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Wired for War:The Robotics Revolution and Conflict in the 21st Centuries -ロボット兵士の戦争:戦場のロボット革命と21世紀の紛争-

募集は終了しました

ピーター・シンガー氏
(ブルッキングス研究所上級研究員)
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本国から遠隔操作される、パイロット無き無人航空機。軍用犬ではなく、ロボットとともに行動する特殊部隊や爆弾処理班。ロボットの戦争―かつて空想の世界の産物だったものは、今、戦場の現実となった。2011年2月28日、ブルッキングス研究所主任研究員、ピーター・W・シンガー氏を講師に、戦場におけるロボットの登場と、その社会的影響に関する講演が行われた。

シンガー氏によれば、ここ10年で、ロボット兵器は質量ともに飛躍的な発展を遂げた。2003年、イラク戦争勃発当初、アメリカ軍が保有していた無人機は僅か数台にすぎず、爆弾処理班を支援できるようなロボット兵器は皆無だった。しかし今、アメリカ軍が保有する無人航空機は7000台、地上のロボット兵器は12000台に及んでいるという。アメリカの主要な航空宇宙産業は開発の焦点を有人機から無人機へと移しており、米空軍では、何万もの無人機を運用する日も遠くないとみられている。

シンガー氏は、この飛躍的な、そして世界的なロボット技術の進展を、自動車や原子力、コンピューターといった、政治・文化・社会を大きく変化させてきた技術革新になぞらえる。自動車の登場なしに交通法規の発展や環境問題は無く、またコンピューター無くしてインターネットやグローバル化の進展は無く、原子力なくして冷戦を考えることはできない。戦場におけるロボット技術の飛躍的な発展は、こうした過去の事例と同じく、現代社会に巨大なインパクトを与えつつあるのではないか―シンガー氏は、こう警告する。

では、どのような波及効果が、実際に起こっているのだろうか?シンガー氏は、戦争の実態に関して、4つの影響を指摘する。第一に、戦争に参加しうる主体の変化だ。核や航空母艦といったかつての技術革新は、国家規模の予算と人員が必要とされた。しかし、ロボット技術の特徴は、個人やグループでも十分に利用可能な点にある。雑誌編集者がわずか1000ドルで無人偵察機を開発した例もあり、またレバノンの反体制グループ・ヒズボラが、イスラエルとの戦闘で無人機を利用したことも確認されているというのである。

第二に、戦争の閾値が下がっている、とシンガー氏は指摘する。戦争は、かつてのような、宣戦布告と動員、戦債の発行という形をとることは絶えて久しく無い。最新の戦場とは、無人機が行き交い、国内で話題となることも無いようなものである。シンガー氏によれば、アメリカ軍がパキスタンで行った空爆の数は、すでにコソボ戦争の10倍に上っているという。しかし「パキスタン戦争」という名称は無く、また議会で議論になることもない。空爆は、無人機によって行われているからである。

2010_05_img02.jpg第三に、シンガー氏によれば、戦争に参加するということ自体に、そしてその時に求められる資質にも変化が生じている。かつて戦争に参加するとは、日常から切り離された、非日常の世界たる戦場へと赴くことと同義であった。しかし無人機の登場は、本国において、朝自宅から出勤し、無人機を捜査して戦争に参加し、夕方には家族の待つ自宅へ帰宅するということを可能とした。また、こうした無人機の操作に求められる資質は、頑健な肉体でもパイロットとしての技量でもなく、むしろテレビゲームの巧拙に近いという。

第四に、シンガー氏は、技術の欠陥、エラーによる事件や事故の問題にも目を向けるべきだと指摘する。ロボット兵器のエラーで、自国の兵士や民間人に死傷者が出てしまったとき、誰が、どのような責任を負うのか?ジュネーブ条約で規定された戦争法で、それに対応できるのだろうか?戦場における倫理の問題にも、ロボット兵器の登場は大きな影響を及ぼしているのである。

最後に、シンガー氏は、こうした問題は、軍や政治家といった技術の使用者のみのものではなく、技術者自身にも問いかけられるべきものだと主張する。すなわち、どこから研究資金を得て、どのような技術を開発し、誰にその技術を提供するのか、という問題であり、またその技術が将来軍事技術に応用され、そしてその欠陥によって民間人に死傷者が出たとき、その責任は誰にあるのか、という問いでもある。原子力と核兵器のように、革新的技術は、人類の新しい地平を切り開くが、同時に新たな倫理的問題も提起する。シンガー氏は、技術と社会、そして倫理の問題について考えることの重要性を指摘して、講演を締めくくった。

「Wired for War:The Robotics Revolution and Conflict in the 21st Centuries -ロボット兵士の戦争:戦場のロボット革命と21世紀の紛争-」

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