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論考

No. 55
2020/3/30

【特別シリーズ】
台湾の選挙キャンペーン
米台比較の視座から(②中編)

渡辺将人
北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院准教授
ハーバード大学国際問題研究所客員研究員

(本稿は①前編からの続編)

洗練された台湾の選挙CM

 台湾は政党宣伝だけでなく候補者単位の選挙CMも盛んである。大規模集会の演出と同じで極めてアメリカ的だが、台湾の選挙CMの特徴は直前期の凄まじい量だ。YouTubeのプリロール広告は言うまでもなく、テレビもニュースチャンネルに限らずバラエティ番組の合間まで8割方が選挙CM一色に染まる。予備選挙期のアイオワ州、ニューハンプシャー州、本選直前のオハイオ州の集中豪雨的なCM量が少量に感じられるほどだ。選挙をモチーフにした一般商品CMまで流れる。選挙前に選挙に興味を持たない人などいないと言わんばかりに、市民の日常生活の目に入るもののすべてを選挙一色にしてしまう空気感は、アメリカ以上である。

 2020年1月、総統選の投票数日前から、一風変わった国民党の韓国瑜陣営のスポットCM1が流れ始めた。音楽とキャプションだけでナレーションなしのCM。まるで映画のトレイラー(予告編)のようなスタイリッシュな作品だった。

 只等那信號一亮(ひとたびその合図が光れば)
 只等那信號一響(ひとたびその合図が鳴れば)
 我們就展開閃電攻擊(我々は電光石火の攻撃を展開し)
 打一個轟轟烈烈的勝仗(勇壮な勝利を手にする)
   2020.01.09 凱達格蘭大道  百萬庶民站出来(1月9日凱達格蘭大道に百万の民よ集まれ!)

  キャプションは中華民国軍歌『夜襲』のサビである。退役軍人を支持基盤にする韓国瑜陣営は、軍人とその家族が涙腺を緩ませる戦闘の曲を用いた。リードしていた蔡英文陣営に逆転するには、爆発的「怒り」を焚き付ける必要があったからだ。投票前々日に「総統府包囲網」集会を企画し、その予告自体をCMにした。

 

過去の韓國瑜集会の群集映像を効果的に用いて
総統府包囲集会を告知(国民党CM、YouTubeより)

 選挙広告の長い歴史を持つアメリカで経験的に証明されているのは、一般市民の支持者が一番効果的な素材だ、という法則だ。集会が次の集会のCMの素材になるサイクルだ。パンフレットに載せるスチール写真でも、CMの動画でも何でもそうだが、俳優ではなく一般の支持者の方がよい。興奮している人、目に涙を浮かべる人、候補者に握手を求める人。支持者が集まる集会は「素材」の宝庫だ。「こんなに支持者に好かれています」というアピールになり、集団心理を掻き立てる。有権者の投票行動とは面白いもので、自分で決めているつもりで、「皆が強く支持しているらしい」という「ムーブメント」に無意識に影響を受ける。

 候補者が朝から晩まで延々と支持をお願いする電波ジャックよりも、握手責めでもみくちゃにされる候補に熱狂している本物の市民のリアルな写真1枚のほうが効果的だ。大衆的な人気感の図だけは、エキストラでは化けの皮が剥がれる。これは富裕な実業家候補にとって最大のネックである。ロス・ペローもマイケル・ブルームバーグも、CM枠の大量購入はできても、素材となる支持者の熱狂だけは買えなかった。報酬と引き換えにエキストラ動員をかけても、ソーシャルメディア時代にはその手の「やらせ」は参加者から情報が漏れる。トランプは実業家でもあるが、支持層の大衆的な熱狂は本物だったから、広告戦にも真実味が出た。

 その延長が台湾の「市民俳優」である。完全にプロの俳優に演じてもらうわけではなく、一般の支持者の中から人選し、香港デモへの感想、将来への不安と希望などを語ってもらう。それをうまく編集してCMにしていく。結局、本物の有権者が一番の「素材」というのはアメリカ流の発想だが、肖像権意識が比較的緩い台湾ではとりわけこれがやりやすかった。無論、アメリカでも政治集会に行ってしまったら、自分がその政党のパンフレットにでかでかと使われても文句は言えない、という暗黙の了解がある。候補者が手を伸ばしている先に握手を求めて群がる群衆1人1人すべてに、「パンフレットにあなたの顔を使用してもいいですか」と許可など取れない。

