「グローバル・ブリテン」とインド太平洋:似て非なる島国英国の動向から考える日本の戦略

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関根大助,日本安全保障戦略研究所 研究員

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はじめに

 かつて「太陽の沈まぬ国」とまで形容された大英帝国であるが、ボーア戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦を経験して弱体化し、大戦後もその余波やスエズ動乱といったものを経て世界的な大国の地位から落ちていくことになった。そして現在、英国はBREXIT(EU離脱)によってさらに衰退するとも一部ではいわれている。事実として英国は、その面積が約24.3万平方キロ(日本の約3分の2、)、人口は約6700万人であり、その経済力を合わせて考えると、米国や中国の国力とは比較にならず、日本と比べてもまったく及ばない。それにもかかわらず、現代における英国の存在感は依然として小さくないことも確かである。
 現在の英国の外交の方向性の正誤判定は、おそらくかなりの年月が経たないとできないだろう。英国の未来に何が待ち受けているかはともかく、近年においても英国の存在感は、とりわけインド太平洋地域において大きくなっている。そしてそれは、「グローバル・ブリテン」(Global Britain)と呼ばれる英国の外交政策の方針に沿ったものである。
 本稿の目的は、グローバル化が進む現代において、今後重要度がさらに高まるであろう日英関係を考慮して、英国のインド太平地域への外交姿勢やその影響力の背景について確認し、地政学的に似た環境にある島国日本が国際社会で生き残り、繁栄するためのヒントを得ることである。
 本稿では、まず、グローバル・ブリテンという概念、次に、英国が世界的な影響力を維持し続けることを可能にさせている要因、そしてインド太平洋の重要性とこの地域において今後重要な意味をもつ、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定:Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership)、新型英空母の派遣、AUKUSについての概要を確認し、最後に、それらに関する日本への含意について論じる。

1 英国のバランス感覚と「グローバル・ブリテン」

 グローバリゼーションが進行する現代において、英国はEUからの過度な干渉を避ける一方で、より広い世界に目を向けることになった。いわば「遠方の国と親しくして、近くの国とは適切な距離を取る」ことになった。これが、21世紀の英国人のバランス感覚であり、その具象化として、BREXITが決まり、「グローバル・ブリテン」という言葉が生まれたとも考えられる。
 2016年6月のBREXITの決定は、英国が世界の事象から身を引くことを意味するどころか、むしろその反対なものであり、それ以来英国の首相や閣僚は繰り返し「グローバル・ブリテン」という言葉を使用するようになった[1]。2016年10月、当時の英首相テリーザ・メイ(Theresa May)は、演説の中で、グローバル・ブリテンについて、「欧州大陸を越えて、より広い世界の経済的・外交的機会に目を向ける自信と自由をもつ国」と述べた[2]。英国はBREXIT後の世界においてどのように生き残るべきかを模索しており、時代に応じた英国の外交政策の変化として、ヨーロッパに著しく比重を置いていた関心を他地域へも大きく移すことになった。グローバル・ブリテンという概念は、英国がグローバルな外交政策プレイヤーであり続けるため、そして、世界での関わりが少なくなるという感覚に抵抗するために変化に適応するという決意を簡潔な言葉にしたものである[3]
 2020年2月に英国の当時の外務大臣ドミニク・ラーブ(Dominic Raab)は、「真のグローバル・ブリテン」という構想には3つの柱があると説明した。第一の柱は、ヨーロッパの近隣諸国との間で、英国が最高の同盟国、パートナー、友人であることを証明し続けること、第二の柱は、自由で開かれた貿易の精力的な推進派としての英国の役割を担うこと、第三の柱は、この世界で善を促進する、より強い力としての英国になることである[4]
 英政府が2021年3月に発表した統合レビュー“Global Britain in a competitive age”では、グローバル・ブリテンの意味について、「安全保障と抑止力に関してより強固な立場への変化に支えられた社会と経済における英国の開放性を維持すること」であり、「これは、開放性、民主主義、人権を守る、この世界で善を促進する力としての英国への新たな意気込み、そしてCOVID—19への我々の対応に見られるように、気候変動や世界的な健康危機などの課題に対し、多国間の解決策を模索する決意とともに行われるものである」と書かれている[5]
 グローバル・ブリテンの前提条件は、国内での市民の安全と、英国の安全保障上の重点地域である欧州・大西洋地域の安全である[6]。そして、英国はグローバルな利益をもつヨーロッパの国であり、英国の将来の繁栄は、ヨーロッパとの貿易だけでなく、インド太平洋、アフリカ、湾岸地域など、世界のダイナミックな地域との経済的なつながりを深めることによってもたらされるとする[7]。英国にとって、グローバル・ブリテンという構想には、パートナーと協力しながら、自国と自国民の安全を確保し、この世界のルールを基盤とした国際システム、自由貿易、法の支配といった価値観を守り、そのグローバルなプレゼンスを維持し、その能力や影響力を高めていくという意図をもつと考えられる。「英国は、民主的主権の指針となり、世界で最も影響力のある国のひとつとなり、国内外での行動を通じて、国民にとって最も重要な問題に取り組む」としている[8]
 また、国際安全保障の面では、ロシアについては、欧州・大西洋地域にある英国にとって最も深刻な直接的脅威であり続けるとしている[9]。英国は、ロシア政府との関係が改善されるまでは、ロシアからのあらゆる種類の脅威に対して積極的に抑止および防御を行い、NATOによって統一して対応する[10]
 中国については、今後10年間、他のどの国よりも世界の成長に貢献し、中国と英国は、二国間の貿易と投資から利益を得ているが、同時に中国は、英国の経済安全保障にとって国家ベースでの最大の脅威となると考えられている[11]。英国にとって中国は、システム上の競争相手であり、中国のパワーと国際的な自己主張の増大は、2020年代の最も重要な地政学的要因となる可能性が高い[12]。また、中国との協力関係は、国境を越えた課題、特に気候変動や生物多様性に関する損害に取り組む上で不可欠であると英政府は考えている[13]

2 グローバルな大英帝国の遺産と英国の強み

 英国の国家としての価値は、一貫したレベルの国際的な影響力を維持し、それを支えるために必要なソフトパワーとハードパワーの能力を維持できるかどうかだと統合レビューでは主張されている[14]。英国は、グローバル・ブリテンを成功させるためには、英国の強みの本質を正確に把握することが必要であると考えている[15]
 グローバル・ブリテンが実際に可能かどうか、懐疑的な声もあるが、たとえば、「真のグローバル・ブリテン」が可能な理由として、メイ首相は前述の演説で、「世界で5番目の経済大国であること」、「2010年以降G7の中で最も速い経済成長」、「EUにおける海外投資の5分の1を誘致していること」、「米国に対する最大の投資国であること」、「米国以外では最も多いノーベル賞受賞者を輩出していること」、「世界最高の諜報機関」、「世界中に戦力投射を行える軍隊」、「すべての大陸における友好関係、パートナーシップおよび同盟関係」、「世界一のソフトパワー」、「世界貿易に適した時間帯に位置していること」、「母国語が世界言語であること」を挙げている[16]。筆者が考える現在の英国の最大の強みは、かつて海洋の超大国であった大英帝国の遺産としてのグローバルな規模のネットワークである。それには、『海洋安全保障情報特報』の拙稿でも指摘したように[17]、言語の影響力、情報収集・発信のネットワーク、他国に対する影響力の強い英海軍、海事分野における伝統、英連邦の存在といったものが考えられる。
 広い視野で多角的に考えなければ英国の力量を見誤るが、ここでは、国際政治における議論においてあまり話題にはならない、英国がグローバルな影響力を保持するための基盤となっているものを確認する。

