青森 私立 単元開発 2025年度
青森山田中学高等学校
陸奥湾のイルカ、キタムラサキウニを素材として『あおもり学』を地域の人たちと共に主体的に学び、発信する教材開発
実施単元
1. 生物の種類の多様性と進化[3年生](理科)
2. 生物と環境[3年生](理科)
3. 未利用魚からSDGsについて考えよう(理科探究学習)[2年生](理科)
取り組みの概要
1.陸奥湾のカマイルカウオッチングのフイールドワーク(生物の多様性と進化)
【実践】生物の多様性について脊椎動物の特徴をもとにそれぞれの種についての特徴について調べ学習を行い魚類としてマグロ、キツネメバル。両生類としてアカハライモリ。爬虫類ではカナヘビ。鳥類ではセグロカモメ。哺乳類としてカマイルカなど理科室で飼育しているもの身近に観察ができるものを選びカマイルカ以外は実際に観察を行ってそれぞれの特徴を話し合う活動を行った。カマイルカについては検索エンジンを使い体の特徴について調べ学習を行って対話をする中で体の特徴をまとめた。まとめたことをもとになぜ進化が起こったのかについて考えを出し合ったのちに実際に海洋哺乳類であるカマイルカウオッチングのフイールドワークを行い、近くで観察する活動を行った。生徒たちはア)体の動かし方。イ)雌雄の見分け方。ウ)呼吸の仕方。エ)捕食し方と捕食する生物。という他の種との比較する観点を決めたのちに漁船に乗り観察を行った。フイールドワーク終了後にア)~エ)について観察したことをまとめて壁新聞にまとめた。この活動では日本財団の助成で漁船に2班乗船することができた。
写真1 船についてくるイルカにビックリ
【生徒の変容】検索エンジンでの調べ学習では同じ魚類でも細長く粘性が高い体のギンポやウナギ、浮き魚で獲物を追う真鯛やメバルでは体の形状や活動時間などが違うことを対話の中で見つけていた。特に飼育している海洋生物は実際に観察を意図的にできるため実感を伴った理解ができていた。カマイルカについても鼻の位置が背中の部分にある事やイワシなどの餌を求めて移動することその移動の途上で陸奥湾内に入ることなどを調べることで(1)なぜ、どのように鼻の位置が変化したのか(2)餌をどのように追い込むのか(3)活動するためにどのように泳ぐのかなどの疑問を持ち主体的にフイールドワークに臨むことができた。上記3つの疑問を持ち漁船でのイルカウオッチングを実際に行い(1)イルカはイワシなどの群れを追うので漁師さんが魚探や海鳥の群れの位置を参考にしてイワシの群れを探し当ててカマイルカの群れを発見することを間近に観察することで理解できたこと(2)カマイルカは漁船の脇を囲むようにまた漁船の下を通り船首の方に来ることや海を群れでジャンプしながら漁船と並走して泳ぐので遊んでくれているような知能の高い哺乳類であると理解できたこと(3)川のように見えるくらいイルカが間近を泳ぐことを観察することで泳ぎ方や泳ぐ速さを確認できること。上記のことを通して陸奥湾の自然の豊かさを実感するとともに自然環境を保全することの大切さを実感する感想が多くみられた。イルカウオッチングを通して海洋に対する関心が5段階の平均3・4から4・8に高まりカマイルカのレポートの内容も量が全員増加した。
写真2 イルカを撮影
写真3 カマイルカ新聞の作成
2.浅虫海岸での生物採集・生物観察のフイールドワークと浅虫水族館でのイルカ観察(生物と環境)
【実践】食物網の学習について生物の関係性を海洋の潮だまりに絞って検索エンジンを中心に調べ学習を行った。初めに潮だまりの干潮帯の違いによる生物の種類と分布について調べたことをもとに対話を行い生物の多様な生活の仕方について理解を深めた。その後生物同士の食物連鎖や食物網について予想させながら調べ学習を進めた。ここで出された(1)陸奥湾の浅虫海岸での干潮帯ではどのような生物が見られるのか(2)生物が実際どのようなものを食べているのかについて流れてくる生物の死骸や海藻などを与えて確認したい(3)干潮帯について水族館の展示されている生物を参考に調べたい(4)イルカウオッチングで調べたカマイルカの鼻や泳ぎ方などの生態をイルカプールで確認するなどの目的を持ち採集・観察を行った。
写真4 潮だまりの観察で調べ学習の確認を行う
