2014年第1四半期の海賊行為と船舶に対する武装強盗事案

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〜IMB・ReCAAP報告書から〜


上野英詞,海洋政策研究財団研究員

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1.2014年第1四半期の海賊行為と船舶に対する武装強盗事案IMB報告書に見る特徴~

国際海事局 (IMB) は2014年4月24日、クアラルンプールにある海賊通報センター (Piracy Reporting Centre: PRC) を通じて、2014年第1四半期(1月1日~3月31日)に世界で起きた海賊行為と船舶に対する武装強盗事案に関する報告書を公表した。以下は、IMB報告書から見た、2014年第1四半期における海賊行為と船舶に対する武装強盗事案の特徴を取り纏めたものである。

「海賊」 (Piracy) と船舶に対する「武装強盗」 (Armed Robbery) の定義については、IMBは、「海賊」については国連海洋法条約(UNCLOS)第101条「海賊行為の定義」に、「武装強盗」については、国際海事機関(IMO)が2001年11月にIMO総会で採択した、「海賊行為及び船舶に対する武装強盗犯罪の捜査のための実務コード」(Code of Practice for the Investigation of the Crimes of Piracy and Armed Robbery against Ships) の定義に、それぞれ準拠している。

なお、記述の都合上、関係諸表は末尾に掲載した。

1.発生(未遂を含む)件数と発生海域から見た特徴

2014年第1四半期の通報された発生件数は49件(2013年同期66件)であった。その内、既遂が39件(同55件)で、その内訳は、乗り込み事案が37件(同51件)、ハイジャック事案が2件(同4件)であった。未遂事案は10件(同11件)で、その内訳は発砲事案が5件(同7件)、乗り込み未遂事案が5件(同4件)であった。しかしながら、IMBは、この他に未通報事案があると見ており、船主や船長などに通報を呼びかけている。

2014年第1四半期の発生件数は、2013年同期比で17件少なく、2007年同期の41件に次いで少ない件数となった。1に見るように、最近6年間の第1四半期としては、2011年第1四半期の142件に比してほぼ3分の1に減少している。

2014年第1四半期の発生件数49件を発生海域から見れば、65%以上の33件が以下の4カ所の海域で発生している。即ち、多い順から、インドネシア18件(2013年同期25件)、ナイジェリア6件(同11件)、シンガポール海峡5件(同2件)、バングラデシュ4件(同4件)であった。2013年同期には、インドネシアとナイジェリアだけで、全件数66件の50%以上を占めた。海賊襲撃事案の多発海域という面で見れば、ソマリアの海賊による襲撃事案の激減によって、多発海域からソマリア沖周辺海域が姿を消している。

2に示すように、2012年まで多発海域の上位を独占していたソマリアの海賊による襲撃事案が激減しているが、報告書によれば、2014年第1四半期の襲撃事案は2件の発砲事案を含め5件であった。因みに、2013年第1四半期の襲撃件数も5件で、ソマリア沖3件、アデン湾2件であった。報告書によれば、ソマリアの海賊による襲撃事案の激減は、各国海軍部隊による活動の強化、航行船舶による海賊対処マニュアル、BMP (The Best Management Practices) 第4版の履行、民間武装警備員 (Privately Contracted Armed Security Personnel: PCASP) の雇用を含む、海上における海賊対処とともに、陸上における国際的努力やソマリアにおける中央政府の努力の総合的成果である、と指摘している。一方で、IMB PRCは、ソマリア沖の状況を引き続きモニターしており、船主や船長に対して警戒を怠らないよう注意している。依然としてソマリアの海賊が襲撃を実行する能力を持っていると見られることから、IMB PRCは、1回でも商船のハイジャックが成功すれば、海賊稼業再開に向けてソマリアの海賊の熱意に火を付けかねない、と懸念している。報告書によれば、2014年3月31日現在、ソマリアの海賊は身代金を狙って3人の乗組員と共に1隻の船舶を拘留しており、更に49人の乗組員が陸上で拘束されており、他に4人が行方不明となっている。