2-1.海外領土

 英国と憲法上のつながりをもつ海外領土(南極を含む)は14存在する。これらの地域には約30万人の市民が住んでおり、ほとんどの海外領土が独自の政府と立法機関を持ち、ほぼ自治権を有しているが、海外領土は防衛と外交の責任を担う英国本土と強い結びつきがある[18]
 南極を含めると海外領土の合計面積は英国本土の約7倍である[19]。恐らく海外領土の総面積は約172万8千平方キロほどであり、南極の面積が約171万平方キロ[20]とそのほとんどの割合を占め、残りは、フォークランド諸島が約1万2100平方キロ[21]、サウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島が約3900平方キロ[22]と大部分を占めている。英国の海外領土の海域は英国本土のものよりも遥かに広大であり、南極を除いた海外領土の排他的経済水域は680万平方キロに対し、英国本土のものは75万6千平方キロである[23]
 南大西洋にあるフォークランド諸島は、約740の島々で構成され[24]、現在の人口は約3500人である[25]。1982年4月1日にフォークランド諸島はアルゼンチン軍に占領され、6月14日に英軍に開放されたが、英国とアルゼンチンの紛争の結果、両国で約千人が戦死した[26]
 サウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島は、フォークランド諸島から約1550km離れた南大西洋に位置している[27]。つまり、英国の海外領土は、面積についていえば、ほとんどが、南極と南大西洋に集中していることになる。
 インド洋の58の島々で構成されるチャゴス諸島は、インドから南の海域、モーリシャスから約2200キロの北東に位置し、総面積が約60平方キロであり[28]、その中でも最大の島であるディエゴ・ガルシア島は44平方キロである[29]。軍事施設があるディエゴ・ガルシア島は、英国から米国に貸与されており、インド太平洋地域における米国の軍事戦略の要となっている。南太平洋にあるピトケアン諸島は、総面積が49平方キロで[30]、タヒチの南東約2170kmに位置しており、住民が50人ほどである[31]。インド太平洋地域にある英国の海外領土であるチャゴス諸島とピトケアン諸島の面積を合わせても、同地域のフランスの海外領土と比較するとかなり小さい。

2-2.英連邦

(1)英連邦の組織

 英連邦は、1931年に発足し、54の独立した平等な国(アフリカ19カ国、アジア8カ国、カリブ海および米大陸13カ国、ヨーロッパ3カ国、太平洋11カ国)の自発的な協会であり、そこには25億人の人々が住んでいる[32]。現在英連邦を構成する国家は、世界の人口の約3分の1、世界の陸地の約4分の1を占め[33]、2年毎に英連邦首脳会議を開催している。国連安全保障理事会の常任理事国5カ国のうちの1カ国、G7、G20だけでなく、英連邦のような組織で主導的な発言力をもつ英国は、グローバルな視点とグローバルな責任を負うとしている[34]。英連邦においては、英国とインドが二大大国であり、インドは、英連邦内で英国に次ぐ2番目の経済大国であり、人口はその半数以上を占めている。
 加盟国政府は、開発、民主主義、平和などの共通の目標に合意しており、その価値観と原則は、連邦憲章に示されている[35]。英連邦のルーツは大英帝国にまでさかのぼるが、現在どの国も英連邦に参加することができる。英連邦に加わった最近の2カ国ルワンダとモザンビークは、大英帝国と歴史的なつながりがない[36]
 英国の君主を国家元首とする英連邦の加盟国は「英連邦王国」(Commonwealth realm)といわれ、エリザベス女王は現在、英国だけでなく、旧英植民地15カ国の元首であり(2021年11月30日にバルバドスは共和政に移行)、15カ国では総督が君主の代理を務める。女王は英連邦のトップとして、英連邦加盟国から「自由な連合の象徴」と認められている。女王は、首脳会議や4年ごとに開催されるスポーツ競技会であるコモンウェルス・ゲームズに出席する[37]。また、毎年3月の第2月曜日のコモンウェルス・デーには、全加盟国に向けてメッセージを発信している[38]
 英連邦の執行機関であるロンドンの事務局が、様々な会議で合意されたプログラムを実行する責任を負い、事務局のトップには事務総長が就任する[39]。英連邦の最高責任者である事務総長は、英連邦の外交官および外務大臣の中から政府首脳によって選出され、最長で2期4年務める[40]
 影響力が弱いという批判があり、事実英連邦は、国際問題において全体として行動することはなく、非加盟国に対する影響力はほとんどない[41]。英連邦の加盟国には契約上の義務はないが、加盟国は政府首脳が定めた信念の声明に責任をもつ[42]。1995年に、英連邦は8人の閣僚からなるCMAG(英連邦閣僚行動グループ:Commonwealth Ministerial Action Group)を設立した。CMAGの機能は、英連邦の原則に執拗に違反する政府に対処することであり、経済制裁を課したり、不服従の加盟国を停止したりするなど、懲罰的な集団的措置を取ることができる[43]

(2)経済

 経済関係については、戦後英連邦加盟国間の貿易量は徐々に減少し、さらに1973年に英国がEC(ヨーロッパ共同体)に加盟したことにより、英国と英連邦加盟国との関係は薄まった。しかし、BREXITが決まって以降、英国は、ヨーロッパへの依存度を下げるために、英連邦加盟国との経済関係の強化を試みている。
 英連邦との貿易は英国の総貿易の9.1%を占めており、これは英国のドイツとの総貿易とほぼ同程度である[44]。英連邦間の貿易量について、COVID-19のパンデミックが起こる前は、2020年に7010億ドルに達すると予想されていたが、実際は6410億ドルにとどまった[45]。英連邦諸国は、2020年に最大で3450億ドル相当の貿易を失ったと推定される[46]。COVID —19のパンデミックは、英連邦加盟国すべての経済に大きな影響を与え、わずか1年で1兆1500億米ドルのGDPを見送ることになり、パンデミック前の2020年の成長トレンドと比較すると、英連邦の経済は約10%縮小した[47]

(3)英連邦とスポーツ

 英国発祥のスポーツであるクリケットは、日本での知名度は低いが、英連邦の人々には大変人気のあるスポーツであり、その競技人口はサッカーに次いで世界第2位といわれている[48]。たとえば、インドとパキスタンの代表チームによるクリケットの試合は、この二国間の因縁を背景に、並々ならぬ雰囲気のある大きなイベントになるという。
 クリケットのトップクラスの選手の年収は非常に高く、インドのスター選手ヴィラット・コーリ(Virat Kohli)の年収は2600万ドルといわれている[49]。また、パキスタンの首相イムラン・カーン(Imran Khan)は元クリケットのスター選手であり、これらのことから、クリケットというスポーツの南アジアでの社会的な影響力の強さが窺える。
 1930年代に行われた英国とオーストラリアのクリケットの試合の内容が原因で、両国の間で論争が起こり、外交問題に発展したケースがある。また、インドとパキスタンの首脳が過去に行った著名な例があるように、クリケットの試合の観戦を口実として、そこで外交の場を設ける「クリケット外交」が行われることがある。このような政治的な意味をもつほどにクリケットの存在は英連邦内では大きい。
 英連邦の加盟国間では4年毎にコモンウェルス・ゲームズという総合的なスポーツ競技大会が開催されており、オリンピックで行われる種目や、英連邦以外ではあまり知られていない種目まで多様な競技が行われている。コモンウェルス・ゲームズは世界で3番目に規模が大きい総合競技大会(multi-sport event)とされている[50]

2-3.軍事ネットワーク

 英国の軍隊、諜報機関、企業を対象にして調査しているウェブサイト“Declassified UK”[51]が2020年11月に発表した調査結果によると、英軍の世界的な軍事プレゼンス規模は、これまで考えられていたよりも遥かに大きく、英国は、米国に次いで世界第2位の軍事ネットワークを持っていることを意味するという[52]。ここでは、以下に、その調査結果が書かれた記事の内容を簡潔に紹介する(この調査結果には、南スーダンやキプロスの緩衝地帯における国連平和維持活動への英国の小規模な兵力の提供や、ヨーロッパのNATO管理施設での人員の配置、具体的な特殊部隊の派遣については含まれていない)[53]

(1)ヨーロッパ

 英軍の幹部は、英国は今やロシアと永続的な競争から抜け出せない状態だと考えている。英国は少なくともヨーロッパ6カ国に軍が存在する。

  • ドイツ 英国は、540人の兵員を擁する4つの基地の運営を継続している。
  • ノルウェー バルドゥフォス空港には英国軍のヘリコプター基地があり、ロシア海軍の北方艦隊の拠点であるセヴェロモルスクから350マイルの距離に位置している。
  • チェコ チェコの陸軍士官学校に20人の英兵が派遣されている。
  • エストニア 英空軍は、ロシアとの国境に近いエストニアのアマリ空軍基地にタイフーン戦闘機を駐留させている。
  • リトアニア 英空軍は、シャウレイ空軍基地にタイフーン戦闘機を駐留させている。
  • キプロス キプロスには17の英国の軍事施設が存在することがこの調査によってわかった。キプロス島の南にあるアクロティリとデケリアという地域は英国の海外領土であり、2290人の兵員がいる。シリアにいる英国の特殊部隊は、キプロスからの空輸で補給を受けていると考えられている。
(2)中国の周辺地域

