スーダンでは、2023年4月に勃発したスーダン国軍(SAF)と準軍事組織「即応支援部隊」(RSF)間の軍事衝突から3年が経過したが、なおも紛争解決の糸口が見えない。2023年4月以降、最も深刻な時期で、約1,400万人が家を追われ、人口の半分に相当する2,000万人以上が深刻な食糧不足や飢餓のリスクにさらされ、女性に対する性暴力がまん延し、ジェノサイド(集団殺害)が発生した可能性があると言われている[1]。これまでの世界の歴史の中でも、これほど深刻な人道危機は比類なきものである。にもかかわらず、終結の見通しが立たないスーダンの紛争は「見捨てられた危機」[2]と言われている。なぜ終わらないのか?解決のすべはないのか?スーダンの紛争の構造を分析し、今後取るべき措置につき検討したい。

代理戦争化するスーダン
スーダンの紛争が、3年を経ても終わらない最大の要因は、中東諸国を中心とした軍事的・資金的介入の影響である。スーダンの紛争は、ローカルコンテキストでは、SAFとRSFによる軍事衝突であるが、視点を変えて見ると、スーダンは、外部の諸勢力が利害衝突をぶつける「プレイグランド」と化しており、外部勢力によるSAF、RSF双方への資金・武器支援が、戦闘継続の主要因となっている[3]。
SAF陣営は、エジプトやサウジアラビア、トルコ、イランなどが支えている。エジプトは、かつてスーダンが英国の植民地であった頃は、英国の代理人としてスーダンを植民地支配する立場となり、スーダン独立後もSAFの幹部候補生はおしなべてエジプトの軍事学校で教育を受けるなど、エジプト国軍とSAFは師弟関係ともいえるほど強く結びついている。サウジアラビアは、紅海を隔てた対岸に位置するスーダンの国家としての継続性、正統性を支持する立場からSAFを支援している。SAFは支持母体に、ムスリム同胞団などのイスラム勢力を抱えているが、ムスリム同胞団に寛容な立場を取るトルコやイランもSAFを支援している。
これに対し、RSF陣営はアラブ首長国連邦(UAE)を筆頭に、エチオピア、チャドなどがRSFを支持するグループとして組み込まれている。紅海に接していないUAEは、かねてより紅海沿岸に自らの拠点を確保するとともに、アフリカ進出のベースを作りたいとの意図からスーダンに強い関心を示してきた。また金(ゴールド)の利権確保の観点からRSFと強く結びついている。UAEとRSFをつなぐ輸送ルート確保の観点からチャドがこのネットワークに加わり、またナイル川の水を巡ってエジプト・スーダンと対立関係にあったエチオピアがRSF側を支援している。
スーダンの内戦を巡っては、かねてよりサウジアラビアとUAEが、それぞれ敵対勢力を支援する関係にあったが、2026年5月にUAEが石油輸出国機構(OPEC)およびOPEC+から脱退するなど、現在、両国の確執が先鋭化している。スーダンの内戦は、「サウジアラビアとUAEの代理戦争」[4]とも言える状態となっている。
紅海は、かねてより地理的要衝の地として注目されていたが、イスラエル・米国とイランの軍事対立によりホルムズ海峡が封鎖されると、従来以上に紅海の重要性が高まるようになった。これに伴い、紅海に接するスーダンの戦略的重要性もこれまで以上に高まり、これが紅海周辺国やトルコなどの域内大国がスーダンへの関与を強めるインセンティブとなっている[5]。スーダンの紛争は、ドローンなどの武器が尽きることなく[6]、SAF、RSF双方が戦闘を継続する状況である。スーダンは、諸外国が影響力強化を狙って相争う「プレイグランド」となり、スーダンの人々の命と生活が、この「ゲーム」で犠牲となっている。
