現実的な対中戦略構築プロジェクトのワーキングペーパー掲載のお知らせ
この度、IINA(国際情報ネットワーク分析)では「現実的な対中戦略構築プロジェクト」と提携して、日米専門家による対中戦略構築のための情報を日本語と英語で掲載いたします。今後の国際関係の潮流の要因である米中関係について少しでもIINA読者の理解にお役にたてれば幸甚です。
アジアにおける経済・軍事パワーバランスの変化により、日米同盟内の役割と任務、そして分業について喫緊に見直すことが必要とされている。しかし、日米両政府内では、これらのテーマについて真剣に議論することへの関心が薄いようである。米国政府は他の問題に相当気を取られており、日本側が相対的に取り組みを強化しているのを見て満足しているようである。他方、役割と任務というテーマは、日本の防衛関係者の間では疑いのまなざしを向けられたままとなっている。かつて、同盟の分業とは、特定の、全般として防御的な任務を日本側にさせることを意味していたからである。今日、日米同盟内の役割と任務について言及されるとき、それは単に日本の防衛機能の拡大を意味することが多い[1]。
戦略環境に応じて役割と任務は進化するべきであるが、日本の役割と任務を単に拡大し、米軍の兵力構成の小型のレプリカを作ることは、日米同盟が乏しいリソースを配分する方法として最も有利ではないことはほぼ確実である。進化する脅威に対応して構築した、作戦に関する新たな、あるいは進化する概念に基づいて、本稿では、役割と任務の再考を巡る一連の基準を提案する。本稿は、主に対中抑止に関する能力構築に焦点を当てている。仮定の紛争について議論するが、そのような紛争を求めているわけでも期待しているわけでもないということ、そして抑止には、かかる紛争で勝利するための妥当な能力が必要であるということをご理解いただきたい。そのような展開において起こり得る経過について掘り下げなければ、取り組むことが難しいテーマなのである。
以下に概説する枠組みにおいては、性質上、役割と任務は厳密に国別ではなく、地理と一連の統一的な作戦構想によって決定される。自衛隊(SDF)の大部分と、西太平洋に前方展開している米軍は、インサイド(すなわち拒否)部隊の一部として高度に分散した形で作戦行動を行う構造・態勢となり、中国による空域・海域の支配を阻止することを目的とする[2]。米軍部隊の全てではないがその多くを含む戦域外の部隊は、より従来的な形で組織される。これにより国ごとの相違や一定の分業が生じるが、その区別は絶対的なものではない。
すぐ次にある最初の節では、役割と任務を巡る新たなアプローチが必要になった条件について、2番目の節では役割と任務を巡る新たな概念の土台となる原則について概説する。3番目の節では、そのような分業が自衛隊と米軍双方に及ぼす変化の一部について概略する。そして最後の節では、疑問とあり得る反論について取り上げる。筆者は、自衛隊(と前方展開している米軍)が担っている機能はおおむね防御的であるが、採用する作戦構想は高度に動的で攻撃的行動を含むものになること、さらに、自衛隊は、えり抜きの米軍部隊と共に、脅威が最も高い地域内で作戦行動を行うことを目的とした「インサイド部隊」となることを主張する。
役割と任務に関する議論に移る前に、日本の防衛予算の水準、時代遅れの特別協定、沖縄における米海兵隊のプレゼンスの特定の側面を含む、日米同盟のその他の側面についても再評価が必要であることは注目に値する。しかし、同盟の重要な問題の中で、役割と任務は批判的関心を最も集めてこなかった可能性がある[3]。
背景:パワーバランスの変化と進化する技術
日米同盟内における役割と任務を巡る活発な議論が必要となっているのは、二つの動向が要因となっている。一つは地域のパワーバランスの変化と潜在的紛争の初期において推定される戦力の相関関係である。もう一つは、長距離精密射撃の影響を伴うより広範な技術の発展である。
パワーバランスの変化:パワーバランスの変化については、詳しく述べるまでもない。つい2005年には、日本の国内総生産(GDP)は中国の2倍を超えていたが、2021年には、中国のGDPが日本の3倍を超えている。国防費の非対称性はさら大きく、リソースの不均衡により、能力面でも同様に大きな不均衡が着実に生まれつつある。
パワーバランス、地理、同盟の役割と任務の間の関係性について指摘されることは少ない。冷戦初期、日本は日米同盟内で主に防御的な任務を担っていた。これは限られた軍事力や増強を巡る憲法上の懸念のみならず、隣接する戦域内における不利なパワーバランスのためであった。北海道がソ連による占領区域に近いことや、同地に展開された陸海空軍の部隊により、日本はソ連による領土の奪取に対して非常に脆弱であった。海軍力では米軍が全面的優位にあったが、米軍の増援部隊の到着は迅速ではなかっただろうし、初期段階において、日米両国は日本の防衛力に大きく依存したことだろう。
1970年代後半から1980年代にかけて日米同盟のリソースが増え、自信が深まるにつれて、日本の役割と任務は専守防衛からやや離れたさまざまな任務へと拡大した。その最たる例はシーレーンの防衛である。冷戦終了直後、日本の本土防衛は過去の思想となり、役割と任務を巡る議論は地域や世界といったより広範な場における日本の役割へと変化した。
