トランプ政権の対外政策の特徴の一つとして、天然資源の確保や米国企業の市場開拓・拡大を基軸とする商業主義が挙げられる。2025年10月、トランプ大統領のアジア歴訪でも、レアアースに関する交渉が注目を集めた。2026年1月3日に米国が実行したベネズエラ攻撃も、石油利権を中国やロシアではなく米国が握ることにあった[1]。アフリカについても、12月に公開された国家安全保障戦略で、今後は開発援助からシフトし、天然資源の確保や天然ガスなどのエネルギー事業への参画を主眼とすると明記されている[2]。

 アフリカにおけるトランプ政権の商業外交には、拡大する中国の影響力を封じる目的があると考えられている。バイデン政権時代にはロシアによるアフリカの選挙・軍事介入、いわゆるハイブリッド戦の脅威が注目されたが、トランプ政権の矛先は長く「一帯一路」でインフラ整備を通じた経済圏拡大を図ってきた中国である。本稿では鉱物資源に焦点を当て、アフリカにおける米中対立の構図と情勢から見た可能性を探る。

鉱物資源をめぐる米中の動き

 米国国際開発庁(USAID)の解体が決定されてから3か月が経った2025年5月に、国務省アフリカ担当のトロイ・フィトレル大使は「商業外交戦略」を提唱し、米国にとって優先度の高い国々を対象に、市場改革、インフラプロジェクト、サミットなどを通じた現地との対話、そして米国企業の貿易支援を進めることを強調した[3]。

中央・南部アフリカ:アンゴラ・コンゴ民主共和国・ザンビア

 その手始めにフィトレル大使は、7月にアンゴラの首都ルアンダで開催された第17回米国・アフリカビジネスサミットに出席した。その際に25億ドルにのぼる契約・合意が米国企業とアフリカ諸国間で結ばれたとされるが、その中心となったのがザンビアからコンゴ民主共和国南部にかけての「産銅地域(カッパーベルト)」とアンゴラの大西洋岸をつなぐロビト回廊への新規投資である[4]。アンゴラとコンゴ民主共和国南部の間には植民地時代に内陸の銅を搬出するため建設されたベンゲラ鉄道(Benguela Railway)があり、2002年に27年に及ぶアンゴラ内戦が終結した後、中国の融資で修復が行われた。しかし2022年にアンゴラ政府は中国ではなく欧州企業(スイス、ポルトガル、ベルギー)連合から成るロビト・アトランティック鉄道(Lobito Atlantic Railway)に30年の運営権を授与した[5]。2023年9月にはEUと米国が共同でこの鉄道をザンビアまで伸長する支援を発表している。

 米国・アフリカビジネスサミットでは、この回廊沿いに22の穀物港ターミナルを建設し、またアンゴラの水力発電所とコンゴ民主共和国南部を結ぶ民間送電線を開発することなどが加えられた。さらに半年後の12月にワシントンでトランプ大統領立ち会いのもとに発表されたコンゴ民主共和国とルワンダの大統領共同声明では、6月に外務大臣レベルで署名されていた和平合意を実施することのほか、エネルギーや鉱物資源、インフラ、観光などの分野への米国の投資を促進することなどが盛り込まれた[6]。

 しかし、これらの資源大国における中国の存在感は大きい。コンゴ民主共和国に続いてアフリカ第二の銅産出国であるザンビアは中国が海外で初めて非鉄金属鉱山に投資した国であり、1981年にチャンビシ(Chambishi)銅鉱山の株式85%を購入して以来、600社以上の中国企業が31億ドル 以上をザンビアの産銅地域に費やしている[7]。また中国はタンザニア・ザンビア鉄道(TAZARA)の建設を1970年代から支援しており、現在も10億ドル以上を投資して改良工事を行っている。ナイジェリア、アルジェリア、リビアに次ぐアフリカ屈指の石油大国アンゴラでも、経済改革の欠如や債務過多のため国際通貨基金(IMF)や主要ドナー国から支援が滞る中、中国が2004年から原油の供給を担保として大型資金提供を行い、また2005年から通信事業にも参画している[8]。