 動画時代になって以降、アメリカの集会の現場では「この集会は陣営が撮影しています。あなたの顔が広報物などに利用されることがあります」と警告が貼られるようになった。台湾はその許可もバイパスされていて、パンフレットどころか、突然テレビCMに自分が登場することもある。
 

日本も登場する物語性に富んだCM

 闘争心鼓舞系と韓国瑜市長の「庶民」アピールが多かった国民党CMに対して、民進党はストーリー性のある「泣かせる」CM作りに腕を振るった。蔡英文陣営で秀逸だった2作品を紹介したい(ナレーションは中国語だが繁体字字幕があるので、日本語の母語話者には雰囲気は理解しやすい)。

 1作目は「從世界愛上台灣」2  だ。「世界から(見直して改めて)台湾を好きになる」という意味だ。海外暮らしの若い世代の台湾人が故郷の魅力を再発見する、というこのCMには日本が登場する。大阪で働く台湾人女性と串カツ屋の店主の心温まる交流のシーンだ。以下は動画の1分38秒からのやり取りである。

「地元の人ですか?」
「いや、台湾人です」
「あ、そうですか」
<料理を差し出す大将>
「いや、前の震災のときにね、台湾の人によう助けてもらったんで」
「ありがとうございます」
「いやいや、こちらこそ」

  お店は阪急京都線の正雀駅南口にある実在の串カツの名店「正雀 串安」。出演は店主の黒田さん本人である。美味しそうな串カツが台湾全土に放送された。店主の人柄が滲むほっこりするCMだった。東日本大震災で台湾が行った支援の大きさを、日本を訪れた時に日本人から直接感謝されたことで初めて実感した、という台湾人は少なくない。

 ドイツ在住の芸術家の青年は台湾の民主化を実現した先人に敬意を示す。「創作者は自己に向き合う必要があり、国は歴史に向き合う必要がある。そうしてこそ前に進むことができる轉型正義(transitional justice)は台湾人の勇気だ」と語り、アウシュビッツで犠牲になったユダヤ人に花を手向ける。轉型正義(移行期正義)とは過去の権威主義体制の人権侵害を究明することで、蔡英文政権が白色テロ時代の真相究明に熱心な姿勢をCMにも滲ませた格好だ。

 香港デモの現実を撮り続けるカメラマンの青年は「いつかある日、台湾という国が1つの本当に独立した個体としてみなされることを心から願う」と呟き、「願 島嶼天光 照耀在這塊 土地上(島の空の光がこの土地を照らすのを祈る)」と願掛けのメッセージを香港の壁に貼る。安全、医療、自然など海外で台湾の価値を再発見する若者たちがオムニバス的に登場する。

香港デモをカメラで追う台湾の青年(左)
雨の日の香港デモの様子(右)
(民進党CM、YouTubeより)
 

 もう1つ紹介したいCMは、香港デモに特化した「大聲說話」3 (大声で話す)だ。台湾の平和な若者の日常シーンに「就在幾百公里外 數不清的青年每天被逮捕 被關押 被凌虐 被失蹤」(わずか数百キロところでは無数の若者が毎日、逮捕され、勾留され、虐げられ、失踪させられている)とナレーションが重なる。林鄭月娥行政長官、習近平国家主席、テッド・クルーズ上院議員、ペンス副大統領などが、テレビニュースの画面を通じて「出演」する。ペンス副大統領の「We’ve stood by Taiwan」(アメリカは台湾の味方だ)発言は、2019年10月のウィルソンセンター演説の一部だ。台湾の政党の広報担当は、常にアメリカの政治家の演説にアンテナを張り巡らしている。実際はこのあと「in defense of her hard-won freedoms(苦心の末に勝ち取った自由を護るため)」が続いていた。蔡英文総統が「自分の任期中は圧力には屈しない」と英語で世界に向けて語る。台湾の若者に「今ある自由」の価値と「護台(台湾を護る)」を促す強烈な直前プッシュだった。若者票向けCMの体裁をとりつつも、蔡英文陣営の対中方針のアピールでもあった。

