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一般事業 平和と安全への努力~安全保障・平和構築

2012年
事業

南タイ紛争転換のための環境整備

事業実施者 笹川平和財団
プラジャディポック王立研究所(タイ)
年数 単年度事業
形態 自主助成委託その他 事業費 7,134,860円
事業概要
マレーシアと国境を接する南タイ3県は、タイ国民の9割以上を占める多数派仏教徒と、南タイ3県の多数派であるマレー系イスラム教徒との間の民族対立を背景に、現在も紛争下にあります。かつてこの地域に存在したイスラム王国が、20世紀初頭にタイの領土に編入された歴史と深く関わるこの紛争は、タイ政府からの分離独立を目指すマレー系イスラム教徒の抵抗運動という性格を持ちますが、2004年以降から特に現地情勢が悪化し、それ以降市民を中心に仏教徒・イスラム教徒を合わせて5,300人以上が暴力の犠牲となっています。
本事業は、タイ議会のシンクタンクであるプラジャディポック王立研究所が、タイ政府関係者、南タイの指導者、市民社会と連携を取りながら、関係者との非公開対話を積み重ね、また紛争の根本原因に取り組む政策的な可能性について有識者の議論の場を設置し、紛争転換(紛争の構造的要因に目を向け現実的な代替案や新たな解決の道筋を示す)へ向けた環境整備を目指します。
実施計画
単年度事業である本事業では、以下の活動を実施します。
  • 関係者による非公式対話の実施(年間計25回程度) 
    • 元首相等有識者、議員、国軍幹部、政府機関高官、及び南タイ有識者、イスラム教・仏教指導者、コミュニティ指導者、ビジネスコミュニティなどが参加する非公式会議を実施します。
    • 国軍、及び南タイ武装派グループに近い関係者と接触し、タイ国内外で非公式対話を行います。
    • 国軍、タイ政治家、宗教指導者等各ステークホルダー内部の非公式会議を実施します。
  • 公開セミナーの開催(年間計2回程度)
    政治制度、歴史的和解、言語、教育など紛争転換において鍵となるテーマに関し公開フォーラムを開催し、これら政策課題に関する有識者間の議論の場を設置します。
  • 平和構築関係者ネットワーク形成(毎月1回)
    南タイの紛争解決・平和構築に従事するネットワーク、団体間の協力体制を構築するため、毎月1回定期的に会合を開催します。
  • 政策提言書の作成
    非公開対話、セミナーの成果をもとに紛争転換に向けた政策ペーパーをまとめます。
実施内容
  • 関係者による非公式対話の実施
    • タイ国軍関係者、安全保障委員会(NSC)関係者、南部国境県行政センター(SBPAC)所長、野党政治家などとの非公式協議を計8回主にバンコクにて開催し、南タイ紛争転換へ向けた方針につき意見交換を行いました。
    • マレー系武装派関係者とタイ政府関係者との非公式対話をシンガポールなどの第3国で計11回開催しました。
    • 担当研究員と協力者のシンガポール出張に合わせ、マレー系武装派側とタイ政府側の両者を同地に招き、和平へのロードマップなどにつき協議を行いました。
  • 公開セミナーの開催
    2012年5月にバンコクと南タイの歴史学者、有識者計24名を集め、タマサート大学にてパッタニー(南タイ)の歴史をテーマとするセミナーを開催し、歴史の見方をめぐりバンコクの学者と南タイの有識者が率直な議論を交わしました。
  • 平和構築関係者ネットワーク形成
    南タイに関わるタイ政府機関間の会議を計3回、バンコクと南タイの女性グループの会議を計2回、平和構築NGO関係者会議を1回、南タイに関心を持つメディア関係者間の会議を1回、主にバンコクで開催しました。
  • 政策提言書の作成
    上記の活動を元に、紛争転換へ向けた政策ペーパーを作成しました。

2012年5月 公開セミナーの様子

2012年5月 公開セミナーの様子

事業成果
本年度の成果として第一に、実施団体が組織するタイ政府側のワーキング・チームが、マレー系武装派と複数のチャネルを築き上げたことが挙げられます。
また、本事業を通じ実施団体が国軍情報機関(ISOC)、警察情報機関(NIA)、SBPAC、NSCなどとの会議を定例的に行っていたところ、タイ政府が2012年末から和平協議の実施に積極的になり、このための政府関係機関連絡センターを設立しました。本事業の活動が契機となって急速にタイ政府機関間の協力体制確立が進んだことも注目に値します。

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