 コンゴ民主共和国は世界最大規模の天然資源国で、電気自動車などのバッテリーに不可欠なコバルトの約70%、電子回路の製造に用いられるコルタンの約60%を産出し、銅も世界第三位の生産量を誇る。コンゴ民主共和国で産出されたコバルトは中国企業を通じてApple、マイクロソフト、サムソンなどのグローバル企業が生産するスマホなどに使われてきた[9]。中国資本は2007年からシコミン(Sicomines)銅・コバルト鉱山と世界第二位の高グレード地下銅を埋蔵するキンセンダ(Kinsenda)鉱山への投資を始め、両鉱山で70%前後の株式を有する[10]。カナダの鉱山会社イバンホー(Ivanhoe)が2008年から採掘を始め現在世界4位の銅資源を産出するカモア・カクラ複合銅鉱山(The Kamoa-Kakula Copper Complex)でも、2015年に中国企業がイバンホーから株式を一部買収し、現在イバンホーと中国資本でそれぞれ40%近くの株を保有している[11]。そしてコンゴ民主共和国最大で世界第三位のコバルト生産量を誇るテンケ・フングルメ銅コバルト鉱山(Tenke Fungurume)では、2016年に中国の元国営企業が米国企業(Freeport-McMoRan)から権利を買い取り、株式の80%を保有している[12]。

 この中国の独占体制に挑戦する動きは、バイデン政権の時から始まっている。米国政府は2022年12月にコンゴ民主共和国およびザンビアと電気自動車用バッテリーのサプライチェーンに関する覚書を交わしており、ロビト回廊の整備拡張は米国企業が採掘する鉱石を輸出する上で重要な鍵になると捉えている[13]。例えばイバンホーはカモア・カクラ複合銅鉱山の銅精鉱を40日から50日をかけてトラックでダーバン(南アフリカ)やダルエスサラーム(タンザニア)などへ陸送しているが、2023年12月に初めてロビト大西洋鉄道を使ったところ、半分の日数でロビト港に到着している[14]。ロビト回廊での採掘を予定しているのは、マイクロソフト創業者ビル・ゲイツやアマゾン創設者ジェフ・ベゾスが出資するスタートアップ「コボルド・メタルズ」(Kobold Metals)で、2024年7月に人工知能(AI)を使ってザンビアのミンゴンボ鉱山で大規模な銅の埋蔵を確認したと発表した[15]。コボルドは2025年8月にコンゴ民主共和国でもリチウム採掘の許可を得て、ロビト回廊拡張への投資も模索している。

 ロビト回廊がアフリカにおける「欧米対中国」の象徴となる一方で、この投資が地域内の中小企業の発展などの現地経済効果をもたらすのか、建設工事に伴う強制立ち退きによる人権侵害をどう解決するのか、また拡張工事などにEUがどれだけ出資できるのか、さまざまな課題と懸念が指摘されている[16]。またコンゴ東部ではコンゴ国軍とM23との戦闘が続いており、ルワンダの外相も既にコンゴからの撤退を否定するコメントを出している[17]。実際に工事に着工できるのかは不透明である。

西アフリカ :ギニア・リベリアと対義的なナイジェリア

 西アフリカでは、ロビト回廊に代わって、リバティ回廊と呼ばれる地域が米国進出の対象となっている。ギニアとリベリアを結ぶイェケパ・ブキャナン鉄道(Yekepa–Buchanan Railway)はルクセンブルクに本拠を置く多国籍鉄鋼・鉱業企業が独占権を持ちインフラ整備を進めてきた。しかし2019年に米国のイバンホー・アトランティック社(カナダのイバンホーと同系)がギニア国境近くの厳正自然保護区・世界遺産にも指定されているニンバ山で鉄鉱石発掘権を取得すると、リベリア政府は2025年4月にイバンホー・アトランティックと鉱区権益及び鉄道使用に関する合意を結んだ[18]。続いてリベリア政府は7月にイバンホーを含む米国コンソーシアムにリバティ回廊の25年運用権を与える調印をしたが、これはトランプ大統領がリベリアおよびガボン、ギニアビサウ、モーリタニア、セネガルの首脳をホワイトハウスに招く前日のことで、フィトレル大使などの斡旋があったという[19]。

 このリバティ回廊と競合するのが、中国資本がギニア東南部奥地で稼働し始めたシマンドゥ(Simandou)鉱山と新たに建設した「トランスギニア鉄道」(Trans-Guinean Railway)である。未開発の鉄鉱山としては世界最大級の規模を持つと言われるシマンドゥ鉱山は中国、シンガポール、そして英豪資本のリオティント(Rio Tinto)出資で2025年11月から鉄鉱石の出荷を開始した[20]。イバンホー・アトランティックがシマンドゥ・トランスギニア鉄道の覇権争いを避けて、リバティ回廊開発を選んだのは、米国企業に中国資本に対抗するだけの実績がないこと、そして米国議会の中にカナダのイバンホーが中国とコンゴ民主共和国のカモア・カクラ複合銅鉱山の共同運営をしているため癒着を疑う声があるためと言われている[21]。