しかし、日米同盟ははるかに困難な時期に入り、日本に対する攻撃の抑止は、再び中心的問題となった。確かに、潜在的な有事は冷戦期とは大きく異なる。日本の基地や周辺島嶼への攻撃の可能性は十分にあるものの、日本本土が侵略されるという脅威はほとんどない。中長期的な将来、中国の能力が拡大を続け、潜在的な戦場が第一・第二列島線間の海域を含むまで拡大する中で、中国が、他の場所で進行中の作戦において戦術的優位を得るために、琉球諸島内にある日本の他の小島嶼の占拠を試みることもまた、より現実的な有事となりつつある[4]。
もちろん、おそらく尖閣諸島を巡る深刻な危機を除けば、中国の指導部がある日目覚めて日本への攻撃を決断するという可能性はほとんどない。それでも、地域の他の場所における危機、特に台湾を巡る危機により、日米同盟が紛争に巻き込まれる可能性がある。日米両政府共に、台湾海峡を越えた武力攻撃を防ぐことに重要な利益がある。仮に日米同盟が台湾を巡る紛争に関与すれば、中国には、沖縄にある日米の基地を攻撃し、紛争が進むにつれ、場合によっては九州や本州にある基地を攻撃する動機が生まれるだろう。
このような攻撃は一度限りの攻撃にはならないだろう。地域全体において高強度の航空・海上作戦が展開される可能性が高く、人民解放軍(PLA)は米軍と自衛隊を制圧して台湾支援を阻止しようとするだろう。言うまでもなく、米軍と自衛隊は応戦し、侵略・封鎖作戦に関与している中国艦艇の撃沈、場合によっては中国沿岸の空軍基地やミサイル発射基地への攻撃を図るだろう。
紛争の具体的形態は冷戦期に想定されていたものと大きく異なるが、戦力の相関関係は1980年代や1990年代よりも1960年代や1970年代に近くなりつつある[5]。繰り返しになるが、米国は多くの質の高い部隊を維持しているものの、その大多数は西太平洋に配備されていないため、隣接する戦域に到着するまでに時間を要する。従って、米軍の増援部隊(そして望むらくは他の同盟国やパートナーの増援部隊)が動員される間、自衛隊と前方展開している米軍部隊が遅滞行動を担うことになる。
進化する技術:役割と任務の再考が必要となった二つ目の要因は、軍事技術の進化である。長距離精密打撃により、航空戦・海戦は根本的に変化した。ちょうど小銃や機関銃が19世紀や20世紀初頭の地上戦を変えたように、現代ではミサイルにより殺傷力が劇的に上がり、射程は劇的に伸びた。
以前よりはるかに広い地理的範囲に配備されたアセットから、艦艇や空軍基地が攻撃を受ける可能性がある。子弾を搭載したミサイル(すなわちクラスター兵器)が広範囲にわたって爆発物を飛散させることから、空軍基地にある航空機等、集中したソフトターゲットは特に脆弱である。ミサイルをネットワーク化し、飛行中に標的を変えることができることで、海上で集中した艦艇は対艦ミサイルによる攻撃に脆弱になる。ミサイル攻撃に対する積極的防御は確かに存在し、攻撃側の任務を複雑化させ得るものの、ミサイル防衛の「傘」には上手く機能したとしても漏れがあるほか、非常に高価であり、攻撃ミサイルが一斉発射されれば圧倒される可能性がある。
20世紀には、より殺傷力のある歩兵・砲兵用兵器に直面し、死傷者を減らすため、陸軍は編制を分散し、機動性を高め、攻撃において拠点を迂回するようになった [6]。今日では、海軍・空軍の作戦立案者は、高精度の長距離ミサイルによる脅威に対抗する新たな方法を実験し、採用しつつある。一つに決まった答えはないものの、中心的な概念は分散作戦である。海軍・空軍は分散し、アセットを広範囲にわたって物理的に相互に分離させる一方で、火力を集中するためにネットワーク化されたシステムの能力を活用できるようにするというものである。機動性の向上は、偽装や隠蔽と共に分散を補完し、固定インフラは堅固化される。
このような新たな概念が日米の進化する軍事ドクトリンに組み込まれつつある。米国の場合、国際公共財におけるアクセスと機動のための統合構想(JAM-GC)が統合レベルでの指針となっている。空軍は機敏な戦闘運用(ACE)という概念を採用し、海軍は海洋分散作戦(DMO)を、海兵隊は遠征前衛基地作戦(EABO)を、そして陸軍はマルチドメイン任務部隊(MDTF)を採用した。日本の場合、より大型の潜水艦を維持し、大型の護衛艦をより小型の新型艦艇により補完するという決定は、絶対的な制海権・制空権よりも拒否が重要度を増しているという新たな認識とおおむね合致している。
しかし、最初の原則の観点から検討すると、影響は各同盟国の軍種や統合ドクトリン以外にも個別に及ぶ。新技術、戦力の相関関係の変化、そして地理もまた、新たな軍事的分業(すなわち役割と任務の定義)構築の中心とすべき影響をもたらしている。
役割と任務を巡る新たな組織原理
上記の動向には他に二つの影響があり、それらは日米両国がどのように軍と作戦慣行を組織化することが最善かを理解する上で不可欠である。この二つの影響とは、紛争の段階と、部隊の階層化(あるいは後ほど議論するいわゆる「インサイド」「アウトサイド」部隊の区別)である。これらの影響は、それぞれ若干異なる要因により形成されたものであるが、いずれも部隊の組織と、最も必要とされる特性について、同じような内容を示唆している。
紛争の段階:紛争は、さまざまな形で展開し、初期段階は中期・後期段階と大きく異なる可能性がある。日米同盟が参戦する可能性のある、最もあり得る東アジア有事において、戦域内の戦力の相関関係は、地理やより大きなパワーバランスと共に、想定されるパターンを規定するだろう。