他方、西アフリカのギニア湾の状況は依然、深刻である。1、表2に示すように、この海域での発生件数は12件(2013年同期15件)で、その内、ハイジャック事案が2件で、39人の乗組員が人質となり、2人が拉致された。ナイジェリア沖では、6件の襲撃事案があり、その内、1件がハイジャック事案で、油井プラットホーム補給船がハイジャックされ、不成功に終わったが、他の船舶をハイジャックするための母船として利用されたが、適当な目標船舶が見当たらず、乗組員の持ち物や船の備品を盗んで逃亡した。報告書は、多くの未通報事案があるとしており、これらの未通報事案には、身代金狙いの乗組員の拉致事案が含まれている、と指摘している。更に、2014年第1四半期では、初めてアンゴラ沖でのハイジャック事案があり、報告書は、ナイジェリアの海賊による襲撃海域の拡大と能力を示すものとして注目している。アンゴラ沖でのハイジャック事案では、リベリア籍船の原油タンカーがルアンダ錨泊地でハイジャックされ、海賊は、ナイジェリア沖まで該船を曳航し、大量の原油を抜き取った後、解放した。

東南アジア海域についてみれば、1に見るように、インドネシアでの発生件数が18件(2013年同期25件)で、依然として群を抜いて多い。18件全てが乗りこみ事案で、ジャカルタ・タンジュンプリオク、ドゥマイ(スマトラ)、ベラワン(同)、タボネオ錨泊地(南カリマンタン)、ムアラベラウ(カリマンタン)、サマリンダ(同)、シンガポール沖のニパ錨泊地が多発海域となっている。報告書は、他にも未通報事案があると見ている。インドネシアの場合、通常、夜間に船舶を襲う船舶強盗で、発見され、警報が鳴らされると、乗組員を襲うことなく逃亡することが多いが、5件の事案で7人の乗組員が人質となり、また4件の事案では銃器を所持していた。2に示すように、ハイジャック事案はなかった。インドネシア海洋警察は、上記の他、ムアラジャワ(カリマンタン)、バリッパパン(同)などの多発海域に錨泊または付近を通行する船舶に対して、警戒を呼びかけている。

2に示すように、マラッカ海峡では、2005年7月以来、沿岸国が哨戒活動を実施していることもあって襲撃事案が激減ししているが、報告書は、海峡通航船舶に対して引き続き警戒を呼びかけている。シンガポール海峡では、乗り込み事案が5件(2013年同期2件)あったが、報告書は、錨泊中の夜間や通航中の警戒を呼びかけている。南シナ海のアナンバス諸島、ナトゥーナ諸島、マンカイ諸島、スビ諸島及びメランダン諸島海域での襲撃事案は2012年、2013年の2年間大幅に減少しているが(2014年第1四半期はゼロ)、報告書は、航行船舶に対して引き続き警戒を呼びかけている。

2.態様から見た特徴

表2は2014年第1四半期の襲撃の態様を海域毎に示したものである。3は、未遂を含む全事案における襲撃された時の船舶の状況について、地域毎に示したものである。

これらによれば、襲撃件数が激減したとはいえ、ソマリアの海賊による襲撃事案の特徴が良く分かる。ソマリアの海賊による事案は、全て航行中 (steaming) の船舶に対する発砲または乗りこみ未遂事案である。また、ナイジェリア沖の事案も航行中の事案である。

一方、東南アジア海域の場合は、襲撃の態様としては乗り込み事案がほとんどで、襲撃された時の船舶の状況については、シンガポール海峡を航行中の事案を除いて、錨泊中が大部分を占めている。バングラデシュやインドの襲撃事案も、ほとんどが錨泊中の事案である。

他方、2014年第1四半期に港と錨泊地において3回以上の襲撃件数が通報されたのは4カ所で、インドネシアのベラワン、ジャカルタ・タンジュンプリオク、バングラデシュのチッタゴン、コンゴのポイントノールで、いずれも3件であった。

3.目標船舶の特徴

では、目標となった船舶のタイプではどうか。2014年第1四半期に襲撃された(未遂事案を含む)49隻の船舶のタイプは10で、表4に示したように、最も多かったのがBulk CarrierとChemical Tankerで各9隻、以下、Tanker Crude OilとGeneral Cargoが各7隻、Containerが5隻、Product Tankerが4隻、Supply Ship(油井プラットホーム補給船)、Tug、Ro-Ro船及びLPG Tankerが各2隻であった。(なお、表4では、Chemical TankerとProduct Tankerは1つのタイプとして表示されている。)