【生徒の変容】生徒は潮だまりに出かける前の調べ学習では干潮帯のすみわけや生物の名称については理解することができているものの実際にどのような生物なのか実感がわかないため関心の評価については平均5段階の2・8であった。その分調べる中で実際に観察を行う時の疑問や観察をしてみたいものについては多くの対象を挙げている。そこから上記の(1)(2)(3)の課題を出すことが容易になった。実際にフイールドワークを行いイトマキヒトデ・ウアメフラシ・イシガニ・テナガエビ・鎧イソギンチャク・ハゼ・イワガキ・ヒザラガイ・イシマキガイなどを手に取り動きや体のつくりなどを実際に観察することで特徴に気づきすみわけについてもその理由を考えながら話し合って記録する姿が見られた。また餌として持ち込んだするめ・アオサ・煮干しの粉などを捕食し、隠れ家に持ち帰る様子を観察することで食物網を主体的に考えるなど主体的な活動が見られた。引き続き浅虫水族館での観察では浅虫海岸近くを模した水槽や自分たちが調べた生物の説明をメモするなどただ通りながら眺める生徒はほとんどいなかった。カマイルカについてはイルカプールでの観察から泳ぎ方や体の特徴で速く泳げることが実感をもって理解することができていた。イルカショーの見学では間近な特別席に座った生徒の観察や撮影した動画から鼻の位置や呼吸の仕方について理解することによって進化についての新たな課題が出されるなど学びが深められた。学習への関心の評価は5段階の4・8に上昇した。
3.青森県栽培漁業振興会から譲り受けた魚種の陸上飼育(生物と環境)
【実践】新学期に青森県栽培漁業振興会(青森県階上町)に出向き陸上飼育を行うことで譲り受けたキツネメバル・ヒラメの2つの魚種を採集してきた生物の水槽に入れて日常的な飼育と観察に取り組ませた。餌を毎日与え10日ごとに動きや体長などの変化について記録した。途中、跳ねて外に飛び出すことや数が多いため水質管理が難しくなるなどの障害が出てくるため振興会の方やメンテナンスしてくださる業者の方に相談するなどして対策をしながら飼育観察を定点で観察し続けた。半年後では大きさが当初の2倍にまで成長しヒラメは飼育場所の環境の色彩に合わせた保護色になることや餌の捕食の瞬間から餌のとらえ方などを動画で記録するなどした。経過については振興会に報告し実際に海に放流されたものとの比較を記録した。
写真5 陸上飼育するキツネメバル
【生徒の変容】生徒の関心を高めるために考えさせ名前を付ける発案があったが印などをつけないため見分けがつかなかった。しかし一番大きいものなどヒラメは個体差が大きいので大きさに合わせていくつかに名前を付けることで愛着が出るようになった。キツネメバルは個体差があまり見られないため好む場所ごとにグループで名前を付けて観察を行っていた。観察記録が積み重なることにより大きさの変化やキツネメバルが中層を泳ぎ回る状態から底の部分に身を寄せるようになる変化を記録して話し合うなど関心が高まりその理由を考えたいなど自分たちで主体的に課題を見つけるようになっていった。また死ぬ個体が出ることで飼育の仕方についてメンテナンスの業者さんとの交流も増えて工夫をしようとする姿も見られるようになった。人工的に育てることによって自分たちが普段食べている魚が大きく育つまでには自然環境の中で長い時間をかけ自然環境がもたらす餌を捕食することで育っていくことを実感することによって自然環境への感謝の気持ちや死ぬ個体を見ることによって自然環境への畏怖の気持ちが見られるようになった。よって海洋生物の飼育は生徒の自然環境に対する姿勢の変化や飼育している生物に対する課題の発見に寄与すると考える。この活動においても陸上飼育用の水槽やクーラーなどを設置することができた。日本財団に感謝申し上げる。
4.未利用魚・低利用魚についての調べ学習(未利用魚からSDGsについて考えよう(理科探究学習))
【実践】2学年の学習でSDGsについて考える中で「2 飢餓をゼロに」「14 海の豊かさを守ろう」の二つのクエストを課題にしたということで食品ロスの問題の一つである低利用魚・未利用魚のことについて調べ学習を行った。グループごとに(1)青魚(大きさが市場に合わないなど)(2)海タナゴやガヤ(食べ方や捌き方が分からない)(3)ギンポ・カサゴ(見た目が悪い)(4)深海魚(見た目・捌き方・味などの複合的な理由)の4つに分かれて現状や魚の特徴、実際にどのくらいの量が廃棄されるのか、活用方法を見出している例はなどについて検索エンジンや関係のある機関などへのメール送付などを行いまとめた。まとめたことを青森県水産課の方に聞いていただき意見を交換して理解を深める活動をした後に青森県水産課の方の紹介で蓬田漁協(東津軽郡蓬田村)の漁師さんに朝とれた魚の仕分け作業を手伝わせてもらい、実際に一度の漁でどれほどの未利用魚が出るのか実際に体験させていただいた。未利用魚を買い取りその買い取った未利用魚を青森県水産課の方から教えてもらいながら自分たちで捌いて食べてみることや、調理のヒントを高校の調理科の先生に教えてもらって自分たちで調理することで未利用魚の活用の仕方をまとめた。