8,000億ドル近い国防予算や装備、何十年にもわたって積み重ねられてきた専門知識のある米国は、引き続き中国軍に対して相当な優位に立っている。確かに、地理やPLAによる非対称的アプローチは条件の対等化や米国の戦力軽減に役立つだろうが、動員・展開までの時間が与えられれば、米軍の優位は容赦なく中国に守勢を強いるだろう。ただし、これは中国が目的を早々に達成できないこと、あるいは日米の部隊を戦闘不能にして政治的決意を根本から揺るがすことができないことを前提としている。言うまでもなく、米軍部隊を重視するだけでは決定的にはならない。日本や、場合によってはその他の同盟国も、集合的優位に強力に貢献する。
しかし、同盟の集合的優位にかかわらず、紛争の初期段階では、戦力の相関関係は劣勢となる可能性が高い。米国の海上・航空戦力のごく一部(約10%から15%)しか西太平洋には配備されておらず、他のインド太平洋軍(INDOPACOM)のアセットはハワイと米国西海岸に配備されている(なお、他の主な統合軍からの部隊がこれらのアセットをさらに増強する可能性がある)。従って、紛争の初期段階においては、中国の目標が台湾なのか、東シナ海なのか、あるいは(場合によっては)南シナ海なのかにかかわらず、日米同盟は防戦一方になるだろう。中国側のミサイル在庫は無傷で、宇宙、通信、指揮統制についても同様に損害はないだろう。
紛争の初期段階においては、日米同盟には三つの主要な目標がある。第一に、既成事実化を防止することである。これは特に台湾侵攻の場合に当てはまる。制空権・制海権が確立されれば、小規模な無人島の占領は比較的容易に覆すことができるが、もし中国が台湾占領を狙っているのなら、足場を確立したPLA部隊を相手に台湾を奪還することは、たとえ政治的意思があったとしても、軍事的に非常に困難な任務となる。第二の目標は、米国政府や日本政府の政治的意思を揺るがしたり、増援を実質的により困難な課題にしたりするような、部隊とインフラに対する衰弱をもたらす損害を防ぐことである。紛争の全体的なコスト(と軍の集合的損害)は、米軍の増援部隊が無傷で機能している防御を強化するよりも、中国がすでに支配した地域に進入するときの方がはるかに高くなる。そして第三の目標は、戦争終結に向けた反撃行動に備えるため、敵部隊を消耗させることである。
紛争の段階がその後どのような経緯をたどるかは状況によって異なるが、目標としては攻撃行動に関与している中国軍に勝利すること、初期段階で奪われた領土や陣地を奪還すること、満足できる理由で紛争を終結させることである。各段階においてエスカレーションのリスクは慎重に検討される可能性が高いが、さまざまな攻撃手段が想定されるだろう。例えば、(1)中国の宇宙領域とそれ以外からの情報収集・警戒監視・偵察(ISR)能力の弱体化、(2)攻撃行動を支援する中国の基地(例えば、多数の中国軍戦闘機を受け入れている前方空軍基地や、海軍の軍需品や上陸部隊の補給を担っている軍事港湾施設)への攻撃、(3)遠距離からの、あるいは場合によっては機雷設置による中国港湾の封鎖、そして(4)奪われた領土を奪還するための上陸作戦が含まれる。
段階の間には明確な境界はなく、全体を通じて防御的・攻撃的行動の両方が実施されるが、そのバランスは時間とともに変化していく。しかし、上記の攻撃的活動の一部は、一連の準備や条件を必要とする。たとえ自軍の陣地を強化するためであっても、海を渡ることは、稼働中のミサイルの脅威や無損傷のISRを前にしては極めて大きな危険を伴う。
分散作戦と「インサイド」「アウトサイド」部隊:最近の動向、特に軍事システムと戦争がもつ進化する性質に伴う第二の影響は、分散作戦における戦場全体にわたる分散性である。米軍・自衛隊の双方が、分散した形で作戦活動を実施し、脆弱性を低減させる一方で、引き続き火力を集中させられるよう、現代の海軍・空軍の能力を活用することを目指している。量を実現すること、すなわち決定的な地点で優位な部隊を集結させることは、戦争の原則の常である。そして、分散能力は、物理的な量に関連する現代のリスクの一部を避ける形で「仮想的な量」を実現する手段を提供する。
分散部隊は(前線に沿って)広く、(前線から離れて)深く分散する可能性がある。前線での分散は自明であるが、縦深分散の本質は、さまざまな種類の部隊とアセットを、主要な戦場(または脅威)から異なる距離に配置するということである。相対的にはるか前方、あるいはより後方に展開され得る部隊を説明するにはさまざまな方法がある。最もシンプルな説明方法は単純に地理的なものである。例えば、JAM-GCでは、敵の深刻な脅威に晒される領域(例えば、敵ミサイルの射程圏内)付近やその領域内で作戦行動を実施するために十分な装備の整ったアセットを含む「インサイド部隊」と、その領域外で作戦行動を実施する「アウトサイド部隊」を区別している[7]。
米国の他の文書は、より複雑で機能別の説明をしている。2018年国家防衛戦略(NDS)では、四つの「層」について記述している[8]。接触層の部隊は、敵から視認できる範囲内にいることもあり、グレーゾーン作戦に対抗する。鈍化層の部隊は、攻撃に対する前方領域の全面的支配(あるいは領域内での既成事実化)を抑止し、遅延し、弱体化させ、拒否する。増派層の部隊は、侵略を打開し、望ましい条件で紛争を終結させるため、戦域に流入(すなわち増派)する。そして、本土層の部隊は、引き続き米国本土への攻撃抑止にあたる。
以下、本稿においては、筆者は単にインサイド部隊(おおむね鈍化層の部隊に対応)とアウトサイド部隊(おおむね増派層の部隊に対応)と呼び、これらの用語については、米軍だけでなく、日米同盟全体に関して用いることとする。