 この調査では、英政府の計画立案者は、台頭する中国に対抗するために、アジア太平洋地域に英国の軍事基地が必要だと考えているとしている。

  • シンガポール センバワン埠頭にある海軍兵站基地には、8人の英軍スタッフが常駐している。シンガポールの最精鋭警察部隊は、英兵が採用し、英軍の退役兵が指揮をとっている。
  • ブルネイ 英軍は、係争中の南沙諸島に近いブルネイに、英国のグルカ兵の約半数が常駐しているシッタン・キャンプ、メディシナ・ライン、トゥッカー・ラインの3つの駐屯地を持っている。ブルネイの他の場所では、27人の英兵がムアラ海軍基地を含む3カ所に派遣されている。
  • オーストラリア オーストラリアにはおよそ60人の英軍関係者がいて、その内のおよそ25人が防衛駐在武官としての任に当たり、その他は18の軍事基地で様々な任務に従事している。
  • ニュージーランド 10人の英軍関係者が、ニュージーランドの不特定の場所に駐留している。
  • ネパール 英陸軍は、ポカラとダランにあるグルカの徴用所と首都カトマンズにある管理施設といった、少なくとも3つの施設を運営している。
  • パキスタン 約10人が駐留している。
  • アフガニスタン この調査の時点では、英軍は、カブールのハミド・カルザイ国際空港に即応部隊を保持している。
(3)中東
  • アラブ首長国連邦およびカタール アラブ首長国連邦のアル・ミンハド飛行場とカタールのアル・ウデイド飛行場には、約80人の英兵で運営されている英空軍基地がある。これらの基地は、アフガニスタン、イラク、シリアおよびリビアで活動している英兵に補給を行うために使用される。
  • サウジアラビア 15の主要な拠点に英兵が駐留している。
  • バーレーン 2018年に英海軍の基地が開設された。
  • ヨルダン 20人の英兵がヨルダン国王を支援している。
  • クウェート 40人の英兵が駐留している。
  • オマーン 91人の英兵が16の施設に駐留している。海に面したドゥクムには英海軍基地があるが、この基地は英海軍新型空母「クイーン・エリザベス」を支援するために投資されており、一時的に20人の英兵が動員されている。ドゥクムの英軍は、英兵が40人いるチャゴス諸島のディエゴ・ガルシア島の米軍の軍事施設と緊密に協力する可能性が高い。
  • イラク 英陸軍のサイトによると、100人の英兵が駐留し、今まで2万5千人以上のイラク軍兵士を英陸軍が訓練している[54]
  • イスラエルおよびパレスチナ 約10人の英兵が駐留している。
  • シリア 英軍の特殊部隊の活動について言及されているが、ここでは詳細は不明。
  • リビア 英軍とその特殊部隊の活動に言及されているが、ここでは詳細は不明。
  • イエメン 英軍の特殊部隊の活動について言及されているが、ここでは詳細は不明。
(4)南北アメリカ大陸
  • フォークランド諸島 南大西洋の英国の海外領土であるフォークランド諸島には、6つの拠点がある。正味、70人から100人の国防省職員が軍事プレゼンスだが、フォークランド諸島政府は、1200人の兵士と民間軍事会社の人間400人という、それよりも遥かに高い数字を出している。英領南極地域に補給を行っている海軍の艦艇は、フォークランド諸島とつながりがある。
  • アセンション島 南大西洋の英国の海外領土であるアセンション島には、英空軍に使用されているワイドアウェイク飛行場や、英国の秘密諜報機関であるGCHQ(政府通信本部:Government Communications Headquarter)の施設などの5つの軍事および諜報拠点がある。
  • 米国 730人の英軍関係者が様々な施設にいる。
  • カナダ サフィールドには英国の戦車訓練施設があり、そこには約400人の常駐スタッフがいて、戦車や走行戦闘車などが1000両ある。
  • ベリーズ 主要空港には英軍の小さな駐屯地があり、そこから13のジャングル戦の訓練場にアクセスする。

     

(5)アフリカ
  • ケニア 英国は、ケニアのニャティ・キャンプに、英陸軍ケニア訓練部隊(British Army Training Unit, Kenya、BATUK)の基地を維持しており、数百人の英兵の拠点となっている。他にも5つの拠点と13の訓練所を持つ。
  • ソマリア 首都モガディシュのアデン・アッデ国際空港(モガディシュ国際空港から改名)とバイドアのセキュリティ・トレーニング・センターには英陸軍の訓練チームが駐留している。
  • ジブチ 「アフリカの角」とイエメンでのドローン作戦に関与している小規模の英軍部隊がある。
  • マラウイ 密漁対策の任務を英兵が担当している。
  • シエラレオネ 軍事訓練センターで英国人将校が軍事訓練施設を運営している。
  • ナイジェリア およそ9人の英兵が派遣されている。
  • マリ 平和維持部隊が派遣されている。

     

(6)タックスヘイブン

 この調査では、英国の海外軍事基地の1つの特徴として、タックスヘイブンにあることが多いことが指摘されている。

  • ジャージー島 英海峡の英国の王室属領[55]であるチャンネル諸島のジャージー島は、世界のタックスヘイブンのトップテンに入るといわれており、王立工兵のジャージー野戦部隊の基地がある。
  • ジブラルタル スペイン南端のジブラルタルは英国の海外領土であり、ここにも4つの拠点に670人の英兵がいる。
  • バミューダ諸島 大西洋にある英国の海外領土のバミューダ諸島は、世界で2番目に腐敗したタックスヘイブンにランクされている。バミューダ諸島には、英陸軍に属し、英国の将校が指揮する350人の王立バミューダ連隊によって運営される小規模の軍事施設がある。
  • モンセラト カリブ海の英国の海外領土モンセラトには、現地の40人の志願兵による王立モンセラト防衛部隊が存在する。
  • ケイマン諸島 カリブ海にある英国の海外領土であるケイマン諸島も主要なタックスヘイブンであり、ケイマン諸島政府によると、そこにあるケイマン諸島連隊の兵員数は2022年末には175人ほどになる[56]
  • タークス・カイコス諸島 カリブ海にある英国の海外領土タークス・カイコス諸島における、タークス・カイコス連隊の計画は、あまり前進していない。

2-4.多様なソフトパワー

 現代における英国の強力なソフトパワーは主に、世界的な超大国であった英国を起源とするアングロスフィア(Anglosphere、英国、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドといった同様の価値観や文化を形成している英語圏の国々)全体としての巨大な影響力と、事実上の世界言語である英語の利便性がその根源となっている。
 現在までに、英国はソフトパワーを測る指標において、常に上位3カ国にランクインしており、2020年の調査では、G20の中で若者にとって最も魅力的な国として英国がトップになったという[57]。このような結果は、英国の民主的統治モデル、法制度とコモンローの伝統、君主制、世界クラスの教育、科学・研究機関と基準設定機関、創造的・文化的産業、観光業、スポーツ業、大規模で多様なディアスポラ・コミュニティ、国際開発への貢献などに支えられていると英政府は考えている[58]。一方で、ロシアや中国のようなシステム上の競争相手は、グローバルな文化的パワーの投射や情報操作に多大な投資を行っており、英国の同盟国も、より戦略的なアプローチをとっていると見なしている[59]
 統合レビューの中では、英国の強みであるソフトパワーとして、たとえば、以下のようなものが挙げられている[60]

  • BBCは放送局として世界で最も信頼されており、BBCワールド・サービスは42の言語で毎週 4億6800万人に放送されている。
  • 英国には創造的・文化的産業があり、世界で販売されている音楽アルバムの8枚に1枚は英国のアーティストによるもので、世界の映画興行収入の4分の1を英国製の映画が牽引している。
  • 英国は世界で2番目に人気のある留学先で、約50万人の海外の学生が英国への留学を選択し、全学生人口の20.7%を占め、世界の4カ国に1カ国の割合で、英国で教育を受けた国家元首・政府元首がおり、ブリティッシュ・カウンシルは100カ国以上で1億人の人々にサービスを提供している。
  • 英国のフットボール(サッカー)、プレミアリーグは、世界188カ国で放送され、100カ国以上の国際的な人材を迎え入れている。

