく論じた。
  6. 6 なお、ここではイスラエルの行動の国際法や正統性を評価しているのではない。あくまでも、米国を動かす、ないし米国の支援を確保する観点での同盟の動きに限定した議論である。トランプ政権による空爆決定前後の事情については、渡部恒雄「トランプ大統領のイランの核施設空爆を考える」笹川平和財団米国現状モニター、第183号(2025年7月15日)。
  7. 7 たとえば下記参照。“How Trump Decided to Go to War,” New York Times, March 2, 2026; “Rubio says planned Israeli action against Iran prompted US strikes,” Reuters, March 3, 2026.