インサイド部隊(敵の比較的近くに展開され、敵を遅延・弱体化させるとともに、敵に全面的支配を与えないことを任務とする)には、複数の特徴を備えたアセットが含まれる。インサイド部隊は、(1)機動性、堅固化、秘匿能力のいずれを要因とするものであれ、残存可能性がより高く、(2)比較的短距離の兵器で武装しており、(3)アウトサイド部隊に情報と偵察を提供する能力があり、そして(4)より消耗可能(例えば、より小規模で、より安価で、一部が失われてもそれほど壊滅的でない)である。ウクライナにおける現在進行中の紛争により、精密打撃と十分なISRを備えた分散部隊がより大規模で重装備の部隊による攻撃に対抗できるという考えが正しいことが実証された。
アウトサイド部隊の特徴は、基本的に逆である。秘匿・保護が困難な可能性のある大規模システムが含まれているほか、長距離能力を装備し、その一部でも失われれば大きな被害と痛みを伴う。
兵力構成と態勢の調整
上記の検討内容と、地理的位置、紛争の段階、さまざまな部隊の機能との関連から、役割と任務の自然な分担が示唆される。これは厳密に国別なわけではなく、むしろ基本的には平時に展開されている場所に基づいている。隣接する戦域内の部隊は、自衛隊・米軍関係なく、インサイドの戦闘のために最適化・重点化される。他方、戦闘行為開始から相当な時間が経過した後に到着することが見込まれる増援部隊は、アウトサイド部隊の役割を果たすよう最適化・重点化される。
この区別を絶対的なものとする必要はないし、そうするべきではない。インサイド部隊とアウトサイド部隊は、さまざまな機能を果たし、分散防衛が正常に機能するためには、どちらも最初から必要になる。在日米軍と自衛隊の一部は、高脅威地域からより遠い地域に迅速に再展開することが可能であり、アウトサイド部隊の役割を担うことができる。他方で、隣接する戦域外から同地域に流入する米軍の一部は、インサイド部隊を強化するために移動することが可能である。さらに、一部の軍種またはカテゴリーの部隊は、どちらか一方の役割を果たす方がより適している。
しかし、紛争開始時に戦域内で利用可能な部隊が不足しているということは、(自衛隊・米軍問わず)前方展開部隊の大部分をインサイド部隊としてみなし、敵に対し第一列島線周囲の海域に対する全面的支配を拒否し、同時により遠方の重装備部隊にISRを提供するようにするべきであるということである。この区別は厳密に国別ではないものの、紛争開始時に戦域内部隊の大半を提供するパートナーである日本が、その部隊の大半をインサイドの戦闘向けに最適化することになる。
これらの所見を踏まえ、兵力構成と態勢について複数の調整が行われ、日米間で軍事的な分業が行われる。とはいえ、冷戦初期にみられたような分担よりは緩やかなものである。以下の所見は、主に日本の兵力構成の調整に焦点を当てているが、米軍の調整についても取り上げている。これらの提案と整合する改革が一部行われつつあるが、さまざまな要素(軍内部のものもあれば外部のものもある)がその速度と範囲を阻害している。
軍種間のバランス:北東アジアの列島環境において関連する有事は、圧倒的に空と海を巡る争いとなる。約14,000平方キロメートルの土地がある台湾は例外であり、防御側の地上部隊はほぼ完全に台湾軍となる。これらの有事において日米の地上部隊は(一部には対空・対艦能力の提供、鍵となる拠点の確保によって)役割を果たすが、制空権と制海権がこれらの争いの大部分を決することになる。少なくとも局地的な海上・航空優位を実現していない限り、現代のミサイルを前にして、地上部隊は海を渡ることができない。より完全な航空優位が実現されない限り、たとえ局地的に有利であっても、そのような作戦は非常に危険である。関連する地上部隊は小規模であるが、高度なシステムを装備している。
太平洋戦争中のガダルカナルの戦い(あるいはガダルカナルの戦いを含む、より大規模なソロモン諸島の戦い)は、この列島地形で戦われる戦闘の種類に関して教訓的である。地上での軍事行動は空軍基地を確保する上では重要であったが、双方において、地上部隊の規模が数千人を超えることはほとんどなかった。その一方で、大規模な海戦・航空戦が何度も行われ、戦争中5回あった空母戦のうち2回が行われた。他にも大規模な水上戦が複数回、双方で数百機が交戦する長期の空中戦が1回行われた。
SDFの予算は引き続き陸上自衛隊(GSDF)を大きく優遇しているが、これは遠い過去になった時代の遺産である。すなわち、SDFの主任務が北海道の地上防衛であって、米国が航空・海軍能力の大半を提供していた頃のものである。GSDFの兵力構成は規模が削減され、それにより比較的迅速に輸送できるように改編され、追加的な対空・対艦アセットが提供された。
しかし、GSDFの予算が他の軍種よりも多いということは、日本の防衛の中でより機能不全な要素の一つである。これにより、航空自衛隊(ASDF)と海上自衛隊(MSDF)への予算配分が不足し、航空・海上能力について、次善の妥協が行われている。単にGSDFの対空・対艦機能を向上させるよりも、MSDFとASDFに対し、軍事戦略の策定と列島防衛に関する課題設定においてより大きな役割を与えるべきである。日本の防衛力の評価は、GSDFから他軍種へのリソースの移動と、防衛予算全体の増額から始めるべきである。
米国政府が公的債務、インフラ需要、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる経済的影響、そして軍事的コミットメントにうんざりした国民に向き合う中で、米国の軍事予算も、当面の間はより制約される可能性が高い。仮に予算があからさまに削減されなくとも、インフレに追い付くことはないだろう。この条件下においても、難しい選択を下さなければならない。欧州の同盟国や日本を含め、予算が潜在性を下回っている同盟国に対してはより多くが求められるだろう。このような状況では、米国も地上部隊、特に陸軍の地上部隊を削減する一方で、航空・海上能力を強化することは道理にかなっている。