ペンス副大統領と蔡英文総統の演説を報じるテレビ画面を
撮影する演出(民進党CM、YouTubeより)

 これら2つのCMには、台湾で選挙権のない香港関係者も揃って涙した。YouTube上で動画が公開され、「台湾からのエール」として香港人の間でも話題となった。かつては国内の地上派テレビでしか放送されなかった選挙CMが、動画共有サイトを通じて国際的に視聴可能になったことで生まれた、選挙運動の副次的効果と言える。

 台湾のCM動画はアメリカに学びつつ、コンテンツの凝り方では部分的に既に追い抜いている。アメリカのCMは「候補者生い立ちモノクロもの」「キャンペーン振り返りもの」などいくつかの類型に分かれるが、ある時期から奇抜な進化は見られなくなっている。

屋外広告とラッピングバス

 屋外広告はアメリカにも日本にもない台湾独特の選挙デコレーションだ。台湾の街角で候補者の顔や上半身をプリントした屋外広告を目にしたことがある方もいるはずだが、台湾では選挙後すぐに広告を剥がさないので、看板のように街の景色と化している。

 ところでアメリカには、キャンペーンで候補者の顔写真を用いる習慣がない。日本の選挙ポスターに相当するものがないのだ。あれだけ自己顕示する社会にしては不思議に見えるが、選挙広告はひたすら地味に候補者の名前だけ。「TRUMP」とか「OBAMA」とか名字がアルファベットで書かれただけの紙製のプラカードを用いる。「Pete」「Hillary」など、名字が難しかったり、他の有名な政治家と区別したりする場合はファーストネームを使う。「ヤードサイン」という名前の書かれた厚手の紙を庭の芝生に立てたり、壁に貼ったりする。アメリカに住んでいると地元議員の名前は知っているが、顔が分からないというケースが多い。日本は周知の通り、選挙規制が厳格で法定ビラには証紙が必要だし、ポスターを貼るベニヤ板の掲示板も規定で、顔のサイズと名前の書き方などデザインも概ね似通っている。

 台湾は、広告に関してはキャンペーン無法地帯の面目躍如だ。面積で勝負、数で勝負、インパクトで勝負。看板の位置や雰囲気、巨大さが、通常の商業的な看板と変わらない。横3メートル縦2メートル程度のものからより大きなものまで様々なバラエティがある。名前と候補者の割当番号が書かれているので、慣れると「政治家」と分かる。だが選挙が終わってもいつまでも貼られているので、非漢字圏の外国人は「この町のいたるところにあるあの人物は誰ですか?」とよく聞いている。最近の立法委員候補は若手でルックスもいい美男美女が多いので、本当に俳優に見えることもあり、何かの広告に見えるようだ。壁に貼られている広告の素材はビニールシートだ。手で触るとザラザラしている工事やテントに使う厚手の素材に写真がプリントされている。コンクリート壁から出ている釘に引っ掛けたり、針金でしばりつけたりしているだけで、取り外しも容易だ。

壁面の屋外広告
雑居ビルの側面にも垂れ幕のように貼られる
新北市板橋(筆者撮影)
 

 もう1つ台湾独特なのは、バスのラッピング広告だ。日本人の俳優も台湾で広告の「代言人」(イメージキャラクター)になる。最近だと、三菱重工空調の「阿部寛ラッピングバス」が昨年頭から台北市内を延々と快走している。これが選挙前になると半分以上が政党の候補者の顔になる。自分の顔がバスの側面になり、町中のあちこちを埋め尽くすのは、CMとも、固定した場所の屋外広告とも違う、皮膚感覚の「席巻感」がある。タイムズスクエアのネオン広告を数分間ジャックすることでも味わえない、看板を背負った鳥を町中に羽ばたかせたような、動きのある公共空間ジャックだ。それゆえ資金力と自己顕示欲のある候補者には魅力があるらしく、国民党の予備選直前は郭台銘のラッピングバスが台北を埋め尽くした。