一方、襲撃された49隻の船舶の船籍を見れば、マーシャル諸島籍船が8隻で最も多く、以下、リベリア籍船7隻、シンガポール籍船とパナマ籍船各6隻などとなっている。他方、襲撃された船舶の運用状況を国別に見れば (Countries where victim ships controlled / managed)、最も多かったのはシンガポールとギリシャで各10隻、次いでドイツ5隻、ノルウェー3隻などとなっている。日本関係船舶は2隻であった。

4.人的被害の状況と使用武器の特徴

人的被害の状況について見れば、5に示したように、過去6年間の第1四半期を通じて乗組員の人質事案が人的被害のほとんどを占めている状況に変わりはない(過去5年間の通年状況も同じである)。2014年第1四半期の人質事案は46人で、2013年同期の75人より激減しており、また拉致事案も14人から2人に激減している。一方、6に見るように、人的被害の発生場所から見れば、人質事案46人中、インドネシアの7人を除いて、アンゴラが26人、ナイジェリアが13人で、いずれもギニア湾での事案である。

7は、最近6年間の全発生事案で、海賊、武装強盗が使用した武器のタイプを示したものである。これを見れば、銃器とナイフが海賊の主要武器である傾向は、ほとんど変化がない(過去5年間の通年状況も同じである)。また、情報なしも依然多い。他方、8に見るように、海賊の使用武器を発生地域毎に見れば、ソマリアの海賊による襲撃事案が激減していることから、銃器使用事案14件中、ギニア湾のナイジェリア5件、アンゴラ1件、コンゴ2件で、全体の半分強を占めているのが特徴で、ギニア湾の海賊事案の暴力的特徴を示している。東南アジアの場合は、銃器よりもナイフが主流だが、インドネシアでの銃器使用事案が4件(2013年同期2件、通年5件)あった。

表1:最近6年間の第1四半期のアジア及びその他の多発海域での発生(未遂を含む)件数の推移

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出典:2014年第1四半期報告書5~6頁の表1から作成。なお、2013年以前の合計件数は報告書の全ての発生海域を含む。
注:*;アデン湾、**;紅海、***;ソマリア、いずれもソマリアの海賊による。

表2:2014年第1四半期の発生海域毎の襲撃の態様

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出典:2014年第1四半期報告書8 頁の表2から作成。
注:*;アデン湾、**;紅海、***;ソマリア、いずれもソマリアの海賊による。

表3:2014年第1四半期の発生海域毎に見た襲撃時の船舶の状況

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出典:2014年第1四半期報告書8 ~9頁の表2、4から作成。
備考:B = Berthed, A = Anchored, S = Steaming
注:*;アデン湾**;紅海、***;ソマリア、いずれもソマリアの海賊による。

表4:2014 年第1四半期の襲撃船舶のタイプとそれらの過去5年間の傾向

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出典:2014年第1四半期報告書11~12頁の表11、12頁のチャートDから作成。

表5:最近6年間の第1四半期の乗組員の人的被害状況

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出典:2014年第1四半期報告書10頁の表8、及び2013年年次報告書11頁の表8から作成。

表6:2014年第1四半期の人的被害の発生状況

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出典:2014年第1四半期報告書10頁の表9から作成。

表7:最近6年間の第1四半期の全発生事案で海賊が使用した武器のタイプ

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出典:2014年第1四半期報告書9頁の表6、及び2013 年年次報告書10頁の表6から作成。

表8:2014年第1四半期の発生海域に見る使用武器のタイプ

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出典:2014年第1四半期報告書11頁の表10から作成。
注:*;アデン湾、**;紅海、***;ソマリア、いずれもソマリアの海賊による。

 

22014年第1四半期のアジアにおける海賊行為と武装強盗事案ReCAAP報告書に見る特徴~

アジア海賊対策地域協力協定 (Regional Cooperation Agreement on Combating Piracy and Armed Robbery against Ships in Asia) に基づいて設立された、ReCAAP Information Sharing Centre (ISC) は2014 年4月下旬、2014年第1四半期(1月1日~3月31日)にアジアで発生した海賊行為と船舶に対する武装強盗事案に関する報告書を公表した。(ReCAAPとはRegional Cooperation Agreement Against Piracyの頭字語である。)