海軍:米軍、そして特に日本は、インサイドの戦闘のため、より小規模で、より消耗可能なさまざまな海軍部隊を導入するべきである。こうした部隊には、両国の艦隊の主力であるイージス駆逐艦や巡洋艦よりも小型で、安価で、ステルス性の高い無人水上艇(USV)やフリゲートが含まれる[9]。これらの艦艇は、高脅威地域においてさまざまな任務を実施することができる。例えば、小空母や輸送部隊の護衛、対潜戦、そしてある程度の防空・ミサイル防衛が含まれる。一部のより大型の水上戦闘艦の必要性は依然残るものの、小規模な艦艇が増加するにつれて、駆逐艦の割合が大幅に下がることは道理にかなっている。もがみ型護衛艦の費用があたご型護衛艦の3分の1であることを踏まえれば、日本は海域における水上戦闘艦の数を大幅に増やすことが可能なはずである。
しかし、MSDFが水上戦闘艦の平均サイズを小型化するとしても、ひゅうが型護衛艦・いずも型護衛艦4隻の空母化は完了するべきであるし、ひゅうが型の退役にあわせて、より大型(3万トンから4万トン)の空母を後継艦とするべきである。将来の紛争においては、空母を含む全てのアセットが危険にさらされるが、これらの軽空母は、紛争初期において攻撃を受ける可能性が高い、固定位置から作戦行動を行う地上の空軍部隊を補完する航空戦力を提供する上で役に立つ。空母の機動性は、列島線以遠で作戦行動を実施する能力と組み合わせることで、一定の保護をもたらす。
米海軍もインサイドにおける拒否のための戦闘に適した部隊の構築を加速するべきであるが、艦隊の一部をより従来的な作戦のために維持することも望むだろう。米海軍はタイコンデロガ級巡洋艦とズムウォルト級駆逐艦の後継艦の設計を見送り、アーレイ・バーク級駆逐艦(フライトIII)の建造を継続し、巡洋艦に割り当てられてきた可能性のあるリソースを実質的なフリゲート・USV艦隊の構築に振り向けるべきである。革新的なフリゲート開発において海軍が直面している困難を踏まえると、日本のもがみ型の調達を検討してもよいだろう(コンステレーション級フリゲートは、不十分な沿岸戦闘艦の、平凡で伝統に縛られた後継艦である)。
また、米海軍は空母部隊について再検討し、アメリカ級強襲揚陸艦の改良版に基づく小規模な4万トン級の空母に投資すべきである。従来型の大型空母については、アジアにおける紛争の後半段階や世界各地における有事において役立つことから、うち6隻は維持してもよいが、残る5、6隻については、約2分の1のサイズのより小型の艦艇で代替すべきである。これらの艦艇は依然として大型艦艇ではあるものの、従来の空母よりも高脅威環境で活用される可能性が高い。従来の空母は、損害を受けることで政治的に大きな痛みを伴うため、戦闘から離れた場所に引き止められる可能性があるからだ。
空軍:航空戦力もインサイド部隊にとって不可欠であり、部隊に組み込まれた主な攻撃用の「針」を提供する。現代の航空機固有の航続距離と速度は、ミサイルを発射し迅速に補充する能力と相まって、敵の艦隊や飛行場(あるいは少なくとも戦闘地帯に最も近い飛行場)に対して火力を集中し、防御を圧倒することができる。航空戦力は重要ではあるものの、その主要な基地をもはや安全とみなすことはできないため、日米両国の空軍部隊は積極・消極防御を強化し、民間施設の利用を大幅に増やし、さまざまな新たな作戦慣行を採用するべきである。従って、必要な改革は大規模なものとなり、戦力の維持と堅固化の予算を相対的に増額し、調達の予算を(繰り返しになるが、相対的に)削減することが必要になる。
米空軍(USAF)とASDFの双方が、追加的な消極防御措置に投資するべきである。子弾を搭載し、屋外で駐機する航空機等ソフトターゲットに対して使用される精密ミサイルは、領域効果を有する兵器である。航空機が保護されないままでは、1発のミサイルで複数の航空機が破壊されることもあり得る[10]。堅固化航空機用シェルター(HASs)を建設することで、損害を大幅に減らすことができる。HASの破壊は可能であるが、単一弾頭が直撃した場合に限られるため、攻撃側にとって問題が大きく変わることになり、航空機があると疑われる各陣地に対し、2発以上のミサイルを使用せざるを得なくなる。シェルターには費用がかかるものの、1カ所あたり約600万ドルから800万ドルで1億ドルの航空機の脆弱性を大幅に低減することができる[11]。余剰のシェルターが建設されれば、敵はミサイルの一部を何もない陣地に発射する可能性がある。偽装、隠蔽と欺騙陽動(CCD)にも同様の効果がある。
民間施設の利用拡大により、日米の空軍部隊はより多くの飛行場に分散し、飛行場1カ所あたりの航空機の密度を低減し、CCDの効果を高めることができる。中国が滑走路を遮断することで飛行場を閉鎖に追い込むことを選択した場合であっても、軍民共用・民間飛行場を追加的に活用することで、必要なターゲットの数は増加し、敵のミサイル在庫を消耗させ、一部の滑走路(と航空機)が機能を維持する可能性が高くなる。沖縄県にある大半の飛行場は小規模であるが、F-35B戦闘機、V-22垂直離着陸機やヘリコプターを受け入れることは可能である。また、九州にある大規模な飛行場を活用することにより、日米同盟が現地にある少数のASDFの駐屯地に航空機を集中させて脆弱性を高めることなく紛争地帯付近により多くの数の航空機を配備することが可能になる。
