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The Future of Cybersecurity as a Global Challenge-サイバーセキュリティ:今後の課題と日米・多国間協力-

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ジェームス・A・ルイス氏
(米戦略国際問題研究所(CSIS)テクノロジー・公共政策部部長 兼 上級研究員)

2011_02_img01.jpg情報通信技術の進展によって、サイバースペースは、いまや現代社会に欠かせないものとなった。経済活動、軍事、文化、そして日常生活にいたるまで、グローバルなインフラとしてのインターネットのない現代という時代を想定することは難しい。しかし、このサイバー空間では、そこを行きかう情報や通信の安全は、どこまで保障されているのだろうか?誰が、どのような規則を作り、それを執行していくべきなのだろうか?2011年9月12日、戦略国際問題研究所(CSIS)テクノロジー・公共政策部部長のジェームス・A・ルイス氏を講師に、サイバーセキュリティの現在とそれをめぐる多国間の協力と摩擦に関する講演が行われた。

ルイス氏によれば、サイバースペースは、グローバルなインフラとして不可欠なものとなりながらも攻撃に対して脆弱であり、その安全保障は国境を越えた、かつ一国では解決不可能なグローバルな課題である。ルイス氏は、サイバースペースはグローバルな公共財であるから国家の干渉になじまない、あるいは市場に委ねればサイバーセキュリティは十分である、といった意見は、すでにここ10年の現実の展開によって否定されていると主張する。サイバーセキュリティとは安全保障問題なのであり、そこでの主役は国家に他ならないのだ。

しかし、サイバースペースには国境はなく、一国でこの問題に対応することは不可能である。そこで鍵となるのが多国間協力であるが、ルイス氏は、その前途は多難だと指摘する。ルイス氏によれば、多国間協力において重要なポイントは、どのような規範・規則を作るのか、そしてそれをどのように順守させるのかの二点である。産業スパイ、テロ攻撃、あるいは国家による戦争遂行手段と、様々な脅威を想定しうるこの空間で、武力紛争に関する国際法はどのように適用されるのか。サイバー空間における攻撃対象としては経済活動を想定することができるが、では、経済問題と安全保障問題の線引きはどこでなされるのか。戦争と犯罪、法執行の境目はどこにあるのか。あるいは、ある国家内に存在する非国家主体、たとえば熱狂的な愛国者グループによるサイバー攻撃には、誰が、どのように責任を負うのか。こういった多様で複雑な問題に関して多国間で共通理解を形成していかなければならないのだと、ルイス氏は言う。

2011_02_img02.jpgこういった共通の規範は、すでにいくつかの先進諸国の間では条約として規定されている。だが、ルイス氏によれば、中国、ロシア、ブラジル、インドといった新興国は、こうした先進国間で形成された規範をそのまま受け入れることに反発している。新興諸国は条約形成に参加しておらず、既存の規範には先進諸国の利害が反映されているのだと考えているからだ。

こうした困難を乗り越えて、国家の安全性を高め、グローバルなネットワークの便益を安全に享受しながらも、民主主義と自由の価値を保っていくにはどうすればよいのか?規範形成の場としては、国連を通じたグローバルなものと、いくつかの国が集まって独自の共通了解を形成していく方法があるが、ルイス氏は、新興国の反発を考慮してもなお、有志による規範作りを進めていくべきだという。核不拡散の事例のように一部の国々による規範形成であっても合理性があれば受け入れられるかもしれないし、あるいは、国際金融取引の分野における、規則に参加していないアクターとの取引にペナルティを課す方法もあるだろう。あるいは、旅客航空の分野における、航空会社の行動に関する規制を多国間で形成していったモデルを当てはめることもできるだろうと、ルイス氏は言う。

では、日米両国は、サイバーセキュリティの向上に関して、どのような役割を果たすことができるのか?ルイス氏によれば、日米両国は、特に通商問題や知的財産権をはじめとした、貿易分野における様々なサイバーセキュリティに関する利害を共有している。軍事協力の分野のみならず、経済面におけるサイバーセキュリティにおいて、日米両国が協力を深めていくことが重要だと指摘して、ルイス氏は講演を締めくくった。

「The Future of Cybersecurity as a Global Challenge-サイバーセキュリティ:今後の課題と日米・多国間協力-」

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