 一方でアフリカ最大級の産油国・産ガス国であるナイジェリアに対しては、トランプ大統領はクリスチャン殺戮を理由に11月より軍事行動の可能性を示唆してきた(南アフリカ政府に対しても白人迫害をしていると非難している)。専門家は米国内の保守支持層を意識した発言と分析していたが[22]、米軍は12月25日に過激派組織の拠点と考えられるナイジェリア北西部への空爆を実施したと発表した[23]。ナイジェリア北部では2000年代初頭以降、過激派の台頭によって軍との衝突や住民の被害が急増しており、被害はイスラム教徒にも及んでいる[24]。トランプ大統領の主張を否定していたナイジェリア政府も、対テロの好機と捉えて米軍の攻撃を支持する声明を出した。ナイジェリアはアフリカにおける中国の最大の投資先であり、トランプ政権のナイジェリア攻撃もベネズエラの様に天然資源へのアクセスを強要するためとも言われている[25]。今後ナイジェリアの政治経済と北部の情勢は益々混沌とすることが予想され、その影響は中国のアフリカ政策ひいては世界戦略に及ぶことも考えられる。

対立の構図と可能性

 アフリカにおけるトランプ政権の商業外交は、米国企業の利益・市場・競争力の拡大と中国への挑戦という明確な対立構造を呈する一方で、根本的矛盾を孕んでいる。第一に、この商業外交の裏でUSAID解体のため2030年までに1400万人以上の死者が発生し、このうち450万人は5歳未満の児童という試算が出ており、その大多数はアフリカの貧困国に集中すると予測されている[26]。何十億ドルという投資が約束されたアフリカで何百万人という命が失われていくのである。またナイジェリアや南アフリカへの対応に見られる通り、米国の意図や直接的利益にそぐわない対象は敵視される傾向にある。白人・クリスチャン迫害の主張の根底にあるのは、ナイジェリアの天然資源市場を米国に開放すること、またイスラエルによるガザ攻撃の激化をジェノサイド条約違反として国際司法裁判所に提訴した南アフリカへの報復措置と分析されている[27]。この姿勢は長期的パートナーシップを築く妨げとなる可能性が高い。

 第二に、米国政府は鉱物資源採掘・輸出を推進する一方で、アフリカ諸国への関税引き上げ率を南アフリカで30%、また残りの国々も15−20%と懲罰的な高さで設定している。クリントン政権から25年にわたってアフリカ諸国は法の支配や人権擁護などの要件を満たす代わりに鉱物資源や衣料品などの品目を非課税で米国に輸出できたが、この「アフリカ成長機会法(African Growth and Opportunity Act:AGOA)」も2025年9月に失効した[28]。アンゴラ、コンゴ民主共和国、ザンビアなど米国企業による投資が予定されている国を除けば、大多数のアフリカの国にとって貿易取引先は米国ではなく引き続き中国となるのではないだろうか[29]。

おわりに

 植民地・冷戦時代に見られたように、エリート主義の強権的介入はいずれ反乱の火種となる。米国のアフリカ再進出は、持続的な開発ではなく米中対立の延長と次世代の貧困・紛争に繋がる恐れがある。EU諸国も日本も自らの関税対応や鉱物資源の必要性から米国路線を追従することが予想されるが、その一方で倫理的なインフラ整備や鉱業管理に向けての議論や知見の共有を進めることが望まれる。

(2026/01/20)