 ただ、これは国民性もある。アメリカには向かない。意外にもアメリカは公共空間の党派化には慎重だ。公共交通機関を必要としている市民には、どの外見のバスに乗るか、という選択肢はない。好みの政治家のバスなら気分も昂揚するが、憎悪する政治家だと屈辱感もある。ラッピングバスは1人の政治家で当該の乗り物を「〜号」のようにしてしまう支配感が特徴だ。トランプの顔のバスには乗車拒否する左派もいるはずだ。反トランプのデモのあと、参加者が「トランプ号」に揺られて帰宅しなければいけない姿を想像すれば、このシュールさが分かるだろう。それを気にせずやっているのが台湾の面白さとも言えよう。

蔡英文総統と民進党立法委員候補を宣伝する
ラッピングバス(筆者撮影)

台湾独自の街宣車「パレード」

 「空中戦」のアメリカ化の一方、台湾土着のオリジナルの選挙運動も盛んだ。選挙直前、蔡英文総統は国会議員にあたる立法委員選挙の応援で各地に梃入れに入っていた。筆者も各地で両陣営を追いかけ、投票3日前の1月8日には台中で民進党の「掃街」に密着同行した。これは防弾ガラスを取り付けたジープやトラックに候補者が立ち乗りし、沿道に手を振りながら街中を低速走行するキャンペーンである。

 「出発を見送るポジションで撮影するか、トラックの荷台に乗るか、どちらか選んで」と民進党広報担当に促され、わけも分からぬまま「では、こちら」とトラックによじ登ると、台湾のテレビ局のクルーが荷台に引き上げてくれた。プレスの撮影トラックだった。この荷台から候補者の車をかぶりつきで駅伝のように撮影する。振り落とされないように鉄パイプの柵で囲われた荷台は、まるで立ち乗りジェットコースターのようだった。警備車両に先導された車列は選挙本部を出発するが、片方の車線を白バイが規制し、先頭車が「蔡英文総統が台中にやってきました!」とスピーカーを鳴らし続ける。ローラーで掃いていくかのように車列でパレードして回るので「掃街」(サオジェ)と呼ばれている。日本にもアメリカにもないキャンペーンだ。

 面白いのは市民の雰囲気がよく分かることだった。集会には何を言っても歓声を上げる支持者しかいないが、街全体に動員は仕込めない。1時間も走ると候補者はその地域で自分が好かれているのか嫌われているのか、知名度や支持の浸透度も分かる。「掃街」は皮膚感覚の支持率調査であり、人気や知名度のなさもリアルに突き刺さる。総理車列や大統領専用車で低速パレードしているようなもので、現職であれば「権力」を体感することができる瞬間でもある。日本の選挙カーと違って、マラソンのように沿道で「観戦」できるように事前にコースが告知される。

 大通りから路地裏のような細い街路にもぐいぐい入っていき、密集した商店街のご飯屋さんのおかみさんやお客さんが「選挙だ!」と言って飛び出してきては、飛び上がって手を振る。沿道で横断幕を掲げている人もいれば、ビルやアパートの窓という窓から顔をのぞかせる人もいる。

 「掃街」の聴衆映像だけを集めたCMもある。「團結台灣民主勝利」4は沿道で応援する人がCM映像になっており、「掃街」の熱狂が実によく分かる。演出なしの天然のエキストラ達だ。

「掃街」に声援を送る人々(左) (民進党CM「團結台灣民主勝利」、YouTube より)
沿道の支持者は横断幕やプラカードで「掃街」を盛り立てる(右)。台中市内(筆者撮影)

 台中は国民党と民進党の勢力が伯仲しているので、すべての人が好意的ではなく、ブーイングや嫌がらせのプラカードもあったし、腕を組んで睨みつけている人もいた。蔡英文はポーカーフェイスでやり過ごしていた。動員された地元党員団は交差点で小旗を振っている。カーブはプレスにとって候補者の車体をサイドから撮影できる貴重なポイントで、そこに集中的に支持者を集めて候補者とのふれ合いの図を撮らせる。プレスのトラックには陣営の広報カメラマンも同乗していて、沿道で絶叫し旗を振っている支持者を連写しまくる。車列すべてが陣営スタッフや警備車両に見えるのか、沿道の聴衆はプレスのトラックにも手を振ってくれる。蔡英文の隣に立つ立法委員候補は短時間停車で何回か入れ替わる。筆者は撮影隊のトラックを途中で降りるタイミングを失い、結局その日は蔡英文総統と台中を走り回ることになった。