 また、フットボール、ラグビー、バドミントン、競馬、競泳、近代ボクシングなど、世界的なスポーツは英国発祥や英国が世界的に普及させた場合が少なくない。英国は、これらのスポーツと現在でもつながりが深く、特に国際的なイベントでは存在感を示している。

3 インド太平洋地域と英国

3-1.地政学的・経済学的シフトとインド太平洋地域

 統合レビューにおいて、世界のパワーの性質と分布は、より競争的で多極的な世界に向かって変化すると述べられており、今後10年間で、英国と変化する国際秩序にとって、地政学的・経済学的シフト、システム競争、迅速的な技術的変化、国境を超える課題の4つの包括的なトレンドが特に重要になると考えられている[61]
 地政学的・経済学的シフトについては、中国の国際的な力と主張の増大、世界の繁栄と安全保障におけるインド太平洋の重要性の高まり、新しい市場の出現と世界的な中産階級の成長などが述べられている[62]。2030年までには、世界は多極化に向けてさらに前進し、地政学的・経済的な重心はインド太平洋に向けて東進することになるとしている[63]。今後10年間英国は、その繁栄にとって重要となるインド太平洋地域への関与を深め、ヨーロッパの他のどの国よりも大きく、持続的なプレゼンスを確立していくことを目標としている[64]
 インド太平洋地域には、少なくとも170万人の英国市民が住んでおり、貿易関係も拡大し続けている[65]。今後数十年の間に、気候や生物多様性、海洋安全保障、ルールや規範に関連した地政学的競争など、最も差し迫った地球規模の課題の多くが、この地域を舞台に繰り広げられることになるとしている[66]
 経済に関しては、インド太平洋地域は、世界人口の半分が居住し、世界のGDPの40%を占め、最も急速に成長している経済圏であり、すでに英国の世界貿易の17.5%、対内直接投資の10%を占めている[67]。英政府は、新たな貿易協定や対話、科学技術やデータにおけるより深いパートナーシップなどを通じて、これをさらに強化していく予定である[68]
 英国の対アジア貿易の多くは、インド太平洋を通過する船舶に依存しているため、航行の自由を守ることは、英国の国益にとって不可欠である。英国は、すでに地域のパートナーと緊密に協力しているが、軍隊による継続的な関与と、より広範な安全保障能力の構築を通じて、さらに努力していく[69]
 英国は、中国、インド、日本といったこの地域の大国との関係強化の重要性を認識し、それを、韓国、ベトナム、インドネシア、マレーシア、タイ、シンガポール、フィリピンといった国々にも拡大していく予定である[70]。英国は、この地域におけるFPDA(五カ国防衛取極:Five Power Defence Arrangement)などの二国間・多国間パートナーシップの維持・支援や、ASEANや太平洋島嶼フォーラムなどの組織と連携し、同時に、フランスやドイツをはじめとするヨーロッパのパートナーとより緊密に協力していく[71]

3-2.CPTPP

 現在英政府は、2022年末までに英国の貿易の80%を占める国と貿易協定を結ぶことを公約している[72]。最も近い貿易相手国であるEUと締結した貿易協力協定に加えて、EU以外の66カ国とFTAを締結している[73]。そして、CPTPPへの加盟を申請しているが、英国はその発足メンバー以外で参加申請を行った最初の国である。
 2020年6月に英政府は、CPTPPへの加盟を追及する理由として次の3つを挙げた[74]。①コロナウイルスがもたらす前例のない課題を英国経済が克服するために、貿易・投資の機会を増やす、②世界的に不確実性と混乱が高まっている中で、貿易関係やサプライチェーンの多様化を図り、経済的安全性を高める、③世界における将来の地位を確保し、長期的な利益を促進し、CPTPPへの加盟により、英国を、世界との貿易を望む企業や投資家にとってのグローバル・ハブにすることを目指す。
 CPTPPについては、世界経済の13%をカバーしており、英国を含めると16%になる[75]。英国が加入を検討しているUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定:United States–Mexico–Canada Agreement)と合わせれば、世界経済の約40%がハイレベルのルールに基づく現代的な貿易協定でカバーされることになる[76]。CPTPPに加盟する利点については、たとえば、以下のようなものが挙げられている[77]

  • 英国と急速に成長する太平洋地域を結びつける。
  • カナダ、シンガポール、オーストラリアなど、重要な同盟国との関係強化にもつながる。
  • CPTPPは、自由貿易とルールに基づいたグローバル・システムを信じる国々のグループを強化するものである。
  • EU加盟国と異なり、CPTPPに加盟すれば、自国の主権を損なわない方法で協定に参加することができる。
  • CPTPPに参加し、サービスやデジタルなどの分野で先進的な協定に署名することで、WTO(世界貿易機関:World Trade Organization)に、特にこの種の分野で新しいルールを採用し、ルール・ブックを現代的にするよう働きかけることができる。

3-3.新型空母「クイーン・エリザベス」派遣と哨戒艦の配備

(1)空母の派遣

 第5世代の英空母「クイーン・エリザベス」は、6万5千トンで、英国で建造された水上艦としては最大のものである。2021年5月末に英国を出航した、この新型空母が率いる空母打撃群は英国から日本まで航行し、様々な航空・海上作戦を展開した。空母打撃群の構成は、英海軍空母1隻、英海軍駆逐艦2隻、英海軍フリゲート艦2隻、英海軍補給艦2隻、英海軍潜水艦1隻、米海軍駆逐艦1隻、オランダのフリゲート艦1隻となり、英国から出る海洋・航空戦力としては、この時代において最大の集中力となった[78]。この空母は、第5世代の多用途戦闘機「F-35Bライトニング」を搭載し、英空軍、英海軍、米海兵隊が一緒に搭乗していた[79]。この空母打撃群は、3つの大洋と5つの海を横断し、44カ国と交流し、パートナーシップを強化した[80]

(2)経済・外交・安全保障パートナーシップの強化

 エリザベス・トラス(Elizabeth Truss)英外務大臣はこの空母派遣について、「英国は、インド太平洋地域全体における関係の強化に取り組んでおり、英空母打撃群の展開は、この地域に対する我々のコミットメントと、より深い経済、外交、安全保障パートナーシップを構築したいという我々の願望を示している」と述べた[81]。この展開は、民主主義の価値を守り、共通の脅威に取り組むことから、新たな貿易の機会をつかむことまで、この地域における英国の関わりを一変させるものであると認識されている[82]
 インド太平洋地域におけるこの積極的な軍事的関与は、外交的な進展と表裏一体となっている。英国は、CPTPPへの参加交渉を開始し、オーストラリア、ニュージーランド、インドとの貿易交渉を急速に進めた[83]。2021年8月に英国が25年ぶりにASEANから「対話パートナー」の地位を付与されたことは画期的であり、これは、英国と日本が、二国間の防衛協力の拡大に向け、正式な交渉を開始すると発表したことを受けてのことである[84]
 この地域における英国のプレゼンスについて、第一海軍卿トニー・レダキン(Tony Radakin)英海軍大将は「インド太平洋が、全世界にとって驚異的な貿易拠点となっている現実を表している。英国は外向的な海洋島嶼貿易国であり、それを背景にこの地域で役割を果たしている」と述べた[85]。英国は、アジア太平洋地域における航行の自由を含む海洋秩序の維持に貢献するとともに、同地域の経済成長の恩恵を受けることで、アジア諸国との関係強化を目指している[86]

(3)2隻の哨戒艦の配備

 ベン・ウォレス(Ben Wallace)英国防大臣は、「この空母打撃群は、インド太平洋から中東、さらにその先まで、世界の安全保障と国際的な同盟関係に対する我々の永続的なコミットメントを示し続けている」「  空母打撃群の訪問や演習が終了した後も、英海軍の哨戒艦『タマール』と『スペイ』をインド太平洋に常時配備し、FPDAのパートナーと世界中で緊密に協力することで、我々の同盟国やパートナーとの関係は長く続いていくだろう」と述べた[87]。レダキン大将も、中国を牽制する米国とその同盟国の計画の一環として、英国は「少なくとも今後5年間」この地域に新たに哨戒艦2隻を配備すると述べた[88]。しかし、この配備には他国からの支援が必要であるため、「オーストラリアと同じように、この地域の友人であり同盟国である日本のつながりに期待したい」と彼は述べた[89]。日本は、英国の哨戒艦の配備により、日英米の共同対応や訓練がより可能になることを歓迎していると考えられる[90]

