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The Indian Ocean and Geopolitics-インド洋をめぐる地政学

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ロバート・カプラン氏
(『ザ・アトランティック』誌特派員)
講演要旨

過去数世紀にわたって、世界の軍事力の中心は、ヨーロッパと北米にあった。大西洋を中心としたこの力のバランスは、しかしいま、大きく変化しつつある。すなわち、アジアの軍事的台頭である。2010年3月12日、新アメリカ安全保障センターのシニア・フェローであるロバート・カプラン氏を講師に、台頭するインドと中国の軍事戦略と今後の展望に関する講演が行われた。

講演の冒頭、カプラン氏は、いくつかの事実を指摘した。インド海軍が急速に増強され、日本の保有艦艇数はイギリスの4倍にのぼり、ヨーロッパでは軍隊の任務は戦闘から人道支援へとシフトしつつある。さらに、世界最大のアメリカ海軍も、その戦略の中心を大西洋と太平洋から、太平洋とインド洋へと移した。アフリカの角から日本海にいたる半円状の地域こそ、今、最も軍事的に注目されている地域なのである。

その重要なプレイヤーが、中国でだと、カプラン氏は言う。地理的条件から、中国が世界大国へと成長せずとも、地域大国としての存在感を増すだけで、太平洋からインド洋へかけての影響力を増大せせることになる。カプラン氏によれば、中国とインド洋を隔てる諸国、すなわちミャンマー、バングラデシュ、パキスタン、スリランカに、中国は確実に勢力を扶植しつつある。

しかしその手法は、公然たる同盟関係や軍事基地の確保ではなく、より間接的で非公式な方法、例えば港湾施設整備への大規模な投資や経済関係の強化から、港湾利用協定の締結といったかたちをとるだろうと、カプラン氏は指摘する。中国がスリランカの内戦に軍事援助を行い、いままた港湾施設の建設に大規模な援助をつぎ込んでいるのは、この実例である。カプラン氏によれば、こうした中国の動きは、アメリカとの衝突を望んでのものではないが、エネルギーの供給地域である中東からの航路をアメリカのみに抑えられることを防ごうとするものである。アメリカの行動を牽制するに足る軍事力と影響力を持ち、最終的には中国海軍による、中国への航路の安定を図りたいと考えているというのだ。

カプラン氏によれば、中国は、こうした南方への関心を、北方における陸上の国境を安定させたことで、十分に追求できる環境となっている。これに対して、インドの情勢はより複雑だと、カプラン氏は指摘する。インドの海軍将校たちは、モンロー主義的な心情を持ち、インド洋はインドの自然な影響力とみなす傾向がある。これは、インド洋を中心として、西はアフリカから東は東南アジアに至る広大な地域の中心にインドが位置するという、楽観的な、世界大国のイメージだ。

しかしこの一方で、インド陸軍の見ている世界は全く異なると、カプラン氏は言う。北方国境を安定させた中国と異なり、インドはパキスタンとの国境紛争を抱え、ネパールからの難民流入におびえている。かつてバングラデシュから大量の難民が国境を越えたことをも踏まえれば、インドが大国となるには、陸上の国境問題を解決することがあることは明らかである。

最後にカプラン氏は、こうしたインド、中国の鍔迫り合いに、装備の近代化を進める日本、韓国、そして縮小しつつも依然として大きな勢力を保っているアメリカを巻き込んだ、多極化した勢力均衡状態が出現しつつあること指摘して、講演を締めくくった。

「The Indian Ocean and Geopolitics-インド洋をめぐる地政学」

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