ニュース&トピックス

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2026.04.28

海洋教育研究会 シンポジウム2025
「海洋教育パイオニアスクールの歩みと、共創する海洋教育の未来」開催報告

開催日: 2026年2月23日(月・祝)
開催地: 公益財団法人笹川平和財団ビル11階 国際会議場
開催案内ページ: https://www.spf.org/pioneerschool/event/20260223_OceanEducationConference.html

2026年2月23日(月・祝)、笹川平和財団ビル国際会議場において「海洋教育研究会シンポジウム2025 海洋教育パイオニアスクールの歩みと、共創する海洋教育の未来」を開催いたしました。当日は全国各地から、海洋教育にかかわる関係者94名(登壇者含む)が一堂に会し、活発な意見交換がなされました。

■ 開会挨拶

冒頭、当研究所の牧野光琢所長より開会の挨拶を行いました。本シンポジウムが、海洋教育パイオニアスクールプログラムのこれまでの成果を共有するとともに、今後のさらなる発展に向けて多様な関係者が集う場である旨が語られ、連携強化と新たな可能性の創出への期待と、ご参加いただいた皆様への感謝を述べさせていただきました。

■ 基調講演

最初の基調講演では、ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)議長/東京大学総長特使の道田豊氏より、「魅力ある海を次世代に」と題したお話をいただきました。海洋物理学者としてのご見識を背景に、海の役割とその有限性、地球温暖化や海洋汚染などの課題について解説していただきました。また、黒潮や黒潮反流、漂着物などの具体的な事例を通じて、海洋循環や環境問題を理解する重要性が示されました。さらに、2021年から続く「国連海洋科学の10年」に触れ、次世代に「魅力ある海」を引き継ぐためには「教育」が不可欠であり、知識の提供と興味の喚起の双方が重要であると言及されました。最後に、波浪からの危険回避の事例を挙げ、一般市民への海洋リテラシー普及に向けて、専門家自らが海洋知識への入り口を広げていく姿勢の大切さが強調されました。

続いて、文部科学省初等中等教育局 主任視学官の田村学氏よりご講演いただきました。学習指導要領の変遷を踏まえ、総合的な学習の時間(探究)が発展してきた経緯を解説いただきました。「探究」は、課題設定から整理・分析・表現までのプロセスを通して学力向上にも寄与するものであり、海洋教育との親和性が非常に高いことが指摘されました。
その上で、海は分野横断的で総合的な学習に適しており、地域の特色を反映した学びが地方創生にもつながり得ると述べられました。また、現在進められている次期学習指導要領改訂に向けては、探究と情報活用能力の一体化が進む見通しが示され、これまでの海洋教育の成果を共有し、発展させていくことの重要性が改めて強調されました。

■ 海洋教育パイオニアスクールプログラムの歩みと展望

海洋教育パイオニアスクールプログラム事務局から、2016年の開始から10年間で、全国46都道府県・約20万人の児童生徒が参加した当プログラムの成果と今後の課題について報告を行いました。
地域展開部門では特例校や副読本の活用が進み、単元開発部門では多教科へと海の学びが拡大し、また、海洋ごみ調査などの環境教育への取り組みも増加傾向にあるといった成果や、その一方で、教員の異動や予算・教材の不足といった現場の課題も挙げられ、今後は実践事例の共有や教材整備等をさらに進め、継続的な海洋教育の土台を支援していく方針を示しました。

■ パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、道田豊氏、田村学氏、桝太一氏、牧野所長が登壇し、海洋科学の幅広さや教育との親和性、そして社会課題解決に向けた科学の役割について議論が交わされました。
メディアでの経験が豊富な桝氏からは、海洋科学はメディアでの扱いが難しい側面がある一方で、近年の気候変動や海洋ごみ問題により人々の「自分ごと化」が進み、伝えやすくなっているとの指摘がありました。教育現場の視点からは探究学習との相性の良さが強調され、海との接点や体験が確かな「経験」へと昇華される過程が、学びの価値を高めることにつながると示されました。
さらに、多様なレベルで海とかかわる教育や人材育成の重要性が指摘され、最終的には「信頼できる教材や情報の共有」と「地域やメディアとの連携」が、今後の海洋教育普及の鍵になるとして議論がまとめられました。

■ 午後:テーマ別セッション

午後のセッションでは、海洋教育パイオニアスクールプログラムのこれまでの歩みをふまえ、特に関心と課題が集中している4つのテーマを厳選し、分科会形式で議論を深めました。

テーマA「地域や社会全体で取り組む海洋教育のあり方―学びのフィールドを地域に拓く」
(登壇者:舩木美弘氏、高田浩二氏、佐事安弘氏、齋藤博伸氏)

社会教育施設、自治体、地域住民など、多様な主体の連携による「面」としての教育展開のあり方が議論されました。地域の海を入り口として、子どもたちが社会とのつながりを実感しながら学びを進めることの重要性が共有されました。

テーマB「教室から始める海の学び―理科教育、STEAM教育の観点から」
(登壇者:河瀬正和氏、市原盛雄氏、細谷夏実氏、日置光久氏)

当研究所が出版した海洋教育指導資料『理科の学びを海につなぐ』の内容もふまえ、理科教育やSTEAM教育を切り口とした議論が行われました。日々の生活や学校の教室において、身近なツールを用いて子どもたちの驚きや探究心を育むことの意義が語られました。

テーマC「海洋×キャリア―地域産業×探究でひらく進路の可能性」
(登壇者:小坂康之氏、宮下達郎氏、田仲永和氏、浦田慎氏)

海が身近にある地域かどうかにかかわらず、多様な探究のアプローチが実践ベースで提案されました。単なる職業としての進路選択にとどまらず、現実社会でどう生きていくかという「キャリアデザイン」にまで迫る海洋教育のあり方が議論されました。

テーマD「教育課程のどのように海の学びを組み込めばいいのか―カリキュラム・マネジメントの実装に向けて」
(登壇者:小野寺裕史氏、松岡珠美氏、淺野亮氏、鈴木大介氏、田村学氏)

「海を扱った教育」と「海を扱った探究」の議論の整理が行われ、海と探究学習との強い親和性が再確認されました。また、こうしたカリキュラム・マネジメントの実装において、本プログラムが10年間積み重ねてきた実践知に大きな価値があると言及されました。

■ 閉会挨拶

最後に、当財団の酒井常務理事が閉会の挨拶に立ち、シンポジウム全体のふりかえりを行いました。ご登壇いただいた皆様、ならびにご参加いただいた皆様へ深い感謝の意を表するとともに、10年間にわたる海洋教育パイオニアスクールプログラムの貴重な蓄積を未来へとつなぎ、無為にしない方向性で事業を推進していくことを約束し、盛会のうちに幕を閉じました。

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