(4)台湾海峡

 これらの英国の動きは台湾の問題も考慮したものであり、レダキン大将は、台湾海峡は「自由で開かれたインド太平洋の一部であり、ルールに基づいた秩序の一部である」と強調し、台湾海峡の航行の自由を維持することが重要であることを明言した[91]。しかし、ロシアの脅威に対応する必要性を考えると、アジアにおける英国の軍事的関与には限界があると考える人も依然として多いという[92]

3-4.アングロスフィアとAUKUS

(1)AUKUSの目的

 2021年9月15日スコット・モリソン(Scott Morrison)豪首相、ボリス・ジョンソン(Boris Johnson)英首相、そして、ジョー・バイデン(Joe Biden)米大統領は、オンライン形式の共同会見で、3カ国の安全保障パートナーシップ「AUKUS」の創設を発表した。豪英米の首脳は、この協定について、永続的な理想とルールに基づく国際秩序への共通のコミットメントに導かれ、インド太平洋地域における外交、安全保障、防衛の協力を深めるための取り組みの一環としている[93]
 日米豪印のクワッドとは異なる枠組みであるAUKUSは、軍事・安全保障分野の協力に関してより踏み込んだものになっており、明言されていないが中国をターゲットにしていると考えられている。英政府の声明によると、この新しい協定は、「ファイブ・アイズを通じてすでに広範な情報を共有している3国間の独自の信頼と協力関係を反映している」[94]
 AUKUSの下での最初の取り組みは、オーストラリアが豪海軍の原子力潜水艦を取得するのを支援することである。それを実現するための最適な道筋を模索するため、18ヶ月間にわたる三国間の取り組みに着手する。またこの協定は、人工知能、サイバー、量子、水中システム、長距離攻撃能力などの主要な技術分野で3カ国が情報とノウハウを共有することを容易にすることになる[95]
 オーストラリアは、総費用900億ドルを投じる予定であった、仏製の潜水艦を最大12隻建造するという計画を破棄し、原子力を採用するという大胆な計画となった[96]。仏当局は、今回の米英豪合意によって、このプロジェクトは停止されたと表明した[97]
 米国と英国は、長年にわたり原子力潜水艦プログラムで提携し、様々な艦種で技術を共有してきた。オーストラリアが加わることで、太平洋の海中で3国が協力して活動する能力を高める大きな一歩となり、この地域における同盟を著しく強化する[98]。これにより、オーストラリアは世界で7番目に原子力潜水艦を運用する国となる。さらに、オーストラリアは長距離巡航ミサイル「トマホーク」を獲得し、同国北部に駐留する米軍の増員を認めることになった[99]
 この3カ国は、米国と英国の専門知識を活用し、両国の潜水艦プログラムに基づいて、オーストラリアの能力を達成可能な最も早い時期に運用開始を目指す[100]。英国は60年以上にわたり、世界トップクラスの原子力潜水艦を建造・運用を行っており、ロールスロイス社やBAEシステムズといった企業が、その専門知識と経験をこのプロジェクトに提供することになる[101]。また、豪海軍は、英国の26型フリゲート艦を最大9隻調達することで、これまで以上に両国の国防軍が協力して活動できるようになる[102]

(2)核不拡散の問題

 オーストラリアは現在、原子力潜水艦を動かすのに必要な核分裂性物質を持っていないとされており、今後の交渉では核物質の移転に関する議論が行われることになるだろう[103]
 1954年の米国原子力法の第123条「他国との協力」は、米国と他国との間の原子力取引に関する条件が規定されており、「123協定」と呼ばれる。2010年にゴールドスタンダードの「123協定」を締結し、オーストラリアは米国から送られてきた核物質を濃縮・再処理しないことを約束した。オーストラリアは核兵器を求めていない、とモリソン首相とバイデン大統領は強調した[104]

(3)ニュージーランドとカナダ

 また、ニュージーランドは長年にわたる非核政策をとっているため、この協定に基づいて開発されたオーストラリアの潜水艦も、ニュージーランド領海への侵入が禁止されることになる[105]。ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン(Jacinda Ardern)首相は、記者団から、ニュージーランドに参加のオファーがあったかどうかを聞かれ、彼女は、「打診はなかったし、期待もしていない」と答えた[106]
 AUKUSは、中国問題で米国との緊密な連携を強めているオーストラリアと、相対的に距離を置いているニュージーランドとの間の違いを示している[107]。この協定には、ファイブ・アイズのもう一つのパートナーであるカナダも含まれていない。ここ数年、カナダとニュージーランドは、場合によっては特定の問題における人権侵害を個別に非難する一方で、強い声明を避けてきたという点で共通している[108]

4 日本への含意

4-1.似て非なる島国によるグローバル化への適応

 地理環境においては似ている日本と英国だが、この両国の歴史における歩みは対照的といってもいいだろう。英国人は、その歴史において世界的な海洋帝国を築き上げてその権勢を長期間維持し、現代においてもグローバルな影響力を保持している。一方で日本人は、その国家の長い歴史において政治的および軍事的な影響力を東アジアの外へと伸ばすことはほとんどなかった。戦後も戦勝国である英国は、国連常任理事国で核保有国であり、多くの対外戦争を経験している。一方で戦後の敗戦国日本は、軋轢がある周辺国が核武装し、軍備の増強を急速に進めている最中、相対的な経済力も防衛力も弱体化しているにもかかわらず、有効な措置を講じないでいる。
 今後の国際社会は、紆余曲折を経ながらも、様々な分野においてグローバル化は進んでいくことになるが、ユーラシア大陸を挟んで位置する日英関係は、海洋国家の相互依存的な特質上もあって、より重要性が高まっていくと考えられる。グローバル化が否が応でも進む世界において、再び広大な世界に目を向けて「グローバル・ブリテン」を掲げた英国の経験や振る舞いから日本が学ぶことは少なくないだろう。その英国の真価を見逃してはならないし、その国力を過剰または過小に評価せず、正確に把握する必要がある。
 大きなシーパワー(seapower:本稿では国家が海洋を利用する能力とする)を保有する国家は、歴史においてその地理環境を状況次第で積極的に利用し、自由と制限、関与と孤立、そして侵攻と防衛の度合いを使い分けてきた。英国は、急速に進むグローバル化の結果、他者から自国への過度な干渉を避けるためにEUから離脱する一方で、遠方のインド太平洋に積極的に関与することになった。日本は戦後、経済大国となったが、近隣の国々との交流の中、経済支援を行う一方で、技術を盗まれ、産業をコピーされ、挙句の果てに現在衰退する日本は彼らの嘲笑の的である。英国のBREXITは「脱欧入亜」と称されたが[109]、現在日本も自身が主導するCPTPPでは大陸の儒教圏とは距離を取っている。
 前述のように英国は「遠方の国と親しくして、近くの国と適切な距離を取る」ことになったが、よくいわれるように、国家というものは近接した国々との間には問題を多く抱える。日本の隣国である中国や韓国は中華思想や小中華思想をもち、華夷秩序の思想に囚われているうえ、軍事力の増強だけでなく平時と戦時の区別のない、いわゆる「超限戦」的な、手段を選ばない攻勢を日本に仕掛けている。このような状況を考えると、断固として自己と自我を守りつつ、他地域のより多様な国々と交流を進めることが、グローバリゼーションが急速に進む時代における国家としての正しい道筋となり得るのではないか。無闇にグローバリゼーションを受け入れる訳ではなく、閉鎖的になるわけでもない、アイデンティティを含む新時代における様々な分野での国防と、国際交流から得られる国益のバランスが求められる。

4-2.ソフトパワー

 英国は、英語の発信力を有効に使い、世界的な規模でそのソフトパワーを広く利用しており、様々な分野において自国の魅力をアピールしている。
 たとえば、ソフトパワーの中でも、スポーツとその国のイメージはかなり関連性が深い。仮に、ブラジルやアルゼンチンのサッカー代表チームが弱小であった場合、これらの国に対して一般的な日本人はどのような印象をもつだろうか。スポーツと政治は良くも悪くも密接な関係にあり、世界中に熱狂的なファンが存在するサッカーのイングランド・プレミアリーグと人気チームおよび選手は、世界に英国の好意的なイメージを浸透させるための重要なツールといえるだろう。
 有望な発展途上国の経済成長を考えた場合、日本政府が経済成長を重視する正しい経済政策に舵を切ったとしても、往時のような経済的影響力を日本がもつことは容易ではない。日本には英国のような過去の遺産はないが、ソフトパワー大国であることは間違いなく、その多様なソフトパワーを強化し利用して、国内だけでなく海外に目を向け、より国家戦略的に発展させていくことが、将来の国際社会において日本が埋没しないためにも重要になるだろう。