写真6 漁獲された魚の仕分けを体験する
写真7 取れたてのイカを焼く沼田さん
写真8 青森県漁業振興課の方に捌き方を聞く
【生徒の変容】調べ学習を進めていく中で始め生徒たちは未利用魚の種類や利用されない理由について他人事としてとらえるような感想が多くみられた。実際に魚を調理することが無いことや未利用魚を含めて魚を好んで食べる生徒が少ないことが原因しているためであった。しかし食品ロスの問題としては何とかしたいという感想が多くみられた。そこで青森県水産課の方や蓬田漁協の皆さんも生徒たちが魚に興味がわかない理由を知りたいということで生徒たちの疑問と漁協さんや県の方の疑問をぶつけあうために対話の機会を持ち漁協さんの方でも学ぶ点が多かったという感想をいただくことができた。生徒の疑問である実際に同じサバやハマチでもなぜ大きさで利用されないのかを解決するために魚の仕分けに招待してくれることになったため高い関心をもって体験に参加することができた。そのため漁獲した魚の仕分けではたくさんある魚が高級魚の真鯛やクロソイ、アイナメ、マイカと資料や煮干しなどに加工される小さいイワシなどを近くで見て大きさや種類によって買い手がつくことを納得しながら理解できた。同時に型が良くても料理しづらい大きさのサバやハマチはスーパーにも並ばないし海に返すわけにもいかないということも実感できていた。
また海の幸は環境が大切にされることも大切であることも学ぶことができたので感想には環境保全の言葉が多くみられるようになった。さらに漁協の漁師さんに取れたてのイカを焼いていただいたり、県の方の指導で自分たちで捌いて食べることで未利用魚は刺身ではおいしくなくても調理の仕方で味がよくなること新鮮であればおいしいので魚を好きになったなど海や魚に対する関心が高まり学習前よりも海や魚が好きになったというエピソード評価が多くみられるようになった。
写真9 未利用魚の捌きをする
写真10 未利用魚についての新聞記事
写真11 考案したレシピで調理する
5.海洋教育公開授業研究会(生物の種類の多様性と進化、未利用魚からSDGsについて考えよう)
【実践】これまでの5年間の実践の積み重ねの成果を海洋教育公開授業として行った。授業は3学年がイルカウオッチングで扱ったカマイルカの進化について(1)イルカやクジラの祖先は陸上哺乳類のカバであったこと(2)陸上から海に戻る形で進化した理由について調べ学習を行い考える(3)化石の骨格の変化から鯨類の進化についてまとめを行い生物の進化には環境の変化への適応がありこのことが生物の多様性につながっていることを話し合いからつかむ実践を行った。2学年は未利用魚についてまとめたことについてグループ発表を行い未利用魚になる理由や対策について専門家の方との対話を行った。その後八戸市の食品総合研究所の方に未利用魚の種類や未利用魚になる理由及び量について話していただき対話を深めた。最後に食品総合研究所が取り組んでいる底引き網で目的の魚と共に多量に漁獲されてしまう深海魚について紹介され実物を見せていただいたり加工の試行品を食べたりしながら最前線で未利用魚を活用しようとする動きについてその苦労などについて深く理解することができた。二つの公開発表の後授業研究会では参加された先生方や青森県職員の方、漁協関係者、大学教授など多くの方から、生徒がよく調べている。海洋の環境について感がられていて大変よく取り組まれている。ICT機器を活用して生徒のつぶやきを活かすことがよいと思う。陸奥湾の学びを積み重ねていることが素晴らしいのでさらに進めていってほしいなどの意見を頂きました。
写真12イルカの進化の公開授業
【生徒の変容】イルカの学習についてはイルカウオッチングから水族館での観察を経ているためイルカの体の特徴や捕食しているものについてこれまで学習してきたことをもとに主体的に学習に参加していた。カバから進化したことについてはカバも水棲の性質がある事などからより獲物が多い海に住めるように進化したのではないだろうかや天敵から逃げるために海に向かったのではないか。体つきも背中についている鼻や流線形の体が海で泳ぎやすいこと後ろ足が退化し、前足が魚のヒレのようになったこと。体の大きさが大きくなったことなどが全て広い海に適応するためだったのではないか。など課題の解決に向けて対話を積極的に行ったりロイロノートに書き込んだりその書き込みを取り上げるなど進化について主体的に学ぶことにより深い理解ができている感想が各自10%から50%増加している。未利用魚の学習についてはこの授業に入るまでに検索エンジンを使っての調べ学習から漁協の方や漁師さん青森県水産課の方との学びを通して理解できたことをもとに取り組んだため今までの学習から見つけた課題について積極的にゲストテイーチャーの食品総合研究所の方と対話する姿勢が出ていた。そのためエピソード評価においてももっと未利用魚の種類を調べたい。未利用魚の活用を課題にして解決に向けて取り組みたいなど新たな課題についての記述が80%の生徒で見られる結果になった。