国家分裂と崩壊、地域紛争化の懸念
スーダンの内戦は、2023年8月には、RSFが首都ハルツームの主要拠点を支配下に置き、SAFの幹部がハルツームから紅海沿岸のポートスーダンに退避する事態となったが、その後、SAFはハルツームへの復帰を果たし、2025年11月以降は、SAFが首都およびナイル川流域以東を支配、RSFはダルフールを中心にスーダン西部を支配する形で支配エリアが固定化しつつある[7]。
この情勢変化に伴い、多くの避難民が帰還している。スーダン全体では、2025年1月には1,160万人に上った国内避難民のうち、約30%に相当する367万人が国内避難先から戻っている[8]。首都のハルツーム州では、最大377万人が国内避難民となったが、その約半数に相当する190万人が国内避難先から戻り、国外避難者も合わせるとハルツーム州に210万人が帰還している。帰還者の大多数(87%)が「治安の回復」を帰還の理由として挙げ、自ら住んでいた場所に戻り、自宅の復旧などに取りかかっている。
またSAFとRSF双方が政府を樹立し、2つの政府が国内に並存する状況が生まれている[9]。2025年5月、SAFのブルハン最高司令官は、元外交官のカミール・アルタイブ・イドリス(Kamil al-Taib Idris)を首相に指名、イドリスは22名の閣僚を任命した。一方、RSFは、2025年7月、南ダルフール州都のニャラで、RSFトップのヘメティ(Hemedti)を大統領評議会(Presidential Council)議長とし、モハメッド・ハッサン・アルタイシ(Mohammed Hassan al-Ta’ishi)を首相とする政権(Tasees同盟)の樹立を発表した。RSFが樹立した政権については、国際社会のどの国、機関も承認していないが、ヘメティは、同政権の支配地域にある中学校で試験を実施するなど、行政システムが機能しているかのような演出を行ない[10]、またスーダン東部地域の有力者オサマ・サイード(Osama Saeed)を同政権の司法大臣に任命する[11]など、この政権の既成事実化、影響力強化を進めている。
SAF、RSF双方が「政府」運営をしているとはいえ、十分かつ効果的な公共サービスの提供ができているわけではない。しっかりした行政サービスの実施には、組織、制度、そしてそれを支えるプロフェッショナルのテクノクラートが必要である[12]。スーダンでは、インフラが次々に破壊された上に、残るインフラも攻撃対象となり、十分な公共サービスの提供が期待できる状況にはない。支援を必要とする人々の数は、2026年は3370万人となり、前年より330万人も増加している[13]。現在、極貧層が人口の60%に達し、スーダンの経済は30年以上逆戻りしたと言われている[14]。スーダンは今、国が崩壊の危機にさらされている。
さらにスーダンの紛争は、周辺諸国と交戦が始まる域内での国家間紛争(域内紛争)に発展するリスクを抱えている。今、懸念されるのは、エチオピアとの関係である。ナイル川の上流にあるエチオピアと下流にあるエジプトは、かねてよりナイル川の水を巡り緊張関係にあり、エジプトの影響を強く受けるSAFはエジプト寄りのスタンスで、エチオピアと対立する関係にあった。2026年5月、エチオピアがRSFを支援し、エチオピア領内からSAFに対する攻撃があったが、これを受けて、SAFとエチオピア軍間の軍事的緊張が高まる事態が発生している[15]。スーダンの国内紛争が、エチオピア、エリトリアを巻き込み、「アフリカの角」が域内紛争に発展する可能性が高まっている。

現状打開の道はあるのか?
