プログラム概要

プログラム概要

埼玉 公立 単元開発 2023年度

埼玉県立所沢北高等学校

臨海実習を自立的・継続的な学習活動にするための取り組み

実施単元

1.臨海実習(海岸動物実習)[1年](理数科)

取り組みの概要

【ねらい・目的】
本活動の目的は、実習用具や資料を揃え、通常授業と接続する事前事後学習を導入することで、臨海実習を授業の一部とした繋がりのあるものにして、本校の自立的・継続的な教育活動にすることである。この目的の背景には、生物分野の現地実習を全て外部講師に依頼し、本校教員が積極的に関わらなくなり、事前事後学習が不十分で臨海実習と通常授業がうまくつながらず、臨海実習がイベント化してしまい十分活かせていない状況があった。

【本年度(3年目)の取り組み】
本年度は、臨海実習の中心となる海岸動物実習を自立的に実施することに焦点を当て取り組んだ。また、試行的取り組みとして、臨海実習を通して海洋分野に興味関心をもった生徒の継続的な学びの機会と場を作った。具体的な取り組みは以下(1)と(2)に示した。

(1)昨年度取り組んだ、授業と接続する計画的な事前事後学習、1泊2日から2泊3日、プランクトン実習導入で、臨海実習の基本の形ができたため、本年度はその充実を図った。加えて、自立的・継続的実施に向けて、外部機関に指導を依頼せず本校教員のみで海岸動物実習の指導に挑戦した。

(2)理数科2・3年生を対象にした理数生物の校外授業である「理数科校外授業」を試行実施した。また、学科と学年に関係なく海洋を学べる場として「生物部海洋活動」を試行実施した。

【実践内容】
(1)本校理数科1年40名を対象に、夏休み中8月1日~3日の2泊3日で臨海実習を実施した。臨海実習では、三浦半島南部の城ヶ島を実習地として3つの実習(プランクトン実習、海岸動物実習、地学実習)を行った。東京大学三崎臨海実験所との連携を計画していたが、日程等調整がつかず実現しなかった。

臨海実習を自立的に実施するため課題となっていたのは、2日目に行う海岸動物実習であり、本年度はこの実習を本校教員のみで実施・指導することに挑戦した。具体的な課題以下3つに取り組んだ。

課題1:海岸動物実習の進め方。採集観察する実習地は見つかっても、採集した動物を分類同定する室内実習施設を見つけるのが難しい。生徒40名が利用し海岸動物の持ち込み可の施設は見つからなかった。
下見や問い合わせを繰り返し、実習地近くに室内実習施設がある場所を見つけることができた。城ヶ島のすましと海岸を実習地として城ヶ島ダイビングスクールのテラスを室内実習施設として借用して海岸動物実習を実施できた。

課題2:実習中の安全管理。外部機関に指導を依頼していたため、実習中の安全管理も任せていた。
なんとなく見守るだけでなく、具体的な安全管理の計画を立てた。水難事故と熱中症を想定して実習中の役割分担を明確にした。全員が緊急用ホイッスルとOS1を携帯し、看護師も海岸待機とした。

課題3:室内実習の指導。採集した海岸動物を使い現地で分類系統の授業を行う。これも外部機関に指導を依頼していたため、本校教員は現地で指導経験がなかった。教員にとって最も高いハードルだと考えている。
事前学習用実験材料採集(5/6)や実習地下見(7/17)等の機会を利用し、教員の事前学習を実施した。また、教員間での情報経験の共有と蓄積を臨海実習の仕事の一部とした。

(臨海実習3日間の内容)
8/1 生物分野実習(城ヶ島でプランクトン実習)6時間 理数生物(生物基礎、生物)
8/2 生物分野実習(城ヶ島で海岸動物実習) 8時間 理数生物(生物基礎、生物)
8/3 地学分野実習(城ヶ島で地学実習) 3時間 地学基礎、地学

(2)理数科校外授業:理数科2・3年生の希望者を対象にした理数生物の校外授業として、理数科校外授業『海藻実習』を6月16日~18日、3月12日に実施した。海藻実習は初実施であったため、国立科学博物館と連携し北山太樹研究主幹の指導を受けた。海藻実習下見(4/28)では、北山先生から本校教員が指導を受け事前学習した。また、海藻実習の中心の2日間(6/17と6/18)は、生徒に対して直接指導をしていただいた。実習内容は以下の通りである。

