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2022.11.16

【海洋教育見聞録】長野県松本県ヶ丘高等学校

松本市アルプス公園から望む北アルプス
[ 2022.9.30撮影 ]

 雲ひとつない秋空の朝、松本駅前でレンタル自転車にまたがった。電動とはいえ、コロナ禍で極限まで落ち込んだ身体にはなかなかキツい。目指すは、長野県松本県ヶ丘高等学校(2022年度 単元開発部門 採択校)だ。途中にある「あがたの森公園」には、重要文化財である「旧制松本高等学校校舎」などが立ち並ぶ。大正8年に創立開校された本館と講堂は、令和4年のいまなお、その存在感を誇っている。その歴史の森を抜けた先で、再び木々に包まれ佇む松本県ヶ丘高校の校舎がみえてきた。いたるところに湧き水や水路があり水の豊かな町ではあるが、遥かに連なる北アルプスと美ヶ原を望む岳都松本でどのような海洋教育が行われているのだろうか。学校長の金井繁昭さんは、長野県民は「海へのあこがれ」を抱いていると語る。それがどのような形で実践につながっているのだろう。わくわくしながら担当教諭である宮下達郎さん、実習教員の森田純子さんに話を伺った。

長野県松本県ヶ丘高等学校
[ 2022.9.30撮影 ]

 松本県ヶ丘高校には普通科と並び「探究科」という特色ある学科が存在する。今回伺った海洋教育の取り組みは、この探究科の学校設定科目、その名も「探究」で2年前から行われている。金沢大学 臨海実験施設 施設長 教授の鈴木信雄さん、能登里海研究所の浦田慎さんの多大なる協力のもと、能登で2泊3日の臨海実習を実施しているそうだ。生物の採集から、実験、まとめ、発表までを行うという卒論提出直前の大学生のように非常にハードなものだが、生徒たちは生き生きと取り組み、大学の教員も評価するような素晴らしい発表を行った。2021年度は探究科の生徒のうち16名が、2022年度は39名が現地での濃厚な時間を過ごした。また、高校に残った生徒も、能登より取り寄せた生物を題材に同日程で探究活動を行い、オンラインで現地と情報共有しながら発表にまでまとめ上げた。

課題探求発表会の様子
[ 2022.11.13撮影 ]

 特に優秀な発表については、中学生を対象とした学校説明会でもプレゼンを行った。先輩たちのプレゼンを見て松本県ヶ丘高校に進学し、自分も同様に臨海実習をしたいと申し出る生徒も少なくない。さらには実習を経験して金沢大学への進学を目標に決めた生徒もいるという。海洋生物について学ぶことがゴールではなく、さまざまな専門家に出会い、海へ直接足を運び、同志とともに切磋琢磨しながら昼夜学んでいく、その学びの過程自体が、生徒自身の財産となっていくだろう。

 帰り際、すれ違った生徒の誰かが能登に行ったかもしれない、そう思うだけでも心があたたかくなった。「探究を深めるにあたって海はとても魅力的なテーマです」と宮下さんは語る。生徒たちは探究的な学びを通して、山から川、海、そして世界へと漕ぎ出していた。[嵩倉美帆・赤見朋晃(海洋教育パイオニアスクールプログラム事務局)]

宮下 達郎 教諭と
生徒が作成した課題探求発表会ポスター
[ 2022.11.13撮影 ]


【長野県松本県ヶ丘高等学校の活動】
2022年度 単元開発部門「”海なし県”信州の高校生が学ぶ海の探究 ~能登と信州をオンラインで結び、遠隔地でのリアルタイムで双方向的な新しい海の探究を試みる~」

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