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一般事業 平和と安全への努力~非伝統的安全保障

2012年
事業

難民受入政策の調査と提言

事業実施者 笹川平和財団 年数 2/3
形態 自主助成委託その他 事業費 15,819,886円
事業概要
難民条約の採択から60周年を迎え世界的に難民支援の機運が高まりつつある。また、アジア太平洋地域には世界の難民の34%が暮らしており、諸外国で難民受け入れが縮小する中、アジアの難民問題にはアジア自らが取り組むことが求められるようになっている。しかし、諸外国と比べて日本は難民受け入れに積極的とは言えず、支援制度や受入体制にも多くの問題がある。経済社会が転換期を迎え、国際社会における日本の役割が問い直される中、難民の問題をどう捉え、いま日本に何が求められているのか、今後の難民政策のビジョンを提示し、幅広い関係者の理解を得ていくことが必要である。
本事業は難民政策を非伝統的安全保障の観点から重要な課題と捉えアジアにおける難民発生に備えることを念頭に、日本が果たすべき役割と難民政策のビジョンを提示することを目指す。
実施計画
3年継続事業の2年度に当たる本年度は、難民受入に関する研究会ならびに、難民定住支援の関係者間のラウンドテーブルの開催、国内・海外の調査を行う。また、難民受け入れをテーマとしたシンポジウム開催やWeb siteでの情報発信を通じて、一般向けの啓発活動にも力を入れる。、初年度の活動成果や形成された人脈を活用しながら以下の活動を行う。
  • 難民政策に関する調査研究(通年)
    • 研究会の開催
      日本の難民受入のビジョンに関する多角的な検討を目的に、神奈川大学の藤本俊明氏、筑波大学の明石純一氏、東京外国語大学の長谷部美佳氏ら、法学、政治学、社会学など様々な分野の専門家(7~8名)による研究会を開催する。また、研究会メンバーが率いる研究チームを構成し、国内外の調査を実施する。
    • 国内調査
      日本の難民定住の課題と改善策を検討するため、インドシナ難民など過去の経験の分析や地域での調査を行う。
    • 海外調査
      欧州などの政策や定住支援策を調査し、日本の政策を検討する際の参考とする。また、アジア地域の難民受入の現状と課題に関する調査をタイ難民委員会(Thai Committee for Refugees/タイ登記の非営利団体、調査は同団体傘下のアジア太平洋難民の権利ネットワークが実施)に委託する。
  • 国内でのシンポジウム等の開催(通年)
    難民受入に関する世論喚起を目的に、政府関係者や実務家、研究者、一般市民、メディアなどを対象としたシンポジウムを開催する。その際、日本と似通った背景の中で難民を受け入れている北欧などから専門家を招き知見を共有してもらう。また、地域における難民定住支援の関係者間の意見交換のため、ラウンドテーブルを年3回実施する。
  • 事務局活動費・情報発信(通年)
    助成事業「東アジアの難民支援制度の改善」をはじめ、難民政策や難民支援の専門家、実務家との効果的な連携を目的とした会合、会議出席のための出張等を行う。また、難民ナウ!等との連携により、本事業の取り組みや問題意識、難民問題に関してWeb siteや動画を通じた情報発信を行う。
実施内容・事業成果
 事業の2年目にあたる2012年度は、日本における難民受入のあり方を検討するための材料を集めることを目的に、国内外の専門家や実務家のみなさんのお力をお借りして、各種調査を行いました。また、円卓会議やシンポジウムを通じて、異なるアクターの方同士や広く一般の方も含めた対話の場づくりを目指しました。なお、これらの調査結果と提言につきましては、2013年度に随時発表する予定です。
1. 難民政策に関する調査研究
 1. 国内調査
 インドシナ難民に関する調査
神奈川県大和市いちょう団地(調査地)

神奈川県大和市いちょう団地(調査地)

 1970年代以降、多くのインドシナ難民が日本に定住しています。そこで、まずは難民の生の声を基に定住の状況と課題を把握することが重要と考え、神奈川、兵庫、大阪、静岡などの集住地域で、アンケートとインタビューを行いました。

 なお、本調査では英国内務省による難民の社会統合の指標を活用することで、包括的な分析を目指しました。
2. 海外調査
 2-1. アジア現地調査・文献調査
 世界の難民の三分の一がアジアに暮らすと言われています。そこで我々は、日本国内での調査と並行し、難民支援協会とタイ難民委員会の協力を得て、アジアにおける難民の暮らしや、彼らのニーズ等を把握するため、国内外の文献調査や、マレーシア、タイ、ネパール、インドの都市部に暮らす難民へのインタビューを実施しました。
 2-2. 北欧調査
 北欧諸国は、移民国家の成り立ちを持たない中で、人道に基づき第二次世界大戦後、難民受入に積極的に取り組んできました。同じく移民国家ではない日本の難民受入を検討する上で、北欧の経験から多くの示唆を得られると考え、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーの難民受入政策やスキームに関する文献調査・現地調査(調査チームがのべ3回訪問)を行いました。
 
UNHCR北欧事務所にて[左]<br />スウェーデン・イェヴレボリ県ユースダール市役所(わずか10年で200人規模の難民受入を実現した)[右]

UNHCR北欧事務所にて[左]
スウェーデン・イェヴレボリ県ユースダール市役所(わずか10年で200人規模の難民受入を実現した)[右]

2. 国内でのシンポジウム等の開催
 1. 難民受入円卓会議の開催
難民受入円卓会<br />(2012年7月27日 於日本財団ビル)

難民受入円卓会
(2012年7月27日 於日本財団ビル)

 これまで日本では、難民受入に取り組むステークホルダーが集まって、第三国定住や難民受入のあり方を率直に議論できる場はありませんでした。
 そこで、本事業では、地方自治体や雇用主、政府、国際機関、NGO、研究者らが一堂に会する円卓会議を2回にわたって開催しました。会議では、難民受入における地域社会の役割や、北欧からの日本への示唆などについて、活発に議論が行われました。
 2. スウェーデンより専門家の招へい・シンポジウムの開催
 スウェーデンの難民受入政策の理念や実践を日本の関係者に共有してもらうことを目的に、難民受入の第一線で活躍するオスカー・エクブラッド氏(Oskar Ekblad、スウェーデン移民庁難民認定局副局長定住課長)、ケネス・フォセル氏(Kenneth Forssell、ユースダール市難民定住局長)を日本に招へいし、シンポジウム(詳しくはこちら)を開催しました。
 彼らは滞在期間を通じて、政府や、UNHCR、IOMなどの国際機関をはじめ、日本政府が現在取り組んでいる第三国定住パイロット事業における難民受入地域の自治体や雇用主、NGO団体などと幅広く面談し、豊富なご経験とノウハウを共有しました。
 
シンポジウムでの議論 (2013年2月11日、於東京)[左] 三重県鈴鹿市 末松則子市長らを表敬訪問[右]

シンポジウムでの議論 (2013年2月11日、於東京)[左] 三重県鈴鹿市 末松則子市長らを表敬訪問[右]

【外部リンク】
特定非営利活動法人 難民支援協会 ※アジア諸国の難民に関する文献調査は、同協会内に事務局を置く難民研究フォーラムが実施。

タイ難民連携委員会Thai Committee for Refugees ※アジア諸国の難民に関する文献調査、聞き取り調査は、同団体内に事務局を置くアジア太平洋難民の権利ネットワークAsia Pacific Refugee Rights Networkが実施。
 

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