最後に、積極防御(防空・ミサイル防衛部隊)は、敵の作戦立案者にとって一層の不確実性をもたらす。攻撃側のミサイルに対する迎撃ミサイルのコスト交換率は低いものの、敵が不確実性に直面し、個別の攻撃に多すぎる、あるいは少なすぎるミサイルを割り当てることで、交換率は大幅に改善する。その上、費用対効果は純粋なアセット防御費用で判断するべきではない。その計算では、弾丸の方が安価なことから、誰も兵士用の防弾チョッキに投資しなくなる。重要なのは、自軍のシステムを防御することで、作戦上の役割において活用できるようにすることである。こうした役割には、航空機の場合、艦隊、敵基地、飛行中の航空機や潜水艦への攻撃が含まれる。
日本の航空機調達戦略は、インサイド部隊として活動するために必要な兵器を製造する上で、全体としては正しい軌道に乗っている。ASDFは、延伸型統合空対地スタンドオフ・ミサイル(JASSM-ER:地上攻撃用)と長距離対艦ミサイル(LRASM)の調達を完遂し、F-15戦闘機を改修してこれらのミサイルを発射可能にし、F-35戦闘機用の統合打撃ミサイル(JSM)を調達するべきである[12]。ASDFはF-35A戦闘機の調達の一部をF-35Bに変更することを検討してもよいだろう。F-35Bは日本の軽空母上で有用であるのみならず、琉球諸島の小規模な飛行場でも使用可能だからだ。また、ASDFは、現在運用数が非常に少ない空中給油機への投資拡大も継続するべきである。空中給油機があれば、ASDFの航続距離を伸ばし、防御面では、滞空ロイター飛行時間を延ばすことができる。早期警戒管制機、(MSDFが運用する)対潜哨戒機と輸送機に関するASDFの現在の計画はすでに十分である(輸送機については過剰といえるだろう)。
USAFはACEの概念を採用したが、機敏な作戦を実行できるようになることを臨むのであれば、大規模な調整に直面する。USAFは整備部門と飛行中隊をどのように再編成するかという問題を抱えている[13]。しかも、上記の同じインフラ問題(例えば、堅固化や民間施設の利用)の全てに関して、日本政府と調整する必要がある。場合によっては、ASDF以上に、USAFはどのように旧式の航空機を更新し、何機のF-35を運用する財政的余裕があるのかを検討するという問題に直面しているのかもしれない。チャールズ・Q・ブラウン空軍参謀総長は、旧式の航空機の退役を加速し、F-35の調達を制限することを支持している[14]。これらの調整により、短期的には機数が少なくなるものの、航空部隊の機齢が劇的に下がり、次世代防空戦闘機をより迅速に導入するためのリソースが節約されることになるだろう[15]。
陸軍:GSDFは、脅威に適応するために多くのことを行ってきたが、引き続き大規模な機動編成を維持している。そのような編成や、GSDFが予算面で恵まれた立場にあるため、航空・海上能力強化のために利用できる可能性のあるリソースを消費し続けている。軍種間の予算再配分のほかに、GSDFが海戦・航空戦により直接的に貢献する方法がある。
複数の師団が旅団に改編され、部隊の大半がより機動的になった。GSDFは、水陸機動団(2018年創設)、既存の空挺部隊に加えた空中機動旅団(2001年創設)など、海を越えて攻撃を行うことができる部隊の数を増やしてきた。その他の師団級、旅団級の編成内にある複数の連隊が、「即応機動連隊」へと改編され、大型の装甲兵員輸送車や主力戦車の代わりに小型の装輪装甲車が配備されている。
しかし、GSDFの調整は、水陸両用強襲に対する島嶼防衛や、敵部隊に占領された可能性のある島嶼奪還のために展開することを極めて重視している。すなわち、大規模な機動編成にとっては、どちらかといえば従来からの任務である[16]。これらの任務、特に反撃には、GSDFのみならず、支援のためにMSDFからの多額の投資が必要となる。その上、これらの任務の重要性は二次的といってよい。周辺海域の制海権、そして特に制空権なしには、いずれの側による水陸両用強襲も成功する可能性は低い。奪われた島嶼の奪還は、海上と空域で事態が実質的に沈静化した後、紛争の最後の段階まで待つことになる可能性が高い。
インサイドの戦闘を戦うために、GSDFは一部の迅速展開可能な歩兵部隊を維持して重要な陣地を防御する一方で、兵力の大部分を対艦、そして特に対空ミサイル部隊を中心とする任務編成された部隊へと再編するべきである。03式中距離地対空誘導弾のような防空システムは巡航ミサイルに対しても利用可能であり、そのような地対空ミサイル(SAMs)を大量に保有することで、攻撃側の任務を大幅に複雑化させることができる。その役割において最も高い効果を得るため、そのような砲兵部隊(と部隊が組み込まれている任務部隊)は、既存のシステムよりも容易に展開可能にするべきである。したがって、例えばC-130輸送機による展開を容易にするために、より小規模で経済的なシステムを開発するべきである[17]。
米軍内では、海兵隊が「海軍との統合深化」を計画している。M-1主力戦車をすべて廃止したほか、既存部隊の多くを海兵沿岸連隊(MLRs)に再編する予定である。MLRは、EABOを実施する能力があり、航空・海上・情報作戦に関連するシステムを装備している[18]。陸軍はマルチドメイン任務部隊(MDTFs)5個部隊を編成する予定であり、最初のMDTFがワシントン州のルイス・マッコード統合基地で創設された[19]。海兵隊は特に「インサイド部隊」としての役割を引き受けているほか、海軍との歴史的なつながりや輸送手段、独自の固定翼戦闘機があることから、航空戦・海戦において重要な役割を果たしやすい立場にある。
