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一般事業 平和と安全への努力~非伝統的安全保障

2010年
事業

新型インフルエンザによるパンデミック対策と域内協力

事業実施者 笹川平和財団
東北大学
年数 3/3
形態 自主助成委託その他 事業費 13,701,896円
事業内容
昨春北米に端を発した新型インフルエンザA(H1N1)は、またたく間に世界的大流行(パンデミック)となった。一方、高病原性の鳥インフルエンザウィルス(H5N1)が新型インフルエンザウィルスに変異する可能性は依然継続している。特に、医療や経済の水準が低い発展途上国ではより深刻な被害が想定されており、各国の適切な対応と効果的な域内連携が求められている。本事業は、かかる脅威を非伝統的安全保障の課題と位置付け、専門分野や国などの枠組みを越えて域内の多様なアクターが連携して取り組むことを目指すものである。
実施計画
本年度は、事業の最終年度として以下の活動を実施する。 

  • 委員会の開催(年2回、東京):
    医学、疫学の専門家6名による委員会を開催し、活動戦略を策定する。
  • 地方レベルのパンデミック対策の総括(通年):
    21年度には、フィリピンの東ビサヤ地域を対象として、予防啓発、サーベイランス、医療体制などの地方レベルの対策の検討・試行を行なった(東北大学に委託)。本年度は、引き続き、試行結果の総括を行なうとともに、ワークショップや視察を通じて、フィリピン国内や周辺国の自治体や感染症対策の関係者らと知見の共有を行なう。
  • 域内連携のあり方に関する提言作成(通年):
    地方レベルの取り組みを通じて明らかになった課題等を踏まえ、アジアの域内連携に関する提言をまとめる。具体的には、外交・安全保障、科学技術などの幅広い分野の若手研究者による研究会(年5回)や有識者へのインタビューを通じて、報告書を作成する。提言書の作成に際し、East-West Center客員研究員の清水美香氏に客員研究員として協力を仰ぐ。
  • 成果の発信(2011年1月~3月):
    アジア域内の新型インフルエンザを含めた感染症対策について、成果と提言を発信する。国内でのセミナー開催に加え、国際会議等に専門家を派遣することで、国際機関や政府関係者、NGOや研究者などの幅広い関係者に対して成果を共有する。
  • 事務局活動費(通年):事業の効果的な運営を図るため、国内外の専門家(研究会委員等)や国際機関(WHO、ASEAN事務局等)、国際保健に関係する機関との打ち合わせや調査を目的とした出張を行なう。
実施内容・事業成果
本事業では、新型インフルエンザの発生に備え、途上国の状況を踏まえた地方レベルの対応策と、より効果的な地域連携のあり方を調査・分析し、提案することを目的として2008年度より活動してきました。初年度は、アジア域内国の対策の現状を把握することを目的とした概括調査を実施しました。2年目には北米で新型インフルエンザA(H1N1)が発生し、世界的大流行(パンデミック)となったことを受けて、東北大学大学院医学系研究科への委託事業として、フィリピンの東ビサヤ地域で感染予防の啓発、サーベイランス、保健システムや医療体制などを試行・分析しました。また、アジア諸国間でパンデミックの経験と課題を共有することを目的として、国際シンポジウム(10年3月、於:東京)を開催しました。

事業の最終年度である本年度は、得られた知見を分析・総括したうえで、アジア周辺国に向けて成果を発信することを目的に東北大学と共催で国際ワークショップ(11年2月、於:マニラ)を開催しました。アジア5カ国(フィリピン、インドネシア、ラオス、タイ、ベトナム)の中央・地方政府のパンデミック対策の担当者やWHO西太平洋事務所の担当官らが出席し、H1N1への対応を通じて得られた教訓と課題、H5N1を含めたアジアの感染症対策の今後の方向性などについて協議されました。一方で、公衆衛生、安全保障、危機管理などの研究者によるグループを結成し、アジア地域における新型インフルエンザを含めた感染症対策の連携強化に向けた課題の検討を行い、提言報告書を作成しました。

新型インフルエンザA(H1N1)の発生から2年を迎え、各国政府やWHOをはじめとする関係機関を中心に今回のパンデミックの経験と課題をレビューし、今後の対策に活かそうという動きが活発化していますが、本事業の成果をその過程で活用したいという声も上がっています。高病原性の鳥インフルエンザ(H5N1)による新型インフルエンザ発生の危険性が依然継続する中、本事業を通じて得られた知見が幅広い関係者に活用されることが期待されます。
成果物

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