2010年
事業
南タイ・ピース・メディア・ネットワークの形成
事業実施者 | ディープ・サウス・ウォッチ(タイ) | 年数 | 1/3 |
形態 | 自主助成委託その他 | 事業費 | 6,144,250円 |
事業内容
南タイは、タイの多数派である仏教徒と「パッタニー・マレー」と呼ばれるイスラム教徒との民族対立を背景に現在も紛争下にある。同地域にはWeb siteやコミュニティ・ラジオなどオルタナティブ・メディアが多数存在し、紛争地の現状についての情報発信や異民族間の対話チャネルの提供などの活動を行っているが、メディア間の連携や報道の質的向上の必要性が指摘されている。 本件は、南タイで活動するこれらオルタナティブ・メディア28団体が初めて一堂に会して「ピース・メディア・ネットワーク」を形成し、紛争解決に向けたネットワーク全体としての戦略づくりや報道の質的向上を目指す活動を支援するものである。
実施計画
3年間継続事業の1年目にあたる本年度は、以下の活動を行う。
- 紛争解決に向けた戦略づくりのための定期会合の開催 2ヶ月に一度、ネットワークに参加する28のメディア関係者が集まり、南タイの紛争に関する情勢分析と紛争解決に向けた戦略作りのために議論を行う。
- メディア・デベロップメント・ファンド(小規模助成スキーム)の設置準備 ネットワークに参加する個々のメディアが行う能力強化活動を支援するための、少額助成スキームを2年目から開始することを目指し、ガイドラインの策定や審査・選考体制の検討などの設置準備を行う。
- フォト・ジャーナリスト事業 フェーズ1 (2010年7月-10月) 南タイのフォト・ジャーナリストのネットワーク形成と能力開発を目的に、(1)2回のワークショップ企画会議と、(2)6回のワークショップを開催し、(3)Web site(www.wewatch.in.th)の開発を行う。
- フォト・ジャーナリスト事業 フェーズ2 (2010年11月-2011年3月) 写真メディアの有効性について知識の深化とネットワーク参加者のさらなる能力強化を目指し、(1)2回の展覧会企画会議と、(2)南タイ、バンコク、南タイ以外の3つの地方で計7回の展覧会を開催し、また(3)Web siteの充実と写真集の刊行を行う。事業の成果物として、フォト・ジャーナリズムに関する2冊のマニュアルも出版する。
実施内容・事業成果

また、本年度の当初計画では、次年度より参加団体が実施する研修などへの支援を目的として、少額助成制度を立ち上げる準備作業を行う予定でした。しかし、準備委員会を設置し専門家の意見を聴取した結果、SPF助成金によって助成制度を作るのではなく、より長期的な活動基盤を整えることを目的に、複数の資金提供者を獲得し、財団の設立を目指すことになりました。これに伴い、本年度は当該組織のビジョンや活動計画をまとめました。
さらに、民族間対話のツールとして写真が有効であるという考えに基づき、現地のフォト・ジャーナリストのネットワーク形成を目的として、2回のワークショップと4回の展覧会を開催しました。このネットワークに参加した写真家達は洪水の際も活躍し、被災地の写真や映像資料をWeb siteやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通じて積極的に発信しました。タイの主要メディアがそれらを取り上げたことが契機となり、2010年11月末にパッタニー県内の被災地でタイPBSテレビと本ネットワークとの共同開催による政府首脳と住民との対話集会が開催されました。この他にも、南タイの人々の暮らしを総合的に伝えるため、写真や映像を掲載したWeb site (http://www.wewatch.in.th)が構築されました。