理想的な世界では、日米は全領域において冗長かつ堅固な能力を持つことになるのだが、リソース面の制約により、両国は地上部隊に過剰投資しており、海上・航空能力を強化する必要性が高まっている。
精鋭前衛部隊の構築
上記で提案した役割と任務に対しては、疑問が呈される可能性があるだろう。役割と任務に対するこのようなアプローチは、日本を同盟の中で防御的役割にとどめるという点で、「未来に戻る」ものではないのか。回答としては、条件付きの「ノー」である。今日直面する戦略的情勢と、冷戦初期から中期にかけての戦略的情勢との間に類似点があることは否めない。具体的には、隣接する戦域内における戦力の相関関係が劣勢であることに加え、多くの米軍が遠隔地に展開されている。そのため、日本・米国問わず、戦域内に展開された部隊の重要な機能は敵に戦場を全面的に支配させないこと、すなわち戦略的・作戦的に防御的な任務であることは事実である。
しかし、「攻撃的」と「防御的」の境界は、冷戦期の日本による北海道や北日本防衛を特徴付ける陸上領域よりも、海上・航空領域においては曖昧になる。その一因としては、作戦と戦術戦の区別がより曖昧なことにある。戦術レベルでは、拒否アプローチには重要な攻撃要素が含まれており、それがより大きな作戦の経過に影響を及ぼす。
要求される作戦能力の水準が非常に高いことや、部隊内に組み込まれた戦術的攻撃能力を踏まえると、インサイド部隊を、部隊全体の中での精鋭・軽装備の要素と表現する方がより正確だろう。インサイド部隊は、静止陣地を維持するのでは全くなく、高度な機動性と攻撃側を消耗させる能力を特徴としており、戦術戦闘機、比較的小型ながら殺傷力のある艦艇、先進的通信機器と精密対空・対艦ミサイルを装備した、小規模で高度に訓練された地上部隊が含まれる。
歴史的に見て、そのような部隊に最も似ているのが、敵の主力部隊を攻撃・妨害するとともに、敵の主力部隊に関する早期警戒と情報を提供するために主力部隊の前に立って作戦活動を行ったナポレオン戦争の際の軽歩兵かもしれない。これらの部隊は重装備部隊に対する直接的な正面戦闘に耐えるためではなく、分散、柔軟性と地形を活用して目的を達成するためのものである。これらの部隊は、英国陸軍の有名な「グリーンジャケット」(ライフル銃兵)を含め、単純で機械的な訓練を受けるのではなく、自ら率先して動くことが期待され、戦線の同僚兵士よりはるかに高い地位を享受していた。日本の軍事史において似ているものといえば、組織化の程度は低くなるものの、戦国時代後半の飛び道具(銃)で武装した精鋭足軽部隊であろう。
インサイドの戦闘の遂行において求められるマインドセットの証拠が必要であれば、米軍の中で最も攻撃的な精神を持ち続けていることを誇りとしている米海兵隊が、分散作戦実施のため、自隊の再編成に最も積極的であることに示されている。ある意味で、米海兵隊は、インサイドの戦闘を、より大きな戦闘における名誉ある陣地として受け入れてきた。同様に、危険な場所に最初に入り、他の部隊よりも敵部隊に接近することになる潜水艦部隊も、高い士気と選抜基準、そして海軍の中で自分たちが最も優れているという意識を特徴としている。だからといって、これは決して弱さと機動性の欠如が一因となり自衛隊が防御的な役割を割り当てられていた時期に回帰するということではない。むしろ、日米の軽武装精鋭部隊が前方の戦場において共同で作戦を行い、重装備部隊は後方で作戦行動を行うという概念の実現に向けた動きなのである。
(2022/07/22)
*こちらの論考は英語版でもお読みいただけます。
【Shaping the Pragmatic and Effective Strategy Toward China Project:Working Paper Vol.9】A New Conception of Roles and Missions: Japan SDF as the Elite “Inside Force”
脚注
- 1 Jeffrey W. Hornung, “U.S.-Japan: A Pacific Alliance Transformed,” The Diplomat, May 4, 2015; “Priority on Dealing with U.S.-Japan Alliance Perception Gap,” East Asia Forum, April 13, 2021. 役割と任務についてより真剣に取り上げた論考としては以下を参照のこと。Yoshikazu Watanabe, Masanori Yoshida, and Masayuki Hironaka, The U.S.-Japan Alliance and Roles of the Japan Self-Defense Forces, Sasakawa USA, 2016. 同論考で指摘された多くの点について同意するが、本稿は自衛隊の分散作戦能力向上のためにより徹底した改革を行うように主張している。
- 2 インサイド・アウトサイドの戦闘のための部隊の区別については、以下に詳述されている。拒否の概念については、以下を参照のこと。Eric Heginbotham and Jacob L. Heim, “Deterring without Dominance: Discouraging Chinese Adventurism under Austerity,” Washington Quarterly, Spring 2015.