国際海事局(IMB)の同種の報告書が全世界を対象としているのに対して、ReCAAPの報告書は、アラビア海からユーラシア大陸南縁に沿って北東アジアに至る海域を対象としている。また、IMBが民間船舶や船主からの通報を主たる情報源としているのに対して、ReCAAPの情報源は、加盟国と香港の Focal PointとシンガポールにあるInformation Sharing Centre (ISC) とを結び、またFocal Point相互の連結で構成される、Information Sharing Webである。各国のFocal Pointは沿岸警備隊、海洋警察、海運・海事担当省庁あるいは海軍に置かれている(日本の場合は海上保安庁)。そして各国のFocal Pointは、当該国の法令執行機関や海軍、港湾局や税関、海運業界など、国内の各機関や組織と連携している。更に、国際海事機関(IMO)、IMBやその他のデータを利用している。

ReCAAPの加盟国は、インド、スリランカ、バングラデシュ、ミャンマー、タイ、シンガポール、カンボジア、ラオス、ベトナム、ブルネイ、フィリピン、中国、韓国及び日本の域内14カ国に加えて、域外国からノルウェー(2009年8月)、デンマーク(2010年7月)、オランダ(2010年11月)、英国(2012年5月)、及びオーストラリア(2013年8月)が加盟し、現在、19カ国となっている。なお、マレーシアとインドネシアは未加盟だが、ISCとの情報交換が行われている。

以下は、ReCAAP報告書から見た、2014年第1四半期のアジアにおける海賊行為と船舶に対する武装強盗事案の態様と傾向である。

1.「海賊」と「船舶に対する武装強盗」についてのReCAAPの定義

「海賊」 (piracy) と「船舶に対する武装強盗」 (armed robbery against ships) とは、ReCAAP ISCの定義によれば、「海賊」については国連海洋法条約(UNCLOS)第101条「海賊行為の定義」に従って、「船舶に対する武装強盗」については、国際海事機関(IMO)が2001年11月にIMO総会で採択した、「海賊行為及び船舶に対する武装強盗犯罪の捜査のための実務コード」(Code of practice for the Investigation of the Crimes of Piracy and Armed Robbery against Ships) の定義に従っている。

2.発生(未遂を含む)件数

報告書によれば、2014年第1四半期の発生件数は28件(2013年同期29件)で、その内、既遂が27件(同28件)、未遂が1件(同1件)であった。月間内訳を見れば、1月が既遂6件、2月が既遂14件、3月が既遂7件、未遂1件であった。ReCAAPの定義に従えば、28件の内、3件が海賊襲撃事案で、25件は船舶に対する武装強盗事案であった。表1は、過去5年間の第1四半期の発生件数である。これによれば、2012年第1四半期以降、発生件数の減少傾向が続いている。

表1:過去5年間の第1四半期における地域別発生件数

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出典:ReCAAP 2014年第1四半期報告書15頁の表1より作成

表1によれば、東南アジア海域では、20件の既遂事案と1件の未遂事案が発生している。報告書によれば、全体として状況は改善されているが、特にインドネシアでは、この3年間で発生事案が最も少なかった。しかし、一方で、マラッカ・シンガポール海峡での発生事案が増えている。

報告書によれば、南アジア海域では、バングラデシュの発生件数の増加は、船舶がバングラデシュ港湾当局の保安措置要請を遵守せず、その結果、武装強盗が船舶に乗り込み易い状況になったためといわれる。バングラデシュのReCAAP Focal Pointである海運省は、チッタゴンの停泊地と錨泊地の船舶に対して、港湾当局が勧告する適切な保安措置を厳格に遵守するよう求めている。

3.発生事案の重大度の評価

ReCAAPの報告書の特徴は、既遂事案の重大度 (Significance of Incident) を、暴力的要素(Violence Factor) と経済的要素 (Economic Factor) の2つの観点から評価し、カテゴリー分けをしていることである。

暴力的要素の評価に当たっては、① 使用された武器のタイプ(ナイフなどよりもより高性能な武器が使用された場合が最も暴力性が高い)、② 船舶乗組員の扱い(死亡、拉致の場合が最も暴力性が高い)、③ 襲撃に参加した海賊 / 武装強盗の人数(この場合、数が多ければ多いほど暴力性が高く、また組織犯罪の可能性もある)を基準としている。

