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America's Strategic Restraint and its Implications for the U.S.-Japan Alliance-アメリカの戦略的抑制と今後の日米同盟

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パトリック・クローニン氏
(新アメリカ安全保障センター上級顧問)

2010_01_img01.jpg今、国際情勢は大きく変化しつつある。この大きな変動期にあって、アメリカはどのような世界戦略を追求し、日米同盟にはどのような役割が求められているのだろうか?2010年7月8日、新アメリカ安全保障センターでシニア・アドバイザーとアジア太平洋研究本部長を兼任するパトリック・クローニン氏を講師に迎え、新たなアメリカの戦略と、日米同盟の意義に関して講演が行われた。

クローニン氏によれば、現在、国際社会は大別して5つの課題に直面している。すなわち、アメリカ及び西側諸国から中国をはじめとする新興国への権力移行、技術の拡散、破綻国家の増加、地球環境問題、そして海、空、さらにサイバー空間の結合とそれへの自由なアクセスを保障する国際公共益の維持発展である。この複合的な挑戦に対して、アメリカはいかに立ち向かうのか?クローニン氏によれば、その鍵となるのが、戦略的抑制を通じた持続可能な外交・国防政策の立案にほかならない。

2010_01_img02.jpgクローニン氏によれば、世界的な権力関係の変動によって、アメリカは、かつてのようなグローバルな軍事的・政治的コミットメントを継続する余力を失いつつある。アメリカは過剰なコミットメントを整理縮小し、財政再建に注力しなければならないというのだ。したがってクローニン氏は、アメリカは、外交面では従来の過度に軍事介入に傾いた破綻国家への対応を見直してより政治的・経済的手段を重視すべきであり、経済面でも抜本的立て直しが必要であると主張する。だがクローニン氏が何よりも重視するのは、同盟国との協調である。アメリカの関与が縮小せざるを得ず、かといってそれに代わってグローバルな安全保障を担いうる主体も存在しない以上、アメリカと同盟国との協調によって安全保障を確保していく必要があるというのだ。

クローニン氏は、アメリカと日本をはじめとした同盟諸国は、民主主義という共通の価値観を基盤とした、共通のビジョンを抱いていると指摘する。クローニン氏によれば、日米両国は、韓国、オーストラリア、フィリピンといった従来からのアメリカの同盟国に加え、インドやインドネシアも包含したパートナーシップを強化し、国際的秩序に中国を巻き込み、北朝鮮問題の平和裏の解決を図らなければならないのである。

2010_01_img03.jpgでは、そのために、日米同盟には何が必要なのか?クローニン氏は、日米政府間の戦略対話と知的交流を進展させることを通じて、日米両国の間に共通の理解を形成し、前述の国際的諸課題に対し共同行動をとることが重要だという。すなわち、日米両国は、経済面における協力関係を形成し、再生可能エネルギーの開発などによって環境安全保障問題にも対応していかなければならない。またより伝統的な安全保障問題では、北朝鮮の後継者問題にともなう国家破綻に対しては日米韓のみならず中国も巻き込んだ対応の模索が急務であり、そしてこうした過程を通じて台頭する中国を開かれた国際秩序に取り込んでいかなければならないというのである。クローニン氏によれば、中国は、国内の安定のために経済成長を必要とし、そのためには他国も犠牲にしかねない姿勢をとっているが、日米両国の努力によって中国を穏健化していくことが必要である。そしてこういった具体的課題の基盤となるのが、防衛システムや地域防衛協力の拡充による国際公共益の維持発展だ。クローニン氏は、日本は、防衛費を増額し、東南アジア諸国との共同海上訓練へと踏みきり、またサイバー空間の安全保障へも目を向けるべきだと主張する。クローニン氏は最後に、こうした具体的政策課題は、どのような国際社会を目指すべきなのかということに関する日米共通のビジョンに基づくものであることを強調して講演を締めくくった。

「America's Strategic Restraint and its Implications for the U.S.-Japan Alliance-アメリカの戦略的抑制と今後の日米同盟」

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