 草の根街宣としては「地上戦」的でもあり、メディアを使って夜のニュースにさせ、沿道の支持者を広報物に転用できるので「空中戦」でもある。「地空折衷」の面白いキャンペーンだが、アメリカではこんなことをするのはセキリュリティ上難しい。台湾でも陳水扁が狙撃されたことがあったが、「掃街」だけは止めようとしない。台湾の選挙で最も重要なキャンペーンだからだ。

警備車両に先導される蔡英文総統のトラック(左上)
それをマラソン中継のように撮影する報道陣(下)
(筆者撮影)

 選挙戦大詰めでは、立法委員候補の応援に総統候補が梃入れの都市に適宜入るが、これが直前に集中投下的に可能なのは台湾のコンパクトな地理も関係している。投票前日、蔡英文は高雄で演説をしたその足で台北の総統府前に戻って、フィナーレの演説を行なった。アメリカでは飛行機でも東海岸から西海岸まで6時間は要する。1日で複数の州を回るのは大変なので直前は絞り込まないといけない。台湾では台北から南部の高雄まで高鐵(新幹線)でも1時間半で移動可能で、総統がヘリコプターを使えばあっという間に台北に戻れる。 

 ところで、アメリカでは盛んな支持者による戸別訪問が台湾にはない。「関係ない他人が家に突然訪ねてきても警戒されるだけ」と政党関係者は口々に言う。それよりもコミュニティの濃密な人間関係の中で票をとりまとめるほうが効果的であるとされ、ここは日本の風土に近い。無論、日本は規制で禁じられているので、解禁した際の効果は未知数ではある。

 だが、台湾にも候補者によるパフォーマンス的な有権者接触はある。道教の廟などで線香を両手で掲げて参拝するのも政治家の重要な地元アピールだが、今回の選挙ではゴミトラックを追いかけて10キロ走るキャンペーンをした候補者まで現れた。台湾には街路にごみ集積所はない。ゴミ収集車が毎日音楽を鳴らしてやってくる。その音が聞こえたら表に飛び出して、トラックにゴミを渡す。ゴミのトラックを追いかけて走っていけば、その先にはゴミ出しの地元民が必ず集まっていて、ソーシャルメディアで話題作りになるのだ。

 アメリカで盛んな電話センターからの電話作戦(フォーンバンク)は台湾にも存在する。しかし、ボランティアの人力の電話ではなく、録音音声のロボコールだけに簡素化されている点がアメリカと違う。アメリカでは戸別訪問のように人間が電話をかけることに効果があると考えられていて、近年導入されているテキストメッセージの「チャット説得」もボランティアによる人力で、AIで自動化していない。台湾では候補者の声で電話がかかってくる。演説がはじまるのではなく、冒頭は本当に電話がかかってきた演出で「もしもし、郭台銘ですが」と親しみを持たせる。だが、この手の工夫が新鮮なのは最初だけで、何度もかかってくるとロボコールは飽きられるので、淘汰されるかもしれない。いずれにせよ、台湾の選挙現場は、アメリカで重視されている、見ず知らずの他人による接触つまり支持者による草の根的な地上戦に力点を置いていない。アメリカ的な選挙戦の模倣は主として空中戦に集中している。地上戦の効果はとりわけ文化に規定されるので、正しい取捨選択かもしれない。

③後編へ続く。

1 韓國瑜官方頻道「百萬庶民站出來 凱道勝選晚會」2020年1月6日、<https://www.youtube.com/watch?v=jNKciOoGBBI> (2020年3月19日参照)

2 蔡英文「從世界愛上台灣,明年1月11日,歡迎回家」2019年12月2日、<https://www.youtube.com/watch?v=cBL1rktsI_E> (2020年3月19日参照)

3 蔡英文「《大聲說話》── 2020小英總統競選CF」2020年1月5日、<https://www.youtube.com/watch?v=jqtpKLSukwk> (2020年3月19日参照)

蔡英文「團結台灣民主勝利」2020年1月8日、<https://www.youtube.com/watch?v=gxsU4wo10wU >(2020年3月29日参照) 

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