4-3.ロシアと中国に対する認識の違い

 日英関係は昔から、ロシアと中国の動向と深い関連性がある。たとえば、第一次アヘン戦争の結果、東アジアの海上を行き交う英国船舶が増加し、英国は日本の港を確保する必要性に迫られた[110]。また、クリミア戦争において、英国は、ロシアの日本の港への避難を防ぐこと必要となり、日本の重要性が高まるなど、その開国が重要視されるようになった[111]。過去の英国の対日政策は、対中政策の延長と見なされ[112]、またロシアの動向に目を光らせていた英国は、伝統的に対露世界戦略の一環として、対日関係に神経を使っていた[113]。日英同盟の締結は、対ロシアを念頭に置いていたものであることはいうまでもない。
 今日においても、英国にとって、安全保障において直接的で最も深刻な脅威はロシアであり、日本にとって最大の脅威となる中国は、英国にとっては経済安全保障における脅威であり、システム上の競争相手である。
 現代のロシア軍は、核戦力に大きく依存しており、ロシアにとって、弾道ミサイルを発射する戦略ミサイル原子力潜水艦が活動するのに都合の良いバレンツ海とオホーツク海は戦略上極めて重要な海域となっている。オホーツク海に近接する日本とその北方領土は、ロシアの核戦略に対応するためにも、NATOや英国にとって配慮が必要な地域であり、日本のロシアへの対応は無視することができない関心事である。日本にとって中国に対するバランシング(台頭する勢力に対抗する)戦略を考慮すると、海洋戦略の面から英国を対中包囲網に引き込むこと、そして、大陸におけるバランスを考えるとロシアとの関係が重要になるが、日英と日露の関係は、このような伝統的な英露関係も考慮した駆け引きに留意すべきだろう。
 英国は世界の変化に適応する必要を感じており、それは何よりも世界の中心軸がインド太平洋地域に移行しつつあることを強く意識している。一方で日本は、そのインド太平洋においてより強大になり、自己中心的に多くの問題を引き起こす中国からの直接的な圧力に耐える必要がある。勘違いしてはならないが、中国がより強大化し、地域覇権国として横暴に振る舞ったとしても、英国や米国にとっては国家の存亡を左右する危機ではないということである。もし今後中国が世界のシステムと秩序を乱せば、英米も大いに苦しむことになるだろう。しかし、日本とは危機の次元が異なる。

4-4.グローバル・コモンズとアングロスフィアのコントロール

(1)AUKUSの衝撃

 AUKUSの創設については、オーストラリア国立大学の教授ジョン・ブラックスランド(John Blaxland)が「オーストラリアの地政学において、ここ数十年で最大の驚きである」と述べるほどであり[114]、世界的にも大きな衝撃を与えた。それほどまでに、この枠組み、特に原子力潜水艦の技術を英米がオーストラリアに供与するということが大きな意味をもっている。
 現代の戦争において、潜水艦、とりわけ原子力潜水艦の価値は非常に高まっている。英国の著名な歴史家であるジェレミー・ブラック(Jeremy Black)は、海軍力を現在強化している中国であるが、特に原子力潜水艦の運用や原子力推進に関する技術の経験においては著しく劣っており、中国海軍の大きな問題になることを指摘している[115]
 また、世界的な戦略研究家エドワード・ルトワック(Edward Luttwak)は、日本で出版された彼の著作『ラストエンペラー習近平』の中で、1982年のフォークランド紛争において、英国の原子力潜水艦たった1隻によってアルゼンチン海軍が敗れ去り、米海軍の原子力潜水艦が3隻あれば、台湾海峡すべての中国の艦艇を沈めることができると主張している[116]。さらに、ルトワック曰く、要するに、米海軍関連機関が行っているウォー・シミュレーションでは、米議会で多くの艦艇を購入させるために、非常に強力な米国の原子力潜水艦を想定から外しているという[117]。真偽のほどは定かではないが、これらの話から、現代戦における原子力潜水艦の重要性が察せられる。
 ジョンソン英首相がAUKUSによる原子力潜水艦技術の供与について、「これは世界で最も複雑で技術的要求の高いプロジェクトの一つである」「何十年も続く、最先端の技術を必要とするプロジェクトであり、60年以上前に英国海軍初の原子力潜水艦が就役して以来、英国が何世代にもわたって培ってきた専門知識が生かされることになる」と述べたように[118]、原子力潜水艦に関する技術と経験の価値は計り知れないものがあり、その供与の戦略的意義は非常に大きい。
 同じファイブ・アイズのカナダも、原子力潜水艦の保有に関心をもつ可能性がある[119]。そして、小中華思想に基づく華夷秩序において朝鮮より下位に位置する日本を、その強い「恨」の対象とする韓国が、原子力潜水艦の保有に強い願望を抱いている[120]。安全保障環境やグローバルな影響力を考えれば、日本もこの問題に対しては無関心ではいられず、原子力潜水艦の保有に関して積極的に議論していくべきだろう。

(2)二重のクワッド

 英米系地政学の基盤を構築した一人であるニコラス・スパイクマン(Nicholas Spykman)は、米国にとってのユーラシア大陸の大陸国家の台頭とそれに伴う脅威を考慮して、大陸に面するオフショア・アイランドである英国や日本と米国が連携して世界の秩序を形成することを主張した[121]。現在このスパイクマンの主張と似た状況が徐々に具現化しつつある。
 日本とオーストラリアは、東アジアと太平洋に英国を引き込むという重要な役割を担っており、たとえば、日本はCPTPP、オーストラリアはAUKUSを通じて英国をより深くこの地域に関与させている。英国のような先進的な民主主義の大国がインド太平洋や東アジアに関与することは日本としては心強く、この重要な地域に日本のような法治が行き届いた経済大国が経済連携協定や国際安全保障協力のための橋渡し役として存在することは英国にとって大きい。英国との密接な関係の構築は、今後さらにグローバル化する世界、不透明な国際安全保障においても優先順位が高くなるだろう。
 日本が参加している国際安全保障協力の枠組みとして、既存の南シナ海を囲む日米豪印が形成するクワッドが存在するが、筆者は、『海洋安全保障情報特報』の拙稿において、今後形成していくべき枠組みとして、ユーラシア大陸とアフリカ大陸を合わせた「世界島」[122]を囲む日米英印によるクワッドを提唱し、この二つのクワッドを合わせたものを「二重のクワッド」とした[123]。この二重のクワッドの目標はグローバル・コモンズのコントロールであるが、最終的には世界島をコントロールすることが目標となる。

(筆者作成)

 このような二重のクワッドの枠組みをさらに整理すると、現状としては、日米英の潜在的なオフショア・バランサー3カ国、日米英印によるグローバルなクワッド、日米豪印によるインド太平洋のクワッド、豪英米によるAUKUS、非白人・非キリスト教圏による日印の連携、西太平洋に位置する日豪の連携、ユーラシア大陸を挟んだオフショア・アイランド同士である日英の連携、そして日米同盟などと分けて考えることが可能である。これらのそれぞれの特性を理解して大戦略(grand strategy)を策定していくことが、日本の戦略的方向性として考えられるだろう。
 これらの枠組みに伴う問題として常に考えられるのは、戦略的自律性を掲げるインドがこのようなクワッドに積極的に関与するかということである。しかし、そのようなインドが、クワッドのメンバーとして前向きな姿勢を見せることは矛盾しない。なぜならば、クワッドの主目的が、排他的な勢力から自国と「自由で開かれた」グローバル・コモンズを守ることだとするならば、それこそが、インドの戦略的自律性を保証することにつながるからである[124]。それを多くのインド人が理解する必要がある。そして、メンバーのバランスを考えた場合、非アングロサクソン、非白人、非キリスト教圏であるインドを引き込んでいくことは、日本にとって意義深い。
 近年、米国によるオフショア・バランシング的な撤退戦略、孤立主義的な大戦略が注目を集めているが、一先ず現在の米国の戦略姿勢は、中国と対峙する流れとなっている。グローバル・コモンズのコントロールについて主導権を握る米英をはじめとしたアングロサクソン国家を如何に日本の意に沿うようにコントロールしていくかが、日本の外交戦略の鍵といえるだろう。グローバル・コモンズのコントロールこそがアングロスフィアが築き上げた世界的な地位の基盤となっており、日本がそれを支援することがお互いの国益にかなうこと、一方で日本は覇権的な国家となる意志はないが、ストロング・ジャパンこそがお互いの国益にかなうことを、彼らに理解させる必要がある。