写真13 未利用魚の公開授業
写真14 食品総合研究所の方との対話
写真15 深海魚の実物を観察する
写真16 未利用魚についての説明を行う
写真17 公開授業研究会での検討会
6.エゾバフンウニの受精から発生と飼育観察(生物の種類の多様性と進化)
【実践】お茶の水女子大学の清水先生からのご協力をいただき、バフンウニの卵と精子を送付していただきウニをスライドグラス上で受精させ卵割する様子について学習した。その後試験管で受精したウニを発生するまで飼育を行いその後稚ウニになるまで継続観察を行った。教師側が準備のためにお茶の水女子大学臨界実験所(千葉県館山市)に出向きその方法や注意事項について学ばせていただいたことで生徒に対する支援がスムーズにできた。
写真18 バフンウニの受精の観察
写真19 卵割の様子
【生徒の変容】生徒はブロッコリーやオレンジジュースでDNAの観察を行い遺伝の学習を行い、このDNAがどのように受精から卵割そして発生につながりを持つのかについて一組だけの卵や精子の核が受精することによって細胞になり発生の元になることを顕微鏡下で観察することによって実感しながら理解することができたといえる。このことは学習を進める中での感想に教科書や文献での学習では名称や仕組みについては理解できたけど受精によってDNAが組み合わさった受精卵は卵割することができたが未受精卵ではその卵割も発生も見られないことから理解できたという言葉多くみられたことから分かる。また、自然の中では発生がたくさん見られるのに自分たちで稚ウニを育てるところまでほとんどうまくできなかったことから自然環境と同じ酸素量や餌になるものなどを準備することが今まで飼育してきたヒラメや採集してきた生物に比べて難しいことを実感する感想が多くみられ自然環境は保全していくことが大切だと考える生徒の言葉が多くみられ、同時に失敗した原因を課題とする生徒も多くみられるなど生徒の課題意識が高められた。
写真20ウニの精子と卵を確認
7.専門家の方から海の自然環境を守る大切さを学ぶ(生物と環境)
【実践】海洋生物と環境の関りや海洋生物の採集と海の魅力について専門家として東京大学特任准教授の脇谷量子郎先生に出前講座で講義をしていただいた。内容はご自身が小学生のころからウナギやナマズが大好きで見てみたいもっと知りたいという関心が高じて中学生の時に琵琶湖の漁師に弟子入りしたり珍しい種の物を見つけたりその生態について調査することをずっと続けたことが現在の研究職につながったことや自分の研究の中で明らかになったこととしてウナギが陸上の生物を狩りすることが明らかになったこと。魚類は全て野生動物であり環境に合わせて適応して生活すること。水槽で飼育観察することで多くのことを知ることができることなどについて理解することができた。講義の後に対話を行いウナギの生態や研究の楽しさ、自然環境が変化することと生物への影響などについて理解を深めた。
写真21 脇谷先生の講義を聞く
【生徒の変容】生徒は魚が他の食物になる家畜と違いほとんどが野生だという視点が新鮮であったということや脇谷先生が一つのことに没頭することが探究する心のおおもとだという視点も共感できる生徒が多くみられ価値観の転換になったという感想が多くみられた。またウナギの顔や細長くてぬめりがあることが川底の石の狭い間をすり抜けるように動いて捕食することにかかわること。体色の差は住処である場所が上空から見た時に全て保護色になっていることで、それは天敵の鳥が上空から見るのを欺くためであること。自宅にも部屋を埋め尽くすほどの水槽や生物がいることと家族も理解してくれていることなど生徒たちが自分たちで探究している海洋生物についてももっと自分たちが楽しみ、その生物や自然環境を好きになることが必要であることに気づかされたという大きな変容を自覚していた。
写真22 脇谷先生との対話による学びの様子
写真23 陸上飼育している魚に対する洋上風力発電の影響の研究で最優秀賞を受賞






