脚注

  1. 1 「トランプ氏、ベネズエラ石油利権に照準 埋蔵量は世界最大」『日本経済新聞』2026年1月4日。
  2. 2 Charles A. Ray, “The New US National Security Strategy: A Transactional Document That Marginalizes Africa,” Foreign Policy Research Institute, December 10, 2025.
  3. 3 “Remarks for Launch of Bureau of African Affairs Commercial Diplomacy Strategy,” United States Department of State, May 14, 2025.
  4. 4 “Record-Breaking U.S.-Africa Business Summit Yields $2.5 Billion in Deals and Commitments,” United States Department of State, June 30, 2025.
  5. 5 武内進一「バイデン米大統領、アンゴラ訪問」現代アフリカ地域研究センター、2024年12月4日。
  6. 6 武内進一「コンゴ、ルワンダ大統領がワシントンで和平合意」現代アフリカ地域研究センター、2025年12月6日。
  7. 7 北野尚宏「中国とグローバルサウス:ザンビアを事例に」菊池努編『米中関係を超えて:自由で開かれた地域秩序構築の「機軸国家日本』のインド太平洋戦略」日本国際問題研究所、2023年3月、8-1頁。
  8. 8 「アフリカにおける中国――戦略的な概観」日本貿易振興機構(JETRO)、2009 年 10 月、45₋49、84₋86、104₋111頁。
  9. 9 Grace Harris, Ebonie Kibalya, and Lea Gruber, “Special Report: Conflict Minerals in the DR Congo,” Genocide Watch, June 9, 2025.
  10. 10 Lea Thome, Katherine Walsh, Jacqueline Zimmerman, and Brooke Escobar, “Chasing Copper and Cobalt: China’s Mining Operations in Peru and the DRC,” AidData, February 27, 2025.
  11. 11 Ibid.
  12. 12 Jacqueline Zimmerman, and Katherine Walsh, “Tenke Fungurume Copper-Cobalt Mine: Chinese Financing for Transition Minerals,” AidData, Feb 27, 2025, p.1.
  13. 13 Sarah Way, “What to Know about the Lobito Corridor—and How It May Change How Minerals Move,” Atlantic Council, December 20, 2024.
  14. 14 佐藤丈治「動き出す南部アフリカ大動脈構想~米中の資源開発が開発の推進力に」日本貿易振興機構(JETRO)、2024年3月22日。
  15. 15 Max Bearak, “A.I. Helped to Spot a Copper Mining Bonanza in Zambia,” The New York Times, July 11, 2024.
  16. 16 E. D. Wala Chabala, “A Snapshot View of Business Activities along the Lobito Corridor,” APRI, December 4, 2025.
  17. 17 Emery Makumeno, Samba Cyuzuzo, Natasha Booty, and Bernd Debusmann Jr., “Trump Hosts Signing of Peace Deal between Leaders of DR Congo and Rwanda,” BBC News, December 4, 2025.
  18. 18 William Clowes, “Africa Scores in Geopolitical Commodity Race,” Bloomberg, December 19, 2025.
  19. 19 Michael Walsh, “The Liberty Corridor and American Commercial Diplomacy,” Foreign Policy Research Institute, July 30, 2025.
  20. 20 “Guinea: Simandou Megaproject Kickoff: The Actual Figures,” December 9, 2025.
  21. 21 David Pilling, and Leslie Hook, “The American Company Seeking to Counter China in Africa,” The Financial Times, December 17, 2025.
  22. 22 岡崎研究所「第二次トランプ政権、対アフリカ政策の3つの柱、利用する宗教競争、資源獲得と国内支持獲得の両取りか?」Wedge Online、2025年12月3日。
  23. 23 「米軍、ナイジェリアの「イスラム国」に「強力な」攻撃実施 トランプ氏が発表」BBC News Japan, December 26, 2025.
  24. 24 「トランプ氏、キリスト教徒狙うナイジェリアでの暴力に言及 これまでに分かっていること」CNN、2025年12月26日。
  25. 25 Olukayode Bakare, “Why Donald Trump Is Threatening Military Intervention in Nigeria and What It Means for the Government,” American Politics and Policy, London School of Economics and Political Science. December 12, 2025.
  26. 26 Cavalcanti, Daniella Medeiros, Lucas de Oliveira Ferreira de Sales, Andrea Ferreira da Silva, Elisa Landin Basterra, Daiana Pena, Caterina Monti, Gonzalo Barreix, et al., “Evaluating the Impact of Two Decades of USAID Interventions and Projecting the Effects of Defunding on Mortality up to 2030: A Retrospective Impact Evaluation and Forecasting Analysis,” in The Lancet Vol.406, No.10500, p.284.
  27. 27 武内進一「南アフリカに対するトランプ政権の「いじめ」」現代アフリカ地域研究センター、2025年4月13日。
  28. 28 葛西 泰介「米国のアフリカ特恵制度「AGOA」、失効リスクに備える」日本貿易振興機構(JETRO)、2025年6月16日。
  29. 29 「米のアフリカ関税優遇が9月末失効 対象32か国、縫製や自動車に打撃」『日本経済新聞』2025年9月29日。