大陸棚限界委員会に対する各国の申請状況

ミャンマーの申請

スリナムの申請

2008年12月16日、ミャンマーは、国連事務総長を通じ大陸棚限界委員会に対して申請を提出しました。ミャンマーが申請を提出したことは国連事務総長によって、全国連加盟国に通知され、申請のエグゼクティブ・サマリーが公表されました。スリランカ、インド、ケニア及びバングラデシュが自国の見解を示す文書を提出しています。

ミャンマーは、エグゼクティブ・サマリーの中で、以下の点を述べています。

  1. この申請は、ベンガル湾におけるラカイン(Rakhine)大陸棚を基にして200海里を超える大陸棚の延長に関するものである。
  2. 隣国との関係に関し、インドとは1986年にベンガル湾及びアンダマン海に関する海洋境界画定条約を締結しており、バングラデシュとは第76条10にもとづき、海洋境界画定に関する交渉を行っており、今回のミャンマーの延長申請は将来の境界画定に影響を及すものではない。

スリランカ、インド、ケニア及びバングラデシュはそれぞれ口上書を提出し、ミャンマーの申請が第三次国連海洋法会議最終議定書附属書IIに組み込まれている大陸縁辺部の外縁を設定するのに用いられる特定の方法に関する了解声明(Statement of Understanding)(*1)にもとづいていることに関し、以下の点を述べています。

スリランカの主張

  1. この了解声明で言及されている「国家(State)」とは、スリランカである。
  2. したがって、スリランカは、ミャンマーの申請提出と、大陸棚限界委員会による審査が、この了解声明にもとづくスリランカの将来の申請提出に影響を及すものではないと理解した上で、ミャンマーの申請提出に同意を与える。また、ミャンマーが主張する海域について、スリランカの利益を害する勧告を行わないよう大陸棚限界委員会に要求する。委員会の審査は、ミャンマーが主張する海域における近隣諸国間の大陸棚境界画定に影響を及ぼしてはならない。

インドの主張

  1. ミャンマーは、この了解声明を援用するための根拠を示していない。ミャンマーによる了解声明の解釈及び適用について、インドはいかなる判断も行わないが、この了解声明はインド及びスリランカにのみ適用されると考える。
  2. インドとミャンマーとの二国間協定(1986年署名)において、ベンガル湾の特定地点を越える海洋境界の延長は後の段階でなされると規定されているが、まだ実現されていない。したがって、ミャンマーの申請は、二国間の境界画定の問題に影響を与えるものではないことを確認する。

ケニアの主張(*2)

  1. 沿岸国がこの了解声明を援用して申請を行う際の根拠は、その沿岸国が、特別な事情が存在し、条約第76条4項(a)(i)及び(ii)を適用すると不平等が生じることを証明できる能力にある、とケニアは考えている。
  2. ケニアは、この了解声明の中の方法を適用したいと考える沿岸国が、特別な事情の存在と、その方法を適用しなければ不平等が生じることを正当に証明できれば適用可能であると考えており、沿岸国の地理的位置によって決まるものではない、と考える。

バングラデシュの主張

  1. ミャンマーがエグゼクティブ・サマリーにおいて言及しているバングラデシュとの境界画定交渉は未解決のままなのであるから、大陸棚限界委員会手続規則に照らして「紛争(a dispute)」と見なされる。
  2. ミャンマーが用いている直線基線について、バングラデシュは、すでにミャンマー政府に対して口上書を送って、異議を唱えており、この点においても、大陸棚限界委員会手続規則に照らして、紛争と見なされる。また、バングラデシュは、大陸棚限界委員会には領海の基線となる直線基線について判断を下す権限はないと考える。
  3. ミャンマーが用いた科学的データ及び了解声明の適用について、バングラデシュは後の段階でコメントを提出する権利を留保する。
  4. 以上の状況にかんがみ、バングラデシュは2011年7月までに大陸棚延長申請を提出し(*3)、その時点で大陸棚限界委員会がミャンマーとバングラデシュの申請の両方を審査できるよう、あらゆる努力を払う。

ミャンマーの申請のエグゼクティブ・サマリー、スリランカ、インド、ケニア及びバングラデシュが提出した文書は、下記サイトで閲覧することができます。

2009年8月〜9月に開催された第24回大陸棚限界委員会において、ミャンマー代表は、申請の内容についてのプレゼンテーションを行いました。 ミャンマーの申請について、上記4カ国が自国の見解を示す口上書を提出しており、とりわけバングラデシュがミャンマーの申請区域における「紛争(a dispute)」について言及していたことを受け、大陸棚限界委員会は、ミャンマーがプレゼンテーションを行った時点では、ミャンマーが審査待ちの行列の先頭にくるまでの間、審査をどうするかについて後の段階で検討することにしていました。
その後、2010年8月〜9月に開催された第26回会合において、ミャンマーが行列の先頭に来ましたが、状況が進展していないことを受け、更に延期することとしました。2011年3月〜4月に開催された第27回会合においても、関係国の同意が得られていない状況が続いているとして、申請を審査する小委員会の設置は見送られました。

(*1) この了解声明は、第三次国連海洋法会議において、スリランカから提出された修正提案にもとづき、採択されたものです。この了解声明は、ベンガル湾の南部の諸国(スリランカやインド)のように、大陸縁辺部の広範囲にわたって厚い堆積岩があるようなところについては、国連海洋法条約第76条に規定される大陸縁辺部の外縁の設定方法とは異なる方法をとることを認めています。

(*2) ケニアは、このような考えに基づき、2009年5月6日に、大陸棚限界委員会に申請を提出しました。ケニアは、申請のエグゼクティブ・サマリーの中で、この了解声明に規定されている大陸縁辺部の外縁を設定する特定の方法を用いている、と述べています。

(*3) バングラデシュは、2001年7月に国連海洋法条約を批准書を寄託したので、それから10年以内に大陸棚延長申請を行えばよいことになっています。なお、バングラデシュは、2011年2月25日に申請を提出しました。

 

ミャンマーの周辺図

ミャンマーの周辺図

出典:米国商務省海洋大気庁地球物理センター(NGDC)提供のETOPO1 データ
Amante, C. and B. W. Eakins, ETOPO1 1 Arc-Minute Global Relief Model: Procedures, Data Sources and Analysis, National Geophysical Data Center, NESDIS, NOAA, U.S. Department of Commerce, Boulder, CO, August 2008.

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