大陸棚はなぜ重要なのか

国連海洋法条約における「大陸棚」の定義


TALOSマニュアル(海洋法に関する技術的事項に関するマニュアル)より

(1) 大陸棚とは

 地形を示す言葉としての大陸棚は、陸に引き続く、比較的傾斜が緩やかで概ね水深130メートル付近まで続く海底の部分を指しますが、国連海洋法条約第76条では、「沿岸国の領海を越える海面下の区域の海底及びその下」であって、大陸縁辺部の外縁まで、または、領海を測る基線から200海里まで、と定められています。
この定義を理解するために、まず 領海とは何か、次に大陸縁辺部とは何か、を調べてみましょう。

(2) 領海とは

領海とは、領海の幅を測定するための基線(領海基線*と呼ばれます。)から12海里までの部分です。したがって、大陸棚は12海里から200海里までの海底及びその下の部分を指す、ということがまずわかります。

領海基線とは

国連海洋法条約第5条において、領海基線は、通常、海岸の低潮線とされています。ただし、海岸が著しく曲折しているか、海岸に沿って至近距離に一連の島がある場所においては、適当な地点を結ぶ直線基線を用いることができるとされています(国連海洋法条約第7条)。

(3) 大陸縁辺部とは

大陸縁辺部とは、陸地が海面下まで延びている部分のことであり、まず緩やかな棚が続き、やや傾斜の急な斜面(大陸斜面)となり、再び緩い傾斜のコンチネンタル・ライズがあり、大洋底といわれる海底部分に至りますが、このコンチネンタル・ライズと大洋底との境目が、大陸縁辺部の外縁(outer edge)ということになります(国連海洋法条約第76条3)。(しかし実際の海底地形は多種多様で、上の図は一例にすぎません。なお、上の図で、コンチネンタル・ライズは示されていませんが、大陸斜面から大洋底に至るまでの緩やかな傾斜部分です。)

すなわち、大陸縁辺部の外縁が200海里を超えない場合には、大陸棚は200海里までとなり、大陸縁辺部の外縁が200海里を超えると、地形的・地質的条件により定められる大陸縁辺部の外縁までということになります。(ただし、200海里を超えた部分が、他国の大陸棚と重なり合う場合や、海岸線が向かい合う国の間の距離が400海里未満の場合には、両国間の話し合いにより境界を決定しなければなりません。この点については、 「近隣諸国の大陸棚との関係」を参照。)

では、大陸縁辺部の外縁が200海里を超える場合、どこまでが外縁となるのでしょうか。国連海洋法条約第76条では、次のいずれかの地点まで、沿岸国が外縁を設定することにより、大陸棚の外側の限界を延長できる、と規定されています。(第76条4項

(1) 大陸斜面脚部から60海里の地点、
または
(2) 堆積岩の厚さが大陸斜面脚部からの距離の1%となる地点

上記(1)の大陸斜面脚部(foot of the continental slope)とは、大陸斜面の基部(斜面の麓の部分)における勾配が最も変化する点であり、きわめてなだらかな海底地形の場合には、地形によって決定されますが、複雑な海底地形の場合には地形学的データのみでは決定するのが容易ではないので、地質学的データも必要となります。
この大陸斜面脚部から60海里延ばす方式を使うか、または、堆積岩の厚さを用いることもできます。堆積岩が厚い場合には、上記(2)の方式を用いた方がより大陸棚を延ばすことができる場合もあります。

上記いずれかの要件を満たせばどこまでも大陸棚を延長できるわけではなく、領海基線から最大350海里か、2,500m等深線から100海里のいずれか遠い方を超えて延長することは認められていません。(第76条5項)(ただし、海底海嶺の場合には、350海里の制限しか適用されません。(第76条6項) 海嶺については、「ロン・マクナブ氏による各国の大陸棚限界延長に関する講演会」を参照。)

沿岸国は、大陸縁辺部の外縁に関する情報(地形や地質のデータ)を、大陸棚限界委員会に提出し、同委員会の勧告に基づき、自国の大陸棚の外側の限界を設定します。

以上の大陸棚の延長について概念的に図式化したものが、海上保安庁海洋情報部のホームページに掲載されています。下記の21は横から見た断面図イメージで、図2は上空からの俯瞰図イメージです。


■図2
海上保安庁海洋情報部ホームページより
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