(3)最大の問題である内的バランシング

 日本政府が、米トランプ政権を東アジアに繋ぎとめるよう尽力し、そして、大陸と直接的に対峙するオフショア・アイランドである日本が担うべき役割であろう、クワッドのような戦略的な枠組みを形成するために奔走したことは、中国の膨張主義に対する「外的バランシング」(external balancing、他国と同盟・コアリションを形成しそれを頼りとする)の実行として意義は大きい。オフショア・アイランドである英国と日本は、ユーラシア大陸における潜在的覇権国家の台頭と、それによるグローバル・コモンズの秩序に対する浸食に直面した場合、西半球に位置する超大国米国を、ユーラシア大陸とグローバル・コモンズのコントロールへ如何に関与させていくかについて知恵を絞ることになる。
 一方で日本では、最も重要な、中国に対する「内的バランシング」(internal balancing、自国の能力を高めそれに頼る)が遅々として進んでいない。国力の根源たる経済の成長を重視する政策の実行、自衛隊を国力と安全保障環境に見合った規模と能力にするための増強、そして、日本国憲法を現実の世界やそれに対応する国家のあり方を記したものへと改正することが不可欠である。クワッドの中でも最大の当事国である日本がそれを怠れば、外的バランシングに尽力しても、他国に対して何の説得力ももたない。
 日本の岸田政権には、日本人が歴史的な分岐点に立っていることを考慮したうえで、過去の経験から「何が間違っていたのか」「誰が信用できるのか」を学び、未来のための政治を大胆に追求していくことを期待したい。

※本稿は筆者の個人的見解である。

[1] U.K., Foreign Affairs Committee, Global Britain, Sixth Report of Session 2017–19, HC 780, 12 March 2018, p. 3,
https://publications.parliament.uk/pa/cm201719/cmselect/cmfaff/780/780.pdf.

[2] U.K. Prime Minister Theresa May, “Britain after Brexit. A vision of a Global Britain. May’s Conference speech: full text,” Conservativehome, October 2, 2016, https://www.conservativehome.com/parliament/2016/10/britain-after-brexit-a-vision-of-a-global-britain-theresa-mays-conservative-conference-speech-full-text.html.

[3] Global Britain, p.19.

[4] U.K. Parliament, Global Britain, CDP 002 (2021), 11 January 2021, p. 2,
https://commonslibrary.parliament.uk/research-briefings/cdp-2021-0002/.

[5] U.K. Government, Global Britain in a competitive age: The Integrated Review of Security, Defence, Development and Foreign Policy, March 2021, p. 14,
https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/975077/Global_Britain_in_a_Competitive_Age-_the_Integrated_Review_of_Security__Defence__Development_and_Foreign_Policy.pdf.

[6] Ibid.

[7] Ibid., p. 14.

[8] Ibid., p. 6.

[9] Ibid., p. 18.

[10] Ibid., p. 61.

[11] Ibid., pp. 62-63.

[12] Ibid., p. 26.

[13] Ibid.

[14] Ibid., p. 17.

[15] Ibid., p. 14.

[16] May, “Britain after Brexit. A vision of a Global Britain. May’s Conference speech: full text.”

[17] 関根大助「シーパワーの二面性から考える中国と日本の海洋戦略の問題:現実主義と理想主義のバランス」『海洋安全保障情報特報』2020年3月20日、15-16頁、
https://www.spf.org/oceans/global-data/from-the-oceans-tokuho_20200330.pdf

[18] Commonwealth of Parliamentary Association UK, “UK Overseas Territories,”
https://www.uk-cpa.org/where-we-work/uk-overseas-territories/.

[19] Ibid.

[20] UK Overseas Territories Conservation Forum, “British Antarctic Territory,”
https://www.ukotcf.org.uk/southern-oceans/british-antarctic-territory/.

[21] Falkland Islands Development Corporation, “Facts on the Falkland Islands,”
http://www.fidc.co.fk/about-us/facts-on-the-falkland-islands.

[22] CIA (Central Intelligence Agency), “The World Fact Book: South Georgia and South Sandwich Islands,” https://www.cia.gov/the-world-factbook/countries/south-georgia-and-south-sandwich-islands/.

[23] U.K. Parliament, “The UK Overseas Territories: Climate change and biodiversity,”
https://commonslibrary.parliament.uk/research-briefings/cbp-9290/.

[24] Falkland Islands Development Corporation, “Facts on the Falkland Islands.”

[25] Falklands Islands Government, “Our Home,” https://www.falklands.gov.fk/our-home.

[26] Falklands Islands Government, “Our History,” https://www.falklands.gov.fk/our-history.

[27] Distance Calculator, “Distance between Falkland Islands and South Georgia and the South Sandwich Islands Countries,” https://distancecalculator.globefeed.com/Distance_Between_Countries_Result.asp?fromplace=Falkland%20Islands&toplace=South%20Georgia%20and%20the%20South%20Sandwich%20Islands.

[28] Republic of Mauritius, “About Chagos Archipelago,” https://govmu.org/EN/Pages/AboutChagos.aspx.

[29] Britanica, “British Indian Ocean Territory,” https://www.britannica.com/place/British-Indian-Ocean-Territory.

[30] WorldData.Info, “Pitcairn Islands,” https://www.worlddata.info/oceania/pitcairn-islands/index.php.

[31] The Government of the Pitcairn Islands, http://pitcairn.pn/index.php.

[32] The Commonwealth, “Our history,” https://thecommonwealth.org/about-us/history.

[33] BBC News, “Commonwealth: Seven things you might not know,” 30 November 2021,
https://www.bbc.com/news/uk-43715079.

[34] Global Britain in a competitive age, p. 54.

[35] The Commonwealth, “About us,” https://thecommonwealth.org/about-us.

[36] The Commonwealth, “Our history.”

[37] BBC News, “Profile: The Commonwealth,” 1 February 2012, http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/europe/country_profiles/1554175.stm.

[38] Ibid.

[39] Ibid.

[40] Ibid.

[41] Ibid.

[42] Ibid.

[43] Ibid.

[44] Matthew Ward, “Statistics on UK trade with the Commonwealth,” U.K. Parliament, 21 December 2021,
https://commonslibrary.parliament.uk/research-briefings/cbp-8282/.

[45] The Commonwealth, Energising Commonwealth Trade in a Digital World: Paths to Recovery Post-COVID, Commonwealth Trade Review 2021, 13 July 2021 p. 27, https://trade-review.thecommonwealth.org/assets/pdf/ctr-2021.pdf.

[46] Ibid., p. 22.

[47] The Commonwealth, “US$345 billion loss in trade for Commonwealth countries due to pandemic,” 13 July 2021,
https://thecommonwealth.org/media/news/us345-billion-loss-trade-commonwealth-countries-due-pandemic.

[48] 日本クリケット協会「クリケットとは」、
https://cricket.or.jp/about-cricket#:~:text=%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%AF%E3%80%81%E8%8B%B1%E5%9B%BD%E3%80%81%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%80%81,30%E5%84%84%E5%86%86%E3%82%92%E8%B6%85%E3%81%88%E3%82%8B%E3%80%82

[49] Forbes, “The World's Highest-Paid Athletes: #66, Virat Kohli,”
https://www.forbes.com/profile/virat-kohli/?list=athletes&sh=3622ba4d4cc9.

[50] BBC Radio 5 Live, “Nine killer facts about the 2014 Commonwealth Games,”
https://www.bbc.co.uk/programmes/articles/5R2F4Zmzw317d3hWhVxPvFc/nine-killer-facts-about-the-2014-commonwealth-games.

[51] Daily Maverick, “Declassified UK,” https://www.dailymaverick.co.za/about-us/.

[52] Phill Miller, “Military’s Overseas Base Network Involves 145 Site in 42 Countries,” Declassified UK, 20 November 2020, https://declassifieduk.org/revealed-the-uk-militarys-overseas-base-network-involves-145-sites-in-42-countries/.

[53] Ibid.

[54] The British Army, “Deployments Iraq,” https://www.army.mod.uk/deployments/iraq/.