現在、国連などの援助機関の国際スタッフが、スーダン国内に戻り、支援を再開する動きが始まっている[16]。特に、人道援助は、危機的状況を緩和する点で重要で、歓迎すべき動きである。しかしながら、長期的視点で見れば、緊急的な人道援助に留まらず、現在の紛争を止め、本格的な開発援助を再開し、スーダンが成長・発展のプロセスを自ら推進していくことが必要である。
紛争終結は、紛争当事者を和平会議のテーブルに着かせることが原則であるが、スーダンの場合、SAF側がこのような提案に応じる気配がない。RSFは、大規模な虐殺や性暴力を行なっていた可能性が高く、「人道に対する罪」として国際刑事裁判所にて裁判にかけられる可能性も考えられる。現在の戦闘状態を見るとSAFとRSF双方が互角の戦闘を行なっており、この状態で和平交渉が行なわれた場合、RSF側にも受け入れられるような条件を提示することが前提となる(かかる条件が提示できなければ和平交渉は物別れに終わる)。本来であれば裁判にかけられる可能性のあるRSFに、彼らが受諾できる条件を提示することは、RSFにとっては好ましいことで、SAF側、特にSAFに絶大な影響力を及ぼしているイスラム勢力が、RSFと合意し、受け入れることができないのである。
元アメリカ国務省職員でスーダン研究者のキャメロン・ハドソンは、「RSFをテロ組織に指定し、RSFに対する諸外国からの支援網を断ち切るべき」と主張している[17]。これは、現状打破の現実的なステップと考えられる。
しかしより長期的には、2023年4月の軍事衝突、あるいは2021年10月の軍事クーデターで頓挫してしまった民主化プロセスの再開を目指すべきである。グッドガバナンスの実施、良好な公共サービスの提供は、容易にできるものではない。しっかりした組織、制度と人材が必要で、支援と育成が重要である。そのためには民主化プロセスの再開が不可欠となる。
2021年10月の軍事クーデターは、2019年4月のバシール政権崩壊以降、進められてきた民主化プロセスが本格化するタイミングで発生した。スーダンの歴史を振り返ると、スーダンは、民主化運動と軍事クーデターによる独裁を何度も繰り返してきた国である。また、スーダンは、金や石油、水などの豊かな資源と、地理的要衝に位置するがゆえに諸外国から干渉され続けてきた国である。「武力による統治」の歴史を克服し、国民が平和と発展を享受できる国にしていくこと、この実現のために、我々はスーダンへの関心を失ってはならない。

(2026/07/06)
脚注
- 1 International Crisis Group, “Divided Sudan, Elusive Peace,” April 13, 2026.
- 2 Samy Magdy and Sam Mednick, “Sudan enters a fourth year of war as officials lament an ‘abandnoned crisis’,” AP News, April 16, 2026.
- 3 Mutasim Ali and Yonah Diamond, “Sudan Has Become a Transnational Marketplace of Violence: Effective Responses Require Targeting the Sources,” Just Security, June 15, 2026; Amnesty International, “Sudan: Constant flow of arms fuelling relentless civilian suffering in conflict,” July 25, 2024.
- 4 Kholood Khair, “Gulfs Apart: Can Sudan and the Red Sea Survive the Iran War?” Tahrir Institute, June 11, 2026.
- 5 Ibid.
- 6 Sudan War Monitor, “Civilian Toll Mounts as Drone Warfare Expands Across Sudan,” June 13, 2026.
- 7 International Crisis Group, “Divided Sudan, Elusive Peace,” April 13, 2026.
- 8 IOM, “Sudan Displacement and Return Snapshot: update6,” June 15, 2026.
- 9 International Crisis Group, “Divided Sudan, Elusive Peace,” April 13, 2026.
- 10 “Hemedti Launches First Sudanese Certificate Exams Under Tasis in Nyala,” Darfur 24, June 7, 2026.
- 11 “Tasis gambles on Osama Saeed to extend its influence in the East,” Africa Intelligence, May 21, 2026.
- 12 Fawzi Ahmed, “Sudan’s War Beyond the Battlefield: Governance Collapse and the Struggle for Civil Authority,” Small Wars Journal, June 9, 2026.
- 13 OCHA, “Sudan Humanitarian Needs and Response Plan 2026,” February 2026, p.9.
- 14 Kholood Khair, “Gulfs Apart: Can Sudan and the Red Sea Survive the Iran War?” The Tahrir Institute, June 11, 2026.
- 15 Ladd Serwat et al, “Africa Overview: June 2026,” ACLED, June 5, 2026.
- 16 ただし、現在、深刻な資金不足に陥っており、スーダンに対する人道援助は、充足率(資金需要に対し、実際に集まった資金の割合)が、2024年は71%、2025年は40%、2026年は28%と毎年低下しており、人道援助にかかる資金の拡充が必要である。OCHA/Financial Tracking Service, “Sudan Humanitarian Needs and Response Plan 2026,” accessed June 25, 2026.
- 17 Cameron Hudson, “Sudan’s Rapid Support Forces Are Terrorists,” Foreign Policy, June 11, 2026.