- 3 2022年1月の外務・防衛閣僚会合(「2+2」)において、日本側は軍事的役割の問題について提起したが、それぞれの同盟国による取り組みを具体的な一部の任務に集中させるのではなく、日本が受け入れる任務の範囲を拡大するという文脈であった模様である。
- 4 この可能性について日本が軍事的に懸念しているということは、小西誠氏が情報公開法に基づき入手し、書籍として出版した日本のドクトリンに関する文書において明らかである。以下を参照のこと。『自衛隊の島嶼戦争―資料集・陸自「教範」で読むその作戦』(東京:社会批評社、2017年)。
- 5 変化するパワーバランスに関する測定基準については、以下を参照のこと。Eric Heginbotham et al., The U.S. China Military Scorecard: Forces, Geography, and the Evolving Balance of Power, 1996-2017 (RAND, 2015).
- 6 例えば以下を参照のこと。Timothy T. Lupfer, The Dynamics of Doctrine: The Changes in German Tactical Doctrine During the First World War (US Army Command and General Staff College, 1981); and Shawn Woodford, “Attrition in Future Land Combat,” Mystics and Statistics (Blog of the Dupuy Institute), June 9, 2017.
- 7 このJAM-GCという概念に関する説明については、以下を参照のこと。Expeditionary Advanced Base Operations (EABO) Handbook: Considerations for Force Development and Employment, June 1, 2018, Version 1.1.
- 8 Office of the Secretary of Defense, Summary of the 2018 National Defense Strategy of the United States of America: Sharpening the American Military’s Competitive Edge, 2018. 以下も参照のこと。
Mark Gunzinger, Building a Force That Wins: Recommendations for the 2022 National Defense Strategy, Mitchell Institute for Aerospace Studies, 2021. - 9 MSDFは、一定程度この役割を果たす、非常に成功した小型フリゲートを設計・建造した。この調達を巡る議論については、以下を参照のこと。ロイター「海自の新型護衛艦、4年間で8隻建造へ=防衛省関係者」2017年2月17日、 。
- 10 中国は、爆発性の子弾を搭載した巡航ミサイル25発で嘉手納空軍基地の駐機場に停泊している可能性のあるすべての航空機をカバーすることができる。以下を参照のこと。Heginbotham et al., The U.S.-China Military Scorecard, p. 62.
- 11 韓国は最近、米軍群山空軍基地における20カ所のHAS建設に1億2,500万ドルの予算を充てた。これは1カ所あたり600万ドル強に相当する。以下を参照のこと。“Hardened Aircraft Shelters Constructed at Kunsan,” Kunsan Air Base website, August 4, 2020.
- 12 “Japan Retools Plan for F-15 Upgrades by Losing High-Tech Anti-Ship Missiles from U.S.,” Stars and Stripes, August 6, 2021.
- 13 Patrick Mills et al., Building Agile Combat Support Competencies to Enable Evolving Adaptive Basing Concepts, RAND Corporation, 2020; Miranda Priebe, Alan J. Vick, Jacob L. Heim, and Meagan L. Smith, Distributed Operations in a Contested Environment: Implications for USAF Force Presentation, RAND Corporation, 2019.
- 14 “U.S. Air Force Could Lose Two Squadrons of F-15C/Ds in 2022,” Defense Daily, June 1, 2021.
- 15 “Future Fighter Force,” Air Force Magazine, July 22, 2021; Will Roper, “The Air Force’s Secret New Fighter Jet Uses F1-Style Engineering,” Popular Mechanics, January 12, 2021; and “Digital Twins to be New Hallmark for US Air Force Weapons Systems,” Aviation Today, May 3, 2020.
- 16 重視されていることは前掲の小西(2017)内の文書において明らかである。
- 17 米国では、肩撃ち式の短距離システムとパトリオットPAC-2間のギャップを埋める複数のシステムが検討されている。その中には、はるかに小さなAIM-120先進中距離空対空(AMRAAM )ミサイルや、それよりも小さなペレグリン・ミサイルを使用するシステムも含まれる。以下を参照のこと。“SAM System That Guards Washington DC Just Made its Lowest Ever Intercept of a Mock Cruise Missile,” The Drive, September 24, 2020.
- 18 Force Design 2030, Headquarters Marine Corps, March 2020.
- 19 Congressional Research Service, “The Army’s Multi-Domain Task Force (MDTF),” updated April 13, 2021.