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朝鮮半島をめぐる北東アジアの安全保障と日米関係

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バルビーナ・ホァン氏
(国防大学講師、ジョージタウン大学客員教授)

2009_02_img01.jpg同盟、とは何のためにあるのだろうか?日米同盟は、また米韓同盟は、日本や韓国にとって、どのような価値を守るために存在するのだろうか?こうした基本的で、かつ顧みられることのない問いが、政治指導者によって提起されるとき、同盟関係は、そして安全保障環境はどう変化してしまうのか?2009年11月26日、東アジアの安全保障を専門とするバルビーナ・ホァン氏を講師に、米韓同盟と北朝鮮情勢、そして日米同盟の現状と展望に関する講演が行われた。

ホァン氏は講演の冒頭、東アジア専門家の間で、鳩山首相が韓国の盧武鉉大統領と比較されることに注意を喚起した。日韓両首脳が提起した問題とは、ホァン氏によれば、同盟の目的とはなんなのか、ということにほかならない。民主主義国家である日本と韓国は、同盟のために、例えば基地や資金をはじめとした様々な形で投資を行ってきた。しかし近年、ホァン氏は、その投資に見合う価値とはなんなのか、ということが、日韓両国の国民にとって不透明なものとなってきたのだと指摘する。

2009_02_img02.jpg同盟とは何のために存在し、なぜ同盟を強化しなければならないのか。この難問を回避したときに、多くの問題が発生するのだと、ホァン氏は言う。すなわち、日本や韓国は、アメリカのパートナーなのか、配下なのか。東京やソウルは、ワシントンの意向を押し付けられ、日韓の国民の利益はそのために犠牲にされてきたのではないか。あるいは、同盟はこれまでうまく機能してきたのだから、これ以上何もしなくてよいのではないか、という考え方も出てくるだろう。こうして同盟におけるもっとも基本的な問題を置き去りにしたとき、ホァン氏によれば、同盟を維持することそれ自体が目的となるという、倒錯した状態が生まれる。

目的を見失い、存続自体が目的となってしまった同盟では、負の側面が浮き彫りになるのだと、ホァン氏は言う。それは、沖縄の基地問題をはじめとした主権や住民負担の問題であり、近隣諸国との外交問題でもある。盧武鉉大統領は米韓同盟によって南北関係の進展が妨げられていると語り、鳩山首相は日米同盟よりもアジアとの関係強化を重視すると謳った。

ホァン氏は、こうした問題はこれまで、外交当局者によって棚上げにされてきたのだと指摘する。両国の問題や認識の違い、日本や韓国が負っている負担の問題を表面化してしまうと、問題が政治化し、同盟関係にひびが入るからだ。しかしながら、ホァン氏によれば、こうした外交的ジェスチャーによって良好な関係を演出することは、そのジェスチャー自体の政治的重要性を増してしまうという。

2009_02_img03.jpgなぜ、こうした状況が生じてしまうのか?この背景には、安全保障上の不安があるのだとホァン氏は指摘する。ホァン氏によれば、日韓両国はアメリカの戦争に巻き込まれることもまた見捨てられることも恐れているが、この根源にあるのは、アメリカと日本、韓国が対等ではないということにほかならない。

では、どのように対等な同盟関係を構築していけばよいのだろうか?ホァン氏は、国力や軍事力の意味で、アメリカと日韓が対等になることはありえないと指摘する。そのうえで、それぞれがその長所を生かし、アメリカのリーダーシップのもとで相互に敬意を払いうる関係を構築することこそが肝要であると主張する。最後にホァン氏は、東アジアの多国間構想や中国の役割について触れつつ、講演を締めくくった。

「朝鮮半島をめぐる北東アジアの安全保障と日米関係」

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