(理数科校外授業『海藻実習』4日間の内容)
6/16 事前学習(所沢北高校で海藻の学習) 2時間 理数生物(生物基礎、生物)
6/17 海岸実習(七里ヶ浜で海藻の観察採集) 5時間 理数生物(生物基礎、生物)
6/18 室内実習(所沢北高校で海藻標本作成、藻類の学習) 5時間 地学基礎、地学
3/12 標本整理 2時間 理数生物(生物基礎、生物)

生物部海洋活動:生物部の部活動において、海洋に関する校外活動を2タイプ実施した。生物部海洋活動Ⅰ『海藻実習』を5月2日~4日、8月31日に実施した。更に、生物部海洋活動Ⅱ『船舶実習』を8月4日に実施した。船舶実習は、東京大学三崎臨海実験所と連携し小口晃平特任助教の指導を受けた。

(生物部海洋活動Ⅰ『海藻実習』4日間の内容)
5/2 事前学習(所沢北高校で海藻の学習) 1時間 理数生物(生物基礎、生物)
5/3 海岸実習(七里ヶ浜で海藻の観察採集) 5時間 理数生物(生物基礎、生物)
5/4 室内実習(所沢北高校で海藻標本作成、藻類の学習) 5時間 理数生物(生物基礎、生物)
8/31 標本整理 2時間 理数生物(生物基礎、生物)(生物部海洋活動Ⅱ『船舶実習』)
8/4 船舶実習(油壷の海底で底生動物を採集して観察) 7時間 理数生物(生物基礎、生物)

【成果と課題】
(1)海岸動物実習は、概ね計画通り実施できた。室内実習施設は実習地まで徒歩15分で、海沿いで海水も使え採集した海岸動物を観察するのに十分なものであった。屋根のついた吹きさらしのテラスであるため強風と高温による熱中症に注意すれば問題なく利用できる。教員にとって最も高いハードルだと考えていた室内実習の指導についても、本校教員だけで実施することができたのは大きな成果である。しかし、分類系統の授業に必要な海岸動物を毎回採集できるとは限らないこと。埼玉県では、海岸動物の観察や同定の経験をなかなか増やすことができないこと。臨海実習は年1回しかなく教員間での情報経験の共有と蓄積が難しく、工夫が必要であること。これらは臨海実習そのものの課題でもある。

(2)理数科校外授業は、理数科2・3年の希望者を対象にして試行実施した。生徒の興味関心は高かったが、参加生徒は10名に止まった。希望生徒は20名以上いたが、部活動を欠席できないという理由で参加できなくなったものが多かった。理数科の授業に関する取り組みであっても、それを理由に部活動の欠席を認めない部活動が多いのが現状である。生徒が参加しやすい日程を考えることも必要であるが、運動部を中心として教員団に理数科校外授業をどう認めてもらうかが課題である。生物部海洋活動は、学科と学年が関係ない部活動として試行実施した。生徒の海洋に対する興味関心を高めるような2つのタイプの活動が実施できた。『海藻実習』は理数科校外授業と同様の内容であったが、どちらで実施しても生徒の興味関心は高く、実習用具や予算、安全管理の面でもやりやすい実習にできた。『船舶実習』は、船に乗り普段目にすることができない海底の生物を採集して、底生動物を観察する貴重な実習で、生徒の関心は大変高かったが予算の面で自立的に実施は難しそうであり、その点が課題である。

臨海実習(海岸動物実習)
臨海実習(海岸動物実習)
臨海実習(室内実習前半)
臨海実習(室内実習前半)
理数科校外授業(海藻実習)
理数科校外授業(海藻実習)
理数科校外授業(海藻実習)
理数科校外授業(海藻実習)
生物部海洋活動(船舶実習)
生物部海洋活動(船舶実習)

提出物

学習内容報告書「臨海実習(海岸動物実習)」 PDF形式(465KB)

教材「海岸動物実習案内・ワークシート」 PDF形式(922KB)

教材「プランクトン実習案内・ワークシート」 PDF形式(818KB)

一覧に戻る

ページのトップへ戻る