[55] 王室属領は英国国王に属するが、英国の一部ではなく、自治権を有する。

[56] Cayman Islands Government, “The Cayman Islands Regiment,”
https://www.exploregov.ky/ciregiment.

[57] Global Britain in a competitive age, p. 49.

[58] Ibid.

[59] Ibid.

[60] Ibid., pp. 50-51.

[61] Ibid., p. 24.

[62] Ibid.

[63] Ibid., p. 26.

[64] Ibid., pp. 62-63.

[65] Ibid., p. 66.

[66] Ibid.

[67] Ibid.

[68] Ibid.

[69] Ibid.

[70] Ibid., p. 22.

[71] Ibid., p. 66.

[72] Ibid., p. 54.

[73] Ibid.

[74] U.K., Department for International Trade, “An update on the UK’s position on accession to the Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership (CPTPP),” 17 June 2020,
https://www.gov.uk/government/publications/uk-approach-to-joining-the-cptpp-trade-agreement/an-update-on-the-uks-position-on-accession-to-the-comprehensive-and-progressive-agreement-for-trans-pacific-partnership-cptpp.

[75] The Rt Hon Elizabeth Truss MP, “Global Britain and the CPTPP,” 3 July 2020,
https://www.gov.uk/government/speeches/global-britain-and-the-cptpp.

[76] Ibid.

[77] Ibid.

[78] British High Commission Singapore, “UK Carrier Strike Group’s return to Singapore off to flying start with Air Force and Navy interactions,” 10 October 2021,
https://www.gov.uk/government/news/uk-carrier-strike-groups-return-to-singapore-off-to-flying-start-with-air-force-and-navy-interactions.

[79] Ibid.

[80] U.K., Ministry of Defence, “HMS Queen Elizabeth returns home as historic global deployment comes to an end,” 9 December 2021, https://www.gov.uk/government/news/hms-queen-elizabeth-returns-home-as-historic-global-deployment-comes-to-an-end.

[81] U.K., Ministry of Defence, “Carrier Strike Group Looks Forward to a Busy Autumn in Indo-Pacific and Middle East,” 5 October 2021, https://www.gov.uk/government/news/carrier-strike-group-looks-forward-to-a-busy-autumn-in-indo-pacific-and-middle-east.

[82] British High Commission Singapore, “UK Carrier Strike Group’s return to Singapore off to flying start with Air Force and Navy interactions.”

[83] Ibid.

[84] U.K., Ministry of Defence, “Carrier Strike Group Looks Forward to a Busy Autumn in Indo-Pacific and Middle East.”

[85] Yusuke Nakajima, “U.K. navy to station new vessels in Indo-Pacific for 5 years,” Nikkei Asia, September 16, 2021, https://asia.nikkei.com/Editor-s-Picks/Interview/U.K.-navy-to-station-new-vessels-in-Indo-Pacific-for-5-years.

[86] Ibid.

[87] U.K., Ministry of Defence, “Carrier Strike Group Looks Forward to a Busy Autumn in Indo-Pacific and Middle East.”

[88] Nakajima, “U.K. navy to station new vessels in Indo-Pacific for 5 years.”

[89] Ibid.

[90] Ibid.

[91] Ibid.

[92] Ibid.

[93] U.K. Government, “UK, US AND Australia launch new security partnership,” 15 September 2021, https://www.gov.uk/government/news/uk-us-and-australia-launch-new-security-partnership.

[94] Jamie Ensor and Emma Cropper, “New Australia, United Kingdom, United States defence pact ‘sidelines New Zealand’, focus on nuclear capabilities,” Newshub, 16 September 2021, https://www.newshub.co.nz/home/world/2021/09/new-australia-united-kingdom-united-states-defence-pact-sidelines-new-zealand-focus-on-nuclear-capabilities.html.

[95] Alexander Ward and Paul Mcleary, “Biden announces joint deal with U.K. and Australia to counter China,” Politico, 15 September 2021, https://www.politico.com/news/2021/09/15/biden-deal-uk-australia-defense-tech-sharing-511877.

[96] Andrew Greene, Andrew Probyn and Stephen Dziedzic, “Australia to get nuclear-powered submarines, will scrap $90b program to build French-designed subs,” ABC News, 15 September, 2021,
https://www.abc.net.au/news/2021-09-15/allied-naval-united-states-biden-australia-nuclear-submarines/100465628.

[97] Jenny Leonard「豪州の原潜建造支援へ、米英と新たな安保枠組み―フランスは反発」『Bloomberg』2021年9月16日、
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-09-16/QZHUK9DWRGG201

[98] Ward and Mcleary, “Biden announces joint deal with U.K. and Australia to counter China.”

[99] BBC News, “Aukus: China denounces US-UK-Australia pact as irresponsible,” 17 September 2021, https://www.bbc.com/news/world-58582573.

[100] Tess McClure, “Aukus submarines banned from New Zealand as pact exposes divide with western allies,” The Guardian, 16 September, 2021, https://www.theguardian.com/world/2021/sep/16/aukus-submarines-banned-as-pact-exposes-divide-between-new-zealand-and-western-allies.

[101] “UK, US AND Australia launch new security partnership.”

[102] Ward and Mcleary, “Biden announces joint deal with U.K. and Australia to counter China.”

[103] Ibid.

[104] Ibid.

[105] McClure, “Aukus submarines banned from New Zealand as pact exposes divide with western allies.”

[106] Ibid.

[107] Ibid.

[108] Ibid.

[109] 「産経抄:英国の脱欧入亜を歓迎する」『産経新聞』1月5日、https://www.sankei.com/article/20180105-6SXUX6B5IFNQZBGZQITL32LEU4/

[110] J.Eホア「不平等条約の時代:一八五八-一八九九年の日英関係」熱田見子訳『日英交流史 政治・外交Ⅰ』細谷千博、イアン・ニッシュ監修、木畑洋一、イアン・ニッシュ、細谷千博、田中孝彦編、東京出版会、2000年、123頁。

[111] 同上。

[112] 同上、124頁。

[113] 井上勇一「不平等条約から同盟へ:一八六七-一九〇二年の日英関係」『日英交流史 政治・外交Ⅰ』153頁。

[114] Leonard「豪州の原潜建造支援へ、米英と新たな安保枠組み―フランスは反発」。

[115] ジェレミー・ブラック『海戦の世界史:技術・資源・地政学からみる戦争と戦略』矢吹啓訳、中央公論新社、2019年、342-343頁。

[116] エドワード・ルトワック『ラストエンペラー習近平』奥山真司訳、文春新書、2021年、62頁。

[117] 同上。

[118] Samantha Maiden, “Australia confirms landmark nuclear submarine deal and it’s ‘China’s worst nightmare,’” news.com.au, September 16, 2021, https://www.news.com.au/technology/innovation/military/federal-ministers-fly-to-canberra-amid-big-us-australia-news-announcement/news-story/72b68a5756b0acb81845137c8157951b.

[119] Robert Farley, “Australia’s Nuclear Submarine Deal: Could More Nations Go SSN?,” 19FortyFive, September 22,2021,
https://www.19fortyfive.com/2021/09/australias-nuclear-submarine-deal-could-more-nations-go-ssn/.

[120] Jihoon Yu and Erik French, “The US Should Support South Korea’s Nuclear Submarine Aspirations,” The Diplomat, September 20, 2021,
https://thediplomat.com/2021/09/the-us-should-support-south-koreas-nuclear-submarine-aspirations/

[121] Nicholas John Spykman, America’s Strategy in World Politics: The United States and the Balance of Power, Harcourt, Brace and Company, 1942, pp. 459-460.

[122] 「現代地政学の父」といわれるハルフォード・マッキンダー(Halford Mackinder)が生み出したユーラシア大陸とアフリカ大陸を合わせて一つの島とみな古典地政学的概念。詳細については、次の文献を参照: Halford J. Mackinder, Democratic Ideals and Reality, W. W. Norton and Company, 1962 (originally published by Holt, Rinehart and Winston in 1942).

[123] 関根「シーパワーの二面性から考える中国と日本の海洋戦略の問題」13-17頁。

[124] See, for example, Shashank Sharma, “Malabar Joint Naval Exercise – A Viable Deterrent of Quad in the Indo Pacific?,” Vivekananda International Foundation, October 15 , 2021,
https://www.vifindia.org/article/2021/october/15/malabar-%20joint-naval-exercise-a-viable-deterren-of-qua-%20in-the-indo-pacific.