経済的要素の評価に当たっては、被害船舶の財産価値を基準としている。この場合、乗組員の現金が強奪されるよりも、該船が積荷ごとハイジャックされる場合が最も重大度が大きくなる。

以上の判断基準から、ReCAAPは、発生事案を以下の4つにカテゴリー分けしている。b140508-10

使用された武器のタイプでは、報告書によれば、2014年第1四半期の27件の既遂事案中、13件がナイフ・長刀のみで、4件がナイフと銃器で武装していた。残りの10件が非武装か、情報なしであった。乗組員の扱いから見れば、肥地自治が4件、脅迫が2件、襲撃が1件で、負傷者なし、または情報なしが20件であった。報告書によれば、ReCAAP対象海域の乗り込み事案のほとんどは、停泊/錨泊中の船舶に対する場当たり的な事案で、その目的は強盗で、乗組員を傷つける意図は持っていない。しかしながら、乗組員と面と向かい合った場合には、脅迫したり、人質に取ったりすることもある。襲撃に参加した海賊 / 武装強盗の人数から見れば、1~6人が最も多く19件で、7~10人が3件、9人以上が2件、情報なしが3件であった。経済的損失について見れば、盗まれた無防備の物品が2件、エンジン部品が4件、船舶備品が9件で、50%以上を占めている。他に乗組員の現金や持ち物が3件、積荷が1件で、被害なしと情報なしが8件であった。

2は、 以上の暴力的要素と経済的要素から、この5年間の既遂事案をカテゴリー分けしたものである。3は、襲撃された時の船舶の状況を示したものである。

表2:過去5年間の第1四半期のカテゴリー別既遂事案件数

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出典:ReCAAP 2014年第1四半期報告書13頁のチャート6より作成

表3:2014年第1四半期の航行中、停泊/錨泊中事案のカテゴリー別内訳

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出典:ReCAAP 2014年第1四半期報告書39~45頁のAppendices, Description of Incidentsより作成

報告書によれば、マラッカ・シンガポール海峡における襲撃された船舶のタイプには、過去4年間と比較して、2014年第1四半期には変化が見られる。それによれば、2014年第1四半期には、目標船舶が、Tug & Bargeのような小型船舶から、Bulk Carrier、General CargoあるいはTankerといったより大型の船舶には変わってきている。マラッカ・シンガポール海峡で2014年第1四半期に襲撃目標となった船舶8隻の内、Bulk Carrier、General Cargo及びTankerが各2隻で、他に1隻がOil Tanker、1隻がTug & Bargeであった。過去5年間のマラッカ・シンガポール海峡での既遂事案24件の内、50%の12件がTug & Barge、4件がTanker、3件がBulk Carrier、3件がGeneral Cargo、そしてOil TankerとSupply Vessel各1件が襲撃目標となった。こうした変化はTug & Barge業界が適切な対策をとってきた成果かどうか、関係当局とReCAAP ISCは、判断するのは時期尚早としている。ReCAAP ISCは、過去の傾向と経験から、Tug & Bargeといった特定タイプの船種について、あるいは特定海域において海賊対策を徹底すれば、武装強盗は、例えばより大型の船舶や監視の緩い他の海域に向かう傾向がある、と指摘している。

また、マラッカ・シンガポール海峡での襲撃事案8件の内、1件を除いて、夜間に発生している。報告書によれば、6件は0400~0700の間に、1件は0150に、そして1件は昼間の1350に発生しており、深夜通航の危険性を示している。しかも、発生場所と日時が近接していることから、8件の内、2月6日0620の事案と2月6日0700の事案、及び3月6日0515の事案と3月6日0540の事案は、同じ武装強盗グループの仕業の可能性がある、と報告書は指摘している。

なお、ReCAAP ISC は、Tug Boats and Barges (TaB) Guide against Piracy and Sea Robbery と題するガイドを発行し、各種の対策を提示している。

TaB Guide is available at following URL;
http://www.recaap.org/Portals/0/docs/Tug%20Boats%20and%20Barges%20(TaB)%20Guide%20(Final).pdf

(2014年5月8日配